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松本清張『疑惑』が初の舞台化で南座に登場!
稀代の悪女・鬼塚球磨子を演じる浅野ゆう子に
作品にかける意気込みを聞いた

松本清張の傑作ミステリー『疑惑』が初めて舞台化され、10月4日より京都・南座で幕を開けた。1982年に2月に原作が発表され、9月には早くも映画化。夫殺害の嫌疑がかけられた“毒婦”こと鬼塚球磨子を桃井かおりが、球磨子の佐原弁護士を岩下志麻が演じ、女優二人の熱演はその年の映画賞を次々と獲得した。以降は、幾度かのテレビドラマ化を経て、いよいよ舞台に登場する。
舞台版では、球磨子を浅野ゆう子、佐原弁護士を高橋惠子という二大女優が演じることも話題を呼び、ふたりの丁々発止のやり取りに注目が集まる。また、そんな女のバトルに翻弄される男たちに原田龍二、なだぎ武ら個性派が登場し、豪華俳優陣による極上の法廷劇になること必至だ。
稀代の悪女と呼ばれる球磨子は果たして本当に夫を殺したのか…!? サスペンス性と人間ドラマが織り成す舞台『疑惑』について、球磨子を演じる浅野ゆう子に作品への意気込みなどを聞いた。

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--舞台『疑惑』ですが、最初は映画化され、そしてドラマ化もされた人気作です。作品へはどのような印象を抱かれていますか?
 
『疑惑』のお話をいただいたとき、すぐに松本清張先生の原作を読みました。それから桃井かおりさんと岩下志麻さんが主演された映画版を見たのですが、原作と違って映画版では弁護士が男性から女性に変わっているんですよね。映画は松本先生が監修されていたのを知り、それはもう“本物だな”と思いました。原作者の監修があるというのは強みだなと思いました。そして映画を見て、すごいなと。間違いなく私は佐原弁護士の役、岩下さんの役だろうと思ったんです。そしたら球磨子だと言われまして。映画化された時の桃井さんはまだ30歳くらいなので、果たして20歳も年上の私にできるのだろうかと。でもやるなら、林先生じゃないけれども「今でしょ」と。今を逃すともう、球磨子を演じることは無理だと思いました。しかも演出がフジテレビで私を育ててくださった河毛俊作さんであったことにも惹かれました。
 
--河毛さんには浅野さんの代表作のドラマで演出を受けられています。今回、舞台でご一緒されるにあたって、どんなことを期待されていますか?
 
河毛さんとの出会いは1987年なんです。『晴海コンパニオン物語』という2時間ドラマが出会いで、そこからスタートしました。『抱きしめたい!』『ハートに火をつけて!』『恋のパラダイス』『学校へ行こう!』『都合のいい女』を河毛監督に撮っていただいて、テンポ、リズムを叩き込んでいただきました。今回は舞台、しかも法廷での会話劇ということで、テンポよく、リズミカルにいかないとお客様が飽きてしまうだろうし、そういう部分は徹底して教えていただきましたので…。また、河毛さんがこれまで演出してくださったヒロインは、いわば正統派のヒロインなのですが、今回のヒロインは毒婦、悪女なので、河毛さんがどのような味付けで描いてくださるか、非常に楽しみです。
 
--本作が決まって、河毛さんとは最初にどんなお話をされたんですか?
 
去年、ドラマ『抱きしめたい!で久しぶりに河毛さんと組みまして、撮影後すぐに舞台『疑惑』のお話をいただいたんです。それで河毛さんに電話をして「この舞台、私、できますかね?」と聞いたんです。若い役ということで、体力的なこともあって。それで「私にできますか?」と言ったら「できるでしょ!」と軽く返されまして(笑)。「あ、そうですか? じゃあやらせていただきます」みたいな感じでしたね。
 
--今回、球磨子という悪女、毒婦と呼ばれている人物を演じることについては、いかがでしょうか。
 
今はヒロインも“儚げで薄幸で”という印象ではなく、強くたくましく生きている女性が普通になってきましたので、悪女がヒロインでもまったくもってよいのではないかと思っていますし、現に私は悪女というか、『氷点』では夏枝、『大奥』では瀧山と、どちらも怖いと言われている人物を演じて、受け入れていただいてきた経験がありますので、毒婦とまで呼ばれるヒロインの球磨子がどこまで受け入れていただけるのかは分かりませんが、映像でお見せできる以上のことが舞台では可能だと思いますので、私も楽しみにしております。
 
--ちなみに球磨子という人物を、浅野さんはどのようにご覧になっていますか?
 
