インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 舞台『sound theaterⅦ』で 森山開次、TSUKEMENに新たな光を当てる 演出家・藤田俊太郎インタビュー

舞台『sound theaterⅦ』で
森山開次、TSUKEMENに新たな光を当てる
演出家・藤田俊太郎インタビュー

パフォーマーとミュージシャンの競演が堪能できる舞台『sound theater』の第7弾が、9月2日(土)、3日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演される。毎年恒例の『sound theater』は、同センターのオリジナル企画としてさまざまなアーティストが出演し人気を集めてきた。今回は、類まれなる身体能力を使い、ナイフのような鋭いダンスで観客を圧倒するダンサー・森山開次と、TAIRIKU、KENTAの2ヴァイオリンとSUGURUのピアノで構成されるインストゥルメンタル・ユニットで、オリジナル曲をはじめ、クラシックや映画音楽など多彩な楽曲で豊かな世界を紡ぎ出すTSUKEMENが競演する。そして、演出を手掛けるのは、昨年上演されたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で第24回読売演劇大賞最優秀作品賞と、同優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎だ。今年、同センターなどで上演された二人芝居『ダニーと紺碧の海』でも演出を担当。既存の技量を超える役者の演技力を見事に引き出し、繊細で美しい作品を作り上げた。その才能は今、演劇界で大いに注目されている。藤田に『sound theater』にかける思いを聞いた。

――藤田さんの『sound theater』の演出は昨年に引き続き、今回で2回目です。まず、森山開次さんの印象をお聞かせ下さい。

森山さんのソロや振付をされた作品は拝見しています。過去に兵庫県立芸術文化センターで上演された『sound theaterⅣ』にも出演されていて、素晴らしいパフォーマンスでした。先月森山さんが振付で参加されたミュージカル『パレード』もものすごく良かったです。ノンジャンル、いわば“森山開次”というジャンルを確立されている方だと思います。自分の探求したい世界をそのつど、設定して実現されている。和でもあり洋でもあり、ダンスを通じて自分の場所を身体で探していらっしゃるという印象を受けています。


――森山さんは、ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』など舞台にも出演されていて、「森山さんのダンスが浮くのでは?」というこちらの予想を見事に裏切り、個を消して完全にカンパニーの中に溶け込むダンスもされますよね。

あれだけ強烈な個性をあえてカンパニーに合わせるということができる方ですし、ソロのときは、自身のオリジナリティーに満ち溢れている。個性的であればあるほど個性的でないこともできる。そこがすごいですね。

――森山さんとTSUKEMENさんは昨年、佐渡で開かれた能舞台で共演されていますが、藤田さんの演出で森山さん、TSUKEMENさんとのコラボレーションは初めてです。どんな舞台になるのでしょう。

先日、森山さん、TSUKEMENさんとお会いしたんですけれど、お二方は似ているんだろうなと感じました。森山さんが目指しているところと、TSUKEMENさんが目指しているところは同じなのではないかと。何色にも染まるんだけど、何色にも染まらない、個性と無個性の間を行き来できる。森山さんは「存在していることと、存在していないことは僕の中ではイコールなんです。その間をダンスでたゆたっていたいんですよね」とおっしゃったんです。非常に哲学的ですよね。

