ホーム > NEWS > 主人公フランシスを演じる 女優グレタ・ガーウィグって何者かご存知?
『イカとクジラ』のノア・バームバック監督の最新作『フランシス・ハ』がいよいよ10月4日(土)より、シネマート心斎橋、京都シネマ、11月8日(土)より、神戸・元町映画館にて公開される。もうすでに公開された東京、名古屋などなどで絶賛される噂が耳に入ってきている人も多いかもしれない。ニューヨークのブルックリンでステージに立つことを夢見て暮すモダンダンサーのフランシスが、同居人である親友の婚約を機に居場所を探して転々とする。そんな応援せずにはいられないキュートな主人公の姿を温かなモノクロームの美しい映像が包み、絶妙な音楽に彩られるオススメ作だ。そこで、本作の魅力を3人の方にそれぞれの目線でテーマを変えてレビュー書いてもらった。
日本で「グレタ」と言えば、いまだに「グレタ・ガルボ」を連想する人が多いかと思うが、そのうち、検索エンジンでも、「greta」と打ち込めば、「Greta Gerwig」が筆頭に上がる時代が来るだろう。それが、「フランシス・ハ」こと、グレタ・ガーウィグだ。彼女は、アメリカではすでにインディー映画のミューズとしてつとに知られているが、もっと厳密に言えば、「マンブルコア派」のミューズから、「ニューヨーク派」のミューズとなったと言うべきだろうか。
日本では、公開作がないためにほとんど知られていないが、2000年代以降のアメリカのインディー映画の一つの大きなトレンドとなったのが「マンブルコア・ムーヴメント」で、映画仲間同士が互いにキャストやスタッフを交代しながら、低予算で撮った一連の自主制作映画群のことだ。そのほとんどが、ウディ・アレンやエリック・ロメールの作品を彷彿とさせる、アンサンブル・キャストによる会話主体の映画なのだが(その会話がモゴモゴして聴き取りにくいことから、「マンブルコア」というネーミングが付いた)、そのシーンの中心人物の一人、ジョー・スワンバーグの近作『ドリンキング・バディーズ』(昨年の東京国際映画祭で上映され、最近DVDでもリリースされた)は、これでも以前の作品よりかなりお金がかかっているのだが、一応マンブルコア映画の流れを汲む作品と言うことができるだろう。そのスワンバーグの『LOL』という映画でデビューしたのがグレタ・ガーウィグで、彼女はこのシーンでめきめき頭角を現し、スワンバーグとは『Hannah Takes the Stairs』を共同監督しさえしている。そのスワンバーグの『Alexander the Last』のプロデュースをしたのが、『フランシス・ハ』の監督で、ニューヨーク派の一人と言っていいノア・バームバックだった。
おそらくその縁でだと思われるが、グレタ・ガーウィグは、バームバックの前作『グリーンバーグ(テレビ放映時タイトル:ベン・スティラー 人生は最悪だ!)』のヒロインに抜擢されることになり、そこからグレタの快進撃が始まった。その『グリーンバーグ』は、バームバックが、ジェニファー・ジェイソン・リーとの結婚をきっかけに移り住んだロサンゼルスで撮影された作品だったが、この映画で出会ったグレタと私生活においても親密になる中で、LAを離れ古巣のニューヨークに戻って来たのと並行して、グレタは、バームバック以外にも、ニューヨーク派の新旧代表格ウディ・アレン(『ローマでアモーレ』)やホイット・スティルマン(『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』)にもラブコールを送られるなど、今やレナ・ダナムのテレビドラマ『Girls』(祝!日本上陸)のヒロインの一人、ジェマイマ・カークと並んで、ニューヨークに生きるアート・カルチャー系こじらせ女子を象徴する女優となったのだ。監督は異なるし、作品としての質は遥かに劣るが、グレタにとって、『フランシス・ハ』の前哨戦とも言うべき作品になった、『Lola Versus(DVDタイトル:29歳からの恋とセックス)』でも、似たようなキャラクターを演じていた。
そして、バームバックとグレタ、いわばニューヨーク派とマンブルコア派のマリアージュのような形で生まれたのが、まさに『フランシス・ハ』だった。そして、さらにはそこに、レナ・ダナムの影も見え隠れするようだ。『フランシス・ハ』で、グレタに絡む三人の男性のうち、一人は『Girls』で大ブレイクした、今をときめくアダム・ドライバー(何と、彼はバームバックの次回作『While We’re Young』で、ジョー・スワンバーグをモデルにした映画監督役を演じている!)だし、もう一人も、やはり『Girls』に出ているマイケル・ゼゲンなのだ。そして、バームバックの次の次の作品は、グレタとジェマイマ・カークの妹ローラとの共演だというから、この接近ぶりはただごとではない。思えば、『フランシス・ハ』のヒットの影には、レナ・ダナムのツイッターが一役買っていたと言うし、今後もこの辺りのシーンからますます目が離せなくなるのだ。
小柳帝
ライター。著書・翻訳書多数。近著に『ROVAのフレンチカルチャー A to Z』。初めての映画本となる『小柳帝のバビロンノート』(woolen press)は、関西地区では、京都・恵文社一乗寺店にて絶賛発売中。
その① 多屋澄礼 『フランシス・ハ』レビュー
その③ キングジョー 『フランシス・ハ』レビュー
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(2014年10月 2日更新)
●10月4日(土)より、シネマート心斎橋、京都シネマ
11月8日(土)より、神戸・元町映画館にて公開
【公式サイト】
http://francesha-movie.net/
【facebook】
https://www.facebook.com/francesha
【ぴあ映画生活サイト】
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