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ゲストに手渡されるものは衣装だけ…!?
前代未聞の実験芝居が人気のシリーズ、
ビーフケーキ・近藤企画『L岡診療所』が間もなく開催!

5月20日(金)~22日(日)、大阪・ABCホールでビーフケーキ近藤企画『L岡診療所』が開かれる。文字通り、お笑い芸人のビーフケーキ・近藤貴嗣が企画した本公演、作・演出も自身が手がけ、今回は初主演も務める。企画が始まったのは2013年。“津山事件”をベースにした『N谷集落』を上演した。それから公演を重ね、この『L岡診療所』が5回目となる。物語のベースを演じる面々に加え、毎回ゲストが登場。ゲストに渡されるのは衣装のみ。ゲストは台本、あらすじなど物語について全く知らされることなく本番を迎えるというのだ。ゲストの言動はすべてアドリブ。その出方を伺いながら、ベースを演じる“芝居メンバー”は物語を本筋に収束しようと奮闘する。間もなく幕を開ける本公演を前に、首謀者・近藤に話を聞いた。

--2013年の『N岡集落』から始まって、『F山団地』『S島銀行』『E田新地』と続けて上演されて、いかがでしたか?

全部違うので、どれがよかったかと聞かれてもほんまに分からないんです。全部面白くて、楽しくて、やっているこっちがすごく楽しいライブ企画というか。出てもらっている後輩も楽しんでくれている感じがすごく伝わってきますし。最初、芸人を笑かそうと思って始めたんです。ゲストを笑わせようと思って。その延長でお客さんにも笑ってもらおうという感じで。

--そしたら笑わせている本人達も面白かったと。

そうですね、芸人が笑わせようと思っているので、やっているこっちも面白いですし、お客さんはそれに上手くついてきてくれている感じがします。

--最初の企画段階と、実際に舞台に立ってからの違いはありましたか?

頭の中では計算しながら台本を書いてはいるんですけど、最初は本当にどうなるか分かりませんでした。ゲストの方もベースの芝居を演じる側も芸人なので、暗黙のルールというか、たとえば4人いたら“ハの字”に並ぶとか、そういうことを利用したというか。言わんでも分かるやろうということを。あと、稽古が一番、楽しいというか。ゲストの人を想定しながら、後輩とかと「あの人やったら、ここはこうするんとちゃいますか?」とか、「もしそうされた場合はこう返して」とか、そういうのを全部稽古場で想定しながらやるのも楽しいなと思いました。本番では、その想定をゲストの方が超えられたとき、悔しいけど、「ああ、やっぱりさすがやな」って思ったりしましたね。

--ゲストの方は先輩が多いんですか?

そうですね。

--先輩方に衣装だけを渡して「これでお願いします」と。それってすごく勇気が要りませんか。

勇気は要るんですけど、デビューしたときからめっちゃ上の先輩にお芝居のオファーをさせてもらったりしていて。面識のない他事務所の人とか。そういう経験があるので、そこは麻痺しているので、今はもう (笑)。例えば(ザ・プラン9の)お~い!久馬さんとか、一言も喋ったことのない状態でオファーしたり、ジャルジャルの後藤さんも、喋ったことはあるけど、雲の上の人で。「ふたりで芝居してください」って頼んで。チョップリン・西野さんも、僕にとってはただの“本当に好きなコントのおじさん”という人やったんですけど(笑)、そこで緊張を経験したというか。それを20歳ぐらいのときに経験していたので…。『E田新地』では、チャーリー浜さんに出てもらって。そら、お願いするのは緊張しますけど(笑)、それよりもいい舞台にするという気持ちが強いですね。

--過去4回の公演では、ゲストの方からはどんなお言葉がありましたか?

