石塚朱莉主宰の劇団アカズノマ、最新公演がまもなく開幕!
7月15日(金)より大阪・ZAZA HOUSEで新作舞台『Enigma 不可逆な友情』を上演する石塚朱莉主宰の劇団アカズノマ。本作品は劇団アカズノマ完全オリジナル作品で、「謎解きエンターテインメトミュージカル」。今回、大阪市内の稽古場を訪れ、石塚への作品インタビューを実施。また、稽古場の模様もレポートする。
――「謎解きエンターテイメント」は石塚さんの発案だそうですね。
はい。演劇って謎解きみたいな感じなんですよね。なので、謎解きと絡めたら面白いし、絶対合うんじゃないかなと思って。いつも演劇を観るときは頭の中で整理しながら観ているんですが、それを「謎解き」と表現したらライトな、まだ演劇を知らないお客さんも楽しんでもらえる、演劇を観るきっかけのひとつになるんじゃないかと思いました。
――劇団アカズノマでは初めてのオリジナル脚本ですが、手応えはどうですか。
今まではお手本を前にして自分たちはどういうふうにやっていくのかという感じだったのですが、今回は何もお手本がないので、最初から土台を作って、そこから肉付けをしていかなくちゃいけないので、苦戦しています。
――たとえば、どういうところが苦戦していますか。
キャストの方とセリフの掛け合いをするときに、まだかみ合っていないなとか、伝わっていないんだなとか。試行錯誤しています。でも会話のキャッチボールがうまくいったとき、演劇を作っていると実感できて、それが楽しいです。台本上では、会話が成立しているように見えるけど、「その熱量だとまだこのセリフは言えないよね」とか。でも稽古を重ねるうちに積み上がっていって、ちゃんと会話ができるので、どんどんブラッシュアップされているのを感じます。
――役者さんもバラエティ豊かな顔ぶれですね。
出てくださるキャストの方は魅力的な方ばかりなので、皆さんのパワーとか個性とかもすごい出してもらっています。いい人たちが集まったなと思います。
――キャスティングはどこまで関与したんですか?
今回、オーディションをさせていただきました。私がオーディションで一目惚れしたのは大山蒼生ちゃんという子なんですけど、高校1年生と若いのに、空気を瞬間的に変えるような、ミステリアスで大人っぽい雰囲気を持っていて、すごく面白いなあと。大山さんとは絶対、一緒にやりたいですと言って、やらせてもらえることになりました。大山さんのパワーを借りたいって思ったので。
――オーディションでは、どういうことを一番気にしましたか?
雰囲気とか、直感を信じました。エネルギーとか熱とかも大事だけど、直感で「この子は面白くしてくれる」という感じで見ていました。
――NMB48の現役メンバーや元メンバーも出演されますね。
せっかく大阪でやるんだし、お世話になったNMB48から出てもらいたいなと思ったとき、現役の佐月愛果ちゃんは、お芝居もやってるし、在籍中は私のことを慕ってくれていたので、「一緒にやりたいんだけど、出てくれない?」って言ったら、「はい!」って。佐月さんは、見た目は今どきの女の子ですが、演劇を10年以上やっているので、自分はこうなんだという女優さんとしての個性もちゃんと持っています。稽古場でも、いろんなことを試してくれて、思っていることもちゃんと声に出してくれるので、周りのキャストさんも刺激になっているんじゃないかなと思います。めちゃくちゃ頼もしいです。
――元NMB48の河野奈々帆さんはいかがでしょうか。
河野奈々帆も私の後輩なんですけど、歌が好きで、ダンスもできる子なので、今回、ミュージカルというのもあって、歌と踊りができるんだったらいいんじゃないかと思って。何か一緒にやりたいなとずっと思っていたので、「こういうのがあるんだけど、どう?」って聞いたら、一緒に出てくれることになりました。今もいろんな話を聞いてもらっていて、私の心の拠りどころのような存在です。今回は振付も担当してくれました。
――女性だけの座組ですね。
強いぞというところを見せていきたいなって(笑)。稽古場でもみんな仲良くやっていますが、仲がいいからこそ舞台上でバチバチにできるんじゃないかなって思います。かわいい子ばっかりですが、そんなこと言っていられないような。女性だけのエネルギーとかパワーをお客さんにぶつけられたらと思います。
――上演時間もこだわったそうですね。
今回は90分もいかないぐらいの作品になると思います。約1時間半にギュッと詰め込みました。観やすいのではないかなと思います。集中力も途切れないと思いますし、パッと見て、パッと帰ってもらえたら(笑)。
――NMB48をご卒業後、俳優として、今はどんな日々をお過ごしですか?
