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ホーム > インタビュー&レポート > 今年で11回目となる上方の名物落語会『夢の三競演』 恒例のお三方インタビューのラストを飾るのは 「人の意見を聞き入れるということは、すごく大事」と 2014年に新たなる境地に立った笑福亭鶴瓶!

今年で11回目となる上方の名物落語会『夢の三競演』
恒例のお三方インタビューのラストを飾るのは
「人の意見を聞き入れるということは、すごく大事」と
2014年に新たなる境地に立った笑福亭鶴瓶!

桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶という一門も異なれば、入門年も年齢も違う上方落語の“ビッグ3”が一堂に会し、その年の集大成とも言える高座で魅せる冬の風物詩『夢の三競演』。ぴあ関西版WEBでも恒例となったお三方インタビューでは、師匠それぞれの2014年を振り返ってもらいつつ、この会に向けての心境を聞いた。インタビューの最後に登場するのは、笑福亭鶴瓶。多忙なスケジュールの合間を縫って、今年も落語に向き合ってきた鶴瓶。さらには、プロ、アマ問わず、落語に関する意見を何でも聞くという試みも始めた。結果、「噺に厚みが出てきた」と言う。稀代のエンターテイナーが語る落語の話をたっぷりと収録した。

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――今年もあと2カ月となりました。まずは、2014年を振り返っていただきましょう。

笑福亭鶴瓶(以下、鶴瓶)「忙しかったですね。映画の撮影もありましたし、鶴瓶噺や独演会(落語会)とずっと色々あって。とにかく、慌ただしいですね。そんな中で高座に上がったのが、今日(※取材日は10月30日)現在で118席。繁昌亭も入れて、色んなところでやってるんですけどね。レギュラー8本やって、鶴瓶噺もやって…すごいでしょ(笑)」

――そんな多忙な中で、ネタ下ろしもされています。

鶴瓶「今年は『三年目』というのを一つやり始めたんですね。それと、もう一つやろうとしてる大きなネタがあるんです」

――タモリさんからお聞きになった話を元にしたという、『浦里花魁』(うらざとおいらん)ですね。

鶴瓶「タイトルはまだ正式には決まってないんですけど、元は扇屋の花魁・花扇っていう人の実話なんですよ。そこで、落語として書いてくれたら僕がやるからと、タモリさんに、落語作家のくまざわあかねさん、小佐田定雄さんを会わせたんですよ。タモリさんは芝居的にしたかったんですけど、くまざわさんの台本の出来がいいんです。扇屋の花扇を名前を変えて、山名屋の浦里にして。花魁だけど、男気があるという噺なんですけどね。このネタを今年の独演会でやって、『三競演』でかけようと思ったんですが、夏休みが終わってすぐに独演会が始まったんで、やる時間がなかったんですよ」

――ネタ下ろしが、今から楽しみです。

鶴瓶「そんなわけで、今年は『浦里花魁』がやれなかった分、虫干しの形で昔やってたネタを掘り出してやったりしたんですね。でも、落語ってきりがないんですよ。やればやるほど、ここでこうして、ここをこうしてと。『立ち切れ線香』でも、何年か前にやったものとは変わってくるんです。今は、女将が体を壊してる描写をしたり、番頭が若旦那に財布を渡して『これ使て』言うて、若旦那が小糸のとこに行くのを分かって送り出すという。そんなやり方をしてるんです。当たり前やけど、細かいところをそうやっていくと、すごく変わりますよね」

――芸は全てそうかも知れませんが、終わりはないんですね。

鶴瓶「今年一番変わったのは、プロであろうが素人であろうが、言われたことを全部、自分で飲み込もうと思ってね。普通の噺家は、言われたらやっぱり腹立つじゃないですか。でも、言うてはることは正しいんですよ。ええカッコで言うてはれへんから。『良かったけど、こうした方がええ』と。『ほっとけ!』と普通は思うじゃないですか。それを、『そうやな、ほんじゃこうしよう』とやっていくと噺に厚みが出てくるというのか。吉川潮さんには『番頭をもうちょっとしっかりさした方がいいですね。あとは良かったから』と言われたり、山本益博さんにも同じようなこと言われてね。ほな、それをいっぺん付け加えてやろうと。素人の人も『良かったぁ』って言うてくれはんねんけど、『でも、あそこはもうちょっとゆっくりしはった方が…』とかね。それを全部聞き入れたら、なかなかいい結果になってね。人の意見を聞き入れるということが、すごく大事やなと思ったんです」

