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「あったような嘘をつくのが好きなんです」(笑)
バンダムクラスステージ代表・細川博司が語る!

4月15日(日)まで大阪・ABCホールで『洗礼者の接吻』を上演しているバンタムクラスステージ。本公演について、主宰であり作・演出の細川博司に話を聞いた。

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。まず、『洗礼者の接吻』についてお伺いする前に、バンダムクラスステージの特徴として挙げられる「映画のような舞台」、ここについて教えてください。

細川博司(以下、細川):バンダムクラステージの舞台では、舞台上にはセットをあまり建てず、役者の雰囲気や所作だけでいろんなシーンを表現する形でやらせていただいています。それで、結構素早く舞台を展開していきます。そもそも僕は、映画を撮っていたんです。それから舞台の世界に行ったんですけど、舞台の脚本を書いても、なぜか映画の脚本になってしまうんですね。舞台の脚本か、映画の脚本かという区別がいま一つ、分かってなくて。最初は悩んだんですけど、そのまま舞台にしてみると、それはそれで面白く見えるというか、評論家のような方からは「こんなものは演劇と違うわ」と言われたりもしたんですけど(笑)、ひょっとしたら独特なものにるかもと、このスタイルを続けてきました。それで去年、第23回池袋演劇祭で優秀賞をいただいたり、結構面白がってくれるようになって、最近ようやく手ごたえを感じるようになりました。世界観も、パイプ椅子しか使ってない舞台だけど「なるほど」と思われるところがあって、それは映画でいうと、『ゴッド・ファーザー』とか、コッポラとか、ベルナルド・ベルトルッチみたいなヨーロッパ映画の空気を出せないかなと思っています。

--初歩的な質問で申し訳ないですが、映画の脚本と舞台の脚本の大きな違いとは何でしょう?

細川:これ多分、僕の人生の課題だと思うんですけど、一つは、映画って場面の選び方が違うと思うんです。AからBまでの出来事がある時に、お話では都合のいいところをピックアップするじゃないですか。そのピックアップの仕方が多分、映画と舞台で違うんです。というところまでは自分の中で整理がついているんですけど、実際にそれをやってみろと言われたらまだちょっと分かりません(笑)。まだ修行中です。

--では、最初は映画を撮られていて、なぜ舞台に?

細川:ぶっちゃけると、映画を撮ってもあまり褒められなかったんですけど、舞台だっと褒められたんです(笑)。それで、「あ、俺、こっちの方が向いてるのか」と(笑)。あと、映画やったら数億かかる作品でも、舞台だったら可能な範囲でできるので、そこは大きいです。

--映画とは違って、舞台では限られた空間ゆえに「これ以上はできないと」開き直るところはありませんか?

細川:そうですね。そういうところはあります。舞台は場面の切り替えがすぐできますよね。映画だとすべてを見せないといけないので、それは大きいと思います。

--舞台では、お客さんも自然と想像力を働かせて見てくだいますよね。

細川:そうですね。それゆに、場面展開となった時、それを何秒で信じてもらえるかというところは計算しますね。

--先ほども「褒められる」とおっしゃいましたが、細川さん自身も映画と舞台では、舞台の方がいいですか?

細川:今は舞台の方が僕の中で存在が大きいですね。あと「舞台をやって」とは言われるけど、「映画を撮ったら」とはあんまり言われないので(笑)。

--舞台を手掛けられての手応えではどうですか? 例えば、第一作目を作られた時など、どうでしたか?

細川:大学の時に友達に劇団に入らないかと誘われて、面白そうだなと思って加入したんです。そこでいきなり、脚本を書いてみてと言われて。それで、変なモンスターが出てきて、それと戦うみたいなお芝居を書いたんです。初めての脚本で、こんな感じかな?と思いながら書いたんですけど、あろうことかそれをそのまま上演されて、案の定、ボロカスに言われたんです(笑)。それで、その時は凹んだんですよ。もう二度とやるまいかと。でも、そこで止めなくてよかったなと今は思いますね。という、そんなスタートを切りました。それが15、6年前のことです。

--最初の苦い経験が、逆によかったと。

細川:失敗してよかったと思いますね。あの時、変によく思われてたらと思うと…。やっぱり初恋には破れとく方がいいですね。……って、うまいこと言おうとして失敗しましたわ(笑)。

--その後、作風で心がけていることはありますか?

