ホーム > インタビュー&レポート > 聖夜の奈良に野村萬斎演出の劇場版「鷹姫」が降臨!
“室町ミュージカル”と銘打つほど、幻想的でドラマチックな現代能「鷹姫」が、初めて奈良で上演される。アイルランドのノーベル賞詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが、100年以上前に能の影響を受け、自然への畏敬の念を込めて描いた舞踊劇「鷹の井戸」。これが日本に逆輸入され、新作能「鷹姫」として約半世紀の間、演じられてきた。2014年には、大槻能楽堂で野村萬斎演出の「鷹姫」を上演。配役は、老人・大槻文蔵、鷹姫・大槻裕一、空賦麟(くうふりん)に野村萬斎。今回、同じ配役で劇場版として上演される。
物語の舞台は不老長寿の泉。その泉の水を求めて、人間たちがやってくる。が、なかなか探し出せず、次々と岩になってしまう。この泉を守っているのが、鷹の声を持つ乙女の姿をした妖怪?妖精?の鷹姫。泉の水が湧き出る時、鷹姫の妖力?魔力?で、人間はみな眠らされてしまうのだ。岩(人間岩!)の点在する中、泉を探す老人。そこへやってくる若き王子・空賦麟。老人は王子に帰れと言うが…。
今回の企画・プロデュースは、能楽界の若手実力派・大槻裕一(写真左)。「2004年に上演された『鷹姫』をテレビで見て、すごい演目だなぁと。能楽堂だけでなく、ぜひホールでもやりたいと思っていました。泉のところに座っている鷹姫の存在感、動き出す時の妖艶な美しさ。色気のある鷹姫を演じたいですね」。
監督は人間国宝の大槻文蔵(写真右)。「この作品は、世界共通の演劇のひとつだと思います。能の技術の最先端を駆使して作り上げていて、現代性のなかに能の持つ力がある。いろいろな作り方が出来る、大きな幅を持った作品であることで、50年間、魅力的に続いて来たのだろうと思います」。
劇場版として、さらに拡大した演出を考えているのが野村萬斎(写真中)。「舞台上には、紋付を着ている人たちではなく、岩ばかり。能として画期的な岩の存在を強調したいですね。視覚的には、美術セットや照明を使って水の存在感を。聴覚的には、囃子方を含めた岩たちのコロスで。水が湧く瞬間に、呪文のような輪唱があるんです。能楽界にはない輪唱を、しかもステレオ効果でやる。我々にとって、ものすごく刺激的です。そして3人が織りなすドラマ。これらが一体となった、隙のないパフォーミングアーツになると思います。能を、絵本や童話の世界のようにご覧いただければ」。
プログラムは、「鷹姫」の前に萬斎の「三番叟」など、舞囃子を2演目上演する。「1日で新作と古典の両方を観ることができる、お得な内容にしました。能を初めてご覧になる方にも、能が好きな方にも、楽しんでいただけると思います」(裕一)。
取材・文/高橋晴代
(2016年12月20日更新)