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「うめだ文楽」2018年もやります!
新リーダーと若手メンバー4人が語る見どころと意気込み
文楽初心者、大歓迎!!

2015年、「初心者でも気軽に文楽を楽しめる企画を」と、グランフロント大阪のナレッジシアターでスタートした「うめだ文楽」。大阪駅に近くて便利、平日の夜公演もある、解説があってわかりやすい、ゲストと出演者のトークイベントも楽しい…。毎回、約半数の観客が文楽初心者で、観やすいと好評だ。文楽の若手メンバーにも貴重な経験の場となっている。毎年公演を重ね、2018年には4回目を迎える。演目は、歌舞伎でもなじみのある『傾城恋飛脚 新口村の段(けいせいこいびきゃく にのくちむらのだん)』。今回から人形遣い・吉田簑紫郎(みのしろう)が新リーダーになった。3回目の出演となる豊竹希太夫(のぞみだゆう)、全公演に出演してきた三味線・鶴澤寛太郎、そして入門3年目で初参加の人形遣い・吉田玉征(たまゆき)。緊張しっぱなしのイジられキャラ・玉征を含む4人が、作品の見どころから公演への意気込み、これまでの「うめだ文楽」についてなど、たっぷりと語ってくれた。

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――今回からリーダーが吉田幸助さんに変わって、簑紫郎さんになりましたね。
 
簑紫郎:公演までの段取りとかを引き継いでやらせていただいてます。公演始まるまでが大変で、演目を決めたり、人数調整とか時間調整、人を確保するとかが、けっこう早い時期なんです。みんな来年や再来年の仕事がすでに入ってるので、とにかく人数確保して演目決めるまでが、まず第1段階。でも、みんな声を掛けたら快く受けてくれるので、逆に助けられてます。「うめだ文楽」はほんまに手作り感満載の公演なので、それぞれの気持ちがぶつかる時もあるけど、最終的に一緒になる。一緒になるまでが結構大変なんですけどね(笑)。
 
――今回、『新口村』に決められたのは?
 
簑紫郎:「うめだ文楽」は出演者の人数が限られていますし、どうしても本公演の合間になるので、公演前のお稽古とか三味線さんも太夫さんも大変なんですよ。でも、本公演では僕たちに巡ってこないような演目を考えたうえで、お客さまも楽しめる演目を、と。『新口村』はシンプルな親子の情愛や恋愛がギュっと詰まった作品なので、これがベストかなと。
 
――作品の見どころと、ご自身の注目してほしいところを教えてください。
 
寛太郎:三味線の立場でいうと作品としては地味で、派手な手数も特になく、太夫さんが美声を聞かせるところがあるわけではないんです。でもその分、ひとバチで何かを表現してたり、一つのフレーズを弾き分けたりと、細かい仕事が多いんですね。こういう世話物には、いわゆる時代ものの大きな段などとはまた違う難しさがあります。『新口村』は、文楽を初めて観る方には少し分かりにくいかもしれないですけど、メロディの中にいろんな意味があって、情景を表すバチとかがたくさんあるんですよね。三味線弾きとしても修行のしがいがある作品。少しマニアックな楽しみ方にはなりますけども、何に気を使って弾いてるのかなとか、どういう意味があるのかなとか、ご自身で探ってもらうのも、聴きどころのひとつかなぁと思います。
 
:僕にとって『新口村』は、文楽に入るきっかけになった思い入れのある作品なんです。文楽の世界に入る前、長唄、常磐津、謡曲といった日本の音楽をいろいろ聴いていた中で、たまたま借りた『新口村』の義太夫節がすごく面白くて。歌うようなメロディがあり、落語みたいな話芸、言葉の部分もあり。それがきっかけで、NHKの文楽の放送を見たり、本を読んだりしたんです。前半は忠兵衛と梅川のやりとりが主に曲で表現され、後半になって、お父さんの孫右衛門が出てくるとせりふで運んでいくんですけど、お父さんの存在を語るのがすごく難しい。ドラマって、若い男女の恋愛の方が入りやすいかもしれないですけど、罪を犯して故郷にいるお父さんに会いに行くという、深い部分を作っていくのが結構大変だと思う。お父さんをどれだけ、それらしく生かせるかが目標ですかね。それから、ちょうど公演が2月の寒い時期なので、季節感は本当ぴったり。雪も降るので、現実と芝居の空気感を両方楽しんでもらえたら、と思います。
 
