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天満天神繁昌亭で「若手グランプリ優勝準優勝記念
ウィーク」がスタート! 第1回の優勝者、桂吉の丞と
準優勝者、笑福亭べ瓶のふたりにインタビュー

2015年6月23日に天満天神繁昌亭で開かれた新たなコンテスト「上方落語若手噺家グランプリ」。関西のアートや文化、伝統芸能の支援を目的としたアーツサポート関西に、アートコーポレーションから500万円の寄付金が届いたことをきっかけに創設されたグランプリで、参加条件は入門6年目から15年目までの上方落語協会所属であること。初年度である今年は噺家31人が予選に参加した。4月7日から4回にわたって行われた各日予選会の上位1、2位の8名と、各日3位のうち最も審査点数が高かった1名の計9名が決勝へ進出した。その顔ぶれは、桂三幸、笑福亭べ瓶、桂雀太、桂吉の丞、桂二乗、桂三四郎、笑福亭生寿、桂咲之輔、露の雅という面々。そして、在阪テレビ局のプロデューサーらの審査により、「がまの油」を披露した吉の丞が第1位を、「いらち俥」を口演したべ瓶が第2位を獲得した。そして10月5日(月)から1週間、天満天神繁昌亭の昼寄席で、「若手グランプリ優勝準優勝記念ウィーク」が行われることも決定。このインタビューは、決勝から約2週間後に実施し、吉の丞、べ瓶にコンテスト後の心境や当日の模様、そして噺家としての今後などを語ってもらった。

--早速ですが、今の心境を。

桂吉の丞(以下、吉の丞):べ瓶が遅刻してきたことに腹立ってる(笑)。

笑福亭べ瓶(以下、べ瓶):関係あらへん(笑)

吉の丞:(笑)、素直にうれしいですね。

べ瓶:僕は悔しさ7割、うれしさ3割ですね。優勝した人間以外は全員悔しいんじゃないですかね。もちろん、僕以外の人間は僕以上に悔しいと思いますね。僕でこれだけ悔しいですから。

--当日、終わった後はどんな感じだったんですか?

吉の丞:僕らは懇親会があって、その後、二人で飲んで。出演者は、それぞれ飲みに行ってたみたいですね。

べ瓶:自分が負けてたらもっと悔しいもん。その日にうわ~って言うのはいいと思う。

吉の丞:悔しかったから、その日のうちにそれぞれ発散してよかったんちゃいますかね。

--結果が発表されるまでの楽屋の雰囲気はどんな感じだったんですか?

べ瓶:開演までは楽しかったですけど、開演したら“皆さん、同じ人間なの?”っていうくらい空気が変わりましたね。自分の出番が近づくごとに顔つきも顔色も変わってくるし、それは見ていて楽しかったかな(笑)。モニターにかぶりついて見ている人もいれば、袖にずっといてる人もいたり。僕はずっと袖にいたんですけど、全然ちゃうとこ行ってしまう人もいたり。(桂)三幸なんかは、ほとんど楽屋にいてませんでしたね。

吉の丞:カラオケ行ってたんかな(笑)。

(三幸さんは当日、「その川の向こう側」というカラオケを取り入れた自作の新作落語を披露しました)

べ瓶:喉の調子を合わせに行ったんかしらんけど(笑)。出番まで各々の過ごし方でした。開演前までは、みんな楽屋でわーわーしゃべってました。

吉の丞:正直、(出順の)1番を引いた(桂)二乗がかわいそうやと。1番はあり得ないからね。事前に抽選会があって。僕とべ瓶は行ってないんですけど、そのときに二乗が1番を引いて。心の中でみんな“二乗は盛り上げ役になるな”って思ってた割に、あいつがどかんどかんウケたから、“あれ? 二乗もあり得るぞ!”って空気になって、そこで一種の緊張感が走ったというか。これ、誰が獲ってもおかしないなっていうふうになりましたね。

--決勝に進出した9名が集合してみて、いかがでしたか?

