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「音楽で、この世の真理に触れたい」
メジャー1stフルアルバム『時の肋骨』手に全国ツアーへ
THE PINBALLS、古川貴之(vo)インタビュー

メジャー1stフルアルバム『時の肋骨』を11月14日にリリースしたTHE PINBALLS。本作はタイトルにも表れているように、“時”をテーマにした全12曲で構成。完全なるコンセプトアルバムということで、詩的で感性に響く物語性ある世界観が展開され、ジャケットをはじめとしたアートワークの細部にまでこだわり抜いた傑作となっている。一度耳にすれば、刹那に魂を刻みつけるボーカルと性急かつメロディアスに心を揺さぶるロックサウンドに体の芯まで鋭く撃ち抜かれるはずだ。このアルバムに伴う全国ツアー『end of the days tour』が2月17日(日)からスタートする。ぴあ関西版WEB初登場ということで、ソングライティングの核となる古川貴之(vo)が、結成時から不動のメンバーで活動を続けるこのバンドの強みと創作における美学や独自のインスピレーション源について柔らかに語ってくれた。

どうやったら夢叶うんだ?って思いながら、この4人でずっとやってきた
 
 
――THE PINBALLSは、2006年の結成から不動のメンバーで活動されているんですね。
 
「そうですね。まず自己紹介する時は、メンバー変えてない4人って言うのを一番に言います。僕らはどうやったら夢叶うんだ?って思いながら、ライブハウスでノルマ払ってライブしてっていう感じのところからスタートして…、この4人でずっとやってきたんで。全員同い年の同級生なんです。昔はスター全員勢ぞろいみたいな…ものすごいミュージシャンが4人集まってるバンドに憧れてたけど、実は“お前しかいない”からやってたって感じですね。自分たちが結成して10年っていう節目を超えると、それってちょっとカッコイイことなのかなと思いだしちゃって。逆に今は、自慢してます(笑)」
 
――古川さんがこのバンドを始めたんですか?
 
「はい。メンバーとの付き合いは長いんですけど、このバンドになったのは23歳の時で、12年前なんです。ちゃんと(オリジナル曲を)やるのはこれが初めてでした」
 
――作詞作曲をするようになったのはいつ頃から?
 
「中学生の頃からギター(中屋智裕)と二人でやってました。ドラムマシーンで打ち込んで。当時に作った曲で、今もやってる曲はないんですけどね。僕と中屋はブランキー・ジェット・シティというバンドが大好きで、ずっと二人でコピーしたりしてたんです」
 
――なるほどね。バンド名もブランキーの歌詞にインスパイアされたとのことですが。
 
「はい、(ブランキーの)『死神のサングラス』っていう曲があって、その中から取りました。実はその歌詞だけじゃなくて、THE WHOの『ピンボールの魔術師』とか、自分の好きなものに共通してるワードがいいなと思ってつけたんです」
 
――古川さんがソングライティングにおいて、一番影響を受けたのはブランキーの浅井健一さんですか?
 
「そうです。今も絶対的に好きです。浅井健一さんは本当に神様だと思ってて。浅井さんの歌詞は、俺の感じてることと一緒だなと。ちょっと生意気なんですけど。“俺の言いたいことだ、これ!”みたいな詩がかっこよくて。スゲーと思いました。何を言ってるのか全くわからないことを言ってるようで、それって真実だなって思わせるパワーがあるというか。『綺麗な首飾り』という曲も、“夕焼けの色が本当の世界の色だとしたら 今すぐその事を子供たちに伝えなきゃいけないだろう”っていう歌詞が、超合ってるなと思って。そんなこと誰も言ってないのに、自分が想像してるっていうのが伝わってきて。大好きなんです!」
 
――古川さんも、そういうソングライティングをしていきたいと?
 
「そうです。直接的に語らないんだけど、右脳的に言葉を繋げていくような…」
 
――想像力をかき立てられますよね。
 
「はい。簡単に言えば、そういう詩的な表現の方法が好きです」
 
――確かに、それはTHE PINBALLSの曲にもすごく感じます。ストレートな感情を叫んでいるわけじゃないけど、聴く人によっていろんな受け取り方ができる。感性に響いてくる歌詞ですよね。そして、その歌詞を、聴き手にダイレクトに伝えるボーカル力があると思います。
 
「嬉しいです」
 
――刹那に魂を刻みつけるような、狂おしくハスキーなボーカルも魅力です。歌う時に意識してることは何かありますか?
 
