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芸能生活30周年を記念して松尾貴史が地元神戸で初の
「横好き落語会」を開催! 多才なゲストを招いて
お贈りする記念すべき落語会についてインタビュー!

タレントの松尾貴史が芸能生活30周年を記念して、11月8日(土)に「横好き落語会 in 新神戸オリエンタル劇場」を開催する。2008年から始まった自身の主宰による「横好き落語会」は、2009年と、そして2014年2月に開催し、このたび4回目を迎える。関西はもとより神戸での開催は初めてとなる本公演。今年2月の会では、一足お先に東京で30周年記念と銘打ち、松尾は中島らも作の創作落語「神も仏もアルマジロ」と古典の名作「はてなの茶碗」を披露した。来る神戸公演ではどんなことを考えているのか、その意気込みを聞いた。また、様々な顔を見せながら30年間、第一線で走り続けている秘訣もインタビュー。その答えには、人生を軽やかに、楽しく生き抜くヒントがたくさん詰まっていた。

改めまして、どんな30年でしたか?
 
山なし、谷なし、盛り上がりもなければ、落ち込むこともない、ひょっとしたらそれが一番ありがたいんじゃないかっていうような、そんな感じですね。
 
松尾さんは“タレント”と一言で表せないくらい、いろんな顔をお持ちですが、それでも山なし、谷なし。
 
そうですね。お誘いをいただくと、スケジュールさえ合えば出かけていって、何でも首突っ込むというか、どこでも寄せさせてもらっているような。怖い人のところにだけは行かないっていう感じですかね(笑)。
 
そんな感じで30年が過ぎて。時間の感覚ではどうですか?
 
「あ、もう30年も?」って。ずっと若手意識が抜けないまま。だから、はっと気がつくと、番組の中で僕が一番年かさがあることも多くなっていて。それで「あれ? ひょっとして長い間、やってる!?」みたいな感じになりますね。意識は成長していないです。
 
11月8日(土)に神戸で30周年を記念した「横好き落語会」を開かれます。テレビやラジオ、舞台など、いろんなメディアで活躍されている中で、30年という節目に落語をお選びになったのは、落語への思い入れがあってのことですか?
 
そんな素敵な感じではないですけど、30年の節目やから好きなことをやらせてもらおうかなという甘えの構造ですね。
 
今回はどのネタをお考えですか?
 
「神も仏もアルマジロ」(中島らも作)はやろうと思います。あともう1つ、古典を考えています。
 
落語はされていて、どういうところが楽しいですか?
 
ハイリスク・ハイリターンなところですかね。誰も頼れないでしょう? だけど、よかったら全部、自分の手柄にできるようなところが素敵だなって思うんです。あとは、こっちも演じて、お客さんもイマジネーションで楽しむっていう、ものすごく広くて大きなものがこっちの頭の中にあって、それを口先と表情だけで表現して、それがお客さんの頭の中でお湯をかけて大きく広がるような、爆発的に広がるわけでしょう? こっちも想像力を使わなあかんし、お客さんもイマジネーションが豊かでないと楽しめないという、なかなか珍しい芸じゃないかなと思いますね。
 
落語をされているときのお客様との距離感は独特ものがありますか?
 
あるでしょうね。(落語が)好きで来られている方の前でやるのがやっぱり、一番気持ちがいいですね、こっちも。それは何でもそうなんでしょうけど。
 
古典はどんな感じで挑まれているんでしょうか?
 
挑むというような意識は持ってないんですよ(笑)。なんか楽しいな~って、楽しみながらやっていると、お客さんも楽しそうにしてくださっているのでありがたいですね。すぐ分かりますもんね。
 
神戸ではゲストが立川志の輔さん、桂吉坊さん、前田一知さんということで、ご本人との交流もそうですが、前田さんはお父さんになりますが、皆さんのお師匠方ともご縁があって。その繋がりもあって、このお三方をゲストにお招きしたんですか?
 