徹底してますよね、この人は。誰に何を言われようとも、自分の考え方、生き方を貫いて、平然としていられる。それはそれですごいなと思います。周りにとやかく言われても捻じ曲がったり、萎えたりということもありませんので、ぶれないですね。人間って弱いから、人に何か言われるとぶれてしまうのが当然ですけど、まったくもってぶれを見せない人ですね。
 
--佐原弁護士が高橋惠子で、高橋さんとの丁々発止のやり取りも見ものだと思うのですが、高橋さんとの競演のご経験は?
 
高橋惠子さんとは初めてです。ただ、先日、製作発表会見でお会いしたときに二人で思い出したのですが、『太陽にほえろ!』に二人とも出ていたんです。先に高橋さんが出られて、私はちょっと遅れて出していただいて。そういうこともあって、ご縁はあったのかなと思いました。高橋さんは舞台でのオーソリティですし、大ベテランですし、私はまだまだ舞台はビギナーだと思っているので、高橋さんの胸をお借りして、飛び込んでいけばいいという安心感を持たせていただいております。
 
--なるほど。では、舞台の魅力はなんでしょう?
 
魅力を言えるほど舞台経験をさせてもらっていないのですが、舞台は皆様からその場でお声をいただけるということが非常に怖くもあり、また、それによって私たち役者は大きく育てていただいている気がします。怖いのは、カット割りがない、しかも生放送と同じくやり直しが利かない、顔だけで表情を作ればいいというものではないということ。ただ、映像も舞台も共通しているのは心だと思うんです。もちろん、プロフェッショナルの方々は美しく見える形、素敵に見える作法をご存知で、その技術をお持ちだと思いますが、いかんせん映像メインの私は心をお伝えすることしかないので、気持ちや心がある人間を演じていれば、きっと映像と同じうように感じていただけるものだと思っています。これは舞台に立たせていただくときにいつも、信じて持ち続けている私の考えです。
 
--今回が初出演という南座の印象はいかがでしょうか?
 
老舗で、本当にすばらしい劇場だと思います。今回は歌舞伎をメインに演じられてきた劇場でミステリーの現代劇ということで、はっきり言って不安ではあります。これまで築き上げてきた南座さんの歴史を台無しにしないか、失礼なことにしてしまわないかという思いはあるのですが、南座さんの歴史を重んじた中で現代劇をお届けできると思っています。
 
--では最後に、舞台『疑惑』を楽しみにされている皆様にメッセージをください。
 
大阪松竹座で『大奥』を上演させていただいたとき、日本全国を回らせていただいた中でどこよりも温かくお迎えいただいたんです。同じ関西人だからという、関西の皆様の愛情かなと思って本当に嬉しかったですし、励ましていただきました。関西のお客様はよくお声をかけてくださるんです。それがすごく温かくて、嬉しくて、とても心に残っています。今回、場所は京都ですが、また地元の温かい皆様に守っていただいて、公演を続けていけるかなという心でおります。関西の皆様に直接お目にかかれる機会だと思っていますし、なにより関西弁の中で時間が過ごせることがすごく嬉しいです。ぜひ南座で、お待ち申し上げております。
 
撮影:河上良(bit Direction lab.)
 



(2014年10月 6日更新)


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南座ミステリー劇場「疑惑」

発売中
Pコード:436-964

▼10月4日(土)11:00
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▼10月24日(金)貸切/15:30
▼10月25日(土)11:00/15:30
▼10月26日(日)11:00

南座

1等席-13000円
2等席-7000円
3等席-4000円

[原作]松本清張
[脚本]山中隆次郎
[演出]河毛俊作

[出演]浅野ゆう子/高橋惠子/原田龍二/なだぎ武/緑友利恵/伊藤正之/モロ師岡/佐戸井けん太/他
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。未就学児童は入場不可。

[問]南座[TEL]075-561-1155

南座公式サイト
http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/schedule/2014/10/post_164.php

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