チャーリー浜さんは喋ったこともない方で、衣装を渡そうとしたら「触らんといて!」ってめちゃくちゃ怒られて(笑)。で、「ここ置いときます」って言ったりして。舞台が終わったら「楽しかった! また出る!」っておっしゃって帰っていかれたり。野性爆弾のロッシーさんは、舞台のあと会うたびにこの話で。それまでは挨拶程度だったんですけど、「めっちゃ楽しかった」って。「楽しかった」って言ってくれるのがすごくありがたいです。学天即の奥田は毎回出てもらってるんです。第1回から。毎回、手ごたえがないってつぶやいてますね(笑)。「手ごたえないままウケていくから、分からへんねん」って。奥田はうまくこっちの脚本に乗ってくれるので、“こうやったらええんかな?”ってやっみたらお客さんが笑ってくれるという状態が続いているので、彼としては手ごたえがないみたいです。トミーズ・健さんは、出番の15分前に来てくださいって言ったんですけど、1時間半くらい前に来られて。その日は2回公演で、まだ前の公演をやってる最中に来られたんですよ。これはまずいぞと、すぐ楽屋のモニターを消して。すっごい不安そうな顔して、「これ、何したらええねん、何したらええねん」ってずっと聞いて来られるんですけど、こっちから伝えることもできないし。「なるようになりますよ」とか言ってたら、ちょうど1回目を終えた新喜劇班が楽屋に戻られてきて。で、新喜劇の川畑座長とかがすごくにこにこしながら「楽しかったな、お前、あの場面であんなやんけ」って言いながら戻ってきたのを健さんが見て「えらい楽しそうやな」って。川畑さんも、「健さん、僕らも2時間前、その顔してましたよ。終わったらこうなりますわ~、楽しいっすわ~」みたいなことを言ってくれて。前回の『E田新地』のときですけど、それもよかったなぁと思いました。

--人によっては台本がないと不安だという方もいらっしゃると思うんですけど、そこは芸人さんが日々、培っている瞬発力、対応力が凝縮されているようですね。

役者さんではきっとできないと思います。芸人やからできることだと思います。

--タイトルの「L」や「N」とか、アルファベットにしているのは?

『N谷集落』っていう最初の舞台の導入部分が、女子高生が心霊サイトを見ている場面で。心霊サイトってよく、トンネルの名前とか最初の1文字をアルファベットにしてるじゃないですか。“Nトンネル”とか。心霊サイトを見ながら「見てこれ、N谷集落」って言う場面から始まったんです。

--『N谷集落』は、ストーリーだけを読むとすごく怖くいですよね。

“津山30人殺し”を題材にしていたので。ただ、このシリーズは“シリアスな茶番”だと思ってもらえたら。題材はシリアスですが、中身は“何やねん”の連続です。「どこがやねん」と。最初と最後だけだとシリアスです。

--なるほど。物語りの方向性もゲストの方によって違ってきますしね。

そうですね。一言も喋らへん人もいますし。

--それが作戦とか?

それもありますね。ただ、『N谷集落』のときは、みんな舞台のセットと照明に圧倒されて。ゲストの奥田くんはほんまに、最初の15分くらい無言やったんですよ。どうしたらいいかも分からへんし、こっちも実験ですから、初めて袖から「つっこんでください」っていうカンペ出して、ようやくつっこんでくれたという。

--その15分はすごく長そうですね。

長かったです(笑)。やっぱり失敗なんかなって思いました。後々聞いたら、照明とか、セットに圧倒されて、出方によっては“お芝居の邪魔してまう”と思ったんですって。

--では、今度の『L岡診療所』についてお伺いします。まず、ベースのお芝居に出られるメンバーが、帽子屋・お松さん、ミルクボーイ・内海さん、ダブルアート・真べぇさん、セルライトスパ・大須賀さん、マユリカ・中谷さん、kento fukayaさん、さや香・新山です。

お松さんとは、ギャーギャーギャーという演劇ユニットを一緒に組んでいて、そのユニットのリーダーです。お松さんとちょっとやりたいなと思って、出てもらいました。ミルクボーイ・内海は同期です。このシリーズでは絶対、リハーサルをするんですよ。で、その辺におる何も知らん芸人を連れてゲストの代わりに参加してもらうんですけど、いつも絶対、そのリハーサルに内海も入っていたんです。今回は、そこからの昇格というか(笑)。

--初めて芝居メンバーに。

そうですね。セルライトスパ・大須賀は1作目からのファンで、このシリーズをずっと見てくれているんです。チラシにある「客席から一人の男が手を挙げた」という一文は彼のことです。今までの芝居メンバーはふたりだけが残って、ほぼ全員がこの春、コンビで東京に行ってしまって。

