花組・明日海りお、退団公演は美しき精霊で魅せる
宝塚歌劇団花組トップスター明日海りおの退団公演となるミュージカル『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』、レヴューロマン『シャルム!』が、8月23日(金)より兵庫・宝塚大劇場にて幕を開ける。「宝塚が大好きで、男役が何より好きでした」という明日海のラストステージにかける想いを聞いた。
『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』で演じるのは、青い薔薇の咲く禁断の園に生きる精霊エリュ。幻想的な世界観の中、人々が現実だと信じている世界と、異次元の世界とを交錯させながら人間と精霊との交流を描き出す。「エリュは、他の精霊たちよりも少しプライドが高く、周りから一目置かれているような存在で、人間よりも自分のほうが優れているという意識があります。そんなエリュが、“精霊が大好き”という少女シャーロットと出会い、そのまっすぐさに惹かれていきます」。
自然界では、人間に姿を見られると、大人になる前に忘れてもらわなければならないという掟があるが、「忘れてほしくない」エリュは、掟を破ってしまう。「思いが強すぎるという点では良くない精霊で(笑)、プロローグでは霧の中でしか生きられない状態から描かれます。ミステリアスで、人間ではない者のすごみや、切なさが表現できたらと思います。(作・演出の)植田景子先生が描かれる作品は、繊細な心の動きや感情の豊かさが必要とされます。私はすごく芝居が好きでこれまでも男役に対してこだわりを強く持って演じてきましたので、技術でというよりは、自分のすべてを役に預けて表現していきたいと思います」。
稲葉太地が作・演出を手がけるショー『シャルム!』は、パリを舞台にした華やかなレヴュー。集大成ならではの、男役の魅力がたっぷりと堪能できるショーになりそうだ。「アダルトな雰囲気のプロローグから、スーツにハットの場面、軍服を着た中詰、黒燕尾など、宝塚歌劇の王道の中に、花組のいろんな面が見えるものになっています。トップになって初めてのショーも稲葉先生で、そのときは“ひな鳥”をイメージしたようなキラキラしたプロローグだったのですが、それから5年が経ち、このように変化しましたという姿を楽しんでいただければと思います」。
2014年のトップ就任から5年あまり、トップスターとして花組を牽引してきた明日海。「たくさんのお役と素敵な作品に出会うことができ、その中で悩んだり、打ちひしがれたりと、常に自分との戦いでした。でもやっぱり、宝塚が大好きで、男役が何よりも好きという思いでここまでやってきました。卒業する日までは、公演のこと、サヨナラショーのことに専念して、自分が納得するものに仕上げたいと思います」。
公演は8月23日(金)から9月30日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、10月18日(金)から11月24日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは9月15日(日)発売開始。
取材・文:黒石悦子
撮影:福家信哉
(2019年8月20日更新)
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