ホーム > NEWS > ポップミュージックの持つエネルギーが パズルのように映画にぴったりとはまることで、 両者の魅力は何倍にも膨らんでいく
『イカとクジラ』のノア・バームバック監督の最新作『フランシス・ハ』がいよいよ10月4日(土)より、シネマート心斎橋、京都シネマ、11月8日(土)より、神戸・元町映画館にて公開される。もうすでに公開された東京、名古屋などなどで絶賛される噂が耳に入ってきている人も多いかもしれない。ニューヨークのブルックリンでステージに立つことを夢見て暮すモダンダンサーのフランシスが、同居人である親友の婚約を機に居場所を探して転々とする。そんな応援せずにはいられないキュートな主人公の姿を温かなモノクロームの美しい映像が包み、絶妙な音楽に彩られるオススメ作だ。そこで、本作の魅力を3人の方にそれぞれの目線でテーマを変えてレビューを書いてもらった。
映画のエンドロールをじっくり眺め、スクリーンに現れる文字を目で追う。気に入った作品ほど、その全ての要素を拾おうとする気持ちから文字を追っていく視線も熱くなる。『フランシス・ハ』のタイトルの裏にひそんでいる何か(それは是非劇場で確かめて頂きたい)を発見し、胸をぎゅっと掴まれながらも映画の中でも効果的に使われたデヴィッド・ボウイ『モダン・ラブ』が流れる中、Tレックスやローリング・ストーンズ、ポール・マッカートニーなど往年のロックスター達の名前が流れていく様を眺めていた。
日本でも人気を集める映画監督ウェス・アンダーソンの右腕としてインディーズからメジャーシーンまで活躍してきたノア・バームバックがプライベートでもパートナーであり、フランシスを演じたグレタ・ガーウィグと共作で生み出したこの作品はこの二人だからこそ生み出した親密さがあり、「オトナになれない葛藤」がリアルとファンタジーの間で描かれている。ウェス・アンダーソンやソフィア・コッポラ、テレビドラマ『GIRLS』のレナ・ダナム、そしてノア・バームバック。私(だけでなく皆が)大好きな監督たちには共通する魅力がある。それは映画の中で使われる音楽のセレクトの意外さである。『GIRLS』のプリテンダーズ、『ダージリン急行』のキンクス、『ヴァージンスーサイズ』のスティクス(ソフィアは意外なハードロックなアーティストを作品に取り入れる天才!)そして『フランシス・ハ』の中のデヴィッド・ボウイ。懐メロとして扱われるような決してクールでない曲が映画の中ではマジックをつかったように光り輝き私たちの心を鷲掴みにする。83年にリリースされた『レッツ・ダンス』に収録されデヴィッド・ボウイの長い活動の期間の中でも黄金期に生み出された『モダン・ラブ』。実はこの曲はバームバックが初めて買ったレコードの冒頭を飾る思い出の一曲だった。フランス映画の最高峰であるレオス・カラックの『汚れた血』でも使われていたことで、音楽ファンだけでなく映画ファンにも知られるようになった。
ロマンチックでエネルギッシュなこの曲が映画のなかでどう働くかバームバックは懸念していたが『フランシス・ハ』の中でフランシスがニューヨークの街を走り抜ける光景と重なることで完璧にはまっていた。インタビューでガーウィグは「素晴らしいポップミュージックって何度でもリピートして聴きたくなるものだと思う」と発言していたが、ポップミュージックの持つエネルギーがパズルのように映画にぴったりとはまることで、両者の魅力は何倍にも膨らんでいく。きっと街中でイヤホンから『モダン・ラブ』が流れてきたのなら、あなたはフランシスのように走り出さずにはいられないはずだ。
多屋 澄礼
インディ・ポップを軸にDIYな精神を掲げたDJグループ、Twee Grrrls Clubのリーダーであり、レーベル&ショップ、Violet And Claireのオーナーとして、現在は拠点を東京を女性作家や海外の雑貨などをセレクト。リトルプレスの制作やファッションブランドのイラスト、ライター、翻訳家として雑誌や本などで執筆も手がけている。
その② 小柳帝 『フランシス・ハ』レビュー
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(2014年10月 2日更新)
●10月4日(土)より、シネマート心斎橋、京都シネマ
11月8日(土)より、神戸・元町映画館にて公開
【公式サイト】
http://francesha-movie.net/
【facebook】
https://www.facebook.com/francesha
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/163897/