――素人の人も、鶴瓶さんなら言いやすいと…。

鶴瓶「まぁ、僕にしか言わないじゃないですか(笑)。『落語は、まだ10年しかやってない』とか言うてるから、言うてええねんやろと思てはるんでしょ。何か言わはるんです、一つ。言いやすいんやろうね(笑)。細かいことは言いはりませんよ。普通、(立川)談春に言わないでしょ。(立川)志の輔にも言わないでしょ。(桂)文福に言うたら、ものすごいキレられますよ(笑)。でも、僕には言うんですよ。どの噺家にも素人が言うと怒られることを、僕はいっぺん全部聞いたろうと。素人に言われたことを、そのまま受け入れるっていうやり方もオモロイなと思って」

――そう思われた何かキッカケはあったんですか?

鶴瓶「いやいや。素直に聞き入れようと思っただけですよ。僕ぐらいやな、こんなこと言うてもらえるのは。それは、プラスに考えた方がいいんじゃないかと」

――さて、11回目を迎える『夢の三競演』ですが、今年は何をかけようとお考えですか?

鶴瓶「今年の出番はトップやから、『青木先生』か、『琵琶を弾く観音像』をしようかなぁと。おふたりが後ろで古典やりはるから、私落語をしてもいいかなと思ってね。『青木先生』もだいぶ変わりましたからね。今は物凄いデフォルメされて。元々、あんな先生なんていてないですもんね。妖怪みたいな先生(笑)」

――また、今年は初の『三競演』東京公演が実現します。
 

鶴瓶「僕が行きたいって言うたんですよ。もちろん、東京で文珍独演会、南光独演会を見に来てはる人もいるやろうけど、3人の空気感でやる会がこんな面白いんだということを見てもらいたい。3人ならではの作用が働くというかね。実は、去年のこの会で『青木先生』と『お直し』のどっちにしようかと思ってた時に、廊下で南光兄さんが『お直し』って言わはって、結果『お直し』をやったんですよ。そういう信頼感がお互いにありますんで、どうしても東京の人に3人が合体した姿を見ていただきたいと思いますね」

――『夢の三競演』は、落語はもちろんですが、お三方の稀有な信頼関係や空気感も大きな見どころになっています。

鶴瓶「僕は、『お前もやれ』と引っ張り込んでもらったんですから。『やれっ』って言うてもらえる性格でおれたというのが、言わば僕の徳でしょうね(笑)。『鶴瓶、呼んだろう』って言うてくれることが嬉しいですよね。おこがましいけど、僕も何かできることはないかと思ったら、南光兄さんをそそのかして東京に出すことですよ。ほんまに嫌がってはりますからね。そこで、まあまあまあと(笑)。成功したらいいなと思いますね」

――南光師匠は、このインタビューでも“東京嫌い”の理由を力説されていました。

鶴瓶「東京の何もかもが嫌なんでしょうね。笑われ方も、そこにいる空気感も、ホールの形もね。東京ヅラみたいなもんがあるんやろうと思うんです。そんなことは、ホンマはないんですよ。でも、本人がそう思てはるんやから、そうやと思いますわ。笑われても腹立つという(笑)。それがオモロイですやん」

――それはなぜだと思いますか?

鶴瓶「南光兄さんは、より自然なことが好きなんですよ。いっぺん誰かに怒ってたことありますわ。拍手を強要するようなことをやった時に、『お前のそこが嫌いやねん』て言うて。それは僕もよう分かるんですよ。それ以上やったら拍手が来るねんけど、それはやめとけ、お客さんにそういうことをさすなと。そういうあざといことが嫌いなんですよ」

――しかし、今回の東京公演でお気持ちが変わられるかも…。

鶴瓶「いやいや、それは知ってるんですよ。自分が東京でウケるのは分かってると思いますよ。東京なんて、逆にサラな土地なんですよ。だから、分かりやすい人達が来るんです。南光兄さんは東京のシャイな人達が来るみたいに思うてはるんやけど、そんなことはない。けどね、そんなこと、お兄さんはもう分かってるんですよ。だから、南光兄さんを『三競演』に来た人に見てもらいたいと思うんです。やっぱり凄い人ですよ、南光、文珍というのは」

――では、東京公演はどんな方に見てもらいたいですか?