吉の丞:この世代って、落語会で一緒になることって今、なかなかないんですよ。だから新鮮でした。“ああ、こいつこんなにうまなってるんや”とか、“こいつ、こんなやり方なんや”とか。みんなの落語を久しぶりに見て、えらいもんでみんな良うなってるなって思いました。

--吉の丞さんは出番が9番中8番目でしたもんね。

吉の丞:そうなんですよ、また待ち時間が長かったんで、ずっとうろうろしてました(笑)。

--べ瓶さんはどうでしたか? 全体的に見て。

べ瓶:一番のMVPはお客さんですね。やっぱり、9本全力のネタが続くって普通の寄席ではありえないですね。例えば、前がウケてたらちょっと湿る噺をしたり、前が湿ってたら弾ける噺をするみたいなバランスが寄席なので、今回はそれとは全くかけ離れたもので。それを証拠に外国人が主役の新作が2本続いたりね。そういうのは普通の寄席の構成だとあり得ないのですが、それでも最後まで見てくれたお客さんはすごいなと。僕やったら4本目ぐらいで疲れてると思う。けど、“今日はそういう趣向の会なんだ”とお客さんが理解してくれて、最後まで同じテンションで聞こうとしてくれていたことはすごくありがたかったですね。普通はだれますよ。

吉の丞:……お客さんがMVPっていうのは、昨日考えてきはったんですか?

べ瓶:なんでやねん、アホ。いらんこと言わんでええねん。

吉の丞:いや、使わせてもらおう思って。

べ瓶:新幹線で考えてきたんや(笑)。けど、本当にそう思いますね。

吉の丞:いやいや、ほんまそうですね。

べ瓶:お客さんに助けられたというか。

吉の丞:むっちゃええお客さんやったな。

べ瓶:めちゃくちゃいいお客さんでした。そんで“私らが乗らせたろう”みたいな空気がすごくあったし。わりかし知らん噺家ばっかりが出てくるんで“誰やねん”っていうようなムードがあるんですよ、寄席とかでもそうやけど。あの会に関しては全くその空気がなかったんですよね。

吉の丞:多分、お客さんはほとんど“誰やねん”状態。出てくるたびに。

べ瓶:と思います。

吉の丞:出てくるヤツ、出てくるヤツ、誰やねん、誰やねんやけど、ついてきてくれはりましたね。

べ瓶:本当に。それが一番の収穫というか。

--なかなかない雰囲気。

べ瓶:ないです、ないです。

吉の丞:やっぱりコンテストの要素も含まれているからやと思いますね。

べ瓶:落語を知っている人やったり、よく落語会に行かれる人ほど。しんどい会やったって思うと思うんです。ずっと陽が続いて、陰がないので。けど、僕らはどこに合わせるかっていったら、やっぱり落語を聞いたことのない人とか、これから落語を好きになってもらう人に好きになってもらわなあかんと思ってるから、そういう意味ではあの会はすごくよかったと思います。“こういう、今、若手が頑張ってるんです”っていう空気感は、あの会はすごく出ていたと思います。

吉の丞:さっき彼も言いましたけど、普通の落語会では考えられない並びでしたからね。ほんまやったらみんなネタを変えてるはずやし。

--(桂)三四郎さんと三幸さんの外国人が主役の新ネタが続いたのとか。

べ瓶:ああなると普通はもっと雰囲気がぐらつきますよ。けど、三幸もやりきって、後半うわ~ってウケてたから、いや~と思ってね。僕はとてもじゃないけどああはできないですね。彼ほどのメンタリティーは持ち合わせてないから。そら、予選でもトップで出て新作やって2位でしょう。それだけのメンタルを持ってるんやなって思いました。

--それは同期としては意外でしたか?

べ瓶:意外でした、めちゃくちゃ。何やろ……(桂)雀太と吉の丞ってわりかしこんな感じにしてくるんやろうなっていうのは、何となく分かってましたけど、三幸に関しては…。僕は一番三幸にびっくりしました。ハートがすごい強くなってると。

吉の丞:三四郎の後に、あのネタするのんな。

べ瓶:野球で言うところのフルスウィングで行ったから。そらもう、こいつのメンタルはすごい強くなったなと。

吉の丞:順番とやるネタが分かってたら、俺やったら風紀委員に言うて「すみません、ネタ変えさせてください」って言う。

べ瓶:言うわな。終わってから言われてたけどな、「ネタ変えてもよかったんやで~」いうて。

吉の丞:ええ!?ってな(笑)。

べ瓶:あんな会ないですよ。外国人が主人公のネタが続くとか、普通はあり得ないから。そういう意味でも本当に特殊な会やったなと思います。

吉の丞:兄弟弟子って発想一緒なんやなって思ったな(笑)。

べ瓶:そうやな。やっぱり文枝一門ってすごいな。

吉の丞:すごいな。

--ネタですが、吉の丞さんは予選では「仏師屋盗人」をされましたが、決勝では「がまの油」に変更されて、それはどういう意図だったんですか?

