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『夢の三競演』お三方インタビュー、トリは笑福亭鶴瓶
「9回目にして、ようやく自分の落語ができるなぁって。
これからですよ」と語る鶴瓶は『鴻池の犬』を口演!

12月25日に開かれる桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶による『夢の三競演』。上方落語の人気落語家が一堂に会し、珠玉の話芸を聞かせてくれるとあって、毎年大好評を博している。今年は南光、鶴瓶、文珍の順に高座に登場。2番手の鶴瓶は、師匠である六代目笑福亭松鶴が得意とした『鴻池の犬』を披露する。そんな鶴瓶に、この1年における落語への取り組み、そして演目『鴻池の犬』について、舞台『夢の三競演』についてなど、話を聞いた。

――今年1年の集大成ともいうべき、『夢の三競演』の季節となりました。ということで、まずは2012年を振り返っていただきましょう。

笑福亭鶴瓶(以下・鶴瓶)「今日(11月11日)の時点で落語をやったのが121席ですから、今年はやっぱり落語というものを重要視した年だなぁと思います。そういう意味では、落語を考えながら、ずっとバラエティー番組もやっていたという感じですね」

――意図的にそうしようと思われてのことですか?

鶴瓶「今年はうちの師匠(六代目・笑福亭松鶴)の27回忌なんで、どうしてもそういう思いを持っていましたからね。本当は(今年は)『妾馬』をやろうと思ってたんですけど、『錦木検校』『お直し』と東京のネタが続いていたもんですから、それじゃ大阪落語をと」

――六代目松鶴師匠の十八番だった、『一人酒盛』や『鴻池の犬』を始められました。

鶴瓶「今日も、繁昌亭とか2箇所に飛び入りして『一人酒盛』をやったんです。自分で言うのもおかしいですけど、2席とも大爆笑で手応えがあって。自分のファンの前ではやってても寄席でやったことがないもんですから、寄席でやった時の方が“あたり”がありました。寄席にはうちの師匠を知ってる人たちが多いんでね。繁昌亭の終わりしなに緞帳が下りる時、『さすが鶴瓶!』とか言うてはるんですよ。普通のお客さんですよ。これは嬉しいなと。口調は松鶴に似せながらやってるんやけど、自分の言葉でしゃべった方がいいというのも分かりました。あまりにもおやっさんに近づこうと思ってたから。それを落語をやりながら全部省いたら、それがウケたんですよ。うちのおやっさんの気を持ちながら、とっぱらったというか」

――師匠への思いを再確認した1年でもあったわけですね。

鶴瓶「落語がこんだけ注目されてるのに、笑福亭松鶴を忘れられているところが多いんですよ。僕のファンの子なんか、もちろん知りませんからね。松鶴はこういう感じだったと、松鶴を植え付けるというか。そういう義務がありますし、僕らが生きている以上、もういっぺんうちのおやっさんのことを、はっきり分かってもらおうと。自分が生きている限り、松鶴は心の中に生きてますからね」

――そんな中で、落語に対する新たな発見はありましたか?

鶴瓶「発見は多いですよ。それによって、自分の落語が変わった年でもありますね。『お直し』は、南光兄さんにやれと言われてやって、『錦木検校』は自分がやりたいと思って作り直し、『かんしゃく』は(春風亭)小朝さんにやれと言われて、うちの師匠に替えてやって。自分で変えてやったことに対して、あたりというのがすごくあるんですよ。今度は、どっぷりうちの師匠のところに入れるなと思うんです。その時に何か降りたというのはおかしいけど、自分のアンテナを持ちながら、もう一人の僕が自分の落語をようやく操作できるようになったっていうんか。お客さんと合わしてね。人間って、アンテナを持ってやると、お客さんが今何を望んでいるのかが分かり出す。そのアンテナが、こっち行った方がいい、あっち行った方がいいと絶えず言えるっていうのがすごく大きいですよね」

――ご自身のアンテナの精度が上がったという?

