芦田愛菜、行定勲監督作品で映画初主演
大阪府内某小学校跡地にて現在撮影中!
『円卓』撮影現場レポート
行定勲監督の新作映画『円卓』が現在、大阪府内の某小学校跡地にて撮影中! 来月より公開となる『パシフィック・リム』でハリウッドデビューも果たし、映画にテレビにと大活躍の小さな大女優、芦田愛菜(9歳)にとって記念すべき単独初主演作となる。
映画は『きいろいゾウ』の西加奈子の同名小説を原作に、行定監督作品でおなじみの伊藤ちひろが脚本を担当。大阪の団地で暮らすとある家族の物語を描く。芦田演じる主人公、琴子(こっこ)は大家族の温かな眼差しに包まれて暮らしながらもいつも不平不満ばかりで、少し孤独に憧れているという難しい役どころ。そして、口が悪く「うるさいぼけ!」「このガキ、何しくさっとんねん!」など、ベタベタの関西弁を話す。芦田は兵庫県出身の関西人だが、今までにないキャラクターの役柄だけに期待が高まる。そこで、主演の芦田愛菜&行定勲監督に話を訊いた。
――愛菜ちゃんは、初主演作ということで、意気込みの方はいかがですか?
芦田愛菜(以下、芦田):台本を読んだら、お話も面白いし、琴子ちゃんがすごく可愛いので、撮影が始まるのをすごく楽しみにしていました。この夏にいろんなことを経験して、少し大人になる琴子ちゃんをうまく演じられればいいなと思います。
――行定監督の印象は?
芦田:最初はちょっと怖かったんですが(笑)、今はお芝居のことを色々教えてくださるので、監督と一緒にいられる間にお芝居のことを勉強したいです。監督の望んでいるお芝居ができるように頑張ります。
――関西弁の台詞ですが、いかがですか?
芦田:(関西出身だけど今は関西弁を話す機会が減り)関西弁を忘れかけていて、お母さんやお父さんに教えてもらったり、関西に住んでいるお祖父ちゃんやお祖母ちゃんに確認しながら台詞を練習しました。でも今は、(撮影中はもちろん)撮影じゃない時でも関西弁を使っているので、ずっと琴子ちゃんの気持ちでいられるような感じで楽しいです(笑)。
――夏休みにやってみたいことは?
芦田:毎年お友達と花火大会をやっているので、今年も計画中です。あとは、浴衣を着てお祭りに行って、ベビーカステラを食べたり、金魚すくいをやりたいです。
――行定監督、本作を作ることになったきっかけをお聞かせいただけますか?
行定勲監督(以下、行定):東日本大震災の後、世の中の意識が変わり、普通のことが普通じゃなくなって、我々は何を表現するべきなのか考えていた時に、この『円卓』という小説に出会いました。主人公の琴子は、普通だったらネガティブなことや大人になったら口にしてはいけないことを差別ではなく憧れる。彼女にとって普通はダサくて、変わっていること、モノが良い。小説の中であるお祖父ちゃんが琴子に“イマジン”という言葉を授けるんですが、僕は現代にはこの“イマジン”が足りないんじゃないかと思うんです。要するに、相手の気持ちや状況になって考えたりせず、とにかく行動してしまうことが多いと思う。東日本大震災の時に、実際に僕が被災地に行って色んな人に話を聞くと、僕らの行動の気持ちが、受け止める側の気持ちになれていないことが分かってショックを感じました。彼らの気持ちになれるわけでは決してないんだけど、ただ「イマジンする」というのが、今一番必要なことなんじゃないかと。そういう理由でした。琴子が普通と出会い、普通を認めることが大切で、我々もきっと今、普通に戻らなきゃいけない。その努力をしなきゃならない。この映画を観て、大人たちがそんな風に感じてもらえればいいなと思います。
――今回の撮影で一番、重要視したことは?
行定:キャスティングですね。愛菜ちゃんはモチロンなんですが、クラスの子たちも全員関西出身で揃えたんです。関西にこんな逸材がいたのか! と思うような子たちに出会えましたよ。ただ子供たちは集中力が長く続かないので、スタッフは格闘してますけど(笑)。
――芦田愛菜ちゃんを起用された理由は?
行定:起用した理由というよりは芦田愛菜がいるから、この企画はやれるなと思いました。彼女が子供のうちにしか『円卓』は成立しないな、と。関西出身なのは知っていたので、まずそこからですね。やってくれなければ、映画化はしなかったです。芦田愛菜ありきで考えてたので。
――撮影されてみた手ごたえは?
行定:この主役の女の子はある種ダークヒロインなんです。すごく表情豊かで面白い。このバイタリティで勝負しなくちゃならないところがあるんで、もうマナちゃんしかいないなと。彼女が子供の内にやらせてほしいと思っていて、リアルに今3年生で、いちばん恵まれた状況でやらせてもらってます。よく「天才子役」と言いますが、すごい才能に驚きますよ。こちらが思ってることを凌駕しますから。
――撮影での愛菜ちゃんはどんな様子ですか?
行定:当日の芝居のポイントだけ、製作側から「この目線でいってほしい」と伝えて、あとはほとんど彼女のプランです。ちょっとどうなってるんだろうというくらいすごい(笑)。大人の俳優と変わらないから、あんまりカットを細かく切らないんです。細かく割らなきゃと覚悟して絵コンテを書いたのに普段の映画と何にも変わってないですよ(笑)。ワンシーンワンカットで撮って切り返しを撮れば成立する。それがすごいですね。
撮影は猛暑の続く7月中旬から大阪府内を中心に各所で行われており、12月に完成予定。2014年に全国公開される予定。
(2013年7月26日更新)
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左:行定勲監督 右:芦田愛菜
撮影が行われていた教室には、実際に子どもたちが書いたという習字や粘土で作った工作物も