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野田秀樹の『贋作・罪と罰』をミュージカル化した傑作
『天翔ける風に』が新しく生まれ変わる!
期待の俳優・渡辺大輔にインタビュー!

ドストエフスキーの『罪と罰』をもとに、幕末の時代の流れに翻弄されながら生き抜く者たちの姿を描いた野田秀樹の『贋作・罪と罰』を、謝珠栄がミュージカル化。自身が主宰するTSミュージカルファンデーションで2001年に初演し、再演を重ねてきた『天翔ける風に』が、東宝ミュージカルとして朝海ひかるを主演に、新たなキャストを迎えて上演される。中でも、昨年TSミュージカルファンデーション『客家-HAKKA-』で謝作品を経験した渡辺大輔にインタビュー。まだ稽古に入る前、役柄も決まっていない状況の中、謝作品の魅力や『天翔ける風に』に向けての熱い想い、さらに役者という職業への真っ直ぐな気持ちを見せてくれた。

――昨年も謝先生の作品『客家-HAKKA-』に出演されていますが、再びこの『天翔ける風に』で謝先生の作品に出演することが決まっていかがでしたか?

「めちゃくちゃ嬉しかったです!まさにその『客家-HAKKA-』の本番中に『天翔ける風に』の出演が決まりました。前回の作品を拝見させて頂き、めちゃくちゃ素晴らしくて“この作品に出たい!”って素直に思って。謝先生はすごく厳しい方なので、また呼んで頂けるかどうか、選んで頂けるかどうかという不安があったんですが、とにかく今自分ができることをやらなきゃと思いました。しかも今回は東宝作品。元々、東宝で上演されるミュージカルにも出演したいと思っていたので、また謝先生の作品に出られることと合わせて二重の喜びがあり、決まったときは“よしっ!”って噛みしめました。『天翔ける風に』のメンバーとして舞台に立てることは、これからの自分に大きな影響があると思いますし、また厳しい指導を受けて自分がどう成長できるか楽しみですね」

――出演決定のお知らせを受けてからは?

「そこからがまた大変で(笑)。稽古、本番を通して先生にちょっとでも“この子なら頑張れるな”と思われないと次にまた呼んで頂けないかなと思って、とにかくいちばん最初の稽古から気合い入れてやりました。“そんなに最初から100%でやって大丈夫?”って心配されちゃいましたが(笑)」

――渡辺さんがそこまで熱く駆り立てられる、謝先生の演出の魅力というのは?

「謝先生は、全員が光る部分を必ず作って下さるんですよ。そして一人ひとりに愛を持って接して下さり、それが厳しさの中にアメとムチのように入ってくる。先生がそれだけ真剣にやって下さるから、それ以上のものを返さないといけないという気持ちにさせて頂けるんです。先生の作品に携わった先輩方も口々に、“先生の演出には愛がある。だからこっちはそれ以上に返したくなる”と仰っていて。今回も、与えられた役を生かすも殺すも自分自身。先生の演出によってどう輝きを放てるのか、楽しみのひとつでもありますし、多くの方々にこの作品を知って頂けるのが楽しみで仕方ないですね」

――謝先生の作品は、エネルギーが充満していますよね。きっと、皆さんのそういう気持ちが舞台にも反映されているんですね。

「そうなんです。『客家-HAKKA-』も観て頂いた方に“素晴らしかった”というお声を頂きまして。主演の水(夏希)さんはもちろん、脇を固める方々からも圧倒的なエネルギーが発せられていることは客観的に見ても感じましたし、自分もその中に立って台詞を交わしたり、稽古場で話が出来ることが本当に貴重でした。きっと稽古場での結束力がひとつの大きなエネルギーとなり、お客様に伝わっているんだなと思いますね」


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――前回『客家-HAKKA-』に参加したことで、ご自身が成長したとか変わったと感じる部分はありますか?

「自分では明確にわからないんですが、周りの方々に“変わったね”って言って頂けました。気付かないけど確かに変わっているっていうのは、きっと謝先生のマジックですよね。だから、また次の作品で変われるんじゃないかっていう期待もあって。そういう意味でも楽しみです」

――『天翔ける風に』はご覧になったとのことですが、惹かれた役や、やってみたいと思われた役はありますか?

