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2年ぶりに幕を開ける「あべの歌舞伎」、
人気演目『伊勢参宮神乃賑』を上演

8月4日(木)に大阪・近鉄アート館で「第七回あべの歌舞伎 晴の会(そらのかい)」が2年ぶりに幕を開ける。
 
「あべの歌舞伎 晴の会」とは、上方歌舞伎塾第1期生の片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎を中心に2015年から近鉄アート館で公演を行っている歌舞伎の会で、これまでに大阪文化祭賞や咲くやこの花賞など、数々の賞を受賞している。
 
今年は2016年の第二回公演で上演され、大阪文化祭賞奨励賞を受賞した、二世片岡秀太郎監修による『伊勢参宮神乃賑(いせさんぐうかみのにぎわい)』を上演。出演は、片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政、片岡佑次郎、片岡當史弥、片岡千太郎、片岡當十郎と、総勢10名の「晴の会」メンバーだ。公演を前に、それぞれが公演に向けての意気込みや、昨年5月に惜しくも亡くなった片岡秀太郎への思いを語った。
 
初演の第二回に続き若い者・清八を演じる片岡松十郎は、「若い者・喜六を演じる翫政さんとしっかりと息を合わして、仲良く旅ができたら。このお話には、『勧進帳』とか『伊勢音頭恋寝刃』とか、歌舞伎の古典が多く盛り込まれておりまして、その古典の部分をしっかり勉強させていただき、頑張ります。6年前の初演では、秀太郎旦那には力みすぎやと指導していただきました。秀太郎旦那の言葉で“良い加減”という言葉がございますが、良い加減に力を抜いてできますように勉強させていただきます」とあいさつした。
 
煮売屋の婆/遊女、おこん/仙女を勤める片岡千壽は、「2年ぶりにこの場に帰ってこられたことが非常に嬉しく、本当に皆々様のおかげと心より感謝申し上げる次第でございます。『伊勢参宮神乃賑』というお芝居は、秀太郎がことあるごとに“あの芝居はええねや、アナログやろ。あれがええねん”と申しておりました。(劇中、)出演者が道具を動かすことが多々ございますけども、お金をかけずに面白く見せる。“あのアナログがほんまに僕は好きやねん。面白い。ようできた芝居や。またあれ、もう1回、やりたいな”と言っていたことを思い出します。今回、再演できますことを本当に嬉しく思っております」と喜びを語った。
 
『伊勢参宮神乃賑』は楽しくてついついやりすぎてしまうところがあると千壽。前回は、秀太郎から「きみ、もうちょっと抑えてやりなさい」と言われていたという。「本当に楽しいお芝居なので、みんなで楽しみながら、もう一度、新しい『伊勢参宮神乃賑』を作っていきたいと思っております。うちの旦那に言われたことを思い出し、やりすぎなところは抑えながら、アドリブなどは盛り込まずあくまでも台本通り、基本に忠実に、そして上方歌舞伎の心を大事にしながら、皆様と、お客様と一緒に、『伊勢参宮神乃賑』というお芝居を作っていけたら」と続けた。
 
亀屋東斎の筆名で本作品の脚色も担う片岡千次郎は、2年ぶりの上演を嬉しく思うと話しつつ、次のように話した。「正直申しまして、私はこの公演をやるか、やらまいかというお話になったとき、お客様が来てくださるだろうかとか、コロナ禍もまだまだ厳しい状況ですし、ちょっと不安な気持ちがありました。そんな中で、関係者の皆様が本当に力強く、この公演を一緒にやろうと言ってくださった。その言葉に後押しされました。また、SNS上などお客様から(公演を)やってほしいというご意見をたくさんいただいて、本当に嬉しくて、励みになって、頑張ろうという気持ちになりました。ですので、やるからには熱く熱く、みんなで一丸となって取り組みたいと思っております」。
 
公演期間中、別の舞台にも出演していることから、千次郎は夜の部のみで、尼・妙林を勤める。「この妙林という役は夜の部しか出てきませんので、昼の部と夜の部で演出を変えさせていただきます。ご期待くださいませ」。
 
