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韓国の監督目線で見る日本「日韓コラボ映画特集」

昨年12月から今年2月にかけて、大阪、福岡、名古屋、横浜のミニシアター、そしてオンラインでも開催中の「日韓コラボ映画特集」は、日本各地で撮影された韓国のインディペンデント映画5作品が楽しめるイベントだ。それぞれ撮影場所は、大阪(『でんげい』『大観覧車』)、 福岡(『福岡』)、名古屋(『デッドエンドの思い出』)、 奈良(『ひと夏のファンタジア』)。
 
『でんげい』は大阪の韓国系の学校、建国高校の伝統芸術部を追ったドキュメンタリーだが、その他の4作品は劇映画だ。監督たちに撮影場所に選んだ経緯を聞くと、映画祭がきっかけの場合が多かった。例えば『福岡』のチャン・リュル監督は、アジアフォーカス・福岡国際映画祭にたびたび招待されるなかで「福岡に友達ができた」ことが大きいと言う。「友達がいる所には物語がある」とも。福岡で撮るという前提があって、そこでクォン・ヘヒョ、ユン・ジェムン、パク・ソダムという名優たちが演じる物語が展開する。これは『大観覧車』も『ひと夏のファンタジア』も共通だ。大阪で、奈良県五條市で撮ることが先に決まっていた。

『大観覧車』のベク・ジェホ監督は「ロケハンの時に、観覧車が特に目に入ってきた。なんでこの国には観覧車が多いんだろうと思った」と話す。私自身も大阪出身だが、観覧車が多いなどとは考えたこともなかった。ゆっくり回る観覧車とスローミュージックがぴったりな作品だった。場所が先に決まっていた3本の共通点は、ファンタジーの要素が見られること。生活者ではない監督たちの目線が、日本人にとっては見慣れた風景をファンタジーな空間に生まれ変わらせる。
 
一方、『デッドエンドの思い出』はよしもとばななの短編小説が原作。原作の舞台は名古屋とは特定されていなかった。名古屋で撮ることになったのは、あいち国際女性映画祭での出会いがきっかけだったという。もっと言えば、韓国とも関係がない物語だったが、映画では主人公ユミ(少女時代のスヨン)も婚約者も韓国人で、ソウルからユミが婚約者の住む名古屋へやって来る。
 

日本の風景や人が、失恋など傷心の韓国人主人公を癒してくれる劇映画4作品と、大阪で韓国の伝統芸能に打ち込む高校生たちの青春がつまった『でんげい』。コロナ禍の厳しい寒さも吹き飛ばす、心温まる日韓コラボの作品たちだ。


成川彩(なりかわ・あや) 韓国在住映画ライター

 

【上映作品】

福岡(2019)福岡で撮影

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恋話を聞かせてやろうか
お腹すいた おいしい物を食べに行きましょ
 
チャン・リュル監督(86分)2019
韓国で古本屋を営むジェムンは、店の常連である不思議な少女ソダムの誘いで福岡を訪れることに。そこには、大学時代1人の女性を愛したことから仲たがいしたままの親友ヘヒョがいた…。『パラサイト 半地下の家族』で注目のパク・ソダムが韓国の名優クォン・ヘヒョとユン・ジェムンを振り回す、第69回ベルリン映画祭正式出品作品。
 
監督:チャン・リュル
出演:クォン・ヘヒョ、ユン・ジェムン、パク・ソダム(『パラサイト 半地下の家族』)
ワールドセールス:Parallax Films



デッドエンドの思い出(2019)名古屋で撮影

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(C)2018 「Memories of a Dead End」 FILM Partners
ここは道の終わりにあるけど、皆ここから始めていくんだ
次のプランをポケットに入れてないから、休んでるだけ

チェ・ヒョンヨン監督(90分)2019
30歳を目前にしたごく普通の日々を送っていた韓国人女性・ユミ。ひとつだけ気にかかっている事があるとすれば、仕事で名古屋へ行ってしまった婚約者テギュとの未来だった。そんなユミはふと思い立ち、テギュに会いに名古屋へと向かう…。吉本ばななの世界に少女時代スヨンの魅力を詰め込んだ一作。
 
監督:チェ・ヒョンヨン
出演:スヨン(少女時代)、田中俊介
原作:よしもとばなな
配給:アーク・フィルムズ


 
大観覧車(2018)大阪で撮影

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僕はいま、走る電車から脱線してるみたい
脱線じゃなくて、電車から降りたんですよ
 
ベク・ジェホ/イ・フイソプ監督(111分)2018
船舶事故で行方不明になった先輩デジョンの代わりに、大阪へ出張に来た船会社のサラリーマン、ウジュ。出張最終日の夜、ウジュはデジョンと似た男を見かけ一心不乱に追いかけはじめる。気が付くとウジュは大阪の下町 ― 大正まで来ていた…。日本のインディペンデント映画界でキラリと輝く堀春菜の初韓国映画主演作。
 
監督:ベク・ジェホ
出演:カンドゥ、堀春菜、ジ・デハン、すのう、辻凪子
配給:harakiri films
 


ひと夏のファンタジア 奈良で撮影

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(C)Nara International Film Festival+MOCUSHURA
ワタシ・・・カレシガイマス
日本の彼氏にどうですか?
 
チャン・ゴンジェ監督(96分)2014
映画を撮るために韓国から奈良県五條市にやってきた監督のテフン。彼は日本語ができる助手のミジョンと共に、観光課の職員・武田の案内で町を訪ね歩く…。河瀨直美プロデューサーのもと、第2のホン・サンスと称されるチャン・ゴンジェが撮った作品。『はちどり』でも存在感を見せつけたキム・セビョクの魅力が光る。
出演:キム・セビョク、岩瀬亮、イム・ヒョングク、康すおん
「ひと夏のファンタジア」プロジェクト2014-2016 配給
 
監督:チャン・ゴンジェ
出演:キム・セビョク(『はちどり』)、岩瀬亮
配給:「ひと夏のファンタジア」プロジェクト2014-2016
 


でんげい わたしたちの青春(2015)大阪で撮影(ドキュメンタリー)

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でんげい わたしたちの青春
いっぱい叱られ
いっぱい泣いて
私たちは少し大人になった。
 
チョン・ソンホ監督(97分)2015
大阪に12年連続で全国高等学校総合文化祭に出場を果たした民族学校、建国高等学校がある。2014年夏、伝統芸術部の生徒たちは、いばらき大会を目指して猛練習に励んでいた…。マスクに加えてハンカチも必須の感動作。
 
監督:チョン・ソンホ
出演:キム・ヒャンスリ、コ・スンサ、ソ・ヌンヒャン、チャン・スギョン、イ・スンオン、カン・ソナ、キム・ソンファ、イ・サフェ、イム・モジョン
配給:キノ・キネマ



(2021年1月26日更新)


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上映劇場

▼1月16日(土)~29日(金) 福岡 KBCシネマ
▼1月30日(土)~2月5日(金) 名古屋 シネマスコーレ
▼2月6日(土)~12日(金) 横浜 シネマ・ジャック&ベティ


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問い合わせ

harakiri films
今井太郎
harakirifilms2014@gmail.com
080-3157-4496