「僕は一生懸命歌ってたら、だんだん枯れていってるだけで、最初からハスキーに歌おうとは思ってないんですけどね。ただ、一曲一曲で、余力を残しておけないというか。今がいいって思うタイプです。ちょっとカッコよく言うと…」
 
――一曲一曲、一回一回のライブに全力投球しようと?
 
「そうです」
 
――確かに、それぐらいのパワーは感じますね。でも、こうして話してる時は物腰柔らかな雰囲気です。
 
「そうなんですよ。クールな印象を持たれるんですけど、お会いさせていただいた方からは、ちょっと面白い人と思っていただけることが多くて(笑)」
 
――ライブを観た時、音の弾丸を浴びせかけられるような強いインパクトを受けましたが、あれだけステージで爆発させるために、ライブ以外では余計なエネルギーは使わないようにしてるんですか?
 
「ああ、そうなんですよ。例えば、“この野郎!”って思っても、ステージで頑張ればいいやって思うから、普段はあんまり競争心はないんですよね」

 

 
“時”をコンセプトにした完全なるコンセプトアルバム
 
 
――11月にリリースされたメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』はどんな風に作られたんですか?
 
「今回は“時”をテーマにして、完全なるコンセプトアルバムとして作りました」
 
――なるほど。だからパッケージ(初回盤)も砂時計のようなデザインになっているんですね。
 
「そうなんです。僕は数字をつけるのがすごく好きで、今までのCD全部に数字をつけてきてるんです。何でかな?って思ってたんですけど、この前、『数と音楽』という本を読んで納得しました。数っていうのを無意識で楽しむツールが音楽だということが書かれてたんです。確かに、何拍っていうのもそうだし、音の高さにkHz(ヘルツ)ってあるように、人間が音楽を楽しむというのは、この世にある気持ち良い周波数とか、神秘を勝手に感じ取ってるからなんだなということに気づいたんです。だから、今まで僕が数字をつけたがっていたのは、そういう感覚を表現したかったのかなと、腑に落ちて…」
 
――なるほど、なんだか面白いですね。
 
「特に12っていう数字がすごく好きなんです。安定した数字に感じるし、12ってすごく人間に密着してるみたいで。1年も12か月だし、12時間で2周回って1日が経つし。人間の肋骨も片方が12個、両側で計24個あるんですよね。そういうこともすごいなと思って。2014年に出したフルアルバム『THE PINBALLS』の時は、自分なりに1年12か月をアルバムの12曲で表現したんです。それがすごく気に入っていたので、今回も同じように12曲にして、今度は1日の24時間を曲で表現しようと思ったんです」
 
――へー、そこまでガッツリとコンセプトアルバムを作るようになったのは何かきっかけがあって?
 
「ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』というアルバムがすごく好きなんですよ。ただ単に曲を並べてるんじゃなくて、なんか意味があるんだなって。やっぱりしっかり考えて作ってるものの方がカッコよく思えるタイプなんです」
 
――作詞作曲に関しては、古川さんが全て手がけているんですよね?
 
「はい。自分の設計図としては、今回は夜から始まって夜で終わるんです。1曲で2時間の流れとして、1曲目が夜の10時から12時ぐらいで、2曲目が12時から2時ぐらいという感じで、2時間ずつ刻んでいって、次の夜に戻っていくというイメージ。3曲目の『DAWN』と10曲目の『DUSK』で、“暁と黄昏”みたいに対にしているんですよ。そういう細部まで見ていただくと曲順も面白いかなと思います。アートワークでもそういうシンメトリーとか対称性はすごい補強できていて。パッと見た時に視覚的に伝わるとわかりやすいかなと」
 
――そういう構想やアイデアは、メンバーにも事前に伝えるんですよね?
 
「そう、だからいろいろ話すんですけど、“はいはい、また言い出したよ…”って。そういうことばっか言ってるんで、メンバーにはうるさいと思われてますね(笑)」
 
 
 
一言で言えば、「楽しんでください」「踊ってください」っていうだけ
 
 
――具体的にアルバムの内容を通して伝えたいことというのは?
 
「さっきの『数と音楽』の話もそうですけど、この世には法則があると思うんですよね。そういう真理みたいな、絶対に気持ちいいコード進行みたいなのは決まってて。それに触れたいみたいなことかな。要はそれが“気持ちいい”っていうだけなんですけど…」
 
――それを感じ取ってほしいと?
 
