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劇場には刺激やパワーのおまけが付いてくる!
『関西演劇祭2020』に羽野晶紀がエール

関西を中心とした10の小劇団が集結する『関西演劇祭2020~お前ら、芝居たろか!』が開かれる。第2回の開催となる今回、実行委員長に選ばれたのは、関西に演劇ブームが起きた1980~90年代、劇団☆新感線の看板女優として、その真っただ中にいた羽野晶紀だ。彼女に話を聞いた。

――まず、各劇団に期待されていることはありますか?
 
「1公演が45分と短いですよね。私、M-1見ると、めちゃくちゃ闘志がわくんですよ。その時間中、息をするのを忘れてたかも?というくらい引き込まれて、めっちゃ元気になる。演劇も一緒で、余計なことを考えずに集中して観れるというのは、その世界にどっぷり浸れている証拠なので、集中して楽しめる作品を期待しています」
 
――演劇祭の特徴として、審査員や観客が演者に質問したり、感想を話したりする「ティーチイン」の時間が設けられます。
 
「どのくらい突っ込んで聞いていいのかなぁ? あまり手厳しいこと言って劇団のファンの方々に嫌われたくないですよね(笑)。未来のある子たちだから、やさしく接しちゃいそう」
 
――せっかくの機会だから演者や観客は批判も聞きたいのでは。
 
「それなら、気になったことを言ってから良いことを言う作戦でいこうかな(笑)」
 
――先日行われた記者会見で、羽野さんは、劇団☆新感線時代について「あんなにしんどかったから今の自分がある」とおっしゃっていましたが、何が一番大変でしたか。
 
「扇町ミュージアムスクエアに私たちの稽古場があって、稽古が始まる前にいつもその周辺を2キロ走るんです。その後、腹筋100回とか、発声練習をやるんです。私は2キロのランニングが苦痛だったんですけど、やるからには楽しく走ろうと、めっちゃ楽しそうに笑いながら走っていたら、『お前、サボってたやろ、気合が入ってない!』と先輩に言われて。真面目な顔して練習するのが苦手なの。あ、それはいまだに同じです(笑)」
 
――体育会系の部活のようですね(笑)。
 
「夏の暑い日も冬の寒い日も、屋上に張ったビニールテントの中で稽古をしていたので、体力的にきつかったですね。あと、お金がなかった、先輩たちも。たいてい、賞味期限が切れる前の割引シールが貼ってある1リットルの100円ジュースと、あと、先輩がパンの耳をただでもらってきたら、古田(新太)さんがそのパンを『先輩から盗んでこい、隠せ』とか言って(笑)。生活や体力的には苦しい時でしたが、楽しかったですね」
 
――関西の小劇場ブームのど真ん中にいたわけです。
 
「まったく実感していなかったですね。バンドをやるつもりだったのに、学食で先輩に誘われて、一回だけ劇団をのぞきに行ったら、知らないうちにダンサーとしてお芝居に出ることになっていて、当日も自分がどこに出るか知らなかった(笑)。そしたら次の公演のチラシにも私の名前が載っていて、本当にだまされた感じです(笑)。そこで、たまたま観に来ていたテレビ局の人に声をかけられて。当時、劇団に足を突っ込まなかったら、今のお仕事にもつながっていなかったですね」
 
――すごくいい、成り行きだったのですね。
 
「本当に成り行き。だからブームなんて分からなかった。18歳で初めて演劇に触れて“こんな世界があったんだ!”とすごく衝撃でした。新感線は個性的な人たちがウヨウヨいて、それを観察するのが楽しくて仕方がなかった。そしたら、隣の稽古場にも、各大学の劇団にもいっぱい個性的な人がいるし、東京にはもっとたくさんいて(笑)。そこからいろんな出会いが始まりました。小劇場の空間にいるのは、アトラクションの夢の中にいる感じでしたね」
 
――そこから、芝居にのめりこむように?
 
「本格的にお芝居を始めると、いのうえひでのりさんの演出通りにできないことが悔しくて、稽古中に号泣しちゃうんですよ。頭を冷やしてから戻っておいでと言われ、言えないセリフを100回、駐車場の片隅で練習して戻っていく。完璧にできたら辞めようというのが目標になりましたが、ある時、完璧なんてないんだってことに気付きました。若い時は勢いや感覚でしかやってなかったけど、今は、よく考えて演じることも楽しくなってきました」
 
――今回出演する劇団の方々の中には、東京に行きたいと思っている人もいれば、関西に残ってやり続けるのか、迷っている人もいるかと思います。
 
「何がベストかというよりは、いろんな形があると思います。劇団☆新感線は、それぞれがいろんな所でいろんな形でお芝居を続けていて、集まれる時に、集まる。そとばこまちみたいに、何代目と続いて形が変わっていく劇団もある。先日、南河内万歳一座の劇団員の公演を配信で見たんですけど、懐かしくてめちゃくちゃ楽しかった。やっぱり、関西って独特で、一般の方でも面白いじゃないですか(笑)。基本、自虐したり、笑われることに喜びを感じますよね」
 
――そうですね。関東の人はあまり自分を落とさない感じです(笑)。
 
「そうそう。私なんて、東京にいてもずっと自虐してるから置いていかれるときがめっちゃあるんですよ(笑)。きっと関西にいる良さというのもあると思うし、その味や絶妙なニュアンスはほかには代えられない。だから、あまり決めすぎないほうがいいと思うんです」
 
――生き残っていくためには何が大事ですか。やはり情熱でしょうか。
 
「もうね、私の場合そこは変わってきてる。独身だったら、もっと冒険やチャレンジができただろうと思うんですね。でも、結婚して、子どもという絶対守らなければならないものがあるという強みや根性が出てきましたね」
 
――なるほど。
 
「続けていると絶対にいいことがあると思う。今、どのチャンネルをつけても関西の小劇団出身の人がテレビに出てるから、頑張ってたらいいことがあるはず!」
 
――今のお話は出演者の励みになると思います。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
 
「劇場はいろんなことを忘れて集中できるし、お芝居のストーリーを楽しむだけではなく、刺激やパワーといういろんなおまけが付いてくる。配信もありますけど、劇場に来られるなら、ぜひ、生で味わってほしいですね。私も今の若い劇団の方たちがどんなことを考えているのか、演劇祭を通して知りたいです」

取材・文:米満ゆう子



(2020年11月18日更新)


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羽野晶紀

『関西演劇祭 2020 
お前ら、芝居たろか!~』

チケット発売中 Pコード:503-172
●11月21日(土)~29日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
全席指定-3000円 全席指定
学生割引-2000円(小学生~専門・大学生対象/要学生証・身分証)
【出演】Artist Unit イカスケ/安住の地/キミノアオハル/くによし組/劇団アンサングヒーロー/劇団 右脳爆発/劇団The Timeless Letter×ラビット番長/劇団乱れ桜/ばぶれるりぐる/May
※必ずマスク着用と、入場時に手指の消毒のご協力をお願いします。検温によりご入場をお断りする場合がございます。未就学児童は入場不可。車椅子での来場はチケット購入前問合せ先まで要連絡。
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