“5万回斬られた男”福本清三、71歳初主演に
「作品に携わったみなさんが主役」
『太秦ライムライト』
二条城初のワールドプレミアイベントレポート
俳優生活55年、ひたすら斬られ役に徹し、その技はもはや日本映画界の至宝とも言える福本清三が、71歳にして初主演を果たした『太秦ライムライト』が、6月14日(土)よりT・ジョイ京都、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹にて関西先行公開(7月12日(土)より全国ロードショー)される。かつて日本のハリウッドと呼ばれた京都・太秦の撮影所を舞台に、伝統の時代劇が消え、仕事が激減する斬られ役の大部屋俳優・香美山(福本清三)と、時代劇の殺陣に憧れ、香美山に稽古を志願する新進女優のさつき(山本千尋)を中心に、撮影所で生きる人々の生き様を描いた映画愛に満ちた作品で、松方弘樹、萬田久子、小林稔侍といったスター俳優たちも共演し、福本清三の晴れ舞台に華を添えている。そこで、本作の公開を記念し、8日(日)、京都・二条城二の丸御殿 台所にて、ワールドプレミアイベントが実施された。
日本におけるチャップリン研究の第一人者・大野弘之が、脚本・プロデュースを務め、チャップリンの名作『ライムライト』になぞらえた往年の映画職人と新進女優の織りなす生き様を描く本作。福本清三の佇まいからにじみ出る哀愁と映画初出演となる女優・山本千尋から溢れ出る若き情熱が見事に合わさり、「古き良き時代の精神を次代に受け継ぐ」メッセージも込められている。また、映画の劇中劇で香美山やさつきが繰り広げる殺陣シーンの数々は、その迫力と美しさに圧倒され、時代劇アクションの躍動感を堪能できる、みどころとなっている。
イベント当日、上映に先駆け行われた殺陣ショーでは、そんな劇中のシーンさながらに、主演の福本、山本らが華麗なる殺陣を披露。何人もの敵を相手に奮闘する山本の立ち回りや決めポーズの美しさ。そして山本に斬られた福本が、イナバウアー並みの反り返りで見せ場を作りながら、一瞬にして倒れおちる見事な斬られ技に、観客からは大きな拍手が沸き起こった。
その後、現在は一般非公開となっている二条城二の丸御殿 台所では初めてとなる上映会が開催され、上映前に福本清三、山本千尋、松方弘樹、萬田久子、落合賢監督が登壇、舞台挨拶を行った。71歳にして初主演を務めた福本は「いやあ、とんでもない。この作品に携わったみなさんが主役で、僕はその中の一人の斬られ役」と、主役とは思えない謙虚な言葉で喜びを表現。50年来撮影所で一緒に仕事をしてきた松方は「もう500~600回は(福本のことを)斬っています。今回は本当に自分のことのように嬉しかった。はじめの台本を見たときにフクボン(福本の愛称)の台詞が多すぎで、これはヤバいぞと思い、脚本家に台詞を少なくするよう話をした」と、福本との絆が伺えるエピソードを明かした。また、萬田も「親戚のおじさんが主役になったようで、すごくうれしかった。最初は福本さんとすれ違った時に、メイクで悪役顔なのですごく怖かった。でも笑うと本当に優しいお顔。今回台詞のやりとりがあったときは、すごく緊張したが、本当に楽しかった。(福本主演の映画は)来るべくして、できた映画」と共演の感想を語ると、落合監督からは「福本さんは50年のキャリアを持ちながらも本当に謙虚な方。段取りをしているときも、必ずフレームの端の方にすっと動いて行かれるので『今回は主演なので、ど真ん中にいてください』、『いやいや、わしはあきませんねん』というやりとりをしていた。実際にスクリーンでご覧いただくと、福本さんの存在感がどっしりと表れている作品になっている」と主演を引き立てる仕事に徹してきた福本らしい撮影現場の様子や作品の見どころが語られた。
また、幼い頃より太極拳を学び、世界ジュニア武術選手権大会優勝のキャリアを見込まれヒロインに大抜擢された、次世代の若きアクションスター、山本千尋は、「本当に何もかも分からない状態で撮影に臨み、最初は監督に怒られもしたが、映画を撮るときの厳しさや楽しさを知り、充実していた。初めての映画を太秦で撮ることができて、本当に感謝している」と感無量な様子で映画初出演の感想を述べた。最後に福本が、「皆さんに助けていただいて、こんなに大仕事をさせていただいた。今は欲が出て、みなさんで作った映画を一人でも多くの方に観ていただきたいと思っている。この映画をなんとしてでも成功させたい。みなさんよろしくお願いいたします」と力強く締めくくった。
(2014年6月 9日更新)
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左から、落合賢監督、萬田久子、福本清三、山本千尋、松方弘樹
Movie Data
© ELEVEN ARTS/Tottemo Benri Theatre Company
『太秦ライムライト』
●6月14日(土)より、
T・ジョイ京都、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、
梅田ブルク7、なんばパークスシネマにて関西先行公開
7月12日(土)より、全国ロードショー
【公式サイト】
http://uzumasa-movie.com/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/165005/