「最も自分たちらしい作品をお届けします」
THE ROB CARLTONが京都劇場で“10周年錫公演”
2014年初演作をグレードアップして上演!
京都を拠点に、「限りなくコメディに近いお芝居」を探求するTHE ROB CARLTONが、12月18日(金)より、京都劇場プロデュースによる「10周年錫公演」を開催。2014年初演の『ザ・シガールーム』を「『THE CIGAR ROOM』~煙と酔と旋律と~」として、リメイク上演する。紳士的な振舞いをする人たちが、不毛な会話を繰り広げる会話劇を得意とする彼ら。今作はその真骨頂ともいえる作品だ。ホテル王、鉱山王、鉄道王、百貨店王ら大富豪たちがある邸宅のシガールームで語り合う会話劇。劇団初となる大劇場での公演に向けて、主宰で脚本・演出を手掛ける村角太洋に話を聞いた。
――京都劇場プロデュース公演ということですが、この企画が立ち上がったきっかけを教えていただけますでしょうか。
今年の10月頭くらいに京都劇場さんからお声がけをいただいたんです。コロナ禍で、客席が50%しか入れられなかったり、京都劇場さんで予定されていた公演が延期や中止になったりで、劇場が空いていると。それでこんなときだからこそ、京都の劇団と何かできないかということで、お話をいただきました。
――劇団としても10周年を迎えて、何か大きなことをやりたいと思われていたんですか?
劇団“創立の日”を12月1日に設定しているんですけど、旗揚げ10周年自体は来年2月になるんですね。本来なら今年の4月に本公演を予定していたので、年内は難しいとしても、旗揚げ10周年となる来年の2月、3月くらいに何かできたらなというのは今年の頭になんとなく考えていたんです。でもコロナで公演が次々と中止、延期になって、僕たちもしっかり考える間もなく動けない状態になり、どうしたもんかな~と。で、何かできないかなと、10月からPIA LIVE STREAMで過去公演を順次5本配信する企画を立ち上げたんですけど、その話が進んでいる中で京都劇場さんからお話をいただきまして。不安もありましたけど、うれしいお声がけをいただいて、ぜひさせてくださいと進めていたら、京都劇場さんから「10周年の冠つけませんか?」とご提案いただいたんです。
――タイミングが合ったということですね。
そうですね。たまたまですけど、時期もちょうど12月ですし。客席が50%の制限がかかるとか、そういうことがないと実現しなかったことで、いろんな条件が合ったというか、この時世だからいただけたチャンスだと思っています。
――今回の公演で2014年初演の『ザ・シガールーム』を再演しようと思われたのは?
お声がけいただいてからあまり日がないので、新作を作る時間がなかったんですね。なので、過去作品のリメイクでやろうということになりまして、できるだけ少ない人数でできる作品を探して、何作か京都劇場のプロデューサーにプレゼンをしたんです。で、ちょうどこの作品が、ホテル王、鉄道王、百貨店王、鉱山王が登場する話なので、京都駅の京都劇場でやるにはぴったりじゃないかと盛り上がりまして、決まりました(笑)。
――初演からどれくらいリメイクされたんですか?
基本的なストーリーは変わりませんが、一つ一つのセリフを見直して、語尾とか順番を変えたり、セリフを追加したり、細かいレベルでの修正はかなりしましたね。昔は勢いだけで書いていた部分があったというか、今読み直すと、雑だったなと(笑)。6年経てば書き方も変わっていますし、単純にセリフがちょっと足りないなと思ったんですね。初演のときはあまり気になっていなかったんでしょうけど、明らかに経験不足でしたね。なんでこの人急にこのセリフを言うんだろうとか、些細なことが気になって。あとは、勢いで押し切っていたような、くだらない笑いがところどころに散らばっていたので、そういうものをちゃんと整理しました。ちょっとやりすぎだなというのをできるだけフラットにして、かつ、全体的に底上げするという調整をしましたね。役者自身のレベルも上がっていますし、客演の川下大洋さん、御厨亮さんにもお力添えをいただいて、初演とは別物になっていると思います。
――元々、『ザ・シガールーム』の設定はどういうところからインスピレーションを受けたんですか?
