ホーム > インタビュー&レポート > 古典歌舞伎の魅力たっぷり『新八犬伝』に 驚きの演出が満載の『GOEMON 石川五右衛門』 片岡愛之助が二月花形歌舞伎の見どころを語る!
――宙乗りに早替りに、だんまり、そして八犬士が並んだときのカッコ良さ……と、『新八犬伝』では“歌舞伎を堪能した!”という充実感が味わえます。
「そうですね。11年前、上方の若手だけで上演した「平成若衆歌舞伎」でやらせて頂いたのがこの『新八犬伝』。当時も4役勤めさせて頂きましたが、正直いっぱいいっぱいで…ただ、古典の手法をしっかりと使ったものなので、作品としての面白さを感じ、今回再挑戦することになりました。夜の『GOEMON』で新しい歌舞伎に挑戦しているので、『新八犬伝』はあえて古典歌舞伎の新作として、初めてご覧になる方にも分かりやすいように作らせていただきました」
――今回も4役されている中で、3役が悪役。“悪”の色気や美しさみたいなものをすごく感じます。
「歌舞伎は、どんな役をやっていても品がなければいけない。例えば、凄惨な殺しの場面でも、その中に、見た目に美しさがあるのが歌舞伎の魅力だと思うんです。だから、品と美しさというものは常々大事にしながら作っていますね」
――その中でも、それぞれに違う悪の魅力が出ていますよね。
「魔界の大天狗である崇徳院というのは、天皇にもなった人ですからね。だからこその迫力があったり、それが乗り移った扇谷定正は、生まれながらに悪心を持った本物の悪人なので、そういった部分も大事にしながら演じています。お芝居していても面白いですね。あっという間に終わってしまう感じがします。昼の部も夜の部も、“あれ?もう大詰?”って思います。毎日あっという間ですね(笑)」
――観ていても、引き込まれているうちに終わっていたという感じがします。
「お客さんが“何時に終わるんやろ”って腕時計見だしたらダメですからね(笑)。だから、“あ、終わっちゃった!”って思わせるように、ストーリーの時間的な配分もすごく考えて作っています」
―― 一方で、『GOEMON 石川五右衛門』では、“これも歌舞伎!?”という非常に斬新な芝居を楽しみました。
「ガラッと変わったでしょ(笑)。タイトルもローマ字で“GOEMON”ですし、劇場に入ると、どん帳も定式幕も何もない(笑)。“あれ?何観に来たんやっけ?”っていう感覚に陥ってしまうような作り方で。そういう意味では昼と夜では真逆のものですが、両方観ていただいて、十分楽しんでいただけるものになっているんじゃないかなと思います」
――初日が開けて2週間ほど経ちましたが、感触はいかがですか?
「毎日変わっていくので面白いですよ(笑)。何が正しいかなんて芝居にはありませんが、いろんなことが試せるのが新作の面白さですよね。たまたま、盆が早く回りだしたら、意外とそっちの方が良かったりもしますし。どこで何が生まれるかわからない。本当にうれしいと思うのが、お客様とキャッチボールができている感覚。生の舞台の良さだと思いますし、お客様もともに楽しみ、一緒に夢の世界を作っていただけたらと思います。世の中、暗いニュースが多いので、こういうお芝居で夢の世界に浸っていただき、明日への活力として頂けたらと思いますね」
――確かに、お客様も本当に楽しんでらっしゃるように思いました。『GOEMON』で石川五右衛門が阿国にフラメンコを教える場面なんて、なぜか笑いが起きますもんね(笑)。
「笑われていますよね(笑)。やっぱり役者が楽しむというのはもちろんありますし、だからこそ、お客様に楽しんでいただけるのではないかと思います」
――『GOEMON』は、初演からどういう部分を変えたんですか?
「前回は大塚国際美術館のシスティーナ・ホールでの上演でしたから、装置が全然違いますね。そこでやったものをどうやって歌舞伎の舞台で表すかということから考えて、電飾をつけたりして。ロックコンサートが始まるのか?みたいな気分でしょ(笑)。あえて客席を使ったりもしていますし、わざと型外し的なことをやらせていただいています。歌舞伎は何が正しいか、間違っているのかということはないですし、歌舞伎の語源は“傾(かぶ)く”ですからね。突拍子のない、変わったことをする人たちだから、正解もなければ間違いもない。それこそ、亡くなった(中村)勘三郎兄さんもすごく傾いてらしたし、お兄さんが切り開いてくださった道というのはすごく大きい。そのおかげで僕たちがこうやっていろんなことができているわけですから。これからは僕たちがやっていかなければいけないし、賛否両論もありますけれど、歌舞伎という大きなジャンルで捉えたときに、今やっていることは歌舞伎そのものだと思うんですよね。もちろん古典も大事にしていかなければいけませんが、いろんなものがあっていいはず」
――若手中心の花形歌舞伎だからこそできることも?
