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モーツァルトの人生と作品を巡る3年のシリーズ
『モーツァルト~未来へ飛翔する精神』

 音楽史上に不滅の足跡を残すヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。 その作品は“無謬の天才”の神話に彩られ、現在もなお多くの人を魅了し続けているが、それらがモーツァルト自身の人生や精神の軌跡と重ねて語られる機会は意外に少ない。10月31日(木)からいずみホールで開催される「モーツァルト~未来へ飛翔する精神」は2015年度までの足掛け3年にわたって、モーツァルトの生涯の様々な時間や場所に焦点を当て、そこに生み出された数々の作品を鑑賞しようというシリーズ企画だ。各年度は2013年度が《克服》、2014年度が《充溢》、2015年度が《超越》と題され、通してモーツァルトの35年の人生を概観する。


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 今年度の《克服》は全5公演。モーツァルト20歳から25歳までの作品で構成される。1776年は彼が演奏旅行に明け暮れた十代を経て、ザルツブルクの宮廷音楽家として活動を始めた時期である。翌年からのマンハイム、パリへの滞在では失恋や周囲からの冷遇、直後の母の死など辛酸の時を過ごすが、新たな人間関係の中で、交響曲「パリ」をはじめとする傑作を手がけてもいる。またモーツァルトの作品中、強い印象を残す短調のソナタが書かれるのもこの時期である。1781年、モーツァルトはミュンヘンの選帝侯カール・テオドールの求めの応じ、オペラ・セリアの傑作「イドメネオ」を発表。念願だったオペラ作曲家としての評価を勝ち得るが、その直後にザルツブルクでの雇い主とも言うべき大司教と決裂。以後ウィーンに留まることとなる。今年度《克服》のファイナルではモーツァルトがこの期間を通じて残した、室内楽の傑作を取り上げてゆく。
 
 「いずみホールは保守本流の室内楽ホールとしてウィーン古典派、そしてロマン派を中心とした室内楽を主なレパートリーとして演奏してまいりました。当然モーツァルトの音楽も大きな柱のひとつとして、いろいろな機会に取り上げて来たわけであります。しかし年間企画でもモーツァルトを取り上げて来たか、というとその回数は案外少なくて、これまで中心はむしろベートーヴェンにあり、モーツァルトは必ずしも集中的に取り上げて来なかった、という経緯があります。いつかモーツァルトについて、きちんとしたかたちで取り上げていかなければならないという思いを、ホール全体として持っておりました」。公演に先立って行われた、記者会見の冒頭、いずみホール音楽ディレクター、礒山雅はそのように語った。その思いを起点に企画が練られ、円熟のウィーン時代に至るまでの、上昇中のモーツァルトの姿を捉えたシリーズ全体の構成が生まれていったと言う。
 演奏陣には国内外のベテラン、俊英が揃う。会見にはその中から第2回公演でソリストを務めるハープの福井麻衣、そして第4回公演、歌劇「イドメネオ」でタイトルロールを歌うテノールの福井敬が出席し、公演への抱負を語った。
 モーツァルトの作品を巡る、3年の旅。「モーツァルト~未来へ飛翔する精神」はまさに“保守本流の室内楽ホール”としてのいずみホールが、満を持して放つ、高い学術性と音楽の楽しさに満ちた極上のエンターテインメントと言えるだろう。



■記者会見より

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井麻衣(ハープ)
 私は2010年にパリ高等音楽院を卒業し、現在、パリを拠点に活動しています。今回は、いずみホールの素晴らしい公演に呼んでいただき大変光栄に思っております。『フルートとハープのための協奏曲』は、サロン風の優雅な響きを持った、とても人気の高い曲なんですが、モーツァルトがハープという楽器のために書いた、ただひとつの作品でもあるんです。それだけにしっかりと勉強して、大切に演奏してゆきたいと思っています。指揮の金聖響さんと日本センチュリー交響楽団、そしてフルートの小山裕幾さんとの共演を楽しみにしております。
 
