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フランスを代表する名優マチュー・アマルリックが
監督作を引っさげ大阪に!
映画『彼女のいない部屋』大阪舞台挨拶レポート

『グランド・ブダペスト・ホテル』などで国際的に活躍する俳優でありながら、『さすらいの女神たち』など監督業でも評価の高い、マチュー・アマルリックが監督を務め、2021年カンヌ国際映画祭でカンヌ・プレミアに選ばれた、とある女性にまつわるドラマ『彼女のいない部屋』が、シネ・りーブル梅田ほか全国にて上映中。家出をした女性の秘めた胸の内が、断片的な映像の連なりによって徐々に明かされていく。『ファントム・スレッド』のヴィッキー・クリープスが、ミステリアスな主人公を体現している。
 
そんな本作の公開を記念し、9月20日(火)、シネ・リーブル梅田でティーチ・インが行われ、監督を務めたマチュー・アマルリックが登壇した。まずは「ここまで来られてすごく嬉しいです。台風よりちょっと早めに来られたので(ティーチ・インが)実現しました。周りには無理だよと言われましたが、来ました(笑)」と挨拶し、ティーチ・インは始まった。
 
現実と仮想現実が交錯する本作についてマチューは「映画も台風のようなもので、どういう流れで進んでいくのかわからないものです。現実もそういうものではないかと。順番に物事が進んでいけばいいかもしれませんが、実際には希望や悩みがあり、いろんな方向に進んでいく」と前置きし、続けて「この作品にはクロディーヌ・ガレアが2003年に書いた「Je reviens de loin」という戯曲の原作があります。この、上演されることがないままだった戯曲はとてもシンプルですがとても力強い物語で、想像が現実と重なり合う作りになっています」と説明。
 
さらに「身を切るような辛い思いを味わった時に人間は現実から脱出するように想像し、その辛い思いから逃れるように想像の力を働かせようとする。その時は真実もまやかしも区別がなくなる。そういう錯乱するような瞬間は誰でもあるのではないかと思うんです。そういう世界をクラリスという女性は生きています」と真摯に語っていた。
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また、原作のどこに惹かれて映画化したのかという質問に対しては「死者と生者のパラレルワールドを描いている原作を読んで、自分にとって近しい姉か妹のように感じました。日本では死者を感じたり死者とともに生きるという考え方があると思いますが、西洋、特にフランスは死んでしまった人はもう別の場所にいて、ある意味脇に置いて生きる考え方ですが、そうではない生き方もあることが描かれているので、この作品を映画化したいと思った」と日本と西洋の死生観の違いも織り交ぜて語っていた。
 
さらに「この映画であればふたつのジャンルを同時に描くことができると思った」と言い、「ひとつはメロドラマ。もうひとつは幽霊、亡霊たちが出てくる映画。このふたつのジャンルを描くことができる」と思ったそう。続けて、「現実というのは本当にわからないことです。それを映画は素晴らしい芸術のひとつの方法として探求し見せることができると思っています」と現実のわからなさを表現できる映画の素晴らしさを語っていた。
 
最後に、フランスのタイトルの意味と異なる日本語のタイトルについてどう感じているかという質問に対して「戯曲の題名は『遠くから私は戻ってくる』でした。映画のタイトルは『私を強く抱いて』です。これはフランスの有名な歌手の方の歌から取っている題名です。日本語のタイトルは全く違いますが、それぞれの国の文化が違うベクトルでこの作品にアプローチして、この作品の異なる扉を開けてくれるのは、とても素晴らしいことだと思います。僕はこの日本のタイトルがとても好きですし、日本語の響きも好きです。配給会社の方がつけてくれたことに感謝しています。それぞれの国の扉の開け方が違うのはいいことだと思っています」と映画のタイトルが国によって異なることも楽しんでいるようだった。
 
さらに「『私を強く抱いて』の方がセンチメンタルで、日本の『彼女のいない部屋』というのは、ふたつの内容が見えてきて、“彼女”と“部屋”の二重性が含まれていて面白いと思います」と付け加え、ティーチ・インは終了した。
 
取材・文/華崎陽子



(2022年9月20日更新)


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Movie Data



(C)2021 - LES FILMS DU POISSON - GAUMONT - ARTE FRANCE CINEMA - LUPA FILM

『彼女のいない部屋』

▼シネ・リーブル梅田ほか全国にて上映中
出演:ヴィッキー・クリープス、アリエ・ワルトアルテ
監督:マチュー・アマルリック

【公式サイト】
https://moviola.jp/kanojo/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/243701/index.html