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ジャズダンスやアクションとJ-POPをかけ合わせ、
ノンバーバルで笑いと涙の物語を描く梅棒の最新公演は
2017年の初演で話題を呼んだ学園ドラマをバージョンアップ!
『超ピカイチ!』で梅棒初参加の劇団Patch納谷健が
主宰の伊藤今人と語る

2017年、全国4都市で12500人超を熱狂の渦に巻き込んだ、7th ATTACK『ピカイチ!』が、『超ピカイチ!』と題しバージョンアップして戻ってくる! とある高校に、ひとりの転校生がやって来た。容姿端麗、文武両道の彼の登場にざわつく生徒たち。生徒会長選挙、恋愛バトル、友情と誤解と裏切り…ついには憧れのあの子のパンツをめぐって学園全体を巻き込んでの大勝負へと発展。果たして、この学園に再び平和な日々は訪れるのか…?
今作も千葉涼平(w-inds.)をメインキャストに迎え、梅棒メンバーはもちろん、大野愛友佳や一色洋平、魚地菜緒など強力なメンツが集合する。そのうち、梅棒作品に初登場する劇団Patchの納谷健と梅棒の主宰であり作・演出を担う伊藤今人にインタビュー。納谷をキャスティングした理由や、梅棒作品の見せ方の極意、そして納谷が抱く梅棒作品への思いなどを語ってもらった。

――今人さんにお聞きします。なぜ納谷さんにオファーをされたんですか?
 
伊藤今人(以下、今人)「僕が振付をした『刀剣乱舞』(2016年)という舞台に、納谷君が小夜左文字という役で出ていたんです。その時が初対面でした。振付をしている時、彼は動ける人だなとすぐ分かって。その舞台はストレートプレイ版なのでダンスはあんまりなかったのですが、そこで生き生きと踊っていたのが印象的で、「この子、ダンスが好きなんだろうな」と気になっていて。お芝居も達者だし、段取りを覚えるのも速いから頭もいいんだろうなと。あと、劇団Patchであること。雑草魂があると思って、梅棒に向いているかもしれないなと」
 
――なるほど。
 
今人「梅棒って稽古の進み方も特殊で。今の2.5次元ミュージカルでメインを張っている子は頭がいい子が多いから、誰でもできるとは思うんですけど、体の強さと稽古のスピードについていける頭の良さ、あと根性がないとなかなか大変なんです。納谷くんは、その3つを兼ね備えている子ですね。いつか一緒に出来たらいいなと思っていました」
 
――納谷さんは、梅棒の作品をご存じで? 
 
今人「第6回公演の『GLOVER』を観に来てくれて。すごく楽しんでくれました。納谷君は今年の夏、舞台『七つの大罪 The STAGE』で主演のメリオダスを務めて、そこでも注目を浴びているので、がっつり実績を作った状態で梅棒に来てくれるのはありがたいです」
 
納谷健(以下、納谷)「隣で聞いていると照れくさいですね(笑)。期待をかけていただくと怖い反面、その分頑張らないといけないっていう気持ちもありますし、楽しみが増えました」
 
――納谷さんは、梅棒の第6回公演をご覧になっての印象は?
 
納谷「シンプルに面白かったです。ストーリー性とか、ダンスだけで見せていくというのもそうだし。ストレートに殴ってこられたような感じがして、すごく新鮮でした。今までにない新しさもあって、その時から「出たい出たい」と言い続けてましたね」

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――そして今回の『超ピカイチ!』では、徳重マサチューセッツ翼を演じられます。
 
今人「初演から二宮忠次郎という役と仲が良いという設定で「徳重翼」という役はあったんです。でも、今回は『超ピカイチ!』ですから、外国人にしました。それは、納谷君に外国人オタクの役をやらせたら面白いだろうと。カッコいい納谷君のことはみんな知っているから。うちはいつもそういうやり方をするんですけど、カッコいい納谷君のファンになったお客さんをいかに離れさせるか…(笑)」
 
――梅棒流ですね(笑)。
 
今人「カッコいい納谷君を好きになる人はたくさんいるから、そういう役以外の魅力に触れてもらって、「納谷君はこんなこともできるんだぞ」ということを世に知らしめたいし、僕も知りたい。ということでぶっ飛んだ役を当ててみようと思いました。ビジュアル撮影の時から楽しんでくれていましたし、大阪の子だから面白いものも好きだろうから、できるなと思っています」
 
納谷「どんと来いですね。そういう役を与えてくださることはものすごくありがたいですし、僕もやりがいがあります」
 
――変わった役は好きですか?
 
