インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > “蜷川シェイクスピア”のオールメール・シリーズ 第6弾は初の悲劇『トロイラスとクレシダ』を上演! 主演のトロイラスを演じる山本裕典にインタビュー!

“蜷川シェイクスピア”のオールメール・シリーズ
第6弾は初の悲劇『トロイラスとクレシダ』を上演!
主演のトロイラスを演じる山本裕典にインタビュー!

蜷川幸雄の演出/監修のもと、これまで25作品を上演してきた「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。そのうちのすべての役を男性俳優が演じるシリーズ企画“オールメール・シリーズ”では、これまで『お気に召すまま』(出演:成宮寛貴、小栗旬、他)、『間違いの喜劇』(出演:小栗旬、内田滋、他)、『恋の骨折り損』(出演:北村一輝、姜暢雄、他)、『から騒ぎ』(出演:小出恵介、高橋一生、他)、『じゃじゃ馬馴らし』(出演:市川亀治郎、筧 利夫、他)の5本が上演され、いずれも大きな反響を呼んだ。
そして2012年、蜷川シェイクスピア第26弾にして、オールメール・シリーズ第6弾となる舞台が開幕。作品は、オールメール・シリーズ初の悲劇『トロイラスとクレシダ』だ。ギリシャ神話にあるトロイ戦争から起草し、時代を中世に置き換えて繰り広げられる本作。“トロイ戦争”での戦略、駆け引き、裏切りなどに巻き込まれる男と女の愛と復讐の物語だ。主演のトロイラス役は、人気若手俳優の山本裕典。当シリーズの『じゃじゃ馬馴らし』で蜷川演出作品に初出演した山本。本公演では激しくも繊細なトロイラス役をいかに演じきるのか、注目を集める。また、クレシダ役にはオールメール・シリーズ全作品に娘役で出演している月川悠貴が登場。他、若手俳優の細貝圭、長田成哉、佐藤祐基、塩谷瞬、内田滋に、小野武彦、たかお鷹、原康義、廣田高志、横田栄司、塾一久、鈴木豊、星智也、といった実力派が顔を連ねる。
そんな本作について、トロイラスの山本裕典に話を聞いた。

蜷川幸雄のコメント動画も到着!

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。蜷川シェイクスピアのオールメール・シリーズは『じゃじゃ馬馴らし』以来、2回目のご出演となりますね。まずは『じゃじゃ馬馴らし』の時のことをお聞かせください。

山本裕典(以下、山本):『じゃじゃ馬馴らし』の時は、稽古場に行くのがすごく楽しかったですね。毎回、みなさんが面白いことをやっていて、新しい発見がいくつもあったので。でも、一方では“自分はこれで正しいのかな”という不安もありました。

--その不安というのは?

山本:初めての蜷川さんの現場で、シェイクスピアも初めて。“この表現は合ってるのかな”とか、“今日の俺、ちゃんと芝居できたのかな”とか考えていて。稽古中、怒られたり指摘されることももあまりなかったので、そういう不安がたくさんありました。

--なるほど。そして今回は…?

山本:1つ1つ丁寧に指導してくださるので、ちゃんと理解した上で次のシーンに進むことができました。“ここはこれでいいんだ”と整理して芝居ができているので、前回みたいな不安は解消されています。稽古場の雰囲気も前回のような楽しさとはまた違いますが…。そうですね。毎日、ニナガワ千本ノックを受けてます(笑)。

--一幕一幕、気持ちの整理をつけながらのお稽古とのことですが、そういう現場はこれまでもありましたか?

山本:今までは割と許されていたという感じで。今回は台詞の少なさ、多さに関係なく厳しいご指摘があって、例えば何回も何回も2行の台詞を稽古していたりします。こういう経験はなかなかないですね。一番言われていることは、言葉です。言葉はすごく大事だと言われます。

--例えばどういったことを?

山本:僕たちの世代って間違った日本語を使っていたりするんです。特に僕たちの世代は。間違った述語、イントネーションだったりして。そういうところですね。長い台詞を家で覚えて稽古に行くのですが、そのときに間違った覚え方をしているところもあって。でも間違ったイントネーションや言い方って、なかなか抜けないんですよ。体が覚えているから。それを抜くのが大変です。あと、今回、気持ちの表現の仕方を学んでいます。例えば誰かが死んだと言わなければならない時に、僕はリアルな気持ちとリアルな口調で言っていたんです。でもこの舞台での死の表現は、もっと強く、強く、と蜷川さんに言われました。その強調の仕方で観客に悲しみが伝わるんですね。

--自身の殻を破るというか…。

山本:自分の殻を捨てなきゃいけないですね。ただここまで、一つ一つ丁寧に教え込んでいただける現場はなかなかないので、本当にいい経験だと思っています。自分の芝居を全否定されることもありますが、毎日が新鮮です。スタートラインに戻ったような気持ち、初心に戻りましたね。

--俳優を志した頃など思い出したりしましたか?