映画の『タイタニック』からです(笑)。公演のチラシに『Join me in a brandy, everyone?』という、「みなさん、一緒にブランデーをいかがですか?」という意味のコピーを入れているんですね。これは『タイタニック』で出てくる『Join me in a brandy, gentlemen?』というセリフからきてるんです。3等船室のディカプリオ演じるジャックが、ローズという上の身分の女性に恋をして、ローズと一緒に富裕層が食事する場所に行くというシーンがあるんですね。で、そのシーンの最後に一人の紳士が「そろそろブランデーでもどうですか?紳士のみなさん」と言って、シガールームで男性たちが葉巻を吸いながらブランデーを飲んで、ビジネスの話とかをしてるんです。それを観て、なんだ、このシーンはと(笑)。でも男性だけでシガーとブランデーで語り合うっていうのがすごくいいなと。マダムはマダムでお茶をしていて、それぞれにしかできない話をするっていうのが面白いなと思ったんですね。たった10秒くらいの場面なんですけど、これをやりたい!と(笑)。中学の頃に観て、「紳士の世界にはそんな文化があるんだ!」と、すごく印象に残っていて。中学生でしたけど、ブランデーと葉巻はできるようにならないといけないなぁと思いました(笑)。話の中身自体はそれとは全然関係なくて、じゃあその設定で4人に何をさせようかというところから考えました。
――繰り広げられる会話は、不毛な会話で。
たわいもないものです。私たちの作品は特にそういうことが多いんですが、最ものらりくらりとした会話劇かもしれないですね。もちろん、後半はちょっと動きがありますけど、大富豪たちが世界や政治を動かすとかそういうことではなく、それぞれのパーソナルな世界観を描いています。
――紳士とか大富豪とかに憧れがあるんですね。
先ほどお話した『タイタニック』を観て、めちゃくちゃ憧れましたね。ジャックとローズの恋愛よりも、紳士たちの世界がカッコいいな~と思いました。それから親に無理を言って、ロングのチェスターコートとか、懐中時計を買ってもらったり、サスペンダーをつけたりしていました(笑)。その世界観が好きで、お芝居を始める前はホテルで働いていましたし、ずっとその世界を追いかけている感じはありますね。
――大きな劇場に変わるということで、演出や舞台美術はどのように考えられていますか?
前回は京都の元立誠小学校の音楽室で、あまり高さがなかったんですけど、今回は空間が2倍、3倍くらいの大きさで、高さも使える。デザインの力で空間を埋められるように、豪華で、ゆったりとした空気でできるようにしていただいています。あと前回は、一番後ろの席でも細かい表情が見えるくらいの距離感でしたが、今回はオペラグラスがいるくらい。でも実は初演の作り方が割と大劇場向けだったんじゃないかというのを稽古して思ったんですね。細かいところを見てもらうよりも、4人の大富豪を引きで見てもらうような作品だったんだなと。もしかしたら、初演でやりたかったけどできなかったことがちゃんと表現できる空間なのかなと思って、そういう意味でも、京都劇場でやるにはぴったりの作品かもしれないなと思います。
――グレードアップした『ザ・シガールーム』を楽しんでいただける。
初演のときは演出力も今よりなかったので、今だったらもっとちゃんとできるという自信はあります。当時は私の力不足でうまくコンダクトできてなかったけど、より当時やりたかった形にもっていける。そういう意味でも、ぜひ観てほしいです。ちゃんと面白い、少なくとも稽古ではケラケラ笑っているので(笑)。大富豪が燕尾服をきて、のらりくらり不毛な会話を続けているというのは実に僕たちの原点で、一番、“THE ザ・ロブカールトン”と言える演目だと思います。
――10周年というひとつの節目を迎えますが、これから劇団としてどう進んでいきたいと思われますか?
コロナ禍で、今後の計画が一度リセットというか、考え直さないといけなくなりましたが、その一方で、今回の公演ができるというのがひとつリズムとして大きくて。今回やらせていただく中で思ったのは、我々のやりたいことは、劇場が大きければ大きいほど表現ができるんだろうなと思いますので、会場とか演目とか、できるだけたくさんのお客様に観ていただけるようなものを作っていきたい。超夢物語を言えば、京都公演は必ず京都劇場でできるようになりたいなと(笑)。現状維持ではなくて、もうひと段階上には進みたいなと思います。あと、今までは自分たちの中だけで鍛え合っていましたが、役者も私も、それぞれがもっと個人で活動することで成長して、ロブカールトンを大きくする速度を上げていきたいですね。
――公演に向けて、今の心境はいかがですか?
作品的にも、暖炉があったり、冬のこの時期に観るのにすごくぴったりの作品だと思っていて。我々は感染対策をしっかりとしてやりますが、無理はせず、時世をみて冷静に判断しつつ…。でもやるからには、全力で、来てくださるお客様に観れて良かったねと思っていただけるようにやりますので。外に出るのは怖いと思うのも仕方がないですが、そもそも劇場に行くのはワクワクする瞬間であってほしいと思いますし、やっぱりお芝居は生で観るのがいいなと思っていただけるとうれしいですね。不毛な会話もしていますが、できるだけお客様とコミュニケーションがとれるような、肩の力を抜いて笑っていただけるお芝居をしたいと思います。
取材・文:黒石悦子
(2020年12月14日更新)
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