簑紫郎:2月の寒い季節に、静かにしんしんと雪が降っているなか、新口村にあるひとつの家の中で物語が進むので、とにかくシンプルに雰囲気を大切にしたい。元々僕は、近松門左衛門の『曽根崎心中』とか『冥途の飛脚』のほうが好きでした。でも段々、封印切りの場面より、『新口村』の切な~い雰囲気がすごく好きになって。見どころはそのあたりですかね。『冥途の飛脚』も『新口村』も、とにかく梅川のさわりの曲が好きです。初めて観る方には、雪の降る雰囲気のある空間の中で、男女の恋愛、親子の情愛を感じていただけたらいいなと思っています。
 

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玉征:僕、まだ1回しか『新口村』をやったことがないんです。それでも、よく覚えてる演目ではあります。終始悲しい雰囲気で、終わりも切な~く終わるんですけど、文楽のよくあるパターンで、恋人同士の恋慕と嘆きが一緒に表現される。そういう意味では、『新口村』は一番オーソドックスなパターンかなと思います。見どころとしては、最後に孫右衛門が恋人たちを送り出す場面が一番印象に残ってます。すごくカッコいいんですよ。哀しいんですけど、いい物語で、いいもの観たなっ思っていただけると思います。
 
――簑紫郎さんと玉征さんは、どの人形を遣うのですか?
 
簑紫郎:玉征は孫右衛門の足。僕は梅川です。何年か前に若手の公演でやらせてもらったんですけど、とにかく師匠(人間国宝・吉田簑助)のすごく好きな役で、ただきれいなだけじゃなくて、すごく切なくなる。もちろん師匠が遣うからなんですけど、とても哀愁が漂っていて。こんなにいい役はないなと思うぐらい、すごく好きな役です。
 
――玉征さん、「うめだ文楽」の話は聞いてましたか? 
 
玉征:はい。いろいろ苦労されてる話をよく聞きます(笑)。過去の兄さん方を見て、頑張ってやってるなって思ってました。
 
簑紫郎:ケンカするしね(笑)。
 
玉征:そうですね(笑)。でも、ずっと出たいと思ってました。都合が合わなくて一度も観られてないんですけど。
 
簑紫郎:今回、声かけた時に「えっ! いいんですか!」って、すごく喜んでくれたもんね。
 
玉征:若手が中心のプロジェクトですし、僕も文楽の世界に入ったからには参加してみたいなと思って。
 
――全公演に出演されている寛太郎さんは、「うめだ文楽」についてどのように感じられていますか?
 
寛太郎:1回目はみんな、“やりきった”という感じだけで終わってると思うんです。作品的にも背伸びしているし、あんまりやったことないトークをしたり、というのもあって。みんなどれくらい背伸びしているか分からないですけど、そこから得るものは絶対あるはずですね。少なくとも僕は、こういう大きい演目をやることで、体力面でもそうですし、場馴れもできた。いろんなことに慣れてくるというのはすごく大きな財産になってます。なかでも師匠に稽古していただく機会ができることが、ほんとにありがたいですね。「うめだ文楽」がなかったら何十年も先にしかできない大曲ですので、稽古してもらうことがないんですよね。でも、こういう大きい演目をやらせてもらうと、師匠も稽古せなアカンなってなりますし、僕も稽古していただかないとできないから、勉強するチャンスができるんです。それが本当にありがたいです。
 