山本:そうですね、デビュー当時は無知すぎて、現代劇でも“本当にこれが正しいのか”ということが自分でも分からなくなることもありました。あの時の気持ちに近いものがあります。シェイクスピアとか、古典劇に対しても自分がまだまだ無知だからこそ、今、新人みたいな気持ちになっていると思います。

--共演の月川さんとは『じゃじゃ馬馴らし』以来ですね。しかも前回と同様、相手役です。

山本:相手役が月川さんでよかったです。稽古では、蜷川さんに丁寧に教えてもらっているので、僕はすごく時間を要するんです。その反対に悠貴くんは慣れているし、堂々としていて。ご本人は気づいていないかもしれないけど、その堂々とした存在が実は、僕を支えてくれています。

--では最後に、山本さんが思うシェイクスピア作品の魅力を教えてください。

山本:よく聞かれますが、正しい答え方がわからなくて…。でも、人間の表も裏も優しいところも汚いところも、すべて100%表現されているのがシェイクスピアだと思います。“古典”と聞くとすごく難しく捉えがちだと思うんですけど、ストーリーはすごく分かりやすい。そこもシェイクスピアの魅力かなと思います。登場人物が置かれている環境は複雑だけど、根本的な筋はすごく単純です。『トロイラスとクレシダ』も、トロイラスとクレシダはお互いに好きだったけど、クレシダが別の人を好きになって、それをトロイラスは裏切りと思って復讐するわけですよね。時代背景は戦争中で複雑だけど、そういう気持ちって現代の僕らにつながっていて、わかってあげられる状況なのではないかと思います。登場人物のキャラがすごく個性が強くて、お芝居もものすごく緻密に描かれていて、演出はもちろんですが、キャストのアイデアもあったりして、すごく面白くなっています。笑いあり、涙あり、立ち回りありで盛りだくさんの舞台です。彩の国さいたま芸術劇場大ホールでの公演でちょっとずつ進化していって、地方ではさらにパワフルに演じられたらと思います!

--それは大阪公演がますます楽しみですね。今日はありがとうございました。 




(2012年8月23日更新)


Check
山本裕典
やまもとゆうすけ●1988年1月19日生まれ、愛知県出身。2006年にドラマデビュー。以降、テレビ、映画、舞台、CMなど、幅広く活躍する注目の若手俳優。テレビドラマでは『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』『任侠ヘルパー』『南極大陸』『桜蘭高校ホスト部』『もう一度君に、プロポーズ』などのほか、『タンブリング』では連続ドラマ初主演を務めた。最近の出演舞台は『躾』『パッチギ!』『パレード』など。蜷川幸雄演出作品では、前回のオールメール・シリーズである『じゃじゃ馬馴らし』に続いて、2回目の

●公演情報

『トロイラスとクレシダ』

発売中

Pコード:420-989

▼9月7日(金)18:30

▼9月8日(土)12:30/18:00

▼9月9日(日)12:30

▼9月10日(月)12:30

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定-11000円(各日、公演日前日まで販売)

全席指定/クリアファイル付-11000円(8/26(日)まで販売)

[演出]蜷川幸雄

[原作]シェイクスピア

[翻訳]松岡和子

[出演]山本裕典/月川悠貴/細貝圭/長田成哉/佐藤祐基/塩谷瞬/内田滋/たかお鷹/原康義/廣田高志/横田栄司/塾一久/鈴木豊/星智也/他
※未就学児童は入場不可。クリアファイル付特別券は9/8(土)・10(月)12:30公演での取り扱いなし。

[問]梅田芸術劇場
[TEL]06-6377-3888

梅田芸術劇場
http://www.umegei.com/schedule/159/

前売チケットは各日公演の前日まで販売
チケット情報はこちら

●あらすじ

トロイ戦争のさなか、トロイの王子トロイラス(山本裕典)は、神官の娘クレシダ(月川悠貴)に狂おしいほど思いを寄せていた。クレシダの叔父パンダロス(小野武彦)の取り持ちによって、2人は結ばれる。永遠の愛を誓い合った2人だが、捕虜交換によりクレシダは敵国ギリシャ軍へ送られる。時がたち、軍使としてギリシャ陣営に訪れたトロイラスが見たものは、新たな恋人と抱き合っているクレシダの姿だった―。
(公式サイトより)