考えてみたら、お三方とも師匠と繋がりがあって。一知くんはお父さん(故桂枝雀)ですが、僕はお父さんに憧れていたところがあって。一知くんは、この3人の中で一番古い知り合いというか。僕が22歳のときに枝雀師匠のお宅を訪ねていったとき、奥から出てきた小学生が一知くん。その後、一知くんはリリパットアーミーに入っているので、そういう意味では劇団の後輩でもあるんです。そして、デビュー当時、僕は素人参加番組に“素人の体”で出さされていて、ネタをやったのですが、米朝師匠がその番組の審査員をされていて、本番が終わってからもスタジオの隅まで追いかけてくださって、いろいろとアドバイスを言ってくださったんです。なんとすばらしい方なんやろうと思って感動して。もともと尊敬はしていたんですけど、お目にかかってこんなに素敵な人やったんやって。吉坊くんは、その米朝師匠が強烈に押していらっしゃった吉朝さんの弟子で。吉朝さんとも親しくさせてもらっていましたし、米朝師匠に付いて打ち上げの席で2升5合の瓶を持って、注いで回っている吉坊を最初に見て、――15年くらい前やと思いますけどね、子どもに酌させてみたいな感じやったんですけど(笑)、目から鼻へ抜けるというか、老成しているというか、機転が利くというか、状況把握力に長けているというか、もちろん芸熱心で。ずっとお付き合いさせてもらっているんですけど、本当に頼りになる後輩ですね。そして、26、7年前に僕が初めて古典落語を、吉朝さんの「くっしゃみ講釈」を聞き覚えでやったのが、高田文夫さんの紀伊國屋ホールでの落語会なんですが、志の輔さんはそれを袖で見てはったことを覚えていらっしゃるんですよね。東京で(30周年落語会を)やったときは南光さんに来ていただいたのですが、南光さんもデビュー当時からお世話になっている方で。そのときは、米朝師匠が審査員をなさっていた番組の司会を南光さんがなさっていたんです。そういう意味でも、自分の原点に繋がる皆さんと会をやらせてもらえるということが何か、30年の節目でありがたいなと思います。
 
志の輔さんと落語会をご一緒するのは、いつぶりなんですか?
 
去年の10月、たまたま富山行きの飛行機で志の輔さんと一緒になったんです。その前に、志の輔さんに「雑誌に僕のことを書いてください」って頼んだら、たくさんの文字数で書いてくださって。そのお礼を言わなあかんなって思いながらも、富山に着いてから電話しようと思っていたら、飛行機で隣の隣の席やったんですよ。(志の輔さんのモノマネで)「どこ行くの?」「いやいや、一緒ですよ。飛行機。これ、富山行きでしょ?」「いや、そうだけど、何?何?何?」「読売テレビの番組で」「読売テレビはあなたを富山に連れていって、何をさせようというの?」「いや、旅番組なんですけど。(志の輔さんは)何ですか?」「独演会。毎年やってんだけどね」。志の輔さんが生まれ故郷で独演会をなさっているというので、「ああ、そうですか、いいですね~。いつですか?」「明日なんだけど」「僕、明日の昼ぐらいにはロケが終わるので。どちらで?」。そしたら、射水市でやるっていうから、「ちょっと見に行ってもいいですか?」って言って。で、旅番組が終わって行こうかなと思ってたら、電話で「……、…出る?」って。「出てくんない?」「そんな、いいんですか? 舞台を汚していいですか?」「何言ってんだよ。縁だからさ」「たまたま僕、着物持ってるんですよ」「何で!?」って。僕、富山の後に小倉で吉坊と落語会をするので、持ってたんですよ、着物をたまたま。「で、(ネタは)任せるよ」っておっしゃったので、そのときは「はてなの茶碗」をやりました。それ以来なので、1年ぶりですかね。その前は、数年前に新宿末廣亭の「余市会」で一緒にやらせてもらいました。
 
デビューから30年、あっという間でも退屈はされなかったとのことですが、ずっと活躍するためのモチベーションはどのように保っているのでしょうか?
 
何かのお話やったり、チャンスやったりっていうのは、ランダムに飛んでくるでしょう? そのときに、「僕はこういうことはしない」とか、「僕はそれ、苦手なので」って言って、 “前にならえ”みたいな感じで、自分の胸の前で手を狭めていると、向こうからええもん飛んできても、手の先とかに跳ね返ってどっか行ってしまうじゃないですか。でも、両手を左右に目一杯広げて前に向かって歩いていたら、飛んでくるものもできるだけたくさん掴めるし、掴んでみても要らんかったらポイって捨てればいい。そうやって“両手を広げて、前に向かって歩く”程度のことをイメージトレーニングしといたら、変わってくるのかなって。長い間やっていると、そういう気がしますね。僕はジャンルで断るということもないですから。たまに風変わりなお誘いも来るんです。でもできるだけお受けしようと。先日も、「奈良県の林業に関するシンポジウムがあるから出てくれないか」って言われたんです。「基調講演をまずやってください、その後シンポジウムです」と。なぜ!?って思うけど、思うけども楽しそうやから行って、木に関することをいろいろ思いつくままにしゃべるということがありました。
 
ちなみに、そのときはどんな話を?
 