――かっこいい言葉ですね。森山さんのダンスのように哲学的です。TSUKEMENさんの印象はいかがでしたか。

TSUKEMENさんが今年4月に発表したアルバム『RECHARGE』は完全にオリジナル曲のみで構成されています。オリジナルでこれだけ個性を発揮しながら、過去の映画音楽やアニメ音楽をアレンジした楽曲も素晴らしい。既存の曲はその世界を崩さずに、3人でどれだけ表現できるかを目指している。彼らも個性と無個性の間を行き来している。限られた枠の中でも勝負し、そこに留まらずオリジナルにも挑戦する。TSUKEMENさんと森山さんもお互い、そういったシンパシーは感じ合っているのではないでしょうか。特に『RECHARGE』では音楽的なアプローチの仕方や、エッジの足し方が過去のアルバムとは全然違いますね。どの作品も素晴らしいと思います。僕は演劇人なので『sound theater』を演出するにあたって、やはり空間を目いっぱい使いたいです。空間や舞台装置、巨大な布を使ったり、ピアノを動かしたり。普段、TSUKEMENさんは音響装置を使わず生音にこだわって演奏されているとうかがっています。でも今回は劇場ですので、普段奏でている音とは違う聞こえ方ができるんじゃないかと考えています。曲によって空間やセットを移動して、情景が変わっていくことで楽曲に違う光を当てられないだろうか。森山さんはダンサーなのですから、舞台上は常に4人いるわけです。ある一日、もしかしたらある人生そのものを表現できるような作品を4人の身体で構築できないだろうか。TSUKEMENさんのライブの映像を拝見すると、踊っているみたいに演奏されていますよね。あの踊っているかのような演奏する姿を芝居みたいにできないかと。セリフも入れて。

――セリフも入れるのですか。

TSUKEMENさんはとても詩的な言葉をアルバムのライナーノーツに書かれている。彼らのライナーノーツはセリフみたいです。そのようにTSUKEMENさんに伝えると、3人の表情がキラッと輝いたんです。これは面白くなるぞと思いました。ここが演出の第一歩が始まる瞬間なんです。そのライナーノーツの文章を舞台でセリフとして発したらどうなるのか。彼らが紡ぎ出している音楽には言語があります。TAIRIKUさん、KENTAさん、SUGURUさんがそれぞれの観点で曲を作りタイトルをつけていますが、それを言語化して、演劇的なアプローチをしたらどうなるんだろう。一本の芝居みたいにしたいですね。

――それは非常に面白いですね。

この三者は兵庫県立芸術文化センターのチーフプロデューサー・栗原喜美子さんが企画された『sound theater』でないと出会っていないと思います。森山さんとはどこかでご一緒する機会があったかもしれませんが、TSUKEMENさんとはこの企画でないと出会えない。せっかくだから、僕が今まで一本一本芝居を作ってきた形で作品を提案できないかと思っています。

――今年、同センターで演出された『ダニーと紺碧の海』のような、「言葉、言葉、言葉」で構築された舞台とは全く違う世界観だろうと想像していました。
 
僕もそう思っていたんですが(笑)、TSUKEMENさんとお話ししたら「色々と挑戦したいんですよ!」とおっしゃったんです。曲目は決まっているのですが、テーマは僕が好きな戯曲の一部分でもいいのかなと。今、色々と考えているところです。僕は芝居をやるときは、言葉を大事にして、言葉を読み解いてセットを作るんです。今回は、TSUKEMENさんが紡ぎ出す音楽と、森山さんのダンスからセットを生み出します。客席も含め劇場中を使ってみようかと。TSUKEMENさんもコンサートでは客席に降りて来て、演奏するそうですので。

――確かに、客席で演奏されていますね。藤田さんが今夏に演出されたミュージカル『ピーターパン』でも客席を大いに使っていらっしゃいました。
 
使いまくっていましたね。『ピーターパン』では、梅田芸術劇場メインホールの1階、2階、3階、全部の客席にキャストが行くことが僕の中での大テーマでしたから(笑)。

――キャストは大変ですよね。でも、皆さん若いからできる(笑)。

3階まで行きましょう、駆け上がりましょうと言いました。

――今回、森山さんもセリフを話すのでしょうか。

いいんじゃないですかね。この間提案したら、「やる」とおっしゃっていました。

――セリフは藤田さんが考えられるのですか。
 
僕も考えます。プラス、TSUKEMENさんのアルバム『RECHARGE』のライナーノーツに書かれている言葉を使うと思います。例えば、楽曲『SAKURA』には「僕達が生まれる前から、そしていつか僕達がいなくなるこの先もずっと、同じ場所に佇む桜。四季の廻り、命の廻りは、尊く、儚い」と綴られています。本当に詩的ですよね。

