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ホーム > インタビュー&レポート > 「なぜ信心を捨てなかったのか。現代を生きる 私たちにも通じるものがあるのでは」(高橋恵) 史実をもとに河内に実在したキリシタン大名の 群像劇を女優のみで上演!

「なぜ信心を捨てなかったのか。現代を生きる
私たちにも通じるものがあるのでは」(高橋恵)
史実をもとに河内に実在したキリシタン大名の
群像劇を女優のみで上演!

劇団「虚空旅団」主宰の高橋恵が作・演出を手がける舞台『河内キリシタン列伝』が3月25日(土)・26日(日)の2日間、物語の舞台でもある大東市の旧深野北小学校体育館で上演される。
 
永禄7年(1564年)、飯森城を拠点に政権を掌握した三好長慶がキリスト教の布教を認めると、配下の有力武士73人が宣教師より洗礼を受け、深野池を取り巻くように教会を築き、大東・四条畷の地に新たな信仰をもたらした。本作では、畿内キリシタン第一世代である三箇頼照、池田教正、三木半太夫、結城弥平次とキリシタン大名の高山右近における新たな世を切望する思いと、豊臣秀吉による迫害を受けるに至る史実とを群像劇で描いていく。
 
「飯盛城という、四条畷市と大東市にまたがる大きな山城があって、ここに三好長慶という戦国武将がいたんです。この人が室町幕府末のころに実験を握っていた時期があり、そのときに旧仏教勢力のカウンターとしてキリスト教を将軍に認めさせて、布教の許可を出させたという経緯があります。そして、あのあたり一帯はみんなキリシタンになったという資料も残っています。それが秀吉のバテレン追放令で迫害されていく。その時期の話を描いています」(高橋)。
 
戦国時代に日本で宣教し、名著と名高い『日本史』を残したルイス・フロイス役をはじめ、すべての役を女性で演じるのも本作の見どころだ。その意図を尋ねた。「モノローグで語る部分があるのですが、そこはキャラクターのバックグラウンドなどをわかってもらうためにどうしても必要になります。その演じわけが女性の方が見やすくなるかなというのと、旧勢力のカウンターとしてキリスト教が出てきたことの暗喩として、男性社会に対するカウンターとして女性的なもの、という思いもあります。あとは見た目も華やかになりますね(笑)」(高橋)。
 
関西で活躍する幅広い面々の女優たちに声をかけた。「皆さん初共演で。男性の役が似合う、全くタイプの異なる6名に出ていただきます」(高橋)。
 
物語は、ルイス・フロイスを語り手に、5人の武士たちの半生のエピソードが入り混じる。台本を書くにあたって難しい面もあったが、断片的なエピソードが意外なところで結びついていくところが面白かったと振り返る。「たとえば、結城弥平次は仕えていた主君が若くして亡くなったため高山右近につくのですが、その後に小西行長についたりとか、三木半太夫は三箇頼照、池田教正と同じく三好長慶に仕えていましたが、三好長慶が亡くなってそれぞれ別の主君につき、また再会したり。ルイス・フロイスも大変な目に遭っていて、そのたびに堺に逃げて誰にかくまってもらっていたりとかするので、そのあたりの話も交えています」(高橋)。
 
“キリシタン”と聞くと“弾圧”という言葉が浮かびがちだ。先日公開され、話題を呼んだ映画『沈黙』のように、河内のキリシタンも厳しい迫害を受けたのではないかとつい、想像してしまう。「『沈黙』の舞台になった長崎は、関西のキリスト教と違って貿易による収入も大きかったと思うんです。長崎は権力争いの中で貿易のためにキリスト教の布教を許していたという、割と政権と密着した感じがありますが、関西はどちらかというと精神性が優先されている気がします。宗教として頼るという。それは仏教勢力に対抗しているんですね。当時は仏教の力が圧倒的に強いので。仏教に対するカウンターとしてのキリスト教。権力によって腐敗した宗教と新しい宗教の対立だったと思います」と見解を示す。
 
そのような情勢の中でキリシタンになり、仕えた君主によって翻弄される武士たち。その姿は現代人にも通じるところがあるという。「当時の状況に置かれたら人はどういう行動を取るのかということを、5人をモデルケースにして書きました。本作を通じてまず、この事実があったということを知ってほしいと思います。なぜ権力者が変わって政策が変わっても信心を捨てなかったのか。今、生きている私たちに通じるところがあるので、そこを見ていただけたらいいなと思います」(高橋)。
 
本作は舞台上演のその先も見据えている。そこには本作を地元のドラマを地元の人が上演できるソフトにしたいという高橋の思いがある。「自分たちで声に出してこの物語を演じることで、史実をより身近に感じてもらえると思うんです。上演をして見てもらって、その次にワークショップで部分的にも上演できるようにして、“練習したら自分たちでも舞台ができますよ”ということを届けたい。今回は上演ですが、たとえばリーディングという形にしたらもっと手軽にできますし、ゆくゆくはそういうことができるようになったらいいなと思います」(高橋)。
 



(2017年3月24日更新)


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『河内キリシタン列伝』

▼3月25日(土)18:30~ 
▼3月26日(日)13:30/17:30
旧深野北小学校体育館(大東市深野3丁目28-4)
前売・当日共-1500円 
[原作]「戦国河内キリシタンの世界」神田宏大、大石一久、小林義孝、摂河泉地域文化研究所編
[脚本・演出]高橋恵(虚空旅団)
[出演]飛鳥井かゞり(猫会議)/諏訪いつみ(満月動物園)/杉江美生/竹田モモコ/水柊(少年王者舘)/濱奈美(劇団ひまわり)
[問]大東倶楽部[TEL]0570 -001-962