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ABCホールのプロデュースでTHE ROB CARLTONが
「この秋一番のアメリカンホームコメディ風喜劇」を上演

ABCホールのプロデュース公演で、「限りなく喜劇に近い芝居」を探求するTHE ROB CARLTONが新作『ジェシカと素敵な大人たち』を上演。作・演出の村角太洋が、1980年代~1990年代にヒットした海外ドラマ『フルハウス』や『アルフ』、映画『ホーム・アローン』のような、アメリカのシットコムテイストで描く「アメリカンホームコメディ風喜劇に近い芝居」だ。公演に向けて、村角に話を聞いた。

――今回は「アメリカンホームコメディ風喜劇に近い芝居」とのことですが…。
 
1年半~2年前くらいから、うちの演出助手と『フルハウス』とか『アルフ』とか『ホーム・アローン』みたいな「アメリカのシットコムをやりたいね」っていう話をしていて。話としては、ジェシカという女の子がただ犬を飼いたいだけの話です(笑)。10歳になるジェシカの誕生日に、みんなが家に集まってきて、ジェシカは毎年「犬がほしい」とお願いするけど、お母さんに反対され続けている。年齢が二桁に突入するからという理由で「今年こそは飼いたい!」と、いつもより強めに主張する年に起きたお話です。登場人物が10人くらいいるんですけど、特にそれぞれの思惑が…とかはなくて(笑)、ジェシカとお兄ちゃんのレナードが中心になってバタバタして、大人がそれに気をもんだりしながら、会話を展開していきます。『ジェシカと素敵な大人たち』というタイトル通りの台本になったかなと思います。
 
――素敵な大人たちを巻き込んで、ジェシカは最終的に犬を飼えるかどうかの話ですね(笑)。
 
そうです(笑)。でも2時間弱のお芝居ですので、ある程度起伏があるようにはしています。ただ本当に、ほかのお芝居に比べたら何もないですよ(笑)。途中で強盗が出てきたり、立てこもりみたいなことも起きないし、ただ犬を飼いたい話が進んでいくという。ゴールがはっきりしている物語はある種いさぎよいというか、そこに向かってどうなっていくんだろうって、ちゃんとフレームがあるのはいいかなと思いますね。最初はただ犬を飼いたいだけで1時間半も2時間も書けるかな?って思ったんですけど、意外といけたんです。いつも以上に会話劇らしい感じはあります。いつもは話を進めるために会話が転がっていくんですけど、今回はいい意味で、あまり会話がストーリーに沿っていないというか。それぞれの関係性を作るために会話があるので、よりキャラクターに沿った会話になっている感じがします。そういう意味ではなんの謎解きもなければ、ハラハラドキドキもないと思いますけど、そういう芝居だけじゃないというか。日本の人情ものとはちがう、より感情があふれ出てるような感じで、子どもが思ったことをストレートに口に出せるようなことができたらなぁと。アメリカン設定というのが武器になっているかなと思います。宣伝ビジュアルも、舞台を観終わった後に改めて見ていただいたら、より偽りがないことを実感していただけると思います(笑)。
 
――ビジュアルがまさにアメリカンホームコメディ風ですね(笑)。
 
先にこれだけのビジュアルが固まっちゃったので、キャラクターのイメージと齟齬がないように、ずっと目の前にチラシを貼って台本を書いていました。この人はこういうことをいわないよな、とか(笑)。後半になると、登場人物たちが脳内で勝手に喋ってくれたので、楽しく書けましたね。家族の話なんですけど、今までの作品の中で一番、不毛な会話というか、ナンセンスな会話が続いているような気がします。
 
――特に『フルハウス』とかを観ていた世代の方が楽しめそうな雰囲気ですね。
 
書くためにもう一度見直しましたけど、改めて観ると、何も起こらないんですよね(笑)。でもそれが100話以上も続くわけですから、すごいですよね。ただ家族の日常を30分描いているだけなんですけど、キャラクターが好きになったりとか、ずっと観ていられるんですよ。だからこれも、数あるエピソードの中の一話みたいになればいいなと思っているんです。
 
――何も起こらない物語を書くのも難しそうですよね(笑)。苦労した点などありますか?
 
何も起こらないだけに、書いていると不安になるんですよ(笑)。何もないけど、大丈夫かな?って。でも最初にホン読みをしたときに、ちゃんと手応えを感じられたんです。1時間45分くらいだったんですけど、それが結構あっという間で、これは意外と悪くないなと。あと、意図してたわけじゃないんですけど、これまでのTHE ROB CARLTONは出ハケが1か所しかなかったんです。でもこないだ、出ハケがもっとあったら、もっと面白くなるんだけどねってご助言をいただきまして。なので、今回は5か所に増やしてみました(笑)。事が起こらなくて、人が派手な動きをしないだけに、出ハケの場所で人の動きを作れたらなと思っているので、いつもとは違う気の使い方になるかなと思います。
 
――周りの人がどう絡んでくるかも楽しみです。
 
結構いますからね。おじいちゃん、おばあちゃん、両親、おじさん、おじさんの彼女、隣人…。この人たちがそれぞれどのような動きをするか、ですね。些細だけどそれぞれに思惑があるので。平坦に見えるけど、彼らなりに起伏があるというか。演じるキャストも、達者で愉快な人たちが集まったので、面白くなると思います。
 
――キャラクターが強い感じですか?
 
