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桂雀々が新歌舞伎座で独演会を開催、枝雀ゆずりの二席を披露

「飛び出す落語家」との異名を持つ桂雀々。1977年6月に二代目桂枝雀に入門した雀々は、師匠・桂枝雀ゆずりのオーバーアクションの落語で、常に会場を爆笑の渦に巻き込んでいる。近年は落語のみならず、ドラマや映画でも大活躍。昨年10月の東京国際映画祭でプレミアム上映されたリム・カーワイ監督作品『Come and Go』にも出演している。 
 
そして、3月27日(土)に新歌舞伎座で『負けへんで!熱血の還暦公演2 桂雀々独演会』を開催。昼夜の2回公演で、昼の部では『不動坊』ほかを口演、ゲストに南佳孝を迎える。夜の部では、『仔猫』を披露し、ゲストは南佳孝に加えて大平サブローが登場する。 
 
メイン演目の『不動坊』は、長屋住まいの男やもめの利吉のもとに巡業先で亡くなった講釈師の妻・お滝との縁談話が舞い込んだことから始まる。同じ長屋に住む男やもめ3人がやっかみ、あの手この手で破談に持ち込もうとするドタバタ喜劇。一方『仔猫』は、器量は悪いがよく働く、気遣いもできる下女のおなべが主人公。夜な夜な奉公先を抜け出すことを不思議に思った店の者が後を追ってみると…。奇妙な顛末に観客も震えあがる怪談噺。昼夜とも趣向の異なるネタで楽しませる。
 
2020年はコロナ禍でいくつもの公演が中心になり、雀々もそのあおりを受けた。配信ライブにも挑戦したが、改めて「落語は生じゃないとだめだと思った」と話す。それだけに3月の新歌舞伎座での独演会への意気込みも熱い。「舞台装置をどう使おうかいろいろ考えています。『不動坊』では雪が降る場面、長屋の屋根の上にいる男やもめの3人をどう面白おかしく演出するか、これが結構難しい。夜公演の『仔猫』は怪談風に。照明の使い方によって怪しくできるんじゃないかと思案しています。新歌舞伎座だからこそ出来る演出は、演者にとっても嬉しいし、なによりお客さんが喜んでくれればと意欲が搔き立てられます。 
 
いずれも師匠である桂枝雀の十八番のネタから。稽古をつけてもらった日のことを振りかえる。「この二席は、僕が20代後半の頃に師匠に稽古をつけてもらいました。30になるかならんかの時期にもう一度、稽古に行ってみようと十席、膝を付き合わせて稽古してもらいました。十席のなかに『不動坊』と『仔猫』が入ってるんですよ。当時、年齢的にも難しかった。『仔猫』には落ち着いた風情の語り口が必要ですから、しゃべり方も難しくて、時間がかかりました。若い時は、声の調子も高いし、軽いし。説得力が出せなくて困りました。
 
2011年に拠点を東京に移した雀々、ゲストの南佳孝とは東京で得た縁だという。「南さんを代表する大ヒット曲『モンロー・ウォーク』と『スローなブギにしてくれ』がもしかしたら本番で聴けるかもしれませんよ」と雀々。ミュージシャンの中には落語好きな方が結構いてはって、南さんも江戸落語や上方落語、うちの師匠の落語もちゃんと聞いてはったみたいです。独演会では、僕とのトークや、歌も存分に楽しんで頂ければと思います。夜公演は加えて大平サブローさんと久々の漫才をやります。番組がきっかけで14、5年前から二人で漫才をやり始めて、『二人の世界』というライブを続けてました。赤いジャケットと青いジャケットを着て、昭和の漫才師みたいな格好がまた滑稽なんですよ。

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サブローとは長いつきあいだ。「素人番組に出ている頃なので、かれこれ46年ほど前ですかね。彼が19歳で、僕が15歳の時に、『ぎんざ NOW!』(TBS/1972年~1979年)という番組の「素人コメディアン道場」というコーナーで会ったのが最初。僕が2週勝ち抜いて、3週目にサブローさんのコンビにまたまた勝って、ついには5週勝ち抜いてチャンピオンになり、番組のレギュラーになった。その後、僕は大阪で落語家になり、彼も漫才でデビュー。ある時、テレビ局でバッタリ再会し、「ああ、あの時の坊主頭の君かいな」と喜び合い、そこから仲良くなったんですよ」。
 
2020年8月で還暦を迎えた。「まだ実感がないですね。去年は還暦になるわ、孫ができるわ、えらいことになってもうた。気がついたら糖尿病で病院にいてるわで、激動の2020年でしたわ、ほんまに。稽古もしていたんですけど、公園のベンチで一人でやっていたから、内弟子の頃に戻ったような感じでした。僕自身は噺の世界に入っていって楽しいのですが、一人でしゃべっているから周りからは不気味にみえるでしょうね(笑)」。
 
2022年には噺家生活45周年が控えるなか、枝雀への思いもますます募る。「師匠が生きてはったら、去年とか「稽古お願いします」って言うたら、「おお、やろか! 稽古しよか!」と受けてくれてたと思いますわ。師匠は自粛期間でも絶対退屈しなかったでしょうね。よう稽古してましたもん。勉強が好きだったからね。英語も好きやし、スペイン語もしゃべってたし、落語はもちろん、浄瑠璃もやってたし、退屈を知らない。とにかく勉強が好きで本を片手に一日一冊、読んでましたからね。早いねん、読み方が。それで頭に入るんですって。その頭ほしいなって思っていましたよ。哲学の本もよう読んでた。いなくなってもう22年ですよ。早いですよね。今は、噺家でも枝雀を生で見たことがない人が多くなった。立川の家元のお弟子さんがみんなして立川談志を言い伝えていくように、うちの師匠、枝雀さんのことも長く語り継ぎ、その存在を残していかなあかんと思っています。なにせ師匠には、泣ける、笑えるエピソードは満載ですし」。
 
公演は、3月27日(土)大阪・新歌舞伎座にて。チケット発売中。

取材・文:岩本
撮影(舞台):岸 隆子(Studio Elenish)



(2021年3月 8日更新)


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『負けへんで!熱血の還暦公演2
 桂雀々独演会』

チケット発売中 Pコード:504-521

▼3月27日(土) 12:00/16:30

新歌舞伎座

S席(1・2階)-5000円
A席(3階)-3000円
特別席(2階正面1列目)-7000円

[出演]桂雀々
[ゲスト]南佳孝

※未就学児童は入場不可。席種によっては取り扱いのない場合もございます。1階1列~19列7番~10番は、花道を使用しない時に設置するお席です。椅子の種類が異なります。
※ご来場前に検温など体調管理のご協力をお願いします。なお、発熱・咳などの症状がある場合は、体調を最優先していただき、ご来場を控えていただきますようお願いします。
※ご来場の際は必ずマスク着用をお願いします。
※その他必ず新歌舞伎座ホームページ(https://www.shinkabukiza.co.jp)をお読みください。
※販売期間中はインターネットと、店頭でのみ販売。電話予約はなし。

[問]新歌舞伎座■06-7730-2121
[問]新歌舞伎座テレホン予約センター
■06-7730-2222

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