福井敬(テノール)
 この『イドメネオ』という役柄は過去にも歌ったことはあるのですが、一国の王であるがゆえの危うさや弱さ、わが子イダマンテを殺めなければならないという悲しみは、50歳という現在の私の年齢で歌うことで、改めて見えてくるものもあるのではないか、と感じています。また、今回は演奏会形式というかたちですが、最近のオペラはともすれば演出面やビジュアルに重点が置かれがちです。モーツァルトの音楽を主体に考えた場合、より音楽からストレートにドラマを感じていただける演奏会形式という方法は、ひとつの意味を持つのではないかとも考えています。われわれ歌い手にとってもモーツァルトというのはやはり特別な存在。このようなモーツァルトの作品の系譜をたどるといった企画が、大学などの研究機関の活動の一環として行われるといったことはあるのでしょうが、ホール独自の企画として、コンサートを主体としてやってゆける、というのは、いずみホールならではの素晴らしい力だと思っています。参加させていただく光栄を感じています。
 
 

(2013年9月 9日更新)


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■2013 克服 ザルツブルク〔1776-1781〕

1.溢れ出る管弦楽の力

10月31日(木) 19:00
一般-5000円(指定)
発売中 Pコード 200-195
※学生券・セット券は取り扱いなし。

【出演】(写真左より)
広上淳一(指揮)
泉原隆志(ヴァイオリン)
店村眞積(ヴィオラ)
京都市交響楽団(管弦楽)

【プログラム】
協奏交響曲 変ホ長調 K.364
セレナード 第9番 ニ長調 K.320「ポストホルン」

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2.パリの青春

11月28日(木)19:00
一般-5000円(指定)
発売中 Pコード 200-195
※学生券・セット券は取り扱いなし。

【出演】(写真左より)
金 聖響(指揮)
福間洸太朗(ピアノ)
小山裕幾(フルート)
福井麻衣(ハープ)
日本センチュリー交響楽団(管弦楽)

【プログラム】
レ・プティ・リアン K.299bより
ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271《ジュノム》
フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
交響曲 第31番 ニ長調 K.297《パリ》

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3.二重奏&ソロの光と影

12月6日(金)19:00
一般-5000円(指定)
発売中 Pコード 200-195 
※学生券・セット券は取り扱いなし。

【出演】(写真左より)
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
佐藤俊介(ヴァイオリン)

【プログラム】
ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.303
ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.310
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304
フランスの歌「ああ、私は恋人をなくした」の
主題による6つの変奏曲 ト短調 K.360
ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K.306

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4.オペラで勝負する!

12月14日(土)16:00
S席-7000円 A席-5000円
チケット発売中 Pコード 200-195
※学生券・セット券は取り扱いなし。

【出演】(写真上段左より)
イドメネオ:福井敬(テノール)
イダマンテ:林美智子(メゾソプラノ)
イリア:幸田浩子(ソプラノ)
エレットラ:並河寿美(ソプラノ)
アルバーチェ:中井亮一(テノール)
大司祭:小餅谷哲男(テノール)
海神の声:片桐直樹(バス)
関西二期会合唱団

大勝秀也(指揮/写真下段)
ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

【プログラム】
歌劇《イドメネオ》 K.366
(演奏会形式/原語上演/字幕スーパー)

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5.室内楽はのびやかに

2014年 1月11日(土)16:00
一般-6000(指定)
チケット発売中 Pコード 200-195
※学生券・セット券は取り扱いなし。 

【出演】(写真左より)
ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)
カールハインツ・シュッツ(フルート)
古部賢一(オーボエ)
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)
ハインリヒ・コル(ヴィオラ)
ロベルト・ナジ(チェロ)
ミヒャエル・ブラデラー(コントラバス)
ヴォルフガング・トムベック、木川博史(ホルン)

【プログラム】
フルート四重奏曲 第1番 二長調 K.285
オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
ディヴェルティメント ニ長調K.334

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