細川:自分の作品を作る時はいつも、自分の母親が分かるものをと心がけていますね。母の詳しい年齢は教えてくれないんですが(笑)、おそらく60代です。で、上演後にいつも母親の感想を聞いて、「おもしろかった」と言ってもらえれば、その年代の方にもわかっていただけるのかなと思います。作風としては、古典的な会話劇なのですが、会話劇できっちり見せることで老若男女、分かっていただけると思っています。

--そして今回の作品ですが、舞台が1930年代の上海だそうですね。

細川:上海事変という事件がありまして、それに合わせた話です。そういう事件があった時に、実はこういう物語があったんじゃないかなという描き方です。

--上海事変を取り上げたのは理由はおありですか?

細川:いつも勘なんです。前のケネディの話(『JACK-MOMENT/宴のあと。』2011年12月上演)の時も勘でケネディを取り上げたんですが、何か面白くなるかもと。そこから史実を調べたりりますが、何か意味があってというわけではないですね。今回も、「上海やな…」と。上海ってロマンチックなイメージがあるんですよね。混沌として、いかがわしい感じがして、何が起こっても不思議じゃないような街で。そこに惹かれますね。アジアとヨーロッパの文化が混ざり合っているところも面白いなと思いました。

--歴史的な事件から何か、サイドストーリーを着想されるのでしょうか?

細川:あったような嘘をつくのが好きで(笑)。ジェームズ・キャメロン が『タイタニック』を撮ったじゃないですか。あれはタイタニック号に乗船していた人の話をリアルに再現しながら、そこに『ロミオとジュリエット』の話を入れるという作り方をしていているんですが、ああいう作り方を参考にしています。よくお客様に「翻訳ですか?」とか「ほんまにおった人ですか」と聞かれるんですが、それがすごく嬉しいです。「いや、あれは、僕の創作です!」って(笑)。

--では、今回のお話もそのように?

細川:今回はさすがに、その辺はちょっと嘘っぽいなとは思いますけど、少女漫画っぽい作り方をしていると思います。あと、12歳未満は入場不可なんですけど、暴力描写みたいなものもあります。舞台で「怖っ」って思うものってあんまりないなと思って、まあ、サービスかなと思って、「怖っ」と思わせるような演出を入れるようにしています。

--今回、ABCホールで5ステージ、1000人の動員を目指しているそうですね。

細川:はい。だからこそ、1000人の方に満足いただけるものを作ることが大事だと思うんです。それが次につながるとも思うので。そこに向けて、観賞に耐えうるもの、若い人に訴えかけられるもの、そういう作品を作ることですね。役者の大半がまだまだ無名の我々ですが、そこに渋谷天外さんという大御所の方がいらっしゃる。ずっと伝統の世界でやってこられた方に入っていただくことで、化学反応が起きるんじゃないかと期待してます。ぜひ、たくさんの方に、ここに見応えのあるお芝居があるぞということを証明したいと思っております。

--なるほど。上演10分前からは講談師の旭堂南陽による講談もあるそうですね。

細川:はい。毎ステージ、開演の約10分前からスタートします。1930年代の時代背景を講談で語っていただき、お芝居の世界観をより深くお伝えできればと思っています。前回も好評だったので、こちらもお楽しみください。

--お客様には早めのご到着をお願いしたいですね(笑)。今日はありがとうございました。




(2012年4月13日更新)


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●公演情報

劇団バンタムクラスステージ
「洗礼者の接吻/The BAPTIST’s Code.」

発売中 Pコード:418-532

▼4月13日(金)19:00

▼4月14日(土)14:00/18:30

▼4月15日(日)13:00/17:00

ABCホール

前売券-3500円(指定)

ペア券-3000円(指定、1名分)

[劇作・脚本][演出]細川博司

[劇作・脚本]西田博至

[出演]木下聖浩/hime/福地教光/るこ/畠中歳雄/丈太郎/f-co/渋谷天外/早川丈二/山本香織/一明一人/徳永健治/胡蝶英治/緒方ちか/殿村ゆたか/上田ダイゴ/川口新吾/他

※ペア券は2枚単位(合計6000円)での販売。12歳未満は入場不可。各開演10分前より旭堂南陽のミニ講談「上海の事変」あり。

[問]ABCホール[TEL]06-6451-6573

劇団バンタムクラスステージ
http://bantamclass.com/

ABCホール
http://asahi.co.jp/abchall/

●あらすじ