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悠久の自然の営みを和太鼓の調べにのせて
『鼓童 ワン・アース・ツアー2015~永遠』
船橋裕一郎&前田剛史にインタビュー

佐渡を拠点に、国際的な活動を行っている太鼓芸能集団「鼓童」が、2015年6月より「ワン・アース・ツアー2015~永遠」として全国で公演を行う。日本の伝統芸能を現代に再創造し新しい舞台表現を作り出すパフォーマンスは世界各国で高い評価を受けている。芸術監督・坂東玉三郎の演出の元、進化を続ける「鼓童」のメンバーである船橋裕一郎、前田剛史に今回のツアーの魅力をたっぷりと聞いた。

――今回のツアータイトルは「永遠」。壮大で深い意味を持つ言葉ですが、こちらのタイトルを着想された理由はどのようなものですか?

kodo2.jpg船橋:タイトルを決められた坂東玉三郎監督によれば、「自然の営みが螺旋状に続いていく」という考えからこのテーマにたどり着いたそうです。森羅万象の現象、夜明けや光、風、雲や星など様々な自然の営みを表現し羅列することで「永遠」を表現出来たらと。玉三郎さんの演出手記を元に鼓童のメンバーが曲作りに入っていくのですが、当初は深いテーマなだけに捉えづらい部分がありました。今回は既存の鼓童の曲を使わず、全てこのツアーのためにオリジナルで作曲をしたのですが、言葉だけを頼りにゼロから作り上げていく感じで、曲が出来上がるまで自分達もどうなるか解らなくてドキドキでした(笑)。
 
――今回のツアーで特徴となる部分はありますか?
特に今作で多く作曲をされている前田さんに、お気に入りの一曲についてお話をお聞きしたいです。
 
船橋:和太鼓だけでなく世界中から幅広い種類の楽器を取り入れました。数にして50種類程ですね。東南アジア系の楽器だったり仏具のようなものもあったり様々です。和楽器と世界の楽器の融合、音の交わりを楽しもうと。玉三郎さんも音の感性が鋭い方なので、色々マッチングに時間をかけました。今までの概念にとらわれない響きを発見出来て楽しかったです。
 
前田:今までは和太鼓に向かって一心不乱に叩くような、所謂鼓童の基本スタイルを中心にしていましたが、今回はその枠組を取っ払ってみようと試行錯誤しました。和太鼓はバチで叩くもの、という固定概念から捨てて掌で叩いてみたり。そうすると原始の太鼓はそんな叩き方だったんじゃないだろうか、のような発想が出てきて…。「永遠」は過去から続いて、未来に向かう概念でもある。難しかったテーマを理解出来てきたようで嬉しくなる瞬間でしたね。
 
船橋:前田はずっと深夜まで曲作りに悩んでいました(笑)。前田が作る曲はリズムがあってメロディアスなんですよ。特に「カタライ」という曲は、ぐるりと太鼓を舞台に置いて周りを回りながら叩いたり、見た目にも面白いものになっています。これは玉三郎さん演出からアドバイスをいただいた形でもあります。
 
kodo7.jpg坂東玉三郎


――玉三郎さんの演出を受けてみていかがですか?
 
船橋:演劇という手法に長けていらっしゃる玉三郎さんだからこその演出が魅力ですね。曲を一つずつ別個で見せていくというのが従来の僕達のスタイルでしたが、今回は「永遠」というテーマに沿って2時間で大きな一つの物語を作ります。演劇を見慣れているお客様にも響くのではないかと。玉三郎さんは語り口がとても優しい方ですが、舞台の見え方、「絵」に関して非常に鋭いものをお持ちですので、いつもと異なる強さで太鼓が叩かれたりするとすぐに指摘が飛びます。優しいけれど一番厳しくもあるという(笑)。すごく緊張感を持った稽古になるので終わった後はいつもよりも疲れますね。
 

kodo3.jpg

――お二人が鼓童の扉を叩かれたキッカケは?
 
船橋:大学のサークルで和太鼓に出会いました。活動の中でプロの和太鼓グループの演奏を見る機会があったのですが、一発の音の響きが当時の自分達のレベルと違っていて。和太鼓を叩いて仕事にしたいと強く思いまして鼓童の扉を叩きました。鼓童は2年間の研修システムがあって、身体づくりや太鼓、笛、唄、踊りなどの稽古に打ち込めます。しっかり基礎を教えてくれるところが魅力的でした。今回、僕の母校の京都造形芸術大学春秋座でも公演があります。自分が和太鼓に出会った原点の地での初出演なので、気合が入りますね。
 
前田:地元が兵庫の神戸で、1995年の阪神大震災をきっかけに発足した子どもたちの和太鼓グループに入っていました。仮設住宅や被災者の方々を回りながら演奏をした際に、人々がとても喜んでくれて嬉しかった。その体験を元にずっと和太鼓グループは続けていて、小5で鼓童のCDを聞いて、和太鼓でこんなダイナミックな音が出せると思った時プロになりたいと決意しました。
 
――ご自身の中に和太鼓がしっかりと根付かれているのですね。それでは最後に、和太鼓などの伝統楽器のパフォーマンスが始めてのお客様に対して、意気込みをお願いします。
 
船橋:目で見ても耳で聞いても楽しいパフォーマンスですし、音の振動、空気の震えを肌で感じていただけると思います。僕自身もそうだったのですが、始めて聞いた時には血が踊り元気になるようで、身体に電流が走りました。会場で共に空気を共有しあえばとても良い2時間を過ごせること間違いなしだと思います。
 
前田:和太鼓というと、「お祭りの櫓の上」とか「田舎臭い」とか若い方は思われるかもしれませんが、実際に見ると和太鼓からも色んな音が出ることを感じていただけると思います。玉三郎さんが固定概念を取っ払ってくれたおかげで、ささらという先が裂けたような形状の棒で和太鼓で叩いたりするような面白い発想が生まれました。是非、2時間を通して鼓童が紡ぎだす「永遠」の物語を感じていただければ幸いです。

kodo1.jpg左から、船橋裕一郎、前田剛史
 
取材・文:石川由季
 



(2015年5月28日更新)


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(C)Takashi Okamoto
船橋裕一郎 (C)Takashi Okamoto
前田剛史 (C)Takashi Okamoto

『鼓童 ワン・アース・ツアー2015~永遠』

【大阪公演】
発売中 Pコード:254-007
▼7月3日(金) 18:30/4日(土)・5日(日) 14:00
新歌舞伎座
S席(1・2階)-6000円 A席(3階)-4000円
[出演]鼓童
※特別席は取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
[問]新歌舞伎座■06-7730-2121

【京都公演】
発売中 Pコード:257-680
▼7月11日(土) 17:30/12日(日) 13:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-6000円(指定)
シニア-5500円(指定、60歳以上)
※学生&ユースは取り扱いなし。3歳未満は入場不可。シニアは要身分証明書。
[問]京都芸術劇場チケットセンター
■075-791-8240

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