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――師匠や周りを巻き込んでいかないといけないから、大変ですね。
 
寛太郎:もっと巻き込まなアカンと思いますけどね。“若いのがやってるわ~”って、師匠方に思われているようじゃダメなんです。文楽を盛り上げようという志は一緒。みんなで取り組んでいる意識がないとアカンので、もっと巻き込んでいきたいです。
 
簑紫郎:それはあるよね。メンバーだけでやってるけど、“文楽”としての責任を背負ってやらせてもらってる。でも、初めて文楽を観るお客さんが半分ぐらい来てくださってること考えると、文楽が盛り上がるきっかけになればいいなと思います。
 
寛太郎:そこはいい意味で変わってないですよね。これまで3回やってて、3回ともお客さんは半分ぐらい新しい人が来てくださってて。
 
:毎回、初めてだなっていう感じのお客さんでも、けっこう反応してくださってるんです。義太夫って聴き取りにくかったり、分かりにくかったりすると思うんですけど、それでも反応がすごく感じられて。それによって、僕らもやりやすくなることもあるんです。
 
簑紫郎:1回目の時はただがむしゃらにやってました。2回目参加させてもらったときに、こんなにたくさんの人に助けてもらってやってるんだってすごく感じましたね。これからも、みんなで続けていきたいなと思います。
 
――トークショーにも慣れてきました?
 
寛太郎:そうですよね、特に何も考えずにしゃべってます。
 
:それなりに楽しんでやってます。師匠が来てたら、やっぱり緊張しますけど(笑)。
 
簑紫郎:僕は、これしゃべったらアカンかなとか、これ言っていいんかなとか考えてしまうんですよ。いつも質問されて考えながらしゃべってるうちに質問の内容忘れて、全然違うこと答えてしまう(笑)。
 
:確かに、その質問にどう答えていいのかなって、考えてしまいますよね。
 
簑紫郎:それに僕、アガリ症なんです。緊張しぃ。だから、しゃべらんでいい人形遣いをやっているんですけれど…。
 
玉征:僕もしゃべりベタなんですよ。だから、今から何しゃべるか考えておきます(笑)。
 
簑紫郎:人形遣いって、そういう人が多いんですよ。人前であまり話したくない。でも、演じることって楽しいやろなって。自分の代わりに人形がやってくれるし。
 
寛太郎:鑑賞教室で解説してるから、舞台前にしゃべるのはある程度慣れてきたとは思います。
 
簑紫郎:僕も6~7年、鑑賞教室の解説を担当させてもらって、だいぶ話せるようになりました。あれは経験しといて良かった。すごく迷ったけどね。
 
寛太郎:そうですよね。僕も解説は最初パニックになってました。
 
簑紫郎:解説やり始めのとき、挨拶して頭真っ白になって、10秒ぐらい止まって、「あれ?」とか言って(笑)。
 
寛太郎:順番間違ったらパニックですよ。でも、トークショーはゲストの方々が上手に導いてくれるから。頭働いてなくても、質問に答えていたらいいから気持ち的には楽ですね(笑)。
 

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――ゲストにもよりますよね。
 
寛太郎:(桂)南光さんやったら、面白くしゃべってくれるので、僕らしゃべらんでいいくらいなんです(笑)。
 
簑紫郎:しゃべらんほうがお客さん喜ぶかも。僕らが聞いてても面白いもん(笑)。「今日、お客さんになっててもいいですか?」みたいな(笑)。だから1回でも出てもらうと「うめだ文楽」の勢いをバンとつけてくれる。
 
