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13年ぶり復活、ファン待望のユニット公演。
関西小劇場界出身の盟友・山内圭哉と福田転球が、
「顎外れるぐらいアホなことやります!」

ジャニーズWEST・濵田崇裕主演舞台『歌喜劇/市場三郎』の台本などを手掛ける元転球劇場主宰・福田転球と、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)出演後にツイッターのフォロワー数が一気に2万人増えたという山内圭哉。今や大舞台で活躍するふたりが「演劇人としてのおもろい」を追求する、90分一本勝負のおバカ公演『2Cheat4』が13年ぶりに復活する。ネタ集めのため本気でミュージカルのオーディションに挑んだり、居酒屋で奇人変人と遭遇したり、いまだ衰えぬ笑いへの感度と熱量。新作ではどんなゾーンへと誘ってくれるのか。お二人に新作への意気込みを訊いた。

日本一面白い男の底力を引き出す限界ギリギリライブ!
 
 
――13年ぶりにおふたりのユニット『2Cheat』が復活します。
 
福田転球(以下、転球):(ボソボソと)久々にできると聞いて、うれしいなぁと思いました…。
 
山内圭哉(以下、山内):声めっちゃ小さいやん!
 
転球:いま熊本から大阪に着いたばっかりなんですよ。めっちゃ小さい飛行機やってん。プロペラ機? みたいな。空港からも遠ーい所で降ろされたから、久しぶりに空港までバス乗らされたわ。
 
山内:そんなんどーでもええねん。今回久々の公演については、どない思ってるんやって話やねん。多分僕がどないかしてくれると思って、何も考えてないと思うけど。
 
転球:甘えたらあかんなと思てますよ、もう50歳になったんで。
 
――(笑)。山内さんいわく、転球さんは日本一面白い男だと。
 
山内:「主に楽屋に限る」ですけど(笑)。
 
転球:僕にとって山内君は、楽屋で一番僕を面白くしてくれる男ですね。
 
山内:俺がそうさせてたの!? ええ客やったんやね俺が。

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――お客さんがいることでスイッチが入る?
 
山内:お客さんが笑ったときの転球さんはスゴいですよ。やっぱり笑い声が一番分かりやすいリアクションだったりするので、そこで役者も安心してアクセルが踏めるというか。転球さんはそこが如実。昨日より少しでも笑い声が少なかったら、途端にやる気を無くしてしまう、アーティスト気質なとこがあるから。
 
転球:それでいうたら、転球劇場がそうでしたね。
 
山内:ほんまに陶芸家が「色が気に食わん」と焼き上がった器を割るような感じ。もうちょっと頑張ったら、ちゃんと面白くなるのに。
 
転球:今は分かるけど、当時は失速して喋らんようになる。そのこと自体、自分では気づいてなかった。
 
山内:ほんまに? じゃあこの13年間でアーティストから徐々に職人気質になりつつあるんや。
 
転球:頑張らなアカンというのを教えられたんかな。やり切ることの大切さとか。ウケる時って一瞬素の自分に戻る時やと思うんですよ。役を忘れがち、アカンけど。
 
山内:役のままいったらええやん。
 
転球:そう! それはだいぶ分かってきた。戻せるようになってきた。
 
山内:ものすごい初歩的なことやぞ(笑)。

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――おふたりとも関西小劇場のご出身ですが、お互いの第一印象は?
 
転球:第一印象ですよね(…と、しばし固く目をつむって腕を組み)ちょっと覚えてないですけど。
 
山内:覚えてないんかい!
 
転球:(笑)。まあでも、飲みに行くようになってからは、だいたい思ってること一緒やなと。わりと演出家の言う通りにするいい子ちゃんが多かった中で、山内君は違ってた。
 
山内:出会った頃は、転球さんが25歳で、僕が21歳ぐらい。変やなと思うことが似ていたというか。そんな所を見つけては、ふたりでゲラゲラ笑ってました。
 
――ではユニット結成は、おふたりが思う「面白いことをしよう」と意気投合されて?
 
