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関西小劇場界の“怪女優”が2年ぶりに集結
道頓堀セレブが『トップガールズ』に挑む!

関西を中心に映像や小劇場で活動する山本香織(イズム)、宮川サキ(sunday)、斉藤幸恵(MC企画)、そして今年2月に東京でインディーズデビューを果たしたYoccoの4人で構成される演劇ユニット、道頓堀セレブ。「古き良き既成台本に向き合おう」と、山本が中心となり2016年に結成。第一弾公演として清水邦夫の戯曲『楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~』を上演し、好評を博した。そして今回2年ぶりとなる公演で、イギリスの女流劇作家キャリル・チャーチルの戯曲『トップガールズ』に挑む。本作で登場するのは、歴史的女性探検家イザベラ、日本の帝の寵愛を受け、宮廷のセンセーショナルな恋愛自伝『とはずかたり』を記した二条、ブリューゲルの絵画の中で地獄を旅する狂女フリート、女性であることを隠し続けた法王ジョーンなど、歴史や芸術作品に名を残す面々。ほかにも古今東西のヒロインたちが登場し、“史上最強のガールズトーク”を繰り広げる。「セリフ量がものすごい」という一筋縄ではいかない本作に向けて、山本が意気込みを語ってくれた。

――まずは道頓堀セレブを立ち上げたきっかけから教えていただけますでしょうか?

「2016年に燐光群さんが東京で『楽屋』フェスティバルをするというのを知って、何を思ったのか“これや!”と。で、エントリーした後からキャストとスタッフを集めたんです(笑)。昔から知り合いやったけどガッツリお芝居をしたことがなかった斉藤幸恵と、日本劇作家協会主催の月いちリーディングで共演させてもらった宮川サキ。あとひとりはガッツのある若手を呼ぼうということになり、以前に共演したことのあるYoccoに声をかけました」

――『楽屋』を上演していかがでした?

「東京だけじゃ集客が見込めないから、大阪で試演会をしたんですね。失礼ながらそれまで『楽屋』を観たことがなくて、どんなものか分からないまま作っていたので、稽古進めていくなかで“どコメディ”に仕上がったんです。でも実際、その後燐光群さんから届いた資料映像を観たらおどろおどろしくて…(笑)。で、東京で2ステージやった後、清水邦夫さんのもとで『楽屋』をずっとやってらっしゃった発起人の南谷朝子さんから呼ばれて、“絶対怒られる!”って思いながら恐る恐るご挨拶したら、“実は、楽屋は喜劇なんですよ”って言われて。間違ってなかったんだと思って安心しました(笑)。それからも、機会があれば道頓堀セレブでまた何かやりたいなとは思っていて、今回の公演に至ります」

yamamoto2.jpg ――道頓堀セレブは、既存の戯曲を上演することが特徴のひとつということで、今回は『トップガールズ』ですね。

「小劇場って結構その人に合うように台本を書くというか、当て書きが多いじゃないですか。それって、役者の力量はそんなに伸びないんじゃないかなと思っていて。だから私たちがやるなら、既成台本を使って、昔の古き良き日本語とかその時代の思いみたいなものを、現代に生きている我々がどう解釈してどう表現するかというのをちゃんとやろうと思って。それに今、お芝居やっている人でも古典を読む人が少なくなってきているから、そのとっかかりになってもらえたらなおうれしいですね。今回の『トップガールズ』は、20年前に東京にいた頃に出合った台本なんです。でも当時二十歳くらいなので、面白い台本やなとは思ったんですけど、今やるものじゃない。いつか、この登場人物たちくらいの年齢になって、いい仲間が集まったらやりたいなと思っていたんです。そしたら今回それが叶いまして。でもセリフ量がものすごいから、みんなに台本見せた瞬間、ぶーぶー言ってました(笑)。“最強のガールズトーク”って銘打っていて、ひたすら女子が会話を繰り広げています。台本にして150ページくらい(笑)」

――そんなにあるんですか!大変そう…(笑)。

「20年選手くらいの人たちがもう一度原点に立ち返って、自分の役者としての技量がどれほどなのかをジャッジするのにもいいテキストかなと思うんです。先人たちがやっている映像を観たりすると、やっぱりすごいねんな~って思いますからね。白石加代子さんや銀粉蝶さんらがやられたときのDVDが奇跡的に手に入ったんですけど、腕のある人がやってるのを観たら、まぁ怖い(笑)。150ページくらいの台本が2時間に収まってましたからね。それに近づけるというよりは、それ以上に速いセリフ回しに挑戦しようと思っています。でもそうなると、滑舌が悪かったり、声量が弱かったら何を喋ってるか分からないし、強弱がなかったら意味が伝わらない。それこそがお芝居の基礎なので、その人の力量が試されますよね」

yamamoto3.jpg ――作品としては、どんな内容なんですか?

