ホーム > インタビュー&レポート > 「楽しみ上手な方にお越しいただきたいですね!」 11回目を迎える上方の名物落語会『夢の三競演』 恒例のお三方インタビュー第一弾は桂文珍が登場!
――ご自身も、ツアーを楽しんでいらっしゃる?
文珍「そやね。また、DVDやのYou Tubeやのいろんなものがあって、小さなディスプレーやパソコンとかでは見られても、生で一緒にライブを楽しむということを今の人は求めてはるのとちゃいますかね。空気感というか」
――ツアーとなると気力も体力も必要不可欠。その原動力は何でしょうか?
文珍「私は、それしか生きがいがないからね。それと嫁はんから離れて、家から開放されるというか(笑)。まぁ、自分が一番やりたいことをやれているからかな。好きでこの世界に入りましたから。好きやないとやられへんわ。それに想像する面白みというか、幻みたいなもんですけど、無から何か有なるものを描き上げるという。で、面白かったなぁと、何か心に残って元気になっていただければいいかなと。段々、そう思うようになりましたな」
――日本全国を回られて、いろいろ肌で感じることも多いと思います。
文珍「街によって経済力ちゅうか、産業が上手く定着してるところは元気よく、集客もいいんですよ。でも、ここどうしょうっていう街がチョイチョイあるんですよ。これは地方創生大臣の石破さんといっぺん相談せないかんなぁと(笑)」
――さらに、2020年のオリンピックイヤーには、東京・国立劇場で20日間連続の独演会を開きたいとも。
文珍「毎日ネタを替えてやりたい。できたらエエねんけど、それを掲げてるだけで楽しいね」
――楽しみと言えば、今年も落語ファンお待ちかねの「三競演」の季節がやって来ました。今年で11回目を迎えます。今回の演目は何をお考えですか?
文珍「『萬両』にするかな、と思ってるんですけど」
――元来、「お文さん」というタイトルで演じられるネタです。船場の大きな酒屋での捨て子騒動から、意外な人間関係が明らかになっていき…。
文珍「ちょっと大人の噺なんですが、元々このままではどうしょうもないなと思てましてね。このネタはその時代のお客さんの層が支えたから成立してるんですけど、やっぱり時代と共に女性がたくさん主導権をお持ちになってきた。男が脇に女性ができて子供ができたら、一緒に住みたいというのは普通の気持ちなんですけど、今はそれは社会通念として社会性に欠けるという時代。そやけど、昔の価値観では普通に許していた。女の人に『辛抱せえ』やったんですが、今の時代じゃ通らんでしょという。これは落差きついなぁ、みたいな。その落差のきつさが今っぽいんじゃないかなと思ってね。落語作家の小佐田定雄さんとゴチャゴチャ言いながら相談をして。噺の後半はガーンと変わっていきます」
――大胆に改作されました。
文珍「“いつの時代やねん?”って言われると、ちょっと前でっしゃろなぁみたいな。それは、皆さんにとっての“昔”でいいんじゃないですか。委ねてるから、受け取ってねってという…委ねる芸なんですよ。キッカケを差し上げる芸。そこで、皆さんの脳の中の過去のデータとかを組み合わせて描いて下さいよという。だから、それぞれのお客さんの頭の中は微妙に違うんでしょうね。私の考えてるのとも違うやろうし。それをオモロイと思っていただいたら、落語は楽しいんですけど。それが話術、話芸っていう世界でしょうしね」
――師匠の落語は、“今”が巧みに反映されています。
文珍「やっぱり落語って、時代時代のお客様に支えていただいての芸ですから、そういう意味ではずっーと変化をし続けるんでしょうね。後世に伝えるものとして自分たちの心覚えはありますけど、台本はあってないような形のものですから、そこが面白いとこだと思います。やる人によっても変わるし、お客様によっても変わるし。色んな要素の影響を受ける非常にデリケートな芸。それが、他の芸とちょっと違うところですね。形は昔のスタイルをしてますけど、扱ってる内容とかタッチとか切り口、照明の当て方、なんていうのは変わっていくでしょう。そう思てますねやわ」
――また、今年は、『夢の三競演』初の東京公演が実現します。
文珍「このメンバーで、3人それぞれが本寸法でできる三人会というのはなかなかないんで、関西での盛り上がりや楽しさを東京の皆さんも一緒に味わいましょうよと。もったいないですもんね。“悪夢の”三競演にならないように、“夢の”三競演に、そして大看板、金看板になれるようにがんばりたいなと思います」
――ただ、過去の取材で南光さんは東京での落語会は乗り気でないようでしたが…。
文珍「あの人独特の“噺家イズム”というのがあってね。でも、僕は彼が『やりたい』と分かってるから、『こんなエエ子おるで』とチラチラ見せて誘導をして(笑)。橋頭堡を伸ばすというてね、橋頭堡というのは橋を守る陣地のことですけど。そこに杭をちょっとずつ打っていかんと橋が架けられへんのですよ。今、ブリッジができつつあるという(笑)」
――東京公演へのブリッジですか(笑)。
文珍「だって、南光さんは本寸法でキチッと上方落語の絵を描けるねんから、もっと東京の人に知ってもらいたいでしょ。事務所が別やから、そんなことどうでもエエっていうことはない。全体のこと考えるとね。でも、あの人は言うこととやることがちょっと違う時がある。55歳を回ったら引退する言うとってんで。もう60を回っとるやないか。ええ加減にせえ! だから、行けへんと言いながら行くのよ。今回の東京公演は南光さん押し(笑)」
――どんな方に見ていただきたいですか?