べ瓶:それ、僕もこの男に聞きたかったことですね。

吉の丞:僕はネタを変えなあかんと思ってたんです、ずっと。それで決勝のネタを出して、その後ほぼみんな同じネタやったから、あれ?と思って。

べ瓶:ほんまは「仏師屋盗人」をやりたかった?

吉の丞:いや、どっちにせよ変えてたけどね。「仏師屋」では(審査委員である)放送局の人には無理やと思う。誰が選ぶかやし…。けど、どうかな~、いま考えたらどうやったんかな…。獲ったからあれやけど、そのネタのチョイスが成功やったか失敗やったか分かんないですね。

べ瓶:いや、成功やから獲ったんや。

吉の丞:どういうものが喜ばれるのかが分からへん。基準が分からへんやんか。

べ瓶:まあ、賞レースはそうですよね。何がいいのか分からないですからね。

吉の丞:くそ不味いラーメン屋でもずっと続いてるとこあるもんな。ここ誰が来るん?と思っても常連がいてたりとか、同じように基準が分からないですね。

べ瓶:本当、1位、2位じゃないので。その競技をやってる人らは、それを理解してやってるし、同じように我々も賞レースというのはそういうもんなんやと理解しないとあかんのですよ。結果に対して僕らはどうコミットしていくのか考えるのが僕らの仕事やから。それは結局、行く先々の水に合わせることで。この決勝でも、こういうときにはどういうやり方をせなあかんのかって自分はすごい分析して行ったんでね。で、負けたから、まだ足らへんのかと。僕の場合は『芸祭』で二乗に負けて、今回こいつに負けてるんで、2位は獲れても、1位になるにはまだ何かが足らのかっていうのが。ただ、これはご縁のものでもあるのですよね。春蝶兄さんが電話で「賞レースはご縁のものやから、まあそれぐらいで思ってたほうがいいよと。縁がある人間は獲れるし、縁がない人間はどれだけおもろくても、どれだけ頑張っても獲られへんもんや」と。ああ、なるほどなと。だから、1位になれないのも仕方ないのかなと。だけど、2位をいただいたことはありがたいです。

--1位になるには何が必要なんでしょうね。

べ瓶:(答えが)出ないですね…。僕の中では前の『芸祭』踏まえて、「ああ、こういうことか」とちょっと自分の中で思ったんですよね。でも、お客さんが単純に楽しみに来ている目線と、点数をつけるっていう目線で絶対違いますからね。例えば、お客さんが何ぼ笑ってたって、審査員の人が「はいはい、笑わすのは分かってますよ」っていうモードになれば点数は上がらへんし、「お! こいつおもしろいな」ってなると上がるみたいなね。それも見せ方によって変わってくるのかなとか。やっぱり人間が点数をつけるから、そこには絶対に好みが入ってくるので。だからそこにコミットして行くのは難しいですね。

--難しいですね。でも目の前にお客さんがいるので、お客さんも楽しませなくちゃいけない。審査員に寄ってしまうと、落語そのものがまた違ってきますよね。

べ瓶:くさくなるし、あざとくなるしね。

--べ瓶さんが1位になるには何が必要かまだ分からないとおっしゃいましたが、吉の丞さんは獲られてみて、手ごたえはありましたか?

吉の丞:何やろうな…まあ、総合評価なんかな。なんかうまいこと見えたんちゃいます? ネタも、ガッチガチの古典をやったわけではないので。いや、でも1位を獲っても分からないです。

--前にインタビューをさせてもらったとき、吉の丞さんは「どういう落語家になりたいという理想より、まずはお客様を楽しませること」とおっしゃっていましたが、その気持ちはこの賞を取っても変わらないですか?