納谷「好きですね。僕自身、現実味のある役があまりないので。だったらとことん、日常から離れた役をやっていきたいなと思っています」
 
今人「納谷君には全日制ver.も定時制ver.のどちらも出ていただくんですけど、稽古が進むスピードがめちゃくちゃ速いんです。彼の本質は役者なので、どれだけ演技ができるかということになると思いますが、ダンスも早くきっかけや振りを覚えてもらって、自分なりの遊び心を出せるところまでいけるように仕上げたいなと思います」
 
※大阪公演は全日制ver.のみ上演。
 
――自分なりの遊び心を出すというのは、梅棒のメンバーはもちろん、『ピカイチ』初演にも出演された千葉涼平さん(w-inds.)は、すでに習得されていることなのでしょうか?
 
今人「千葉君はヤバいですよ。千葉君は全日制ver.と定時制ver.ではキャラが違うんです。全日制はカッコよくて、定時制はちょっと抜けている。前回出てくれたからか、その振り幅も楽しそうにやっていて、ぶっ飛んでいてヤバいです。一度、梅棒の舞台を経験してもらうと、ここまでやっていいんだ!っていうことが分かると思うんですよね。初めて経験される方は稽古場で徐々に覚えていってもらえたらと思います。でも、今回初めて参加する雷太という俳優が稽古初日からぶっ飛ばしていて。行けるヤツは初日から行けるんだなって思いました」
 
納谷「すでにぶっ飛んだ人たちがいると、多少ぶっ飛んでも恥ずかしくないですよね。なので、ある程度は大丈夫かなと思います」
 
――先程も「再演でパワーアップしている」とおっしゃっていましたが、どういうふうに変わっているのでしょうか?
 
今人「基本的には、全日制ver.は初演に限りなく近いものを目指していて。プラス、ここを改善すればよかったなというところを改善しています。なので、削る要素が多くて、付け足し要素は最小限にしようと。構成は完成しているので、余計なものを削ぎ落とす感じです。定時制ver.は遊び心を足したような感じで。全日制ver.と曲も数曲、変わります。役者も全日制からシャッフルをするので、同じ役でも演じる人は変わります。納谷君が仲良くなる役は、全日制ver.は二宮金次郎の銅像で、定時制ver.は人体模型。相手役どころか設定そのものも変わるので、納谷君が受ける影響も変わると思いますし、その辺も楽しんでもらえたらと思います」

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――なるほど。
 
今人「あとは、単純にクオリティが上がってます。全日制ver.で初演と再演を楽しみにしている人は、「あの時の作品がこんなになったんだ」という楽しみがあると思いますし、定時制ver.は全く違う味わいを楽しめると思います」
 
――納谷さんも初演の『ピカイチ!』をご覧になったんですよね。その時の印象は?
 
納谷「ストーリーが面白くて、心から楽しめました。心置きなくスタンディングできるような熱量も客席側に飛んできていました。今回、僕も参加させてもらうことになって、初演で観たものを思い出しますし、稽古場の時点で単純に熱量が上がっているんですよね。それがすごく素敵だなと思いました」
 
――今人さん、梅棒の作品は客演の方もたくさん参加されますが、いつも客演の方にかけられるアドバイスはあるんですか?
 