鶴瓶「いえいえ。初めてアンテナができたということです。そのアンテナを扱いながらやってるという。落語をする上で、絶対に伏線を引かないとあかんのですけど、その伏線を引くところをだれ場というんですね。だれ場はウケないんですよ。でも、だれ場がきっちりできると、次の山場がド~ンとウケる。僕は、今までだれ場をちゃんとできてなかったんです。だれ場やから、早く過ぎたいという気持ちがあるんですよ。それを、ちゃんと自分の中で理解できだした。だから、客席がシーンとしていることが怖くない。だれ場を楽しんでやれるから、ハマるとこがきっちりし出してね。あとは、ネタの力を信じて、ずっと引っ張っていく。だれ場は、いわば基礎工事。だからこそ、そこがすごく大事なんです」

――実は、この『三競演』のインタビューで、文珍さん、南光さんのお二人は“終活”について話をされることが多くなったと。ほぼ同年代である鶴瓶さんはいかがですか?

鶴瓶「お二人は、回り回ってそこまで来てはるんやと思います。僕はまだまだあの域ではないので。あの人らは落語を40何年かやってきて、いろんなことを経験されたと思うんですよ。非常におこがましいけど、僕は二人にとって刺激になったらいいなと。僕は落語をやり出してまだ10年しか経ってないし。だからこんなことを思えるんやないかな。でもね、ちょうどええ時に落語を始めたと思います。死ぬまで生々しく行きたいな。だから、僕はあの二人に派遣された男やと思いますよ。『三競演』やり出した時に、『お前、入れ!』って言うてもらったことが、今ようやくありがたいなと。今までは、本当に使ってもらってたっていう感じですね。9回目にして、ようやく自分の落語ができるなぁって。これからですよ」

――今回の演目は、『鴻池の犬』です。

鶴瓶「今年はおやっさんの年やし、おやっさんのネタでやろうかなと。その方が意味あるしね。それと、東京のネタじゃなく、大阪のネタをやりたいっていう。大阪のネタをしばらくやっていなかったもんですからね。大阪のネタがいいっていうのが分かりましたし、自分でようやくそれができるようになったと思います。東京へ行ったネタが多いので、僕は東京ネタを大阪へ持ってこようという思いがずっとあって、早くから『堪忍袋』や『化け物使い』をやったりしてたんですよ。それをみんなもやるようになったんで、それじゃ今度は大阪ネタをやろうかなと。それも、大阪ネタをきっちり面白い感じでリニューアルできたらなと思います。大阪のネタには東京にない面白さがあるんですよ。やっぱり情は、大阪の方が出るんですね。大阪弁がちょっと入ると、情が交じりますよ。大阪弁の持っている湿り気と生々しさがね」

――鶴瓶さんの『鴻池の犬』は、六代目の匂いを残しつつ、中盤に独自の展開を挿入し、クロ、ぶち、シロという3匹の兄弟犬の情感あふれる噺に仕立て上げられていますね。

鶴瓶「今の形になったのは今年の8月です。元々師匠の型でやってて、中盤の間を素話というかマクラみたいにして、そしてまた筋に戻って『ある日のこと…』と。間にだれ場があったから、鶴瓶噺で持たしてたんですよ。そこをやめて全部落語にしたから、ビフォー・アフターいうたらなんですけど、いい家になったと思います」

――かなりドラマチックな内容ですが…。

鶴瓶「シロが中心になって引っ張っていくというか。だから最後にクロと会うた時に、全部が生きてくるという思いがあるんです。シロとぶちの関係ができあがったから、クロに会える。兄弟の情は、シロが全部表すというかね。何も知らないのにドンドンしゃべるシロの素直さと、クロはそれを感じながら聞く。あそこは一番大事なところ。末の弟のシロが、いかに純粋に両方の兄貴を思っているかっていうことですよね。それが出たらなと」

――この噺をアレンジする時は、犬を人間に置き換えて考えたりされたんですか?