鶴瓶「ほんとは落語を見たことがない人に来てもらいたいし、なるべく『落語なんか分かれへんわ』という方に足を運んでいただきたいですね。まず僕が出ますから、そっから徐々に聞いていくと、入りやすいんちゃうかなと思います」

――文珍師匠は、『三競演』の魅力について「3人が作り出す、何かいやらしい世界がある」とおっしゃってました(笑)

鶴瓶「ハハハハハ。ほんとにそうやと思いますね。酒池肉林というか(笑)。お互い愛してるっていう空気感みたいなものがあって。40年も付き合うてきたら、愛されてるって嬉しいじゃないですか。こんな人らと一緒にやれてるんやとホンマに思いますしね。で、ふたりにない分を僕が話すというのも、お兄さん方への刺激にもなっていいかなと。大事な先輩やと思うし、いつまでも元気でいてもらいたい。そんな空気の仲間が上方落語におるというのも、いいじゃないですか。きっと『どっか仲悪いんやろ?』と思っておられる人もいてると思うんですよ。全然そんなことないですからね。みんな僕のことを好いてくれてるし、こっちもお兄さんらを好きやし」

――では、最後にお客様へのメッセージをお願いします。

鶴瓶「絶対、落語を好きになって帰りますし、そこからどっかで落語ってやってないかと探すようになると思います。だから、そのキッカケに『三競演』を是非見に来ていただきたいですね」

 

取材・文/松尾美矢子
撮影/大西二士男



こちらもお読みください!

『夢の三競演 2014』
桂文珍インタビュー

桂南光インタビュー

(2014年11月21日更新)


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笑福亭鶴瓶
1951年生まれ、大阪市出身。1972年、六代目笑福亭松鶴に入門。落語に真摯に取り組む一方、『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)、『ヤングタウン 日曜日』(MBSラジオ)など多数のレギュラー番組を抱える。2014年は、吉永小百合企画・主演、成島出企画・監督の映画『ふしぎな岬の物語』に出演、常連客のタニさん役を好演した。また、12月6日(土)には、ゲストに桃月庵白酒、桂春蝶、笑福亭鉄瓶を迎えての落語会『ヤマキ つるべ寄席~若手台頭~』を、森ノ宮ピロティホールで開催。19時開演。当日券(立ち見)発

夢の三競演2014
~三枚看板・大看板・金看板~

Pコード:439-803

▼12月22日(月) 18:30

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-6500円

[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶

※未就学児童は入場不可。

[問]夢の三競演公演事務局
[TEL]06-6371-0004

チケット情報はこちら


『夢の三競演』演目一覧

※登場順
2004年
桂文珍『七度狐』
桂南光『はてなの茶碗』
笑福亭鶴瓶『らくだ』

2005年
笑福亭鶴瓶『愛宕山』
桂文珍『包丁間男』
桂南光『質屋蔵』

2006年
桂南光『素人浄瑠璃』
笑福亭鶴瓶『たち切れ線香』
桂文珍『二番煎じ』

2007年
桂文珍『不動坊』
桂南光『花筏』
笑福亭鶴瓶『死神』

2008年
笑福亭鶴瓶『なんで紅白でられへんねん! オールウェイズお母ちゃんの笑顔』
桂文珍『胴乱の幸助』
桂南光『高津の富』

2009年
桂南光『千両みかん』
笑福亭鶴瓶『宮戸川
~お花・半七馴れ初め~』
桂文珍『そこつ長屋』

2010年
桂文珍『あこがれの養老院』
桂南光『小言幸兵衛』
笑福亭鶴瓶『錦木検校』

2011年
笑福亭鶴瓶『癇癪』
桂文珍『池田の猪買い』
桂南光『佐野山』

2012年
桂南光『子は鎹』
笑福亭鶴瓶『鴻池の犬』
桂文珍『帯久』

2013年
桂文珍『けんげしゃ茶屋』
桂南光『火焔太鼓』
笑福亭鶴瓶『お直し』