今人「基本的に当て書きで、必ずそれぞれにタスクがあります。「あなたの役はこれを助けるために存在しているというタスクがあるから」って。まずはお話全体を見て、自分の役はどういう役で、誰が主人公で、2時間の中で主人公にどういった影響を与えるために存在しているのかということを理解して、そこからそのためにはどうするか工夫をしていってほしいと言っています。自分の役割を最大限にまっとうするためにどうやっていくか、いろんな場面で伏線を張って、どう見せて行くか。これは梅棒に関係なく、演劇の役作りで一番最初に学ぶことですが、梅棒は捨て役がないので全員がそれをやらないと見えづらくなってしまうんです」
 
――それは、梅棒の舞台がノンバーバルだということが大きいですよね。
 
今人「ノンバーバルだから、みんなが動きでうるさく主張しちゃうとカオスになってしまいます。自分のタスクを理解すると、「今この場面ではこっちを見せないといけない」ということも見えてきます。そういうことを出演者全員が理解していないと、お客さんが物語の中に入ってこられなくなります。そこが普通の演劇よりも頭の良さと理解力が求められるということですかね。セリフを言うとその人に目が行きますが、梅棒の場合は身振り手振りやアクション、表情で誘導しないとお客さんが見逃してしまって、物語の意味がわからなくなってしまう。そういう展開を理解した上での振る舞いをということを伝えています。そして、その上で遊んでくださいと言っています」
 
――納谷さんは、過去にノンバーバルの作品に出たことはありますか?
 
納谷「ないです。でも、梅棒さんの作品に出たかったので、ノンバーバルだからといって構えることはないですね。セリフなしでいかにお客さんを引き込むことができるか、僕自身、楽しみにしています」
 
――今人さん、梅棒のステージは頭を使うとおっしゃっていましたが、幕が明けてから演者の方に伝えることは何ですか?
 
今人「公演が始まっていつも言うのはコミュニケーション。演劇は関係性なので。セリフ劇だったら一番端で会場に背中を向けてる相手に反対側から声をかけて振り向かせることはとても簡単ですが、ノンバーバルで曲が流れている中では、普通にやってしまうとそれは不可能なんですね。誰と話していて、何をしているのか、役者同士も話し合わないといけないし、役者同士でちゃんとわかっていないと意味が伝わらない。梅棒はストーリーをシンプルにしているけど、すぐ流れに置いていかれちゃう。だから「あっちで何か発信しているよ」ということを分かりやすく、ちゃんと届くようにやらないといけないし、舞台上でのキャッチボールをきちんと見せないといけない。これは普通の演劇でも大切なことですが、梅棒でもめちゃくちゃ大事なことです。梅棒の舞台は、役者の呼吸ではできないんです。曲で動くタイミングで決まっているので、相手とキャッチボールが成立しなくても、どんどん進んでしまうんです。だけど、物語を成立させるためには確実に渡さないといけないし、受け取らなきゃいけない。それは一般の演劇よりも役者に負荷がかかってきます。少しでも気を抜くと本当に伝わらないので。集中力と受け渡し。渡す意識と受け取る準備体操が常にないと。それがないだけで3歩先でのあの曲の瞬間が生きてこない、ということが起きてしまうんです。そのことを伝えています」
 
――梅棒の舞台は回を重ねるごとに、会場の規模が大きくなって、客演も増えてきました。劇場が大きくなって、単純に運動量が増えましたよね?
 
今人「めちゃくちゃ増えています。本当に移動が大変です」
 
――納谷さんは若いから、体力面は大丈夫なのでは?
 
納谷「いやいや、死ぬでしょうね。でも僕は舞台で死にたいから。ただ、実際には舞台で死ねないじゃないですか。だからコンディションを整えたり、普段の食生活をきちんとしたりする。そこが僕が頑張る意味になってくるので。そうやって、そこまですり減らしてくれる舞台が楽しいです。だから梅棒でも振り回してほしいです」
 
――舞台で死にたいと思うようなったのはいつからですか?
 
納谷「僕が殺陣の部分で仕事をいただくようになってからですね。体力も精神力もすり減らすことが楽しくなってきました。すり減らされたいです。あまりしゃべらない役でも、体を動かして死にかける、体を動かさない役は感情を動かして精神力を減らしていく。そういう役が続いたので、どこかに追い詰められたい願望が出てきてしまってるのかも(笑)」

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――では、梅棒はもってこいでは?
 
