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春風亭一之輔×藤巻亮太、落語と音楽の異色のコラボ
『芝浜と粉雪』が大阪で再演

12月10日に大阪・サンケイホールブリーゼで『春風亭一之輔・藤巻亮太 二人会 ~芝浜と粉雪~』が開催された。

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昨秋、東京・昭和女子大学 人見記念講堂で行われ好評を博した落語×音楽の異色のイベントが、約1年ぶりに大阪で再演。手始めに一之輔と藤巻が前回や出会いのきっかけとなったラジオ番組について振り返り、一之輔が「まずは藤巻さんが35曲ぐらい歌います(笑)」と場を和ませライブがスタート。

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藤巻の優しいギターの音色としなやかな歌声が響きわたる「ビールとプリン」から、思わず聴き入る観客。続く「Wonderful & Beautiful」でも楽曲のシリアスな雰囲気にグッと引き込まれ、その後はレミオロメンの休止を経てソロ活動を開始した際に書いた「オオカミ青年」と、ギターと歌声のみで見る者を魅了していく。

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MCでは「僕は言ってもギターがあるんです。落語の身一つで世界を作っていくすごさに、ソロになってから余計に胸を打たれるものがあります」と藤巻。「雨上がり」では躍動感溢れるリズムに手拍子が沸き、最後は「多くの方が育ててくださってこの曲がある」と「3月9日」を。大きな感動と共に一之輔へとバトンを渡した。

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高座に上がるなり「空間をわしづかみにしていくのが袖にいても分かるんです。音楽の力はエラいもんですね」と感嘆した一之輔は、まくらから追い切れないほど矢継ぎ早に笑わせ、十八番の「粗忽の釘」へ。そそっかしい亭主が引っ越し先の長屋の薄壁に箒を掛けるために打った釘が貫通し、隣家の様子を伺うことから始まる騒動を、先ほど藤巻が歌ったばかりの曲名をさらりと忍ばせつつ、さすがの話術で聞かせていく。

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仲入り休憩を挟んで、ついに夫婦の愛情を描いた屈指の人情噺「芝浜」へ。酒飲みで自堕落な魚屋の亭主と、働き者で機転の利く女房。亭主が大金の入った財布を浜で拾ったことで巻き起こる人間模様を、夢と現実を行き来するように軽妙かつ迫真の語り口で魅せていく。拍手喝采の後には、藤巻が名曲「粉雪」を切々と歌い上げ、大みそかの夜に雪が降る「芝浜」に深みのあるエンドロールを演出してくれた。
 
アフタートークでは、「来年僕のやる「芝浜」も、藤巻さんが歌う「粉雪」も同じじゃないと思うんで、年一回どこかでやるとか」と一之輔。同じ演目でも日々見せ方が変わる落語の醍醐味と同時に恒例化を匂わせるような発言に、会場からは大きな拍手が。最後は一之輔の音頭による三本締めで、初の大阪での二人会が幕を閉じた。

取材・文:奥“ボウイ”昌史
撮影:田浦ボン



(2021年12月13日更新)


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Set List

『春風亭一之輔・藤巻亮太 二人会
 ~芝浜と粉雪~』
2021.12.10 Fri at サンケイホールブリーゼ

M1. ビールとプリン
M2. Wonderful & Beautiful
M3. オオカミ青年
M4. 雨上がり
M5. 3月9日
落語「粗忽の釘」
落語「芝浜」
M6. 粉雪