――コンサートのMCとは全然違う響きになりそうですね。
 
TSUKEMENさんが選んだ言葉ですからね。別に朗読してもいいわけです。また、TSUKEMENさんは音楽を演奏されているときの表情が最高にいいですよね。あの躍動感や持っているものを最大限に引き出したいです。

――TAIRIKUさんが作曲された曲『JONGARA』の由来は、津軽のじょんがら節だそうです。以前、TSUKEMENさんにインタビューをしたとき、TAIRIKUさんは「三味線の高橋竹山さんが好きで、彼のお弟子さんに会いに青森まで行き、三味線について教わった」とおっしゃっていました。
 
TAIRIKUさんが和が好きだということの根本は伺っていないのですが、音楽で根源的な旅をされているのではないでしょうか。僕の直感ですが、自己に何があるんだろう、根源的にどういう音があるんだろうと探っていらっしゃるのではないかと。
 
――藤田さん自身も絵本ロックバンド虹艶(にじいろ)Bunnyとして音楽活動をされていますね。
 
生意気なんですけど、売れないアマチュアバンドとして一生懸命やっています(笑)。虹艶Bunnyですので『ピーターパン』のセットも虹が満載になりました(笑)。原作の小説の中に「たくさんの光が集まった」と書いてありましたので、ネバーランドは虹じゃないかという話になって。それも言葉から生まれたものですね。
 
――虹艶Bunnyではベースのご担当で作詞もされています。

深夜に貸スタジオで演奏しているオジサンたちです(笑)。譜面が音楽的に読めるとはとても言い切れませんが、舞台を演出するときに、どういう構造になっているのか音楽監督に聞くことはできます。的外れなときもありますが、恥ずかしがらずに聞ける。ここでどうしてティンパニーが入ってくるのか、オーバーチュアはなぜ、この小節なのか。そういう質問を臆することなくできる。そうすると思わぬ発見がありますし、得ですね。TSUKEMENさんは何故、3つの楽器にこだわるのか。何故、3人なんだろう。2だと関係性は2人だけですが、3になると関係性は増えていく。演劇でもよくそう言いますよね。そこをTSUKEMENさんは狙っていらっしゃるのではないかと。それも音楽を聞いて読み解く力です。普段、音楽が好きで、親しんでいる僕の根気強さはいい影響を及ぼしていると思います。TSUKEMENさんを前にしておこがましいんですが(笑)、ライブもやっているので、その経験は舞台に生きていると思いますね。
 
――音楽をやっていらっしゃる方は作品を多角的に読み解くことができますものね。ところで、『sound theater』ではどのような選曲になるのでしょうか。TSUKEMENさんはデビュー7年にして、初のオリジナル曲のみで演奏する全国ツアーを展開中です。
 
TSUKEMENさんのオリジナル曲だけでいこうと思います。森山さんの「ここで踊ったらいいのではないか」というアイデアも踏まえ、スタッフを交えて皆で順番を決めました。今回は、3+1で4人の楽器です。森山さんの身体も表現を奏でる楽器と同じですよね。TSUKEMENさんのアルバムの順番でもなく、今やっている全国ツアーのリストでもなく、今作のための新たなリストを作りました。『RECHARGE』だけではなく、TSUKEMENさんの過去のアルバムのオリジナル曲もあります。「映画音楽やカバー曲はちょっと違うのではないか」と皆さんおっしゃっていましたし、僕も同感です。
 
――TSUKEMENさんのオリジナル曲に乗った森山さんの踊りも楽しみです。
 
「この曲はこういうイメージで」と、ドンドンと森山さんに提案させていただこうと思っています。森山さんは自分の身体を構築・演出できる方です。芝居は流れるように転換されていきますよね。舞台が一本の演劇のように変わっていくことを提案して、ここではこういう踊りにとなっていくんではないでしょうか。もしくは踊らないとか。
 
――踊らない。
 
いるだけです。「踊らないことが踊ることかも知れない」という考えをお持ちですよね。
 
――「存在していることと、存在していないことは僕の中でイコールなんです」とおっしゃったそうですものね。
 
ただそこにいて、人生を象徴するような身体の形状を作る。曲と曲の間、もしくは一曲まるまるそれだけでもいいかもしれません。そこにいて、ゆっくり身体が変わっていって、手が動くだけとか。
 
