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「楽しい大阪を描きたい」
後藤ひろひとが総合演出を手掛け、関西のクリエイターが集結!
大阪の川をテーマに描くオムニバス公演『リバー・ソングス』上演

大阪の川にまつわるストーリーをオムニバスで展開する舞台『リバー・ソングス~大阪を流れていた6枚の枯葉~』が、2月27日(土)・28日(日)、大阪・ABCホールで上演される。

後藤ひろひと作・演出の『ミステリー・クルーズ』、わかぎゑふ(玉造小劇店)作、チャーハン・ラモーン演出の『水底でゆらり』、村角太洋(THE ROB CARLTON)作、お~い!久馬(ザ・プラン9)演出の『大紛糾』、野村尚平(劇団コケコッコー)作・演出『あまのがわ』、早川丈二(MousePiece-ree)作、森崎正弘(MousePiece-ree)演出『カッパ de ルンバ(土佐堀川の憂鬱)』、小西透太(ゲキゲキ/劇団『劇団』)作、古川剛充(ゲキゲキ/劇団『劇団』)演出『ダックス アンド ドレイクス』の6本を、総合演出を担う後藤ひろひとが1本の作品にまとめ、お届けする。公演に向けて、後藤と古川に話を聞いた。

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――今回は「大阪府文化芸術創出事業」のひとつとして、‟大阪の川”をテーマに上演されます。
 
後藤:2018年にも私が総合演出をした『Small Town, Big City~大阪でひろった4つの小石~』という作品をやらせていただいたんですね。そのときは、大阪の「東西南北」をテーマに4人の作家で上演して、今回何かいいテーマがないかなと考えたときに、今こんなご時世だから、イメージ的にできるだけ広々としたものがいいかなと思って、川にしたんですね。そうしたら、村角太洋君も、わかぎゑふさんもかなりの閉鎖空間を書いてきました(笑)。でも、思いは伝わると思います。
 
――それぞれ、どの川をピックアップされているんですか?
 
古川:僕は「寝屋川」を舞台にしています。
 
後藤:私は今回、みんなの作品の間をつないでいくものとして、「東横堀川」という、上は道路で日の当たらない川にしました。ずっと日の当たらない川でいながら、海に入る前にものすごく光が当たる川になるのが面白いなぁと。で、わかぎさんが「安治川」、野村君が「天野川」、早川君が「土佐堀川」で、村角君が「淀川」です。村角君は鹿児島生まれの京都人なので、大阪の川になじみがないから、一番メジャーな淀川を。京都の川も、結局は淀川につながりますしね。
 
――「天野川」というのは初めて聞きました。
 
古川:四条畷にあって、枚方で淀川に合流されているみたいですね。
 
――それぞれの作品の印象はいかがですか? 
 
後藤:すごく面白いですよ。 いい具合にバラつきがあって。 

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――きっと、個性が全然違いますよね。古川さんは今回、話を受けられていかがですか?
 
古川:昨年の9月に僕たちの劇団が主催で「ターニングポイントフェス」というのをやらせていただいたんですね。そのときにわかぎゑふさんにも実行委員としてお力添えをいただいたことがきっかけで、今回、わかぎさんからお話を通していただいたんですね。で、ぜひやらせていただきたいと思ってやってるんですけど、参加されている方々を見ると錚々たる方々なので、とにかく緊張しています(笑)。
 
後藤:キャストが面白いよね。もちろん公演は万全な状態でやりますけども、1対1でも人と会うことが難しくなってる中で、あのキャストとあのスタッフがABCホールで集えるなら、それだけでワクワクしちゃうよね。
 
古川:本当に、こういう機会をいただいたこともすごく光栄でありがたいです。チラシで他の劇団さんの出演者を見て、すごくテンションが上がりました。
 
後藤:野村君がもっと芸人を集めるのかと思ったら、全然違うもんね。こんなつながりあるんだっていうのも意外だった。
 
古川:だから、参加する側も楽しみというか。どんな公演になるのかなということもワクワクしていますね。 
 
――古川さんが演出をされる『ダックス アンド ドレイクス』は、寝屋川が舞台ということですが、どんな作品ですか?
 
古川:最初に「大阪の川」というお題をいただいたんですけど、僕たちは兵庫県出身なので、大阪の川にどんな物語があるのかなとか、おとぎ話があるのかなとかを調べる作業から始めたんですね。でも、コロナ禍で、お客さんも劇場に足を運びにくい中、頑張ってきてくださる方も多数いらっしゃるだろうし、やっぱり‟楽しんでもらえる作品を作ろう”と思ったんです。だから、大阪の川というモチーフはあるけれど、楽しんでもらえるものというのを大前提に作りました。 で、‟川”と聞いたときに単純に思い浮かんだのが‟水切り”だったんです。それを英語にすると『ダックス アンド ドレイクス』という表現になる。その水切りから考えて、水切りに何かを託していく話にしました。誰かに何かを託していく、勝手に託されてしまうという人間模様を描けたらと思って作りました。
 
――後藤さんはゲキゲキさんの作品を読まれてどんな印象を受けましたか?
 