「惹かれたのは、志士のトップに立つヤマガタという人物ですね。男くさくて、“俺は俺の思うがままに生きる!”って、すごくイキイキしていて。殺陣もめちゃくちゃカッコイイし、男気があって素晴らしいな~って。あと、溜水石右衛門という、男だけどちょっと女っぽくて、嫌らしい成金の役にもちょっと興味を持ちましたね」

――そういう役もやってみたい、と?

「そうなんですよ。2枚目というよりは、ちょっとクセのある役とか3枚目の役が好きで(笑)」

――意外ですね(笑)。

「地がそっちなんですよ(笑)。だから役でもやってみたいなっていう思いはありますね」

――TSミュージカルでは3度上演されている作品で、きっとそれだけ作品に力があるんですよね。渡辺さんはどんな魅力を感じましたか?

「『客家-HAKKA-』もそうでしたが、主役が女性なんですよね。強い女性像というのが謝先生の見せたい部分のひとつだと思うんです。オリジナル作品ではありますが、実際にそういう人たちが生きていたんじゃないかって思うくらい、リアルに描かれているんですよ。あとは殺陣も音楽も醍醐味のひとつですし、舞台装置もマジックかと思うくらい、一瞬で別世界に変わったりしますから。今回はどんな見せ方になるかまだわかりませんが、期待していてほしいですね」

――それだけグイグイ惹かれるということは、実際舞台になるとまた…。

「それはもちろん! 圧倒されると思います! だからこそ、やる前から気合いが入るんですよね」

――本当に、すでに気合十分ですね。

「すごくワクワクしてるんです。でも、言われたことだけをやっていたらそれだけで何も身につかず終わってしまうので、なぜ言われているのか、先生の仰ることをしっかり理解して、プラスαで見せていきたい。ただ突っ走るのではなく、どんどん自分で提案をしたり、周りの方々ともコミュニケーションを取りながら動いていきたいですね」

――では役作りをするときは、役に入り込むよりは客観的に見て考えられるんですか?

「それもやっとできるようになってきた感じですね。なかなか、客観的に見るって難しいんですよ。演じているときはとにかく任されたことをやったり、周りとの関係性を考えたり、なぜこういう動きをするのか、なぜこの言葉を喋るのか、ということばかりに集中しがちですから。そこで自分で全体像を想像できるようにならなければいけない。どの舞台もそうなんですが、特に謝先生の舞台は、稽古初日から最後までずっとオーディションのような気持ちでやっています」

――そうなんですか!? すごく緊張感がありますね。

「でもその中でも、みんなが笑い合える空気感を作って下さいますし、オンとオフがはっきりしているんです。今回は2回目の参加なので、前回よりもっと積極的に先生や周りの先輩方ともコミュニケーションを取ってよりいい作品に仕上げて、お客様に“素晴らしい作品でした!”って言って頂けるようにしたいですね」

0033.JPG――元々、ミュージカルがお好きだったんですか?

「この世界に入ったときは、映画やドラマをやりたいと思っていたんですよ。でも、舞台を経験して醍醐味を知ってしまうと、病みつきになりましたね。自分が歌をやるとは全然思っていなかったんですけど、やっていくうちにハマってました。人に感動を与えたい、自分で何か発信できる人になりたいと思っていたので、お客さんからストレートに反響が返ってくることにグッときて。もちろん、映像は映像の魅力があって楽しいですけどね。だから、ミュージカルもストレートプレイも映像も、何でも出来る役者になりたいと思っています」

――そういう意味では、今すごくいろんなことを吸収されているんじゃないですか?

「そうですね~。舞台と映像では学ぶことも楽しみ方も全然違いますからね。あと、今NHKの『うまいッ!』という番組でレポーターもやらせて頂いていて、それもまた表現の仕方が異なるので面白いですね。出来上がった映像を見て、“ここのリアクション違ったな”って反省することもあります(笑)。どんな経験も無駄なことは絶対ないと思うので、いろんな経験をしてこれからの自分に生かしていきたいです」

――では、昨年30歳になるタイミングで、謝先生の舞台に携われたことは渡辺さんにとってとても貴重なことだったのでは?

