映画『パレード』の行定勲監督が、自身の手で舞台化！
演出家としてどう向き合うか、その意気込みを聞いた。
そして主演の山本裕典にも本作についてインタビュー。
それぞれの言葉をぜひ！ （2/2）

続いては、行定が「ベストキャスト」と確信するメンバーの一人、山本裕典へのインタビューをお届け。役者から観た作品への思いや、舞台に対する印象などを聞いた。

注目の若手5人が揃った舞台『パレード』。主演となる杉本良介を演じるにあたって、まずは意気込みを聞いた。

山本裕典(以下、山本)「映画版では、藤原竜也さんが演じられ、舞台では福士誠治くんが演じる伊原直輝役が主演だったんですが、今回は僕が演じる杉本良介役が主演でやらせていただきます。僕の役はどこにでもいそうな大学生で、周りに合わせる男の子という、今どきのありがちな若者の姿だと思うんです。それが『パレード』の象徴的な役だとも思って。出演者は、年齢はバラバラだけど同世代で。この5人でうまいこと化学反応を起こして、いいものを作りたいですね。舞台版でもこの5人でしかできないものをお見せできたらと思います。また、座長としても、うまく皆を引っ張っていけたらと思っています」

出演する山本裕典、福士誠治、本仮屋ユイカ、原田夏希、竹内寿の5人は皆、本作で初顔合わせ、初共演。そんな中で、最も第一印象が強かった人物は誰だったのだろう。

山本「どの取材でも言っているんですが、まず、福士誠治さんは最悪でした。嫌いになりました(笑)。テレビ番組で初めて顔を合わせたんですが、僕は会う機会があったらすぐに挨拶に行こうと思っていたんです。で、その番組の休憩中、挨拶に行こうとした、その前に一瞬、目が合ったんですよ。なのに目を反らされて、『わ！ この人最悪！』と思って(笑)。絶対、僕と共演することを知っているのに、何でこの人は目が合ったのに挨拶もさせてくれないんだろうと思って。その瞬間、福士誠治という俳優と稽古して、舞台に立つことに対しても嫌悪感を抱きました。で、制作発表のときも 『絶対に挨拶しない！』と思って。自分でも『俺、小っちゃいな～』と思ったし、挨拶をしないなんて社会常識的にもおかしいと思ったけど、僕はまだ子どもなんで、『絶対に挨拶しない！』と思ってたんです。福士さんのそばを通るときも小さい声で曖昧な挨拶して。でも、メイク室で、めっちゃハイテンションで『山本くん！ よろしくね！』って、いいアニキ的な感じで福士さんの方から来られて、そのギャップにびっくりしたんですよ。何なんだこの人と思って。でも、よくよく話をしたら、あのテレビ番組の休憩のとき、僕が目線を送る前に福士さんが僕にちょくちょく目線を送っていて、目が合ったのに僕も反らしたらしくて。福士さんはそのとき、『今度会ったら、ちゃんと挨拶しよう』と思ったそうです。僕はそれを聞いて、福士さんのことを一気に好きになって、福士誠治は最悪という感情に対して『本当にごめんなさい』と思いました(笑)。制作発表のときも、福士さんは一番年上ということもあって、みんなをリードしてくれて、心強いなと思いました。あとは、本仮屋ユイカさんですね。ポスター撮影でスタジオに入ったら、本仮屋さんが2､30メートル先からバーッと走ってきて、『山本さん！　本仮屋です！　ゆうてんって呼んでいいですか!?』と言われて、ぶっ飛んでるなって思いました(笑)。本仮屋さんは多分、ネットとかで僕のプロフィールを調べて、そこであだ名がゆうてんと知ってコミュニケーションをとってくれたんだと思います(笑)。そうやって、稽古に入る前からいい空気を作ってくれるキャスティングだと思って、面白くなりそうだなと思いました」