「そうですね。平成生まれが何人もいますからね(笑)。でもみんな僕が彼らの年齢だった頃よりすごくしっかりしていますよ。頼もしいです。あと10年も経てばもっともっと面白くなっていくんじゃないかなと思いますね。4月には東京の歌舞伎座が開場して、12ヵ月間歌舞伎公演をうちますが、上方も負けてられないですよね。大阪松竹座で12ヵ月間は難しいかもしれないですが、京阪神で毎月どこかで歌舞伎をやれたらというのが僕の夢。今はずいぶん歌舞伎の公演も増えてきましたし、そういう日も近いんじゃないかなと夢見ていますよ(笑)」
――今回のように、上方の役者を中心に盛り上げていけたら……。
「そうですね。特に大阪は、まだ歌舞伎に馴染みがないと思うんですよね。そういう意味では定着してほしいし、とりあえず観ていただきたいと思います。『新八犬伝』にしても、『GOEMON』にしても、皆様が持っている歌舞伎のイメージとは真逆だと思うんですよ。 歌舞伎は日本の伝統文化ですし、一度は観て頂きたいですね。とりあえず、観て判断して頂けたら。古典といえど、日本語ですからね。ある程度はわかるはずなんですよ。僕は映画もテレビも出させていただいていますが、歌舞伎にはいろんな要素がつまってて、芝居作りのすべてが含まれているので、面白いですよ。歌舞伎の台本って200年前、300年前に書かれたものを今やるわけですよね。やはり面白いものは残るんですよ。その力強さはあるんじゃないかな」
――確かに、敷居が高いとか難しいと思われている方が多いですよね。
「そういうイメージを取っ払いたいんです。いろんな役者さんのファンになって、追っかけるのもひとつの楽しみだと思いますし、あと、歌舞伎の芸の力強さを観ていただきたいですね。歌舞伎役者は70歳、80歳になってもお姫様ができるんですよ。芸の力があるから、20歳の役者が演じるお姫様よりも可愛らしく見えたりする。それは、映像では不可能な、歌舞伎だからこそ成立する力ですよね」
――今回の2作品は、愛之助さんにとって挑戦することも多い作品ですか?
「自分のホームグラウンドでやらせて頂くのはすごく有難いことですが、お客様が何を求めているのかということを考えると、すごく難しかったですね。幕が開いて、お客様に喜んでいただけているのが見えて、少しホッとしていますね。また今年の10月にも大阪松竹座で座頭として、花形歌舞伎をやらせて頂くことになりましたので、気合いが入ります」
――歌舞伎を観たことがない方には、今回の2作品を一度観て頂きたいですね。
「昼の部の『新八犬伝』は、目新しいことを使わず、古典歌舞伎を楽しんで頂ける作品ですし、夜の部の『GOEMON』は、皆様ご存知、石川五右衛門が主役。イスパニア人とのハーフで赤毛、フラメンコもありという、歌舞伎ではない試みをしています。昼夜ともに宙乗りで飛びますし、客席中も走り回り、2回も3回も観たくなるような作りにしております。両作品、180度違う作品になっておりますので、昼夜観ていただいても確実に楽しめると思います。ぜひ、歌舞伎を観たことがない方にも観に来て頂きたいと思います。大阪人ですから、損はさせません(笑)!」
(取材・文/黒石悦子)
(2013年2月17日更新)
発売中
Pコード:426-116
「新八犬伝 片岡愛之助四役早替り宙乗り相勤め申し候」
▼開催中~26日(火)11:00
「GOEMON 石川五右衛門 片岡愛之助宙乗りにてつづら抜け相勤め申し候」
▼開催中~26日(火)16:00
大阪松竹座
1等席-10500円
2等席-7350円
3等A席-5250円
3等B席-4200円
[出演]片岡愛之助、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、坂東巳之助、中村壱太郎、中村種之助、坂東薪車、上村吉弥/中村翫雀、片岡秀太郎 ほか
※未就学児童は入場不可。
[問]大阪松竹座
[TEL]06-6214-2211
大阪松竹座公式サイト
http://www.shochiku.co.jp/play/shochikuza/
『二月花形歌舞伎』公式BLOG
http://www.shochikuza-hanagatakabuki.com/
3月20日(水)12:30/17:30
会場:ST REGS OSAKA アフターボールルーム
[問]06-6343-0567(プラインニングカンパニー柿本/平日10:00~18:00)