:初めてご覧になるお客さんも、安心すると思いますね。
 
――では最後に、今回の「うめだ文楽」への意気込みをお願いします。
 
寛太郎:もちろん、気合入ってます。大きい舞台やから稽古量も増えますしね。でも若さを売りにしていくよりは、若手がやっているけど、それなりに成熟したものが観られる、そして、文楽をやってる人間の素顔が見えるっていうのがいいと思う。僕は4回目ですから、回数重ねている分の経験値を生かせればいいなと思っていて。希さんも簑紫郎さんも3回目ですしね。「うめだ文楽」がそんなふうに成熟していく過程も見ていただけたらと。もし1回目から観続けてくださっている方がいらっしゃって、その成長を感じてくださればさらにリピーターになっていただけるし。最初は文楽初心者だったお客さまも若手の成長とともに観る眼が肥えていくような公演になればいいな、と少し思っているので。そういう回数を重ねた強みが出せたらいいなと思ってます。
 
:初めて文楽に接したお客様に、“あ、太夫っていろんな人物を語り分けてるんだ”とか、作品や太夫やそれぞれの仕事について、“文楽ってこういうものなんだ”っていうエッセンスがちょっと出るような、そういった舞台を作りたい。最初は僕も何も分からずに義太夫を聴いて、いいなと思った。お客さんが、“義太夫って面白い”、“分からないけどすごいな”って、少しでもそう思っていただけるように頑張りたいと思います。
 
簑紫郎:僕も寛太郎君が言ったことと、まったく同じ意見ですね。若さだけでは許されへん部分がある。ちょっと変わったことやってる満足感、達成感だけではアカンと思うんです。若いから失敗が許されるんじゃなくて、芸の質を落とさずに、むしろリピーターや文楽好きの人にも、“あ、ここまでできるんや”っていうのを分かってもらえるぐらいにしないと。また初めての人にも、初めて観るからこそ質の高いものを見せないとっていうぐらいの気持ちじゃないと僕はダメだと思うんです。本公演の気持ちそのままで本番に挑みたいなと思っています。
 
玉征:僕はせっかく与えていただいた機会なので、とにかくがむしゃらに頑張るだけです。この機会を自分のせいで無駄にしたくないので、自分のためにも頑張ります。

取材・文:高橋晴代
撮影:大西二士男



(2017年12月 7日更新)


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『うめだ文楽2018』

チケット発売中 Pコード:481-366

「傾城恋飛脚 新口村の段」
▼2018年2月2日(金) 19:00
▼2018年2月3日(土) 11:00/15:00
▼2018年2月4日(日) 11:00/15:00

グランフロント大阪 北館4F
ナレッジシアター

全席指定4000円

[出演]豊竹希太夫/鶴澤寛太郎/吉田幸助/吉田玉勢/吉田簑紫郎/桐竹紋吉/吉田玉誉/吉田簑太郎/桐竹勘次郎/吉田玉彦/桐竹勘介/吉田簑之/吉田玉延/吉田玉征

[ゲスト]
桂南光(2/2(金)19:00)
NAOTO(2/3(土)11:00)
三戸なつめ(2/3(土)15:00)
石田靖(2/4(日)11:00)
三浦しをん(2/4(日)15:00)

※未就学児童は入場不可。車椅子席ご希望の方は問合せ先まで。

問合せ:うめだ文楽事務局(平日11:00~18:00)
[TEL]06-6314-8262

チケット情報はこちら

「傾城恋飛脚 新口村の段」
あらすじ

大坂の飛脚宿で働く忠兵衛は遊女・梅川と恋仲になり、公金300両の封印を切って梅川を身請けする。雪の降る中、2人は死ぬ覚悟で忠兵衛の故郷・新口村にたどり着く。隠れる2人の前に忠兵衛の父・孫右衛門が通りがかるが、薄氷に足を滑らせる。思わず飛び出し、介抱する梅川。彼女の話から事情を察した孫右衛門は、苦しい胸の内を語る。2人に目隠しをし、親子を引き合わせる梅川。追っ手が迫る。逃げる息子と恋人を見送る父は手を合わせ…。罪人になっても、親にとって子供は可愛いと息子・忠兵衛を想う父親・孫右衛門。しんしんと降る雪が太鼓の音で表され、親子の情愛、男女の愛が描かれる。