文珍「最近エエことを教わってね。僕なんかの世代はラジオで育ってるから、落語は聞くもんだと思ってるんですけど、最近の若い人は『なぁ、落語見に行く?』とか言う。若い人はどうも“見る”っていう感覚がLOOKではなしに、ライブに行くっていうことを“見る”って言うてるみたいなところもあって。『僕の頭でどう理解すればいいですかね?』って言ったら、『悩んだ時は英語にしましょう。“エンジョイ”。落語を楽しんでいただける方に、お越しいただいたらいいんじゃないですか』っておっしゃる方があって、これはええなと。だから、楽しみ上手な方にお越しいただきたいですね」
――では最後は三競演をエンジョイしていただくために、その魅力をアピールして下さい。
文珍「とにかく、本寸法で各々が一生懸命に芸をやります。ただ、サザンオールスターズの桑田君って音楽的にもそうやけど、ちょっとスケベエしてるやん? そやけど何となく許せるし、そこが彼らの人気の秘密やったりして。僕らもそれぞれ本道をやりながら、3人が寄ると変になるという(笑)。この3人が作り出す何かいやらしい世界があるやないですか。それぞれ色の違う3人ですけど、光の3原色では3つ集めると白色になりますが、僕たちはピンクになっちゃいます。ウッフン♡(笑)」
こちらもお読みください!
『夢の三競演 2014』
桂南光インタビュー
笑福亭鶴瓶インタビュー
(2014年10月16日更新)
Pコード:439-803
▼12月22日(月) 18:30
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
全席指定-6500円
[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶
※未就学児童は入場不可。
[問]夢の三競演公演事務局
[TEL]06-6371-0004
※登場順
2004年
桂文珍『七度狐』
桂南光『はてなの茶碗』
笑福亭鶴瓶『らくだ』
2005年
笑福亭鶴瓶『愛宕山』
桂文珍『包丁間男』
桂南光『質屋蔵』
2006年
桂南光『素人浄瑠璃』
笑福亭鶴瓶『たち切れ線香』
桂文珍『二番煎じ』
2007年
桂文珍『不動坊』
桂南光『花筏』
笑福亭鶴瓶『死神』
2008年
笑福亭鶴瓶『なんで紅白でられへんねん! オールウェイズお母ちゃんの笑顔』
桂文珍『胴乱の幸助』
桂南光『高津の富』
2009年
桂南光『千両みかん』
笑福亭鶴瓶『宮戸川
~お花・半七馴れ初め~』
桂文珍『そこつ長屋』
2010年
桂文珍『あこがれの養老院』
桂南光『小言幸兵衛』
笑福亭鶴瓶『錦木検校』
2011年
笑福亭鶴瓶『癇癪』
桂文珍『池田の猪買い』
桂南光『佐野山』
2012年
桂南光『子は鎹』
笑福亭鶴瓶『鴻池の犬』
桂文珍『帯久』
2013年
桂文珍『けんげしゃ茶屋』
桂南光『火焔太鼓』
笑福亭鶴瓶『お直し』
桂文珍
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2013-11/1311-3-003.htm
桂南光
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2013-11/1311-3-002%20.html
笑福亭鶴瓶
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2013-11/1311-3-001.html
桂文珍
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2012-11/sankyouen2012-1.html
桂南光
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2012-11/sankyouen2012-2.html
笑福亭鶴瓶
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2012-11/1211-s010.html
桂文珍
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111013-e003.html
桂南光
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111008-s002.html
笑福亭鶴瓶
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111018-e008.html