転球:山内君が「やろか」と言ってくれたから、「やります」ってなったんかな。

山内:楽屋とかで見る面白い転球さんを舞台に乗っけようと始めたんです。当時、転球さんは転球劇場もされてて、劇団員の高木稟さんがこの舞台を観に来てくれた時、楽屋で「福田君、うちでもそんな風にやってや」って言ってたのを、今でもすごい覚えてるわ。
 
転球:あ、そう。
 
山内:転球劇場のみなさんも、転球さんの面白さはそういうところにあるとは思っていたけど、本人は座長やし、何か守るものがあったのか、そこまでフリーにはできない部分もあったのかもしれないですね。
 
転球:劇団では社長のはずやのに、実際やってることは係長みたいな感じやったし。
 
山内:もともとまわりから「転球好きにやれや」って担ぎ出されて、いざやり出したらみんながいろんなことを言い出して、転球さん自身は自分のやりたいことができなくなるっていう。
 
転球:僕より他のふたりが目立った方がええやろなと。公演では自分のポジションを一個だけ用意してくれたらそれでいい。そこでは思いっきりいくからと。
 
山内:必ず転球さんのフリーなコーナーがあったもんな。あれが一番面白かった。
 
――『2Cheat』は、弾けられる場所だった。
 
転球:そうですね。仮に面白くなくても、山内くんが限界まで引っ張ってくれるので。舞台上で「もっとやれるやろ」っていう目をしてくるんですよ(笑)。
 
山内:転球さんは追い込んだら何か出てくるんですよ。そういうときが一番面白い。

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演劇やるのもすべてはパロディのため
“あるあるネタ”満載で爆笑必至!

 
――ネタづくりはどのように?
 
山内:あそこの店員おもろいな、変わったやつおったでとか、ふたりで雑談しながらちょっとやってみよかという感じで作ってきました。今回は演劇を13年間やり続けてきたことを、どうネタに反映させるか。僕らもわりとちゃんとした役者になってきたので。
 
転球:個人的には50歳になったので、年相応のネタもあってもいいのかなと。しんみりと酒飲んだり、あとはミュージカルもやってみたい。
 
山内:コンテンポラリーダンスも気になるとか言うてたやん。ふたりで全身タイツみたいなもん着て。転球さん、大阪芸大のミュージカルコース出身やし。ミュージカル大好きやもんな、いじるのが(笑)。なんでここで歌うねん! と。
 
転球:やっぱり、最初はいじることから入ってるんで。
 
山内:コントで面白くパロディにするために、演劇を始めた口の人やから。
 
転球:コントやりたいからお芝居をやってるというのは、昔からずっと思ってる。それが今では自分が書いた脚本が、舞台『歌喜劇/市場三郎』として上演されるようになったりしてるから、びっくりですよね、ギャグで始めたことが。
 
山内:演出の河原雅彦さんが面白がってくれて、グローブ座とかでジャニーズ主演の舞台としてひとつ実ってる。だから東京では作家先生気取りですよ。
 
転球:まったくそんなことはないですけど。僕がミュージカルに出たりオーディションを受けたりしてるのも、『2Cheat』とかでパロディにするときに、実際経験してた方がもっと面白いことができるやろなと思ってのことなので。『レ・ミゼラブル』とか、出たいんです。本番より楽屋への興味の方が強くて、偉そうにする先輩とかいるのかなとか。歌の練習する人を間近で見てみたい。
 
――『レミゼ』のオーディションには何度も挑戦されているとか。
 
転球:何回か受けてるんですけど、すぐ落ちてます。でもオーディションに行くだけでも面白い。小さい鍵盤を持ち込んで発声練習している人がいたりね。常識なんでしょうけど、控え室でデッカイ声で歌うなよ、静かにしたい人もおるんやでとか思ったり。みんな襟の高いシャツ着てたりね。Tシャツでええやんと思うけど、外見とかも大事なんでしょうね。