吉の丞:そうですね。第一に楽しんでもらおうと思ってます。お金を払ってもらって、交通費を出して足を運んで来ていただいた、生のお客さんの目の前で喋っているという意識はやっぱり強いですよね。世の中、楽しいことがたくさんあるのに、時間も割いて、あえてここを選んで来てもらっていますから。もう足を向けて眠れないですし、そこには全力投球します。それは、生の舞台をやっている芸人はみんなそうやと思いますね。

べ瓶:舞台って生き様が出ると思うんです。自分が今まで生きてきた人生が本当に高座に出ると思うから。先輩方の高座を見ていたらすっごい分かるし。やっぱり生き方って大事なんやなと。顔に出るやろうし、多分。あと20年後、30年後、自分が60歳になったときどんな落語ができてるんやろうと思うと、毎日不安です。怖くて仕方ない。けど、怖いけどやらないと。これから、どう生きていこうかっていうことですね。腕や技術はもちろん大事ですけど、それ以上に高座からにじみ出るものが最終的な勝負になっていくと思うから…。だから僕は、技術は二の次で、自分が今、伝えたいことをどう伝えるか、このネタではどう伝えるかということを自分の中で咀嚼しているだけですね、今は。

--よく“芸は人なり”と聞きますが、生活面でも律するものはありますか?

べ瓶:そうですね。僕は20代、すごくちゃらんぽらんで、世間をなめてたし、どうにでもなるって思ってました。19歳で入門して、20代は“がむしゃらにやってたらいいんでしょ”みたいなところがあったから…。世の中をなめてましたからね。けど痛い目に遭って、やっぱり世の中というのは甘いものやないというのがわかったから、そこから落語も変わりましたね。一日一日の取り組み方が変わりました。

吉の丞:……今日、遅刻してきた人間がよう言うな(笑)。いや、僕もべ瓶くんと同い年で、よう遊んでたし、飲んで夢を語っているときに、とりあえず、がむしゃらに、何でもやろうやみたいなところがあったんですよ。もう何でもやりまっせっていう。でも30代になって、その考えが変わってきたかな。

べ瓶:けど20代の頃、一生懸命やってたことは自分の糧になってるし…。根本は一生懸命やることですよね。そこにつきますわ。僕らはもうがむしゃらに、一生懸命やるしかないですね。あざとくなるとダメですわ。もうずっと思ってるんですけど、あざとくはならんとこと。ちょっとずつ分かってくるから、どうしても計算するんですけど。20代の僕と、32歳の僕は分かっている量が違うから、どうしても計算し出すんですけど、そこをうまく隠しながらいかに一生懸命やるかという。……難しい。僕らって前座で使うには芸歴が行き過ぎているし、ゲストで使うにはまだその看板も上がってないし。

--一番難しい年代なんですね。

べ瓶:さなぎですよね。ここでツンってつつかれたらすぐ死んじゃうし。成虫になったら自由にいけるんですけど。僕は今が一番しんどいかな。

吉の丞:これからもしんどい時期があるかも分からへんけど、僕も、今までで一番しんどい時期にかかってます。その時期にこの賞をいただいたので、ありがたいことに。それがまたちょっとプレッシャーにもなってるし。恥かけないじゃないですか。賞を獲って二日後の舞台でびっくりするぐらいすべったから。めっちゃ恥ずかしかったもん(笑)。俺ようこんなんで賞獲ったって言うてるなと思って。

--一つの看板を背負ということですもんね。

吉の丞:ほんでね、今回は1回目ということで、結構ニュースとか新聞で取り上げられて。その反応も大きかったですね。あなたはなかったですか?

べ瓶:東京では何も起こっていないかのような日常でした(笑)。

吉の丞:それで今までにないぐらい、メールやら、電話やら来て。めっちゃ昔の友達とかさ。それはありがたかったですけどね。『M-1』って獲ったら次の日から人生変わるとか言うやん。これ、ほんまに『M-1』やったらとんでもないことになるんやろうなって思いましたけど、その反応は嬉しかったです。教科書どおりのコメントになりますけど、自分がもらったことを周りが喜んでくれたのがとても嬉しいし、噺家からもぎょうさんメールが来たのが、これも嬉しかったです。

べ瓶:僕は何人かから来ましたけど、そんなになくて。それが1位と2位の差じゃないですかね。

吉の丞:ただ、新聞とか、「米朝の孫弟子」「鶴瓶の弟子」やって、僕らの名前が出てなかったという(笑)。

--師匠の背中はどう追いかけられてますか?