「本当にいい経験をさせて頂きました。このタイミングで『客家-HAKKA-』に出られたこと、謝先生に出会えたことはとても大きな意味があると思います。20代で蒔いた種を30代でより濃いものにし、40代でいかに刈入れできるか。30代の始まりが『客家-HAKKA-』で、かなりいいスタートダッシュを切れたんじゃないかなと思いますね」

――今はまだまだ成長段階で。

「『天翔ける風に』は、前回共演させて頂いた吉野圭吾さんもいらっしゃいますし、岸祐二さんも4年ぶりに共演させて頂きます。大先輩方の背中を見ていろんなものを吸収し、次に出演する『ドラキュラ』にいい形で繋げたいと思います。そう考えると、この2013年は自分にとってかなり濃い1年になると思うので、本当に楽しみです。プレッシャーではありますが、それ以上に、新たな扉を開けることに期待しています」

――たくさんの方に観て頂けますからね。

「ようやくですね。チャレンジする舞台を与えて下さった方々に感謝しつつ、絶対無駄にはしたくないです。ここからまたもうひとつ上のステージを目指して、役者としても人間的にも成長したいですね」

――20代の頃は「イケメン俳優」と言われることが多かったと思うんですが、30代で目指しているところは?

「2枚目も出来るし、シリアスな芝居も、3枚目も出来る役者になりたいですね。阿部サダヲさんとか阿部寛さんに憧れているんです。渡辺謙さんも素敵だなって思いますし。でも30代で一番やってみたいのは、悪役ですね! わる~い役をやってみたいです(笑)。最後まで犯人がわからない、頭脳明晰な知能犯みたいな。ファンの方にも“嫌な人”って思われるくらいの役をしたいですね(笑)」

――それが叶えば、また幅が広がりそうですね! 『天翔ける風に』も期待しています。

「本当に、オープニングから結末まで目が離せませんし、ドキドキワクワク感が常に止まらないと思うんです。だからその世界にどっぷりと浸って頂きたいですね。自分がもしその場にいたらどう行動するか、どう思うか、自分が生きている今の世界と重ねつつ観て頂けるとより一層楽しめると思いますし、観る角度によっても変わると思うので、何度でも観て頂きたいです。そして、何かを持って帰って頂けると嬉しいですね!」

 

(取材・文/黒石悦子 撮影/矢橋恵一)

 



(2013年4月17日更新)


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渡辺大輔
わたなべ だいすけ●1982年、神奈川県出身。2006年、テレビドラマ『ウルトラマンメビウス』でデビュー。2007年よりミュージカル『テニスの王子様』に青学4代目・手塚国光役で出演。以降、舞台を中心に活動。NHK総合『うまいッ!』(毎日曜6:15~)では、レポーターにも挑戦。4月20日公開の映画版『不毛会議』で荒畑中尉役で出演。また、8月23日より東京国際フォーラムにて上演のミュージカル『ドラキュラ』オーストリア・グラーツ版に出演予定。

●公演情報

ミュージカル『天翔ける風に』

4月21日(日)10:00~一般発売

Pコード:426-016

▼6月29日(土)12:30/17:30

▼6月30日(日)13:00

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-9500円

[作]フョードル・ドストエフスキー

[脚色]野田秀樹(「贋作・罪と罰」より)

[演出][振付]謝珠栄

[音楽]玉麻尚一

[出演]朝海ひかる/石井一孝/彩乃かなみ/伊東弘美/岸 佑二/吉野圭吾/浜畑賢吉

青山航士/笠嶋俊秀/加藤貴彦/千田真司/俵 和也/照井裕隆/平野 亙/福永吉洋/吉田朋弘/渡辺大輔 (50音順)

※未就学児童は入場不可。

[問]梅田芸術劇場
[TEL]06-6377-3888

ミュージカル『天翔ける風に』公式サイト
http://www.tohostage.com/amakakeru/

4月21日(日)10:00からチケット一般発売 !
チケット情報はこちら

●あらすじ

優れた頭脳と剣の腕を持つ三条 英(朝海ひかる)は、女ながらに江戸開成所の塾生として学んでいた。混乱を極める幕末の世に、変革を求めて思いつめた英は、金貸しの老婆殺害を実行。偶然居合わせた老婆の妹までも手にかけてしまう。事件の捜査を進める刑事・都 司之助(浜畑賢吉)は、英に疑惑の目を向けるが、英は彼の仕掛ける執拗な心理作戦と闘う。英の親友・才谷梅太郎(石井一孝)は、罪の意識に苛まれる英の異変に気付き、その身を案じるが、彼もまた、大きな歴史的事件の渦中にいるのだった…。