「1980年代の女性格差が激しい時代の、キャリアウーマンの話です。主人公の女性が男性たちとの熾烈な競争に勝ち抜いて、専務取締役になったんですが、そこに辿りつくまでにはいろんな犠牲とか、誹謗中傷とかがあって。それでも私はこの地位を生きていく、みたいな内容です。『トップガールズ』の一番の見せ所って、最初のガールズトークシーンなんですよ。マーリーンという主役のキャリアウーマンが、専務取締役に就任したことを自分で祝ってパーティを開くんです。そこに歴史上のトップガールズが集まってくる。だから時代がバラバラで、絵画のモデルさんとか、帝に仕えた側室さんとか、女性冒険家さんとか。彼女らが自虐ネタみたいな話をずっと喋り続けるんです。これが一番の見せ所ですね。客演さんにも出ていただき、日替わりゲストさんにもワンシーンを担っていただきます。今回もコメディに仕上がると思いますよ」

――東京では第30回池袋演劇祭に参加されます。

「関西の役者も捨てたもんじゃないぜ、というのをアピールできたら(笑)。もちろん大阪の芝居仲間とか、役者を志す若い人たちとかにも。今回51団体が参加する中で、そこから大賞、優秀賞、豊島区長賞とかで上位10団体が選ばれるんです。私、過去にも別の団体で何回か出てるんですけど、賞を逃したことがないんですよ。今回は自分のユニットでもあるので、ぜひ賞を獲りたいと思っています!大阪でも前回の会場はキャパが小さかったので、前回観られなかった人にもご覧いただきたいですね。あと、今回は『トップガールズ』という題材に沿って、アフタートークのある回では異業種の方をお呼びして、女性の働き方や生き方をテーマにお話したいと思っています」

関西小劇場界の怪女優たちが挑む『トップガールズ』。まさに“史上最強”のガールズトークに期待したい。

取材・文:黒石悦子



(2018年9月 5日更新)


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プロフィール

山本香織(やまもとかおり)
1987年KTV『赤いバッシュ』で主役デビュー。 以降、東京を拠点としていた時期もあったが、現在は関西で活動中。 テレビドラマ、CM,、舞台など多数出演。 演技力の評価が高く、関西では、劇場のチラシから「山本香織」の名前が消えることはない、と言われるほど。ダンス・タップ・日舞も現役。芸歴30年を超えた今も、ますます己に磨きをかけている。 お酒と会話をこよなく愛す、根っからの「役者」である。


道頓堀セレブ『トップガールズ』

【大阪公演】
▼9月14日(金)~17日(月・祝)
(金)19:30 (土)11:00/19:00 (日)11:00/16:00 (月・祝)11:00
浄土宗應典院 本堂
一般-3500円 U-22-2500円(22歳以下、要身分証提示)
シニア割-2500円(60歳以上、要身分証提示) ペア割-6000円(2名分)

【東京公演】
▼9月28日(金)~30日(日)
(金)19:00 (土)13:00/18:00 (日)13:00
コフレリオ 新宿シアター
一般-4000円 U-22-2500円(22歳以下、要身分証提示)
シニア割-2500円(60歳以上、要身分証提示) ペア割-7000円(2名分)

[脚本]キャリル・チャーチル
[演出]泉寛介
[出演]山本香織/宮川サキ/斉藤幸恵/Yocco/美香本響/帯金ゆかり/三原悠里
[大阪公演ゲスト]千田訓子/永津真奈/田所草子/皷美佳
[東京公演ゲスト]右近健一/武隈史子
※未就学児童は入場不可。
※ペア割は2枚単位での販売。
【お問合せ】道頓堀セレブ dotonboriceleb@gmail.com

公式HP
https://doutonboriserebu.info/

あらすじ

1979年、「鉄の女」と称されたサッチャーはイギリス史上初の女性首相に就任した。その頃、ロンドンで働くキャリア・ウーマン、マーリーンは男性社員との激しい競争の末、重要ポストを勝ち取った。物語は彼女の昇進祝いパーティから始まる。
驚くことにパーティの参列者は、歴史的女性探検家イザベラ、宮廷のセンセーショナルな恋愛自伝「とはずかたり」を記した二条、ブリューゲルの絵画の中で地獄を旅する狂女フリート、女性であることを隠し続けた法王ジョーン、カンタベリー物語に登場する異様に貞淑な妻グリゼルダなど歴史や芸術作品に登場する面々。彼女たちは昇進祝いそっちのけで盛大に自分語り大会をはじめる。
女性としてトップを走っていた彼女らの、女性ならではの壮絶な苦労話・自慢話。「頂上決戦女子会」の夜は更けてゆく。
幻の一夜から一転、舞台はマーリーンとその部下ネルやウィンの働く人材派遣会社へと変わる。やがてマーリーンや同時代の女性の生き方、血縁であるニートのアンジー、保護者ジョイスの現実生活、彼女たちの悲喜こもごもがにじみ出る麓の地平へと導かれる。
最強のガールズトークは女性のワーク・ライフ・アンバランスを映し出す。

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