--『E田新地』までのメンバーが。

はい。なので、今回の芝居メンバーは全員が初めてなんですよ。さらに言うと、僕も初めて出るんです。ずっと脚本と演出だけで、ちゃんと台詞がある役は初めてで。毎回、主演でボケるというか、“誰を主演にしてんねん”っていうのがあって。3年前の初演はシンクロックの木尾で。あと、てんしとあくまの川口とか、芸人から見たら「いや、誰を主役にしてんねん」っていうボケをずっとしてたんですよ。で、次は誰を主演にしたらオモロイんかなと思って、もう自分しかおらんってなって。これもボケです。

--大須賀さんは客席でずっと見られていて、芝居メンバーとして出たいのか、ゲストとして出たかったのか、どっちだと思いますか?

彼は絶対、芝居メンバーだと思います。

--お松さんは芝居をされていますが、皆さん、芝居経験は?

Kentoは映画に出てたり、真べぇは「プラチナ5」とかで芝居を毎月やったりしていて。内海はお芝居は完全に初めて、大須賀もコントはやってますけど、あんまり芝居経験がなかったり。中谷も新山もないでしょうね。

--稽古はどのくらいからされているんですか?

大体、2週間前からですね。

--割と日数がありますね。

そうですね、芸人発信で2週間というのは、結構ありますね。いつも朝9時から夜12時までやって。毎朝9時からやるんですけど、一人でも遅刻したら次の日から開始時刻が1時間早くなるというルールを作って。

--それは近藤さんが決めたんですか?

何で決めたんか分からないんですけど、僕が決めたんです。『N谷集落』のときから。1回、一人が遅刻したので次の日は8時からやって。その8時集合でふたり遅刻して、次の日は6時になったんですけど、その日は全員遅刻して、もう夜の稽古にしようかってことになったんですけど、夜中とか朝6時とかは場所が借りられなくて。それで8時の日に遅刻したら次は7時からとか、やってましたね。

--この2週間ってどういう感じなんですか?

大体その時間って芸人は寝てますから。眠い目で集まって、声も出ない、二日酔いのヤツもいる。そんな中、2週間稽古して。本番の2、3日前くらいですかね、急にピリッとし出すのが。“あれ? もうあと3日やん!”ってなって、ようやく本腰入れて。わざとじゃないんですけど、その頃からちょっとずつ小道具を用意したりとか。ずっとパントマイムでやっていたものを実際の小道具を持って稽古をやり出すと、徐々に盛り上がってくるというか。アホなんでしょうけど、芸人っていうのは。稽古場で音をかけながら芝居したら、100%、全員めっちゃ乗るんですよ(笑)。それがカワイイというか(笑)。みんな急に芝居がよくなっていくのはカワイイですね。

--このシリーズに出られて、何かが変わった芸人さんはいらっしゃいますか? 

芝居メンバーでいうと、アイロンヘッドの辻井は元から器用やったんですけど、割とどっしり構えるようになったというか。この芝居に関して言えば、もう辻井任せみたいなところがあったんです。僕が少々無茶な台本を書いても辻井が何とかしよるやろうと。『E田新地』のときは完全に信頼してましたね。その辻井が東京に行って、今回ゲストで初めて出てくれます。

--ゲストで出演されて、どうなるんでしょね?

一番知り尽くしている男ですからね。そういう相手がゲストで出るのも初めてですしね。1度、1作目の主演だった木尾が2作目の『F山団地』にゲストで出たことはあったんですけど。

--知り尽くした人がどういう出方をしてくるのか…。

あいつ優しいんで、あんまり邪魔してこうへんと思います。こっちの大変さを分かってるんで。それか、1ヶ所くらいは頑固になるかもですね。2つの選択肢があったとしたら、僕らは辻井にAを選んでほしい、Bを選ばれたら困るからAを選ぶような芝居にもって行ってるけど、あいつはBを選んで頑なに「いや、Bや」と言い続けるとか、そういうことはしそうな気はしますね…。

--初めて出るという方は?