それぞれ、そんな奇抜なことはしていないんですよ。おじさんがマイケル・ジャクソンの格好をしてたり、おじさんの彼女がシンディ・ローパーの格好をしていますけど、ジェシカの誕生日パーティだから、盛り上げようと思って着ているんです。
 
――村角さんがコメディを作るうえで意識されることや大切にされていることはどういうところですか?
 
声の音色は重要だなと思いますね。会話の“間”もそうですけど、高さとか、チェンジ・オブ・ペースというか、のばすところはのばす、縮めるところは縮める、そういうのが上手な役者さんに読んでいただくのが理想ですね。書くときはそれをイメージして書きますから。面白い動きとかも大事ですが、それよりも僕は声を重要視しますね。
 
――今回、役者としては、ジェシカのイマジナリーフレンドということですが、どんな存在ですか?
 
子どもが主人公の話なので、子どもが主人公ならではのキャラクターがほしいなと思って作ったキャラクターなんです。子どもにしか見えていないものって何だろうと考えて思いついたのが、イマジナリーフレンド(笑)。周りの人たちには人形にしか見えていないんですけど、ジェシカにはちゃんとフレンドとして見えています。
 
――『フルハウス』や『アルフ』のようなイメージと仰っていましたが、書くにあたって参考にされたものはありますか?
 
『ホーム・アローン』とか『ミセス・ダウト』を手がけたクリス・コロンバスっていう監督がいらっしゃるんですね。ファミリー映画を撮らせたら、右に出るものはいないんじゃないかっていうくらいの。ストレートな家族ものというか、子どもが見ても分かりやすい家族ものが本当、上手なんですよ。1990年代の頭とか半ばとか、僕も子どもの頃にそれを観ていて大好きだったんです。子どもが観ても分かりやすい関係性とか、いいなって思いますね。今観るとジョークとかは古いけど、ほんわかとした作風とか、子どもが見ても楽しめるという点は重要だなと思って参考にしました。せっかくのプロデュース公演なので、いつもの僕らの感じともまた違う、ハートウォーミングというか、ちょっと柔らかい、丸みを帯びた作品にしたいなぁと。
 
――昔からコメディ映画とかがお好きだったんですね。
 
そうですね。父が洋画をよく見せてくれたんです。もちろんアクション映画とかも見ましたけど、こういうファミリーコメディをよく借りてきて。バカバカしいものから子どもが主人公の作品まで、今もあのとき観たものがすごく印象に残っているんですよね。本当は、そういう作品を僕が今の子どもたちにできたらいいなと思っているんです。恩返しじゃないですけどね。でもTHE ROB CARLTONの本公演ではスーツを着た大人の男たちがお芝居をするという世界観が強いから『ミセス・ダウト』的なことってなかなかできなくて。今回はプロデュース公演なので、世界観をガラリと変えて、可愛らしい作品にできたんじゃないかなって思います(笑)。
 
――昔、海外のホームコメディを観られていた方にはもちろん、気軽に楽しめる作品かと思いますので、大人から子どもまで楽しんでいただきたいですね。
 
最近あまり見ないなっていう作品ができたらいいなと思って作りました。結構分かりやすい舞台だとは思うんですけど、あまり他では見かけないので、久しぶりにそういうのをしっかりやろうかなと。コメディの会話劇ですが、うるさくはないと思いますので、そういうのが苦手な人も楽しんでいただけるかと思います。本当に楽しみにしていただいて大丈夫なので!この秋一番のアメリカンホームコメディ風喜劇を楽しんでください。

取材・文:黒石悦子



(2019年10月 8日更新)


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ABCホール×THE ROB CARLTON
『ジェシカと素敵な大人たち』

チケット発売中 Pコード:496-575

▼10月10日(木) 19:00
▼10月11日(金) 19:00
▼10月12日(土) 13:00/17:00
▼10月13日(日) 14:00
▼10月14日(月・祝) 14:00

ABCホール

全席指定-4000円

[作][演出]村角太洋
[出演]村角ダイチ/満腹満/ボブ・マーサム/隈本晃俊/春野恵子/下村和寿/高阪勝之/田川徳子/古谷ちさ/三原悠里

※未就学児童は入場不可。

[問]ABCホール■06-6451-6573

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