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どうしようもない人間の“業”の不協和音が鳴り響く
『日本総合悲劇協会 vol.6 「業音」』が大阪初上陸!

2002年に東京で上演された松尾スズキ作・演出の『業音』。演歌歌手として再起を目指す落ちぶれた元アイドルが、借金を返すためにマネージャーとともに目的地に向かっていた道中、起こしてしまった交通事故が引き金となって不幸の連鎖に陥ってゆく。自殺願望を持つ夫と事故で植物人間となってしまった聡明だった妻、堕落した兄と妹、自分のコピーを作ることに執着するゲイ、正体不明の老婆など、業を背負った人物たちが生み出す不協和音…。初演では荻野目慶子が演じた元アイドルの土屋みどりを、大人計画の平岩紙が担う。

「初演は違う役で出演させてもらっていたのですが、荻野目さんの演技を肌で感じていて、荻野目さん独特の空気が劇場に充満していた印象がありました。今回、再演するにあたって“平岩でどうだ”と松尾さんに言われたときは、私で大丈夫なんだろうかと思ったのですが、17年間、役者として経験を積んで、挑戦させてもらっていい役なのではとようやく向き合えそうなタイミングだと思いました。『業音』は松尾さんにとっても強い思い入れがある作品です。劇団公演で初めての主演をやらせていただくので、やり遂げなければと思っています」。

演じる役、土屋みどりについては「やらなきゃいいのに手を出して、不幸の方に転がっていく人」と解説する。「そこがどんくさいなと思うのですが、人は誰かを頼って生きたいと思うし、誰かがいないと寂しいと思いながら、誰かにもたれかかって生きようとしている。私とは逆のタイプですが、どこか納得させてしまうものがあって。今回も、見ている人にも説得力を持って、“分かる、分かる”と共感してもらいたいですね」。

劇中に出てくる人物はどうしようもなく人間くさく、悲しい。彼らをとりまく社会問題――介護、貧困、テロなど悲劇を誘発する出来事は初演から15年を経た今なお、私たちが住む社会でも変わらず、その根は深くなる一方だ。平岩から見ても本作は松尾作品の中でも特殊だというが、松尾が“普遍的な作品”と位置づけるのも「分かるような気がする」と話す。問題は何も解決していない。

「初演のときは“終わった”という気持ちが全くなくて、常に“明日こそやってみよう”みたいな、穴を掘って演じていているような感覚でした。“やりきった”と一生言えないのではと思うくらい、さまよいながら演じていたように思います」と振り返る。それだけに再演が決まった際は「封印していた重い鉄の扉を開けたような感じがした」と言う。

「残虐な芝居でもその裏には優しさがあるから、演じていても気持ちがいいし、お客様にもその深いところが伝わればと思います。隠されたメッセージを感じ取ってもらいたいです」と松尾作品の魅力を語る。『業音』は大阪、松本公演の後、パリでも上演される。「松尾さんのセリフがフランス語にどう翻訳されて、どこまでニュアンスが伝わるのか気になりますね。どういうふうに受け止められるんだろう?」と、未知なる体験を心待ちにしていた。

日本総合悲劇協会 vol.6 「業音」は9月21日(木)~24日(日)、松下IMPホールで上演。チケット発売中。




(2017年9月20日更新)


Check

日本総合悲劇協会 vol.6 「業音」

▼9月21日(木) 19:00
▼9月22日(金) 19:00
▼9月23日(土) 13:00/18:00
▼9月24日(日) 13:00

松下IMPホール

全席指定-7800円
ヤング券-3800円(22歳以下/要身分証明書)


[作・演出]松尾スズキ
[出演]松尾スズキ/平岩紙/池津祥子/伊勢志摩/宍戸美和公/宮崎吐夢/皆川猿時/村杉蝉之介/康本雅子

※未就学児童は入場不可。
※ヤング券は、公演当日に22歳以下の方対象の当日指定席引換券です。当日劇場受付にて開演30分前より整理番号順に指定席券とお引換えとなります。お引換えの際は生年月日の分かる身分証明書を提示ください。2名以上ではお席が離れる場合がございます。
※車椅子での来場は公演前日までに問合せ先まで要連絡。

[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

【当日引換券】(Pコード:482-047)
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