――森山さんの即興もあるのでしょうか。
 
そうですね。でも、即興でないところをちゃんと作りたい。そして、踊らないところでどれだけ踊っているか。それが僕の役割です。即興に見えない即興、あるいは即興に見える作りあげられたもの。
 
――伺っているだけで、ワクワクします。

演出とは何なんだろうとずっと今でも問い続けています。少なくとも言えることは、俳優であってもダンサー、ミュージシャンであっても、その身体を輝かせてお客様に届けるということは共通していますよね。そのアプローチの仕方は、この人だったらこうだろうとそれぞれに提案していけるかだと思っています。例えば『ピーターパン』は、13歳で舞台上での歌や芝居を経験のしたことがない吉柳咲良さんがミュージカルの主役になり初舞台を踏んだ。その場合は、一つ一つの言葉をどう読み解くかということから始めますし、どのようにすれば役になれるかということを一緒に考えていきます。一方、この役はこの人しかいない、まさにピッタリな俳優がキャスティングされた作品の場合もあります。そのときは、困りながらも、逆にピッタリでないアプローチをしてみようと。奇をてらうわけでなく、どうしたら演者が面白がってもらえるかを考えます。面白がったときに新しい感性が出て来る。そこを引き出したいです。今まで舞台上で起こらなかったこと、されなかったことをやっていくのが演出なのではないかと。その人の身体や人生で今まで起こらなかった経験、提案をできるようにすること。僕はそういう演出家でありたいと思います。ただ、演出作品を重ねると再び、同じ人と仕事をする機会があるんですね。よく知っている人とは難しいですね。何かを言うとすぐ通じることは果たしていいことなのか? 僕は「いいこと」とは思いません。俳優も演出家もプランナーもお互い真っ白な状態でいることが大切です。僕自身も常に新しい自分でいたい。そのためには、どれだけの出会いや人生経験、深み、アイデアを持っているかが勝負だと思います。
 
――それはどの関係性や仕事でも同じかも知れませんね。互いに慣れ合いになると緊張感も生まれませんから。
 
そうですね。今回は、森山さん、TSUKEMENさんのファンに、ファンが知らない新たな一面をお見せすることが僕の仕事だと思っています。
 
――藤田さんが俳優やパフォーマーに求めるものは何でしょう。
 
何かを発見できると思える状況や言葉を見つけることです。直接的にこうですというのは、僕はないですね。100の埋め尽くしと100の余白は残して置きたい。「100%答えはこうです」と僕は言うんですけど、それはそのままやらないでくださいという意味でもあります。そうやって苦しめていく(笑)。僕と仕事をするのは苦しいですし、辛いと思います。答えをあげないから。答えは渡しているんですけれど、それだけじゃだめだぞと皆さん、気づくと思うんです。
 
――演出家としての今後のビジョンはいかがでしょうか。藤田さんは、師匠・蜷川幸雄さんがおっしゃった「言葉をたてるのではなく、そこにいて、深みにたどり着いているのか。それだけなんだ」という言葉をずっと大切にされている。私もその言葉は自分に問い続けたいと思います。文章を書くことにしても、あらゆる仕事に通じる言葉ですね。
 
その気持ちは全く変わらないです。言葉を通してどういう深みにたどり着けるんだろうかということだけです。そして、見たことのない場所に出会いたいですし、振り幅を大きくしていきたい。今回も身の震えるような挑戦です。森山さんとTSUKEMENさんに新たな光を当てていきたいです。
 
取材・文 米満ゆうこ



(2017年8月21日更新)


Check

兵庫県立芸術文化センター
プロデュース
「sound theater Ⅶ」

発売中

Pコード:325-449

▼9月2日(土) 16:00
▼9月3日(日) 14:00

兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

全席指定-5500円

[出演]森山開次/TSUKEMEN
[演出]藤田俊太郎

※未就学児童は入場不可。

[問]芸術文化センターチケットオフィス
[TEL]0798-68-0255

チケット情報はこちら