後藤:なかなか入り組んだ面白いコントを書くなぁと思いました。勘の鈍い人だったら、台本だけ読むとちょっと組み合わせが分かりにくいかもしれないから、ちゃんと演出して舞台で見せるべき面白い世界観ですよね。すごく面白いと思う。 
 
古川:ありがとうございます! (作家の)小西も喜ぶと思います(笑)。 総合演出に後藤さんがいてくださるので、大船に乗ったつもりで作れたというか。後藤さんがひとつの作品としてまとめてくださるので、僕らもどんな1本になるのか楽しみですし、後藤さんだから、割と自由にしてもなんとかしてくれるかなっていう、すごく心強い状況で書けたというのは、若手としてすごくうれしかったですね。

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――それぞれの作品は何分くらいで展開されていきますか?
 
後藤:15分でお願いしました。だから、テンポのいいものになると思います。漫才師の野村君が、笑いどころの少ないサスペンスなものを書いていて、意外に思ったし、わかぎさんはのほほんとした世界を作ってくれているので、すごくバランスがいいですね。村角君は、村角君らしく、一回も立ち上がる必要のない会議室で、御託を並べた不毛な会話を(笑)。 マウス(MousePiece-ree)は、がちがちのコメディ。土佐堀川をもっとメジャーな川にするべくカッパで盛り上げようとする人たちの話。今回出揃った中で、一番知性の低いのがマウスです(笑)。 
 
――後藤さんご自身の作品についてはいかがですか? 
 
後藤:朝起きたら、東横堀川を兵動大樹が漂流しているという話です。東横堀川は運河なので、水門の開け閉めで水かさが変わるから、人が下りられないような設計になっているんですよ。どこからも下りられないし、上れない川なんですね。だから、「どこから下りたんや、俺は!?」っていう。飲みつぶれてまったく記憶がなくて、で、気が付いたら福本愛菜ちゃんが一緒に乗っている。だからふたりで漂流するけど、どこなのかが分からない。
 
――それで、いろんな場所を漂流していくということですね。総合演出という役割については、どうお考えですか?
 
後藤:見る人ももちろんですけど、やる人たちが楽しめるようにするのが総合演出だと思っています。バラバラの話ではありますけど、最終的にひとつになれたらと思うので、みんなでワッと盛り上がって終われるようにしたいですね。エンディングには全部のキャストにいてほしいと思っていますから。あと、今回、私より先輩のわかぎさんから古川君みたいな若手まで、年齢層がすごく幅広い人たちが参加しているので、そこをひとつのものにするのも総合演出の楽しいところではありますね。 
 
――個性バラバラのものを1本にする作業は大変なようにも思いますが、そうではないんですね。
 
後藤:いやいや、楽しいだけですよ。人と会うのが大好きな人間なので、みんなが書いてくれたものを、私が一生懸命いいものにつないで。そうすることで、こんな時期なのにみんなで笑っていられるんだろうなと思ったら、幸せな作業ですよ。
 
――どういう作品に仕上げたいと思われていますか?
 
後藤:みんなの台本を読んですごくホッとしたのが、コロナのことなんて誰も扱っていないんですよ。演劇にしても映画にしても、エンターテインメントって、現実から離れるためにお客さんがお金払ってきてくださると思うんですよ。だからコロナの話を演劇で見せて、見終わって外に出たらやっぱりコロナの世の中って、意味がないと思うんですよね。いずれこの世の中は元に戻るので、そうしたら、舞台になった川を見に行きたいなと思ってもらえるようなものになればいいなと思うんです。ここであの話があったんだなって感じてもらえたらうれしいですね。大阪は必ず楽しい街に戻るので、それを忘れてもらわないように、楽しい大阪を描きたいです。 
 
古川:僕たちは元々エンターテインメントな作風で、笑いがある作品を作っているんですね。で、今の世の中の状況でコロナのことを考えずに作るということは無理なのかもしれないですけど、やっぱり元々、目の前の人に笑ってほしかったり、楽しんでほしかったり、後藤さんが仰ったように非日常を体験してもらうというか、現実を忘れてほしいという気持ちでずっと作品を作り続けてきたので、やることはいつもと変わらないかなと思います。今回の企画も、いろんな方々と関わって作る、オムニバスのような1本の作品のような、すごく面白い試みだなと思っていて。自分たちもどんな1本になるのか、観客目線でも楽しみですし、お客さんも一緒に楽しんでいけるようなものになればいいなと思っています。 
 
後藤:前回『Small Town, Big City~大阪でひろった4つの小石~』をやったときに、チケットの買い方が分からないという人がいて。4人の作家さんの作品をやるから、4枚買うんですか?って。昔はこうやって、いろんな作家が集まってオムニバスで1本の作品を作る企画って盛んに行われていたのに、時代が変わってそういう企画がなくなって、お客さんもどう見るものなのか戸惑う人もいる。だから、これをきっかけに、オムニバス作品という面白さを楽しんでほしいなと思いますね。チケットは1枚買っていただいたらいいのでね。



(2021年2月19日更新)


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大阪府文化芸術創出事業
『リバー・ソングス
 ~大阪を流れていた6枚の枯葉』

チケット発売中 Pコード191-792
▼2月27日(土)・28日(日) 12:00/16:00
ABCホール
前売指定-3000円
[出演]兵動大樹/福本愛菜/木内義一/堀川絵美/ザ・プラン9 コヴァンサン/ザ・プラン9 きょうくん/満腹満/武田訓佳/鮫島幸恵/吉岡友見/佐々木ヤス子/田川徳子/早川丈二/森崎正弘/上田泰三/古川剛充/中路輝/町田名海子/松田悠
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