納谷「そうですね僕をすり減らしてほしいです(笑)」
 
――お二人は、2018年はどんな1年でしたか?
 
今人「2.5次元ミュージカルやAKB48など、振付の仕事ばかりしていました。舞台には全然、出演していませんでしたが、いろんな新しいお仕事ができて楽しかったです。MANKAI STAGE『A3!』という2.5次元の舞台の立ち上げにも関わって、緊張しましたが、うまくいって嬉しかったです。中でも嵐の仕事が一番大きかったです。甲子園のテーマソングにもなった嵐の『夏疾風』で振付をやらせていただいて、テレビと舞台とではまったく見せ方が違うということを学びました。舞台上で人を動かしてどう見せるか考えていた自分と、カメラで映っているものがすべてという世界ではまったく違っていて。それがとても新しかったです」
 
――そういうことが梅棒の作品にどういうふうにフィードバックされていくのでしょう?
 
今人「さっき納谷君が言っていたように「シンプルにぶん殴る舞台」ってあんまりないんです。そういう中で梅棒に注目してもらえているのかなと思って。梅棒が舞台でやっている要素が、いろんな舞台で必要とされていると思うんです。各現場でそれを出していく中で、ただアウトプットしていくのではなくて、アイドルの女の子だけで始終ケンカをしている作品を作って、それをダンスで表現するにはどうしたらいいのかとか、テレビ独特の人の動かし方を余すところなくインプットして持って帰ろうとはしているので、身に着くことは多かったなと思います。この年で新たに成長できるは思わなかったので、進化は留まるところを知らないぞと自分に言い聞かせています。伸びしろしかねぇぞ!って」
 
納谷「これまでは中心人物を支える役が多かったのですが、2018年は主役として物語の軸になることが一気に増えた年でした。なので、引きの演技で他のキャラクターを立たせたり、全体が見えるようになってきたなと感じた1年でした。ここで自分が軸でやっていても、周りには心を動かしている人たちがいるから、それをどう表現していこうとか、シーンによってどう見せていくべきかということを考えられるようになってきたので、そういった部分で成長しているなと思います。僕も成長は留まるところを知らないぞ!と思います(笑)」
 
――では最後に納谷さん、地元でもある大阪の方に向けて、意気込みをお願いします。
 
納谷「大阪の人は単純に楽しいものが好きだから、きっと楽しんでいただけると思います。楽曲が持っている力も大きくて、ジャストな選曲にすごく高揚したり、ここでこの曲使うの!?って驚いて笑える場面も多いんです。いろんな要素があるので、楽しくないわけがない。「大阪の人間やったら楽しいもの見ぃや!」って思います(笑)」

取材・文:岩本和子
撮影:森好弘



(2018年12月14日更新)


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梅棒 9th “RE”ATTACK
『超ピカイチ!』

【東京公演】
〈全日制ver.〉〈定時制ver.〉
▼12月15日(土)~29日(土)
東京グローブ座

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:489-080
〈全日制ver.〉
▼2019年1月5日(土)18:00
▼2019年1月6日(日)12:00/17:00
森ノ宮ピロティホール
SS席-8800円 S席-7300円
サービスエリア-3000円
[作][演出]伊藤今人
[出演]梅澤裕介/鶴野輝一/遠山晶司/遠藤誠/塩野拓矢/櫻井竜彦/楢木和也/天野一輝/野田裕貴/千葉涼平/納谷健/YOU/RYO/suzuyaka/一色洋平/MOMOCA/大野愛友佳/パイレーツオブマチョビアン/YOH/魚地菜緒
※未就学児童は入場不可。
※サービスエリアは一般発売より発売開始。公演当日入場前に引換券窓口にて座席指定券と引換えください。一部ステージや演出が見えづらいお席になる場合があります。予めご了承のうえ、お買い求めください。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【愛知公演】
〈定時制ver.〉
▼2019年1月9日(水)・10日(木)
名古屋市青少年文化センター
アートピアホール

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