ホーム > インタビュー&レポート > “蜷川シェイクスピア”のオールメール・シリーズ 第6弾は初の悲劇『トロイラスとクレシダ』を上演! 主演のトロイラスを演じる山本裕典にインタビュー!
--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。蜷川シェイクスピアのオールメール・シリーズは『じゃじゃ馬馴らし』以来、2回目のご出演となりますね。まずは『じゃじゃ馬馴らし』の時のことをお聞かせください。
山本裕典(以下、山本):『じゃじゃ馬馴らし』の時は、稽古場に行くのがすごく楽しかったですね。毎回、みなさんが面白いことをやっていて、新しい発見がいくつもあったので。でも、一方では“自分はこれで正しいのかな”という不安もありました。
--その不安というのは?
山本:初めての蜷川さんの現場で、シェイクスピアも初めて。“この表現は合ってるのかな”とか、“今日の俺、ちゃんと芝居できたのかな”とか考えていて。稽古中、怒られたり指摘されることももあまりなかったので、そういう不安がたくさんありました。
--なるほど。そして今回は…?
山本:1つ1つ丁寧に指導してくださるので、ちゃんと理解した上で次のシーンに進むことができました。“ここはこれでいいんだ”と整理して芝居ができているので、前回みたいな不安は解消されています。稽古場の雰囲気も前回のような楽しさとはまた違いますが…。そうですね。毎日、ニナガワ千本ノックを受けてます(笑)。
--一幕一幕、気持ちの整理をつけながらのお稽古とのことですが、そういう現場はこれまでもありましたか?
山本:今までは割と許されていたという感じで。今回は台詞の少なさ、多さに関係なく厳しいご指摘があって、例えば何回も何回も2行の台詞を稽古していたりします。こういう経験はなかなかないですね。一番言われていることは、言葉です。言葉はすごく大事だと言われます。
--例えばどういったことを?
山本:僕たちの世代って間違った日本語を使っていたりするんです。特に僕たちの世代は。間違った述語、イントネーションだったりして。そういうところですね。長い台詞を家で覚えて稽古に行くのですが、そのときに間違った覚え方をしているところもあって。でも間違ったイントネーションや言い方って、なかなか抜けないんですよ。体が覚えているから。それを抜くのが大変です。あと、今回、気持ちの表現の仕方を学んでいます。例えば誰かが死んだと言わなければならない時に、僕はリアルな気持ちとリアルな口調で言っていたんです。でもこの舞台での死の表現は、もっと強く、強く、と蜷川さんに言われました。その強調の仕方で観客に悲しみが伝わるんですね。
--自身の殻を破るというか…。
山本:自分の殻を捨てなきゃいけないですね。ただここまで、一つ一つ丁寧に教え込んでいただける現場はなかなかないので、本当にいい経験だと思っています。自分の芝居を全否定されることもありますが、毎日が新鮮です。スタートラインに戻ったような気持ち、初心に戻りましたね。
--俳優を志した頃など思い出したりしましたか?
山本:そうですね、デビュー当時は無知すぎて、現代劇でも“本当にこれが正しいのか”ということが自分でも分からなくなることもありました。あの時の気持ちに近いものがあります。シェイクスピアとか、古典劇に対しても自分がまだまだ無知だからこそ、今、新人みたいな気持ちになっていると思います。
--共演の月川さんとは『じゃじゃ馬馴らし』以来ですね。しかも前回と同様、相手役です。
山本:相手役が月川さんでよかったです。稽古では、蜷川さんに丁寧に教えてもらっているので、僕はすごく時間を要するんです。その反対に悠貴くんは慣れているし、堂々としていて。ご本人は気づいていないかもしれないけど、その堂々とした存在が実は、僕を支えてくれています。
--では最後に、山本さんが思うシェイクスピア作品の魅力を教えてください。
山本:よく聞かれますが、正しい答え方がわからなくて…。でも、人間の表も裏も優しいところも汚いところも、すべて100%表現されているのがシェイクスピアだと思います。“古典”と聞くとすごく難しく捉えがちだと思うんですけど、ストーリーはすごく分かりやすい。そこもシェイクスピアの魅力かなと思います。登場人物が置かれている環境は複雑だけど、根本的な筋はすごく単純です。『トロイラスとクレシダ』も、トロイラスとクレシダはお互いに好きだったけど、クレシダが別の人を好きになって、それをトロイラスは裏切りと思って復讐するわけですよね。時代背景は戦争中で複雑だけど、そういう気持ちって現代の僕らにつながっていて、わかってあげられる状況なのではないかと思います。登場人物のキャラがすごく個性が強くて、お芝居もものすごく緻密に描かれていて、演出はもちろんですが、キャストのアイデアもあったりして、すごく面白くなっています。笑いあり、涙あり、立ち回りありで盛りだくさんの舞台です。彩の国さいたま芸術劇場大ホールでの公演でちょっとずつ進化していって、地方ではさらにパワフルに演じられたらと思います!
--それは大阪公演がますます楽しみですね。今日はありがとうございました。
(2012年8月23日更新)
発売中
Pコード:420-989
▼9月7日(金)18:30
▼9月8日(土)12:30/18:00
▼9月9日(日)12:30
▼9月10日(月)12:30
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
全席指定-11000円(各日、公演日前日まで販売)
全席指定/クリアファイル付-11000円(8/26(日)まで販売)
[演出]蜷川幸雄
[原作]シェイクスピア
[翻訳]松岡和子
[出演]山本裕典/月川悠貴/細貝圭/長田成哉/佐藤祐基/塩谷瞬/内田滋/たかお鷹/原康義/廣田高志/横田栄司/塾一久/鈴木豊/星智也/他
※未就学児童は入場不可。クリアファイル付特別券は9/8(土)・10(月)12:30公演での取り扱いなし。
[問]梅田芸術劇場
[TEL]06-6377-3888
梅田芸術劇場
http://www.umegei.com/schedule/159/
トロイ戦争のさなか、トロイの王子トロイラス(山本裕典)は、神官の娘クレシダ(月川悠貴)に狂おしいほど思いを寄せていた。クレシダの叔父パンダロス(小野武彦)の取り持ちによって、2人は結ばれる。永遠の愛を誓い合った2人だが、捕虜交換によりクレシダは敵国ギリシャ軍へ送られる。時がたち、軍使としてギリシャ陣営に訪れたトロイラスが見たものは、新たな恋人と抱き合っているクレシダの姿だった―。
(公式サイトより)