山内:全然分からんわ。オーディションとか大嫌いやから。
 
転球:行きそうにないもんな。
 
山内:もともと役者になりたいと思ってなったタイプちゃうから。こっちから役をもらいにいくという感覚がないんですよ。
 
転球:ええな(笑)。
 
山内:俺がやれることがあるなら、やりますけどというスタンスなんで。多分僕がイレギュラーなんでしょうけど。その方がええですけどね、無理せんでええから。
 
転球:みんなそない思てるけどな。でも行っとかな、ってところでな。
 
山内:俺ええわ。そこまでせなアカンのやったら飲み屋でも始めるわ。
 
転球:ほんまやな。俺もそう思ってやってきたけど、貫いてるのはすごいわ。オーディションとか大嫌いやったもん。
 
山内:「自己紹介してください」とか言われてな。何でやねん。資料に書いてるやろ、ってなる。
 
転球:でも、ほんまにそれでようNHKの朝ドラとかOK出たな。
 
山内:や、ほんまやで。だから「朝とか僕出たらダメですよ。やめといた方がええんちゃいます?」とか言うて、一応気遣ってるで。最近でいうと内田裕也さんも亡くなり、やんちゃな人も減って来てね。コンプライアンスやなんやいうて、とうとうそういう時代が終わったんでしょうな。
 
――演劇はそういうタブーもおかせるようなメディアでもあったような。
 
転球:あった、ですよね。
 
山内:今はタバコ吸うシーンで怒りはる人もいますからね。偽物でも嫌がられる。だから劇場でも「喫煙シーンがございます。体に害のないものを使用しています」って貼り出してる。それだけでお話の味わいって、減ってるんですけどね。今回はまずタバコから吸い始めよか。
 
転球:あ、ええな! 俺タバコやめてるけど(笑)。

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――山内さんは、転球さんが東京で「笑いの牙を抜かれたのでは…」と、懸念されている部分もあるそうです。
 
転球:(固く目をつむり)1年の半分以上は…(演出家に)言われたことをやってます。
 
山内:だってど真ん中のコメディみたいなことはやってないでしょ。それこそ『2Cheat3』から。
 
転球:やってない。真面目な演劇をやり過ぎたね。やっぱり、スタッフワークや俳優のクオリティとかは断然東京のほうが優れてるし、スゴいなと思いましたけど。僕は生ぬる~い所も愛したいなと最近思いますね。縛られない自由さというか。昔より笑いのない役も増えましたしね。
 
山内:でもやっぱり寂しくない? 笑いどころのない役で笑いを作ろうというのも下品な行為やからね。自分らが弾けられる楽しい場所っていうのは、作っていかんと。我々の場合幸せなことに『2Cheat』があり、待ってくれてるお客さんもいるらしいので。転球さんも相変わらず面白いもんを見つけてるし、一応ネタも考えてくれてたんで安心しました。一緒の現場におったら、あの人のあれおもろいなっていう話になりますもん。
 
転球:こないだも繁華街にいてる何してるのか分からへんようなおっさんの話をしてたら、ほんまにおってんな、ゴールデン街近くの飲み屋に。
 
山内:あ、おったな! 転球さんがよく行く居酒屋で飲んでたら、入口にビキニ姿で鞄さげた人が立ってて、真冬にでっせ。しかも、それが女もののヅラをかぶったおっさんやった。そのままカウンターに座って焼酎飲み始めて。店の人も「あ、いらっしゃい」って。ボトルキープしてた常連やったんですよ(笑)。
 
転球:行きつけの店でしたけど、初めて見ました。
 
山内:こんなことが日常でよく起きるから。僕らがいくら一生懸命におもろいこと考えても、リアルには勝たれへんなっていうね。
 
転球:ほんまにちっちゃいビキニやったもんな。乳首が隠れるか隠れへんかぐらいの。Tバックのほぼ生尻状態で椅子に座るから、内心で「おいおい!」って(笑)。 
 
――『2Cheat』でも毎回、転球さんが特異なキャラクターを嬉々として演じられます。
 
転球:例えば、未だに関西では僕のことを自分が育てたみたいに勝手に思ってくれてはる先輩とかスタッフさんが多くて、それをネタにしてやったらお客さんも笑ってくれるから、面白いですよね。やっぱり似たような人がまわりに大勢いてるんでしょうね。
 
山内:こんなん分かる? って思ったネタの方が共感されることはありますね。この前のドラマ『獣になれない私たち』で演じた九十九剣児も「こんな社長いてないで」とか言いながら、多少デフォルメしてやってたんですけど、「うちの上司そっくりです」という反響がすごかったんですって。
 
転球:強調するぐらいで丁度ええねんな。
 
山内:自分らが思ってるより世の中には変わった人が多いんちゃう?
 