吉の丞:僕はもう、師匠がいてないので。入門4年目ぐらいで亡くなってるんです。米朝師匠も3月に亡くなりまして、正直、今、怒ってくれる人がいてないんですよね。今、自分がやってることが正解なのか、不正解なのか分からない怖さがあります。吉朝師匠と米朝師匠がいてたら「お前、ちょっと間違えてるぞ」っていうのがあると思うんです。生き方というか、方向性。それを言うてくれないので、果たして俺が向かっている方向は合っているのか、間違えてるのか、分からへんのがすごく不安です。

--べ瓶さんがおっしゃっていた「芸の部分で人が出る」という、そこですか。

吉の丞:そうですね。人間としての方向性ですね。今回、賞を獲って、「僕、今後どないしたらいいですかね」って師匠に聞きたいですけど、いてないので…。「こんなんお前、受賞記念言うて繁昌亭とかで盛大にやったらええねん!」というパターンと、「いやいや、今はまだやめとけ」っていうパターンのアドバイスとか、たくさんあって、どれが正解なんやろうと。その時に師匠に聞いて、師匠がこうせい言うたらそう行くんやけど…。

べ瓶:それは難しいところですね。

吉の丞:落語は先輩がたくさんいてるから何ぼでも教えてもらえるんですけど、噺家としての方向性ですよね。それを指導していただけないのが不安です。

--べ瓶さんはどうですか?

べ瓶:僕の場合は師匠が元気で…。僕は死ぬほど怒られてきたので…。自分が悪いんですけど、何べん泣いたか分からへん。けど、今までの人生でそこまで怒ってくれる人がいなかったから、この年になってそれがいかにありがたかったか、身にしみて分かりますね。ただ、最近は全然、師匠に怒られなくなって、逆にそれが怖いんですよ。あんまり怒られんようになって。ちょっとしゃあないなみたいな…。

吉の丞:べ瓶やからしゃあないなってなってきた?

べ瓶:そんな感じなんですけど、その分もっと自分を律しないとあかんっていうのも分かるんです。それで普段もちゃらんぽらん、舞台もダメ、結果が全然出ないってなったら、ただのダメなやつになるけど、そこは自分へのプレッシャーで、その分やるところではちゃんとやらないとって。それこそ、テレビもラジオも舞台もイベントの司会も全部一緒で。“こいつはやりよる”っていうふうになっていかないと、僕は生きていく方法がないな。人間って生まれ持った根本は変わらんと思うけど、そこにうまく蓋をする技術はできると思うので、どう上手に出し入れするかですよね。自分の弱いところや汚いところとか全部分かった上で、ここは出すとか、蓋をするという技術ができていくことやと思うから。それを自分で律しないといけない時期やから怖いです。

吉の丞:今回の大会で若手がそれぞれ考えて、会とかもやっていて、ただボーっとしているわけということを見てもらえたと思うんです。お客さんも“若手でええのんいてるやん”って思ったもらったと思うし、見に来てくれはった先輩方も“こいつらやっとんな”と思ってくれた。審査員の放送局の方々も“こんなええのんいてんのや”って思ってもらったと思うので、それが今回の一番の収穫じゃないでしょうかね。

べ瓶:今回はちゃんと、皆さんの前でできたのは大きいですよ。

吉の丞:1回目やからいろいろ不備があったかもしれないけど、結果的に成功やったと思います、僕は。どうですか?

べ瓶:大成功やったと思いますよ。やらないと課題も分からないし。

吉の丞:みんなが実は、このコンテストに賭けていたことがよくわかりました。咲之輔なんか稽古しすぎて、決勝の当日、声がつぶれてたから(笑)。本選中、予選に出てた兄弟子がみんなスマホで結果発表を待ってたと。誰が獲るかって。めちゃくちゃ意識してたんですよ、実は。その緊張感もよかったと思います。文枝師匠も言ってはりました。「その緊張感を楽屋で持てたっていうことが、それがよかったんや」と。

--『上方落語若手噺家グランプリ2015』で1位、2位獲られまして、改めて噺家としてどうやっていきたいかを最後にお願いします。

吉の丞:賞をいただいてありがたいですが、今が勝負時やとは思ってないです。やっと皆さんにお尻を押していただいたなと思ってます。これをステップアップに、着実にネタを増やして、次に来る波に乗るということですかね。これはべ瓶さんもよく言ってますが、噺家はセルフプロデュース能力が必要なんですよね。世間にいかに売り込むか。自分のプロデュース能力。鶴瓶師匠なんかそれがすごい。