20日(金)はダイアン・西澤さん、21日(土)はチョップリン・西野さん以外は皆さん初めてで。あとは、22日(日)の13時からの回では石田靖さんも初めてです。16時の回もアキナ・秋山さん以外の方が。19時の回では、矢野・兵動の兵動さん、アインシュタイン・稲田さんが初めてです。

--22日(日)の13時では、西川忠志さんもゲスト出演されますね。

前回の『E田新地』にも出てくださって、一番大暴れした人です。

--忠志さんは、全く読めなかったんじゃないですか?(笑)

この日はチャーリー浜さんも一緒で、みんなチャーリーさんを警戒していたんですよ。まさかの忠志さんが一番芝居メンバー困らせたという (笑)。小道具を勝手に取ってお手玉し出したり、一人のメンバーにピンポイントでずっと話しかけたり、一番おかしいのが忠志さんでした(笑)。社員さんからも「忠志さんもヤバイですよ」って言われていたんですけど、僕らはそんなイメージがなくて。ほんまにとんでもないモンスターでした(笑)。

--今回、初めての石田さんとのコンビも見どころですね。

またおふたりが仲いいみたいなので、このコンビはだいぶん注目です。お客さんも、忠志さんのむちゃくちゃさというか、芝居メンバーを困らせているところを楽しんではったみたいでした。

--石田さんも警戒すべき存在ですよね(笑)。

もう腹は括ってるつもりです! 何を言われても(笑)。最後の切り札で、芝居メンバーは自分らに都合悪いことは全部無視するっていうのがあるので! 聞こえないふりをしたり、相手を頭のおかしいヤツ扱いをするとか。それはもう奥の手ですね。

--チョップリンの西野さんは舞台でよくSぶりを発揮されるというか、相方の小林さんを追い詰めたりするような感じですが、前回はどうでしたか?

前回もそうでしたけど、今回2回目なので。いよいよ鬼が出るかなと (笑)。

--では、最後に意気込みをお願いします。

どういう芝居かは、見てもらわないと分からないと思うんです。ゲスト同様に、まずは何も知らずに来てもらえたら。この企画をすごく分かりやすくたとえてくれたファンの方がいて、「お化け屋敷に入って行く人たちを上から見ているような感覚です」と。ほんまにそうやと思うので、人がお化け屋敷に入って行く様を上から見られるという、そういう感覚を楽しんでもらえたらと思います。人が怖がっているところを笑いに来てください!




(2016年5月17日更新)


Check

ビーフケーキ近藤企画『L岡診療所』

発売中

Pコード:450-103

▼5月20日(金)~22日(日)

ABCホール

前売指定-2000円

[作・演出]ビーフケーキ・近藤

[出演]ビーフケーキ・近藤/帽子屋・お松/ミルクボーイ・内海/ダブルアート・真べぇ/セルライトスパ・大須賀/マユリカ・中谷/kento fukaya/さや香・新山


▼5月20日(金) 19:30
[ゲスト]学天即・奥田(5)/アイロンヘッド・辻井(初)/和牛・川西(4)/ダイアン・西澤(初)

▼5月21日(土) 19:30
[ゲスト]犬の心・押見 (初)/スマイル・ウーウェイよしたか(初)/ヒューマン中村 (初)/チョップリン・西野(2)

▼5月22日(日) 13:00(追加公演)
[ゲスト]吉本新喜劇(石田靖(初)/西川忠志(2)/もじゃ吉田 (初)/浅香あき恵 (初))

▼5月22日(日) 16:00
[ゲスト]銀シャ・橋本さん(初)/アキナ・秋山さん(2)/グイグイ大脇(初)/クロスバー直撃・前野(初)

▼5月22日(日) 19:00
[ゲスト]プリマ旦那 河野(4)/span!・水本(2)/アインシュタイン稲田(初)/矢野・兵動 兵動(初)

★かっこ内の数字は、当シリーズへのゲスト出演回数。

※5歳以上は有料。4歳以下は膝上のみ無料。お席が必要な場合は有料。カメラ又は携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承ください。変更・払戻不可。

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[TEL]0570-550-100

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