転球:そういう意味では、ちょっと挑戦的なものになってもいいかもしれないですね。 
 
――アドリブも満載で? 
 
転球:そっちの方が多いぐらいちゃいますか。でも、しっかりしたネタもあっていい。それこそ一言一句台本通りにやるとか。
 
山内:そんなんが1本あると、ほかの即興で作ったネタとの基準が分かって面白いかも。
 
――東京ではまだ“本当の転球さん”をご存じない方も多いかもれませんね。
 
山内:知らないと思います。
 
転球:見せてないというか、見せる場所がなかった。いま高木とやってるユニット「マサ子の間男」でも、どちらかというと演出の方なので。
 
山内:それこそ、例えばこまつ座の舞台『イーハトーボの劇列車』で転球さんのことを知った人は、転球さんが面白い人やなんて思ってないと思うよ。そういう人たちが見に来てくれたら、顎外れるようなことをしたいなと、僕は思いますけどね。
 
――小劇場ならではの親密な雰囲気も楽しみです。
 
山内:やっぱり表情が分かるぐらいのキャパでやるのが、一番いい公演やと思うんですよ。ミニマムな劇場でなおかつ久しぶりに大阪でふたりでやれるのは本当にうれしい。ノリが分かってくれてる人たちなので楽しみですし、過去に贔屓にしてくれてた方には、13年ぶりに僕らがどうなっているのかジャッジしに来てほしい。最近のドラマや舞台で僕らのことを知ってくれた方には、「僕らこんなことしてたんです、面白いでしょ」というのを見せたい。
 
転球:思いっきりふざけます。
 
山内:もともと面白い転球さんを見てもらおうと始めたことやから、なんやったら「前よりも面白くなってるわ!」って思ってもらおうよ。
 
転球:そういうことです!

取材・文/石橋法子
撮影/森 好弘



(2019年4月 4日更新)


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プロフィール

写真左より、福田転球、山内圭哉

福田転球(ふくだてんきゅう)●1968年9月10日生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学舞台芸術学科ミュージカルコースに、ミュージカルを知らずに入学。卒業後、1993年に「転球劇場」を旗揚げ、座長を務める。以降、2006年のさよなら公演『3バカ』まで13年間、31作品全作品に出演。構成・演出を手がけた。すべてエチュードで作り上げるその作品は、観客から人気はもちろんのこと、多数の舞台俳優たちをも魅了し、「客演で出演したい劇団」として支持を得る。独特の笑いのセンスとにじみ出る哀愁を持ち味に、外部作品にも圧倒的な個性で幅広く活動する役者として、多数出演。近年の主な出演作に劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season鳥』(2017年)、『イーハトーボの劇列車』(2019年)など。

山内圭哉(やまうちたかや)●1971年10月31日生まれ、大阪府出身。映画『瀬戸内少年野球団』(1984年)で子役デビュー。1992年に中島らも主宰の笑殺軍団リリパットアーミーに入団、2001年より川下大洋、後藤ひろひとが立ち上げたユニットPiperに参加。出演ドラマ『HOPE~期待ゼロの新入社員~』(2016年)では、第5回コンフィデンスアワード・ドラマ賞助演男優賞を受賞。近年の出演作にドラマ『獣になれない私たち』(2018年)、映画『花戦さ』(2017年)、舞台『セールスマンの死』、『夫婦』、『密やかな結晶』(すべて2018年)など。出演映画『空母いぶき』が5月24日(金)公開予定。


『2Cheat4』

チケット発売中 Pコード:492-983
▼5月30日(木) 19:00
▼5月31日(金) 19:00
▼6月1日(土) 13:00/17:00
▼6月2日(日) 13:00
COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール
前売指定-4000円
[出演]山内圭哉/福田転球
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラ、または携帯電話等での録音・録画・撮影・配信禁止。都合により出演者が変更になる場合がございます。変更・払戻不可。車椅子の方はチケット購入前に要問合せ。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル■0570-550-100

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