そんな同世代と共演することに対して、どう捉えているのだろうか。

山本「舞台ではこれまで、目上の方々と一緒にお芝居をすることが多くて。いつも一番年下のポジションでかわいがってもらっていたし、甘えていたところもあったんですけど、今回は後輩(竹内寿)もいますし、先輩はちゃんとやってきたんだよという後姿も見せたいです。でも、舞台に立ったら先輩も後輩も関係ないから、山本裕典はちゃんとやるんだぞというところも観てもらいたいですし、先輩もいつつ、後輩もいつつという、真ん中のいいポジションで、思い切ってお芝居に挑戦したいなと思います」

続いて、杉本良介という等身大の役を演じることへの意識を聞いた。

山本「ドラマなどで演じさせていただいた役は、バカだったり、熱血だったり、ヤンキーだったり、逆にすっごい情けなかったりと、両極端だったんです。こういうニュートラルな役は初めてなので、新しい挑戦だと思っていますし、それを演じられたら『自分はあんな役ができるんだ』というアピールにもなると思います」

初めての役柄ではあるが、自身と重なる点はあるのだろうか？

山本「素はピッタリだと思います。すごく似た部分があって。それをお芝居で演じたことがないだけだと。先輩の彼女に恋をしたことはないけど、中学のときに友達の彼女に恋しちゃって(笑)。この気持ち、わかるなって思いました」

映画『パレード』は舞台出演が決定した後に観たという山本。映画版での“杉本良介”との距離感を聞いた。

山本「映画で良介を演じた小出恵介くんとは仲良くさせてもらっていて、尊敬する先輩の一人でもあるんですけど、『小出くんがやっていたから…』と考えるんじゃなくて、原作を読んで、台本を読んで抱いたイメージで演じられたらと思ってます」

では、映画ではどのあたりに惹かれたのだろうか。

山本「映画は家でDVDを観る方なんですが、観ている途中にトイレに行きたくなったりとかして一時停止とかするんですけど、映画『パレード』は釘付けで、ずっと次の展開が気になってましたね。うまく言葉では言い表せられないのですが、一つの空間に若者がいて、その若者たちが互いを客観視していて、そんな若者たちをさらにテレビ越しに観てという、フィルターをいくつか通して観ていることが面白かったです。観終わった後もいろいろと考えて……。うまくは言えないですけど、人って頭の中で思っていても言わないじゃないですか。言わなくても時が流れるし、その場はまとまるし。こと今の社会って自分が悪者にならないように、マイナスにならないように黙ってるし、干渉しない。そういう最終形態がパレードに詰まっていると思いましたね」

続いて、舞台そのものの魅力について聞いた。

山本「舞台をやることで、映像の現場でやってきたことや学んだことを見つめ直せるというか、次のステップに進める気がするんです。『人の成長は右肩上がりじゃなくて、段階を踏んで上がっていく』と言っていた俳優がいて－－福士誠治だったかなぁ、違うかなぁ…(笑)、僕はそれを聞いて、まさにそうだと思って。その成長度合いは内容の濃さによると思いますが、階段を上るように成長していけたらいいなと思って、舞台も積極的に出たいなと思っています」

そして舞台に出ることへの夢を語った。

山本「僕のファンの方は若い女性が割と多いと思うのですが、僕を見たいという理由で構わないので、若い女の子たちに舞台を観に来てほしいです。それをきっかけに舞台を観に行くということが当たり前なってほしいんです。チケット代も高いので、頻繁にはできないかもしれないけど、ふらっと立ち寄る感じで舞台を観に来てくれるようになったらいいなと思っていて。以前、蜷川幸雄さんの舞台に出させていただいたとき、『蜷川さんの舞台を観たい』という年配の方が多いことを知って、すごくすばらしいことだなと思ったんです。それは、蜷川さんがずっと舞台をされてきたから、たくさんの方がファンになったからで。僕も舞台を続けていって、『山本裕典の芝居を観たい』と思われるような俳優になりたいと思います！」

俳優としての階段を上がること、夢へと近づくこと、そして初めての役柄への挑戦でもありと、山本裕典にとってキーポイントとなることは間違いない舞台『パレード』。一人の俳優が大きく成長していく様もぜひ、見届けてほしい。

舞台『パレード』は、2月4日(土)・5日(日)、梅田芸術劇場 シアター･ドラマシティで上演。前売りチケットは残りわずか。ここで見逃す手はない！

（2012年1月26日更新）

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