煮売屋の武爺を勤める片岡當吉郎は、第二回の上演は客席で観ていたという。「とても面白いお芝居だなと思って、ぜひ「晴の会」に参加させていただきたいと。そして第四回から参加させていただくことになりました。今回の『伊勢参宮神乃賑』はバージョンアップして、前回にはなかった武爺という役で参加させていただきます。元々がすごく面白い芝居なので、さらに面白く、みんなで一生懸命、頑張っていきたいと思います」。
 
根太女房 お仲役の片岡りき彌は第二回の本作品から「晴の会」に参加した。「さきほど千壽さんも言っていましたが、うちの旦那の秀太郎の思い入れの強い作品でございまして、私も本当に面白いお芝居だと思っております。今回、新たにメンバーも増えまして、もっとパワーアップした『伊勢参宮神乃賑』を皆様にお届けできたら。私のお仲という役は、台本を読ませていただきますと前回とちょっと違いまして、それも楽しみながら作っていきたいと思っております」。
 
若い者 喜六を勤める中村翫政も第二回公演は客席で観劇し、大いに笑ったと振り返る。「近鉄アート館というお客様に近い空間で、ついクスッと笑ってしまうようなところや、泣いてしまうところもあって、本当にいいお芝居だなあと思っていました。今回、再演することになり、めちゃくちゃ嬉しかったですし、引き続き参加させていただけることも、こんなに嬉しいことはないと思っております。喜六役は、前回は千次郎さんがお勤めになって、松十郎さん演じる清八と歳も近いとあってお友達という感じでしたが、今回は(清八は)だいぶんお兄さんなので、お兄ちゃんと慕いつつ、楽しく旅ができたらいいなと思います」とコンビネーションに期待した。
 
いがみの根太を演じる片岡佑次郎は「このお役は、前回同様、(作者の)城井十風さんに僕に合った形で考えていただいたとお聞きしています。細かいことはこれからいろいろ詰めていきたいと思います」と気合を入れた。
 
巫女を勤める片岡當史弥は、「今回は昼の部で巫女をやらせていだく予定です。皆さんと力を合わせて頑張りたいと思います。この作品は、何回も歌舞伎を見てくださっているような方は“この場面は、この芝居から取ってきたものだな”とかいろいろ想像していただいて、すごく楽しめる作品になっていますし、もちろん歌舞伎の初心者の方も楽しめます。」といざなった。
 
前回上演時は9歳で、秀太郎の鞄持ちとして客席で見ていたという片岡千太郎。「晴の会」へは、2020年上演の『宿屋仇』で出演が叶い、「とても嬉しかった」と話す。「今回は巫女の役で出させていただくことが決まって、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。上品な巫女になれるよう精一杯頑張ります」と続けた。
 
最後は片岡當十郎、玉造稲荷の宮司を勤める。「私も若手の皆さんに負けないように精一杯宮司の役で頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」と意気込みを語った。
 
松十郎、千壽、千次郎の3人で始まった「晴の会」。第二回公演では5人に増え、今回は同じ演目でも出演者は10人と倍に増えた。「人が増えた分、交通整理も難しいかなとか思いつつ、それも楽しみながらみんなで作っていく。秀太郎旦那は“みんなが仲良く”とおっしゃっていました。このお芝居でも、和とか絆をテーマにしたいと思っているので、僕らのチームワークもお客様に伝わればいいなと思っています」と千次郎。
 
続けて、「『肥後駒下駄』(2019年上演)のような復活狂言や古典の演目も、近鉄アート館に合わせた演出で挑戦していきたい。今後も「晴の会」ならではのことをやっていけたらと思います」と将来の展望も語った。
 
取材・文/岩本
 



(2022年8月 3日更新)


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第7回 あべの歌舞伎「晴の会」
「片岡秀太郎 監修 上方落語「東の旅」より『伊勢参宮神乃賑』
旅立ち より 七度狐」

Pick Up!!

当日引換券発売中 Pコード:514-469
▼8月4日(木)~7日(日)13:00/18:00
近鉄アート館
全席指定-7000円 
全席指定(高校生以下)-1000円(当日要学生証)
[監修]片岡秀太郎
[出演]片岡松十郎/片岡千壽/片岡千次郎/片岡當吉郎/片岡りき彌/中村翫政/片岡佑次郎/片岡當史弥/片岡千太郎/片岡當十郎
※3歳以下の入場不可。4歳以上チケットが必要。

[問]近鉄アート館■06-6622-8802

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