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ホーム > NEWS > 宮沢賢治による名作童話がアニメーション映画化!  バンドネオンの物悲しい音色に酔いしれる 『グスコーブドリの伝記』 バンドネオン生演奏付き舞台挨拶レポート

宮沢賢治による名作童話がアニメーション映画化! 
バンドネオンの物悲しい音色に酔いしれる
『グスコーブドリの伝記』
バンドネオン生演奏付き舞台挨拶レポート

 数々の名作を世に残した東北岩手出身で、冷害や三陸沖地震などの災害に見舞われながらも故郷を愛し続けた作家・宮沢賢治が生み出した、東北の森を舞台とした感動物語『グスコーブドリの伝記』が7月7日(土)より大阪ステーションシティシネマほかにて公開される。厳しい自然の中で、愛する故郷や人々を守るため強い心で困難に立ち向かう主人公ブドリの姿が描かれる。本作の公開に先立ち、『銀河鉄道の夜』のアニメ化も手がけた杉井ギサブロー監督と、本作で初めて映画音楽を手がけたバンドネオン奏者の小松亮太が来阪し、バンドネオン生演奏付き舞台挨拶を行った。

 

 イーハトーヴの森で両親と妹と共に暮らしていたブドリだったが、冷害が森を襲い、食料がなくなって両親は家を出ていってしまう。さらには妹が謎の男コトリにさらわれ、ブドリは孤独の身に。その後、ブドリは工場や畑で働くが、再び冷害に襲われ…という、自然の過酷さや現代を生きる人類への警鐘をアニメーションという手法で描いた本作。特に、杉井ギサブロー監督は宮沢賢治の原作にも思い入れが深いようで、「僕は、この小説には特別な思いがあるんです。昭和に書かれた童話でありながら、自然と人間と科学の関係を見直さなくてはいけなくなった現代にマッチした話だと思うんです。昨年の東日本大震災が起こったことは、本当にショックでしたが、自然と共存することを本気で見直さないといけない時代になっていると思います」と本作が現代に甦らせた熱い思いを吐露してくれていた。また、本作で初めて映画音楽を手がけた、日本でも珍しいバンドネオン奏者の小松は「この映画に関わることができて、本当に光栄でした。不安半分、期待半分で曲を作りましたが、監督がおっしゃったように、人類への課題を描くこの作品に曲がフィットできたのではないかと自信を持っています」と、映画音楽の出来栄えに自信をのぞかせていた。

 

 また、主人公・ブドリをなぜネコのキャラクターで描いたのかという質問については、「原作が、あえて無国籍で書かれた童話だったので、国籍や人種を超えて、全ての人に伝えたいメッセージを込めるには人間ではなくネコという動物の方がいいと思ったんです。でも、この映画はネコのキャラクターを使ってはいるけれども、ネコの映画ではないですし、ブドリがネコだからこそ感情移入できる部分もあると思うんです」とコメント。さらに、映画音楽をバンドネオンにした理由については、「情感の深さを音楽に込めたかったですし、バンドネオンは色んな音が重なって、情感豊かに聞こえるので、ブドリのキャラクターの情感を引き出してくれると思った」そう。その情感豊かな音楽を作った小松は、「元々バンドネオンは、怒りや人間の感情をはっきりと表現するアルゼンチンタンゴの音楽なので、今回はタンゴの雰囲気をどこまで反映していいのか悩みました。でも、バンドネオンの音色は金属的でガツンとした音なのに、悲しみが秘められているので、この映画にうまく合わせることができたと思います」とバンドネオンの特色を活かしながら、映画音楽作っていった様子を語ってくれていた。

 

 そして、小松亮太がバンドネオンで「グスコーブドリの伝記 メインテーマ」と小田和正による主題歌「生まれ来る子供たちのために」を生演奏すると、映像が目に浮かぶような叙情豊かな音色に観客も酔いしれていた。最後に、それぞれに映画への思いを語ってもらうと、小松は「80年前の原作を、今生きる人が解釈して届けられるという、80年という時空を超えた人の思いが感じられる作品です」と語り、杉井監督は「この栄がを観ていただいて、綺麗だとか良かったという思いを持ち帰っていただいて、家族とは何なのか、自然とは何なのかという会話のきっかけになってくれれば嬉しいです」とそれぞれの解釈で映画の魅力を語ってくれた。本作は、人は自分の力だけで生きているのではなく、たくさんの人の力で生かされているということに気付かせてくれるとともに、もの悲しいバンドネオンの音色が幻想的な世界観をさらに深くする感動のアニメーションだ。




(2012年7月 5日更新)


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Movie Data




(C)2012「グスコーブドリの伝記」製作委員会/ますむら・ひろし

『グスコーブドリの伝記』

●7月7日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
http://www.budori-movie.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158316/