べ瓶:ずば抜けてはりますね。

吉の丞:その能力が今の僕にはないので、この賞を生かしてどうするかということを考えないと。

べ瓶:自分が正しいと思っていることをやるだけですね。その結果、賞をもらえたっていうのは、なまじ間違えた方向ではないんやなと思いました。さっき、吉の丞が言ってた「言ってくれる人がいなくなった」っていうのと一緒で、こういう賞をもらうことによって、そないに変な方向で、どっちらけなことをやってるわけじゃないなって。全体的に見ると、そないに間違ったところに行ってないなって思って。

--一つの指標みたいな。

べ瓶:そうですね。コンパスをもらったみたいな。あとは、一生懸命やるだけですよね。自分は今こうなんだという姿を見せることしかないと思います。




(2015年10月 2日更新)


Check
桂吉の丞
かつらきちのじょう●1982年7月31日生まれ、大阪府堺市出身。2002年8月13日に桂吉朝に入門。趣味はだんじり。米朝事務所所属。平成21年第4回繁昌亭輝き賞受賞。
笑福亭べ瓶
しょうふくていべべ●1982年年10月16日生まれ、兵庫県西宮市出身。2002年5月1日に笑福亭鶴瓶に入門。趣味は映画鑑賞(恋愛もの以外)、スポーツ観戦。平成27年なにわ芸術祭新人奨励賞

天満天神繁昌亭
若手グランプリ優勝準優勝
記念ウィーク

10月5日(月)~11日(日)13:00

発売中
Pコード:597-700
天満天神繁昌亭

[前売]
一般-2500円(整理番号付)
大高生・身障者-2000円(整理番号付)
中・小-1500円(整理番号付)

[当日]
一般-3000円(整理番号付)
65歳以上-2500円(整理番号付)
大高生・身障者-2000円(整理番号付)
中・小-1500円(整理番号付)

10月5日(月)
[出演]桂ぽんぽ娘/桂ちょうば/笑福亭純瓶/タージン(漫談)/桂あさ吉/桂春若/口上[純瓶/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/林家染二

10月6日(火)
[出演]桂ぽんぽ娘/桂ちょうば/笑福亭純瓶/タージン(漫談)/桂あさ吉/桂春若/口上[純瓶/あさ吉/ベ瓶/吉の丞/春若(司会)]笑福亭べ瓶/桂吉の丞/桂きん枝

10月7日(水)
[出演]露の雅/桂ちょうば/笑福亭純瓶/タージン(漫談)/桂あさ吉/桂春若/口上[純瓶/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/林家染二

10月8日(木)
[出演]林家染吉/笑福亭呂竹/笑福亭純瓶/タージン(漫談)/桂あさ吉/桂春若/口上[純瓶/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/林家染二

10月9日(金)
[出演]桂ぽんぽ娘/桂ちょうば/笑福亭純瓶/幸助福助(漫才)/桂あさ吉/桂春若/口上[鶴瓶/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/笑福亭鶴瓶

10月10日(土)
[出演]桂ぽんぽ娘/桂ちょうば/笑福亭瓶太/タージン(漫談)/桂あさ吉/桂春若/口上[瓶太/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/林家染二

10月11日(日)
[出演]桂ぽんぽ娘/桂三弥/笑福亭瓶太/タージン(漫談)/桂あさ吉/笑福亭呂鶴/口上[瓶太/あさ吉/べ瓶/吉の丞/春若(司会)]/笑福亭べ瓶/桂吉の丞/桂春若

[問]天満天神繁昌亭[TEL]06-6352-4874

※未就学児童は入場不可。

天満天神繁昌亭
http://www.hanjotei.jp/

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天満天神繁昌亭
〈べべコレ 2015 大阪〉

発売中 Pコード:597-700
▼11月4日(水) 19:00
天満天神繁昌亭
全席自由-2500円
[出演]笑福亭べ瓶/桂雀々/桂紋四郎
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭
[TEL]06-6352-4874

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ヤマキ つるべ寄席 ~若手台頭~

11月14日(土)10:00~一般発売
Pコード:446-804
※発売初日は店頭での直接販売および特別電話[TEL]0570(02)9560(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。

▼12月5日(土) 19:00
森ノ宮ピロティホール
全席指定-4500円
[出演]笑福亭鶴瓶
[ゲスト]三遊亭とむ/笑福亭べ瓶/古今亭文菊/林家花丸
※6歳未満は入場不可。車椅子でご来場のお客様はお手数ですが事前にお問い合わせ先までご連絡下さい。
[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

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