鶴瓶「いいえ、全く犬って思って作りました。でないと、人間のことのように思わそうとやったら犬に見えないですよ。犬ということでやると、よけいに人間に見えるんやと思います。僕は犬という気持ちでやってますから。でも、見る人は人間に置き換えてくれる。犬ということが、すごく大事ですね」

――来年は、さらに六代目師匠のネタや大阪のネタに取り組まれるおつもりですか?

鶴瓶「うちのおやっさんの大阪のネタを、もういっぺんきっちりしようかなと。来年は『高津の富』をやろうと思ってるんです。『三人兄弟』とかもやってみたいなと思うし。でも、本当に一番やりたいのは『仏師屋盗人』。うちのおやっさんの『仏師屋盗人』を聞いて入門したんでね。あと『相撲場風景』とか。でも、このネタは、きっちりしないと。今ね、崩してウケるとこだけをしようとする人が多いんですよ。それはそれでいいんですよ。でも、『動物園』にしてもそうですけど、やっぱりちゃんと米朝師匠が作られた型をやることが必要で、それも残していかないけないんですよ。『相撲場風景』も、昔の相撲の風景がどんなんだったかをはっきり出してやるべきやと思うんです」

――さて、今年のラインナップは聞き応え十分の3席が並びました。

鶴瓶「いい映画を3本見るみたいですよね。物語がみんなあるじゃないですか。『子はかすがい』は親子の情、こっちは兄弟の情、『帯久』は商売敵の情っていうかね。でも本当に落語に対してみんな真摯ですし、3人とも自分の師匠の料簡をすごく継いでいると思いますね。自分の師匠がどういう気持ちで、僕らを教育したかという。すごい人間が集まったんだなぁと。五代目文枝、枝雀、六代目松鶴から脈々と受け継いだ波を感じてほしいですね」

――そして、今回からエンディングのダンスが何かに変わると…。

鶴瓶「何をするかは言いません。めでたいもので終わります。今まで何で踊ってたんか意味が分からんわ(笑)」

 

(取材・文/松尾美矢子  撮影/大西二士男) 




ぴあ関西版WEB『夢の三競演2012』お三方インタビュー

第1回●桂文珍
http://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2012-11/sankyouen2012-1.html

第2回●桂南光
http://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2012-11/sankyouen2012-2.html 

(2012年11月16日更新)


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笑福亭鶴瓶
しょうふくていつるべ●1951年12月23日生まれ、大阪府出身。1972年2月、六代目笑福亭松鶴に入門。社団法人上方落語協会副会長。NHK『鶴瓶の家族に乾杯』(毎週月曜20:00~20:43)、フジテレビ『笑っていいとも!』(毎週木曜12:00~13:00)、TBS『A-Studio』(毎週金曜23:00~23:30)、毎日放送ラジオ『ヤングタウン』(毎週日曜22:00~23:30)など、テレビ、ラジオのレギュラー番組を多数抱える。自身の毎年恒例の独演会のほか、巧みに構成されたフリートークをノンストップで聴かせる『鶴瓶噺』や、14人の弟子の中から出演者を選抜する『笑福亭鶴瓶一門会』など趣向を凝らしたステージで楽しませてくれる、稀代のエンターテイナー。

●公演情報

『夢の三競演2012
~三枚看板・大看板・金看板~』

11月17日(土)10:00~一般発売

Pコード:423-921

▼12月25日(火)18:30

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-6300円

[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶

※未就学児童は入場不可。

[問]「夢の三競演」公演事務局
[TEL]06-6946-2260

※発売初日はチケットぴあ店頭での直接販売および特別電話[TEL]0570(02)9505(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。販売期間中は1人4枚まで。

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2011年の『夢の三競演2011』
“お三方インタビュー”