いやいや、木造はいいですよ、とか、奈良やから正倉院を見てくださいよとか、そんな話から、山の保水能力とか。あとは日本の気候風土に合ってるっていうことと、杉はどんどん切って使って、持続可能な植林の仕方をして、花粉が飛ばないようにして、山に帰っていってほしいとか、そんなことをしゃべりました。
 
物事に対する苦手意識はお持ちではないんですか?
 
あるにはあるんですけどね、苦手ぶってても、苦手がっててもしょうがないなと思うので。ただ、気を遣うところに行くのはあんまり好きではないんですけどね。
 
そういう、苦手なものが飛んできて、それを必ず受けなきゃいけないとなったとき、松尾さんだったらどういうふうに取り組みますか?
 
取り組もうとしないこと。がんばったらいかんですね。がんばるとはた迷惑ですからね。がんばってる人の周りの人って大変じゃないですか。でも、「楽しんではんねや」って思ったら、「応援もしたろうか」ってなると思うんです。脚本を書くときもそうですが、本人に目的があって、それに対する障壁が現れて、乗り越えていくっていう、ゲームでもやっているような、自分がコンテンツの一部やというような置き換えをして、「じゃあ、どうやって成立させたろうかな」って考えると、楽しくなると思うんです。責任を感じて、「ああ、これやらなあかんねん」って思ってると、つまらなくなるので。
 
今、がんばらなあかんって思いつめる若い方もたくさんいらっしゃると思うので…。
 
ただ、その割りには、持久力、持続力がなかったり、すぐケツ割ってしまうような人も多いでしょう。それは僕らのときもそうやったと思うんですけどね。うん。世代論じゃないのかもしれないですね。
 
「いまどきの若い者は」がめぐっている感じでしょうか。
 
そうそう。僕も「いまどきの若い者は」っていう言い方は絶対に、一生するまいとは思ってます。ピラミッドの玄室か何かのヒエログリフから、プラトンか何かの時代から、「いまどきの若い者は先輩を立てない」とか、「こういうところがダメだ」という言い草が何千年と続いているんですよ。僕らも昔、言われましたし。そうすると、たぶん、この言葉自体に意味はないんやろうなって思って。だから世代論であんまり語らんように。古典から何から、みんなそんなこと言ってるんですよね。
 
なるほど。では最後に、地元神戸での「横好き落語会」開催にあたって、メッセージをお願いします。
 
独演会のチケットがなかなか取れない志の輔さんを観るいい機会ですよっていうのが一つありますが(笑)、何か意味のある重たいものでもありませんので、30年と31年の違いは何やっていうと、単に十進法を採用している人間社会が勝手にきりがいいと思っているものですから、意味はないんです。ただやりたいからやる口実ですので、その口実でやりたいことをやるというのを見たり、聞いたりなさっていただくことが幸せなので、ご都合が合えば足をお運びいただきたいなと思います。とにかく楽しむためにやりますので、僕が楽しむ以上に、お客さんが楽しんでいただければありがたいと思っております。
 
ちなみに落語をまったく聞いたことがないという方へのアドバイスはありますか?
 
道具を消費することもなければ、衣裳を変えることもなければ、化粧もしません。役者は一人、それも動かすのは上半身だけ。こんな地球に優しい芸はないので、何も考えずに楽しんでいただければと思います。考えずに、想像だけしてください。
 



(2014年11月 7日更新)


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「横好き落語会 in 新神戸オリエンタル劇場」  

▼11月8日(土) 14:00

新神戸オリエンタル劇場

当日-4500円(全席指定)

[出演]松尾貴史/立川志の輔/桂吉坊/前田一知

※未就学児入場不可

[問] ローソンチケット[TEL]0570-000-407