今はたくさんの演劇の先輩方に囲まれながら何とかやってます。東京に拠点を移して10ヵ月ぐらいになるのですが、その間に3作品に出させてもらいました。そこでもたくさんの先輩に教えてもらって、いろんな出会いがあって、いろんな役者さんのお芝居を近くで見られるというのはすごく面白いし、ありがたい、恵まれてるなって思います。
――今回は現時点では、大阪公演のみで、関西のファンは楽しみにされているんじゃないですか?
そうですね。「やっときたか!」とか、「絶対行くよ!」とかSNSでも言ってくださって、すごい熱さを感じました。やってよかったなって思います。私は元々千葉県出身で、NMB48で活動するために大阪に来て、最近、また関東に戻っちゃったっていうのがあるから。育ててもらった地というか、14歳から10年間、大阪で活動してきたので、青春時代を大阪で過ごしました。しかも大阪のミナミのど真ん中(笑)。元ラストアイドルの岡村茉奈ちゃんにも出てもらうんですけど、それこそ彼女とは大阪の高校で出会って、同じクラスで隣の席になって。彼女もダンスとか歌をやって、そのあとラストアイドルになって、最近、卒業されたんですけど、ずっと「一緒に何かやりたいね」と言っていたので、今回、(出演することで)夢を叶えてくれました。
――10年間、大阪で培ってきた人間関係とか経験が全部、詰まっているという感じですね。
そうですね。私を育ててくれた大阪が凝縮されています。石塚朱莉の第1ステージの集大成みたいな感じかもしれないです。会場のZAZA HOUSEは大好きな劇場ですし、お客様には近い距離で観てもらえて嬉しいです。1時間半、ガッと集中してもらえたらと思います。
取材・文/岩本
撮影/福家信哉
【稽古場レポート】
6月某日・大阪市内で行われた稽古の冒頭をレポート。集合時間になると、一人、また一人と稽古場に現れ、「おはようございます! よろしくお願いします!」と大きな声であいさつをする。この日、稽古に出たのは石塚朱莉、岡村茉奈、村崎真彩、佐月愛果(NMB48)、織田ひまり、大山蒼生、河野奈々帆、月丘七央の8人。ストレッチや、台本の確認など、思い思いの時間を過ごしていくうち、自然と1カ所にキャストが集まってくる。すると台本を片手に車座になり、読み合わせを始めた。表情や声色で置かれた状況を表現する。時々漂う緊迫感に、どんな物語なのかと期待が募る。
その後、演出指導者の提案でゲームが始まった。最初は二人一組となり、「これは何?」と指をさされたものが何かを答えるというメソッドを。ここでは瞬発力が試される。次も同様に「これは何?」と問われるのだが、全く異なるものを答えるというルールに変わった。たとえば「これは何?」と床をさされても、「コップ」などといった具合に。これは瞬発力とアドリブ力が試された。
ワイワイと賑やかにゲームを楽しむキャスト達。2つ目は、二人一組から順に人を増やし、最後は全員でお題のものをポーズで表すというゲームに取り組んだ。これはチームワークを高めるメソッドで、相手の動きを瞬時に察知することは、本番でのトラブル対応力にもつながるという。普段はそれぞれのフィールドで活躍する俳優が出演するプロデュース公演では特に、短期間でチーム力を結束するために必要なものだという。
稽古場はあっという間に温まり、笑い声も絶えない。いざ作品に向かうとギュッと引き締まる表情とは裏腹に、キャスト達は笑顔で和気あいあい。そんな雰囲気の中で『Enigma 不可逆な友情』は作られていた。
(2022年7月14日更新)
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