「感じ取って踊ってほしい。それが『アダムの肋骨』(M-1)っていう曲にもつながっているんです。歌詞にも出てくるんですけど、要は、人間は音楽というものを勝手に気持ち良く感じれるはずなんだから、細かいことを考えずに、それを楽しみたいっていうだけで。もしかしたらそれが伝えたいことなのかもしれない。だから、一言で言えば、“楽しんでください”“踊ってください”っていうだけなんです(笑)」
 

 
――このアルバムのツアーが2月に開催されます。どんなライブをしたいと思っていますか?
 
「いろんな曲があるので、それぞれの曲に沿った表現方法をしたいと思ってるんですけど。基本的にライブは激しく、熱くやるのが好きなので。“世界一カッコイイライブをやるから。楽しみにしていてくれよな!”と言い切りたいと思います」
 
――ちなみに、“これだけはやりたくないな”っていうことは、何かありますか?
 
「脱ぐのはちょっと(笑)。パンクなものが好きなので、自分がそういうアーティストを見るときは熱狂するんですよ。ただ、俺はちょっと…、合ってないことはしなくていいかなと。そう言ってて、もし、一曲目から脱いでたらすみません(笑)」

text by  エイミー野中



(2019年1月23日更新)


Check

Release

Release

1st Full Album『時の肋骨』
発売中

【初回盤】(CD+DVD)
3200円(税別)
COZP-1481-1482

【通常盤】(CD)
2600円(税別)
COCP-40538
 
《CD収録曲》
01. アダムの肋骨
02. 水兵と黒い犬
03. DAWN
04. 失われた宇宙
05. BEAUTIFUL DAY
06. CRACK
07. ヤンシュヴァイクマイエルの午後
08. 風見鶏の髪飾り
09. 回転する宇宙の卵
10. DUSK
11. COME ON
12. 銀河の風

《初回盤DVD収録内容》
Document of Leap with Lightnings tour
NIPPON COLUMBIA

Profile

ザ・ピンボールズ…古川貴之(vo)、中屋智裕(g)、森下拓貴(b)、石原天(ds)からなる4人組ロックバンド。2006年に結成し、1度もメンバーチェンジをすることなく4人で演奏をし続けてきた。そのことがいつの間にかバンドにとって一番大切な誇りとなる。物語のような楽曲と泥臭いライブパフォーマンスは王道的でありながらも大陸から遠く離れ残された島で生き続ける生物のようにガレージともロックンロールとも形容しがたい独自の進化の道を歩き続けている。2010年、タワーレコード初のアーティスト発掘オーディションにて、1位を獲得。「TREASURE05X」、「SUMMER SONIC」など数々のフェスやイベントに出演し、知名度を高めていく。また、ニコニコ動画などで配信されてたアニメ「ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン」第3話のエンディングテーマに新曲を提供し、話題となる。2017年12月6日、ミニアルバム『NUMBER SEVEN』で、日本コロムビアよりメジャー進出。2018年4月25日にはバンド初のメジャー1stシングル作品『Primal Three』をリリース。11月14日には待望のメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』をリリース。2019年、全国10か所のワンマンツアー“end of the days tour”が2月17日からスタートする。

THE PINBALLS オフィシャルサイト
http://thepinballs.org/


Live

「end of the days tour」

【千葉公演】
▼2月17日(日)千葉LOOK
【長野公演】
▼2月23日(土)長野ライブハウスJ
【宮城公演】
▼2月28日(木)LIVE HOUSE enn 2nd
【北海道公演】
▼3月2日(土)SPiCE
【福岡公演】
▼3月7日(木)The Voodoo Lounge
【香川公演】
▼3月9日(土)TOONICE

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:130-535
▼3月10日(日) 18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング-3300円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料。
[問]GREENS■06-6882-1224

【岡山公演】
▼3月16日(土)岡山ペパーランド
【愛知公演】
▼3月17日(日)名古屋クラブクアトロ
【東京公演】
▼3月22日(金)LIQUIDROOM


a flood of circle
チケット発売中 Pコード:132-859
▼4月4日(木)・5日(金) 19:00
池下CLUB UPSET
オールスタンディング-3800円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
[ゲスト]THE PINBALLS
[問]ジェイルハウス■052-936-6041

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