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吉本新喜劇の佐藤太一郎がなんばグランド花月で挑む
本気の舞台『風のピンチヒッター’17』
芸人として、役者として、描いていきたいものは何か?

吉本新喜劇の座員、佐藤太一郎が定期的に開催している『佐藤太一郎企画』の最新公演は、新喜劇入団前に所属していた劇団ランニングシアターダッシュ(現在は解散)の代表作ともいえる青春コメディ『風のピンチヒッター’17』(作・演出/大塚雅史)上演する。弱小野球部が二人の転校生の入部をきっかけに、再び士気を取り戻し、一勝をつかむために奮闘する物語。佐藤は“何も持っていない普通の高校生”という主人公を演じる。

今から20年前、19歳の佐藤が初めて本作を観てランニングシアターダッシュに入団を決めた。

「見た後に立てなくなるくらい感動したんです。むちゃくちゃ元気をもらって、“絶対に(役者として)プロになるんだ”という思いを与えてもらった作品で、その感動を少しでもたくさんの人に知ってもらいたいと思っています。この主人公は、特別なものを何も持っていない。好きという気持ちだけで野球をやっている姿が自分にも重なるところがあるんです。特別なものを持っていなくても、熱量で奇跡が起こせるということをお客様に伝えたいですし、僕自身もまた見たいと思ったんです」

佐藤は現在39歳、高校生の役を演じるにあたって年齢的な限界も感じている。3年前にも「佐藤太一郎企画」として上演したが、主人公を演じるのはこれが最後だと決めている。だからこそ、自身のホームグラウンドであるなんばグランド花月で上演したいと強く思った。

「多分NGKでこの作品を上演するのも最後になると思います。最初で最後ですね。作品は僕の根本になっているというか、原点で。だからこそ、このタイミングでやれたらと思いました。今、吉本新喜劇も全国区に向けてどんどん動いているので、自分を鼓舞する意味でも、もう1回チャレンジしたいと思って」

出演する役者陣は、佐藤と作・演出の大塚雅史の推薦によるもの。いわく、関西の次世代の演劇界を盛り上げていくメンバーだ。佐藤自身、吉本新喜劇の次世代担い手として盛り上げていきたいとう思いがある。

「役者は、20代前半くらいの、若い世代の子もたくさん出ます。技術云々というより、どれくらい気持ちで見せられるかですね。高校野球と同じで、どれだけがむしゃらになれるか。そういう気持ちの強い人たちに出てもらいます。吉本新喜劇からも鮫島幸恵と吉岡友見が出てくれますが、この二人も芝居が好きで。新喜劇の座員の中に“いい役者がいる”とほかの劇団の人に思われて、仕事が増えたらうれしいです。もちろん僕自身も、いろんなチャンスが掴めるように頑張ります」

また、お笑いファン、演劇ファンの橋渡しとしても機能したいと望む。

「僕は、劇団でやってきたから、今、吉本新喜劇でお仕事をいただけていると思うんです。その恩返しではないですが、関西の演劇界を盛り上げたいという思いもあります。吉本新喜劇に入って僕がイベントをやって、その作品を見て新喜劇ファンの人も喜んでくれて、演劇ファンの人の吉本新喜劇を見に来てくれるようになって。そうやって同じものを見てもらっているのですが、それでもお笑いのファンと演劇のファンって別れていて。だからこそ、双方を繋げられるようなイベントをやれたらなとも思っています。今回も初めてNGKに来る演劇ファンの人ってめちゃくちゃ多いと思うんです。NGKで演劇もなかなか見られませんし、そういう意味でも吉本新喜劇やNGKを知ってくれて、新喜劇を生で見たいと思って足を運ぶきっかけにしてくれたらめちゃくちゃうれしいです。新喜劇ファンの人も、この作品で初めて見た役者さんのほかの舞台を見てみたいと思ってくれたら」

佐藤は子どもの頃、吉本新喜劇を見て感動して泣いた経験がある。「これほどまでに人を感動させるなんて」と心を動かされた。その思いは消えることなく、劇団解散を機に吉本新喜劇への入団を希望した。そして2005年に座員募集のオーディションである第1期「金の卵」に合格した。だが、一歩足を踏み入れてみたものの舞台には百戦錬磨の芸人たちがうごめいていた。ここで自分がどうやって生き残るか、自分の武器は何なのか、考えざるを得なかった。

「身内のことを言うのも変ですが、新喜劇はすごい人だらけなんです。なんて才能がある人たちなんだといつも思います。“こんなボケ思いつくんや”“こんなツッコミいくんや”って。もちろん美男美女もいてという中でどうやって勝負するのかと考えたとき、『風のピンチヒッター』の主人公と一緒で“僕には何もない”という思いがあるんです。それでも必要とされる存在になるにはどうしたらいいか。僕は芝居の世界から入ったので、新喜劇の中でも“芝居やらせたら佐藤が一番”と思ってもらいたいと思ったんです。普通にただ“吉本新喜劇に出ています”ではなくて、吉本新喜劇全体でも“あいつは芝居が飛び抜けている、新喜劇の中に本気の役者が一人おる”というような見せ方をしたいと思っています。だからこそ、NGKでの佐藤太一郎企画も、普段の吉本新喜劇とは違うことをすることで差別化を図りたいですし、ものすごくくさい言い方ですけど、そういう挑戦をしている僕を見て、世間の6割の人――エリートが2割、劣等性が2割、普通が6割という比率がありますよね、不良にもプロにもなれない、平均的な層の人たちが自分と重ね合わせて“熱量で奇跡が起こせるんちゃう?”と感じてくれたらと思っています」

舞台上で芸人は瞬発力を求められがちだ。一方、芝居で求められるのは持久力だ。芝居の世界から吉本新喜劇の世界に飛び込んだ佐藤は、相反する生い立ちでどう立ち回っているのだろうか。

「それはもう、同じ陸上と言っても100メートル走とマラソンぐらい、全然違うものなんですよね。多分、僕は新喜劇でも1万メートルくらい走ってると思います(笑)。中距離走のランナーという感覚があります。でも、お客様にも、共演者にも、会社にも必要とされて初めて商品価値があるので、とにかく必要とされる存在じゃないとあかんと思っていて。だからこそ、新喜劇の中でも緊張感を作る役とか、まじめに芝居していじりがいのある存在というものを特化していきたいですね」

目指すは“面白い”役者。そして、吉本新喜劇の佐藤太一郎として映画やドラマなど、演技の場を広げていきたいと話す。

「新喜劇の芸人さんはとにかく、その人自身が面白い。その人の持っているものが面白い。それってすごいなと思いますし、僕にとってはコンプレックスなんです。周囲は普通に存在するだけで面白い人たちばかりです。だからこそ、作り込んだキャラクターで勝負していけたらと思っています」

佐藤太一郎の原点である舞台『風のピンチヒッター』。吉本新喜劇で最も熱い男が熱い芝居でNGKを駆け抜ける!




(2017年6月12日更新)


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吉本新喜劇 佐藤太一郎企画
その19
「風のピンチヒッター'17」

発売中

Pコード:458-504

▼7月4日(火)19:30
▼7月5日(水)19:30

なんばグランド花月
全席指定-3000円

[出演]佐藤太一郎/他

※未就学児童は入場不可。16歳未満の方は保護者同伴に限り入場可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。変更・払戻不可。

[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
[TEL]0570-550-100

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