ブロードウェイの傑作ミュージカルを
松下優也ら日本人キャストで上演する
「Broadway Musical『IN THE HEIGHTS』」
全編に散りばめられたRAPを中心とした歌詞はKREVAが手掛ける!
大阪公演を目前に控え、東京公演の観劇レポートが到着!!
ラップやヒップホップ、サルサにメレンゲまで。冒頭からキャスト総出演による力強い“言葉の音楽”が溢れ出す! 最優秀作品賞を含むトニー賞4部門ほか、グラミー賞最優秀ミュージカル賞を獲得した『イン・ザ・ハイツ』。とりわけ流行に敏感な若者を中心に圧倒的な支持を得た本作の日本版が、遂に幕を開けた。マンハッタン北部の移民街を舞台にマイノリティであるヒスパニック系の人々が、日頃の憂さを音楽やダンスに乗せてユーモアたっぷりに吹き飛ばす。陽気でパワフルで、ちょっぴり切ない人間たちの群像劇は、誰もが心の奥に持ち続ける「帰るべき場所」への愛に満ち溢れ、国境を超えた感動を呼び覚ます。

物語はタクシー会社で働くベニー(松下優也)とボスの愛娘ニーナ(梅田彩佳・AKB48)、食品雑貨店を営むウスナビ(Micro from Def Tech)と美容師のヴァネッサ(大塚千弘)の2組のカップルの恋の顛末が、友人や家族との交流を通して描かれる。次々と起こる困難を前に、彼らはどんな未来を描くのか……。

ラップでストーリーを物語る革新的なスタイルには、最初こそ戸惑うものの、耳が慣れればむしろ役の心情やストーリーがダイレクトに心に響く。そんな観客の理解と呼応するように1幕で噴出した問題が進展する2幕は、想像以上にドラマティックだ。家族への不満を爆発させる母の叫び『Enough』、娘を思う父親のナンバー『INUTIL[USELESS]』、老女が生い立ちを振り返る『PACIENCIA Y FE』は、歌う樹里咲穂、安崎求、前田美波里らベテラン勢の確かな力量に引き込まれ胸を打つ。またミュージシャンとしての実力をフル稼働させ進行役を担ったMicro、クールな下町娘を魅力的に演じた大塚千弘、抜群のスタイルと歌声で爽やかなオーラを振りまいた松下優也、そして国民的アイドルグループAKB48の梅田彩佳はキュートな歌声と持ち前のルックスで魅了した。

演出は『ロミオ&ジュリエット』(小池修一郎演出)の振付や、SMAP、安室奈美恵らの大型コンサートの演出も手掛けるダンサーのTETSUHARU 。キレのあるダンスを中心にショーアップされたステージは見応え十分。さらに、日本語歌詞をヒップホップアーティストのKREVAが手掛けていることも音楽ファンにとっては聴き所だろう。

前半ではおっかなびっくりだった観客も後半にはぐっと集中力を増し「やっぱ人生サイコー!」のフレーズが耳に残るフィナーレ『FINALE』では、一体となって感動を共有した。「観た人は誰もが、これは自分の街の話だと思うんだ。どこに住んでいる人だろうとね」と話す作者のリン=マニュエル・ミランダ。心を解放する歌とエネルギッシュなダンスに乗せられて、たまには“ふるさと”を思って涙するのも悪くない。
取材・文:石橋法子
撮影:引地信彦
(2014年4月17日更新)
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