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長塚圭史が初めて井上作品を、しかもミュージカルを
演出することでも注目の『十一ぴきのネコ』が間もなく
シアタードラマシティで上演! 本作の魅力について
にゃん太郎を演じる北村有起哉にインタビュー!

井上ひさしが世に送り出したネコだけが主役のミュージカル『十一ぴきのネコ』が、長塚圭史の演出で間もなく、シアタードラマシティに登場する。本作で井上戯曲を初演出する長塚だが、ミュージカル作品も初めてのこと。音楽は、数々の名曲で井上戯曲を彩ってきた作曲家・宇野誠一郎の楽曲をベースに荻野清子が新アレンジを施してお届け。そして、自由気ままに過ごす十一匹のネコたちを演じるのが、北村有起哉、山内圭哉ら演劇界を代表するつわものたちだ。原作は1967年に馬場のぼるが発表した同名絵本。それを井上が戯曲化し、人形劇としてNHKで放送されたのが1969年。今から40年以上前の作品に関わらず、現代日本への痛烈な風刺もはらんだ本作が今、長塚の手によりよみがえる。この注目作を見逃すわけにはいかないわけで、本作への見どころなども含め、他十匹のネコたちのまとめ役でもある“天晴れ指導者のにゃん太郎”を演じる北村有起哉に話を聞いた。

北村有起哉さんの動画メッセージもどうぞ!

--ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いいたします。まず、この井上ひさしさんの『十一ぴきのネコ』ですが、お話の見どころやポイントを教えてください。

北村有起哉(以下、北村)「ネコという設定にまず驚いたんですが、今回、こういう作品があったことを初めて知ったんです。(井上さんは)絵本を脚色されたわけですが、そういった作品も珍しいんじゃないですかね。あれだけある井上さんの作品群の中で絵本が原作というのは何か意外な、ちょっと番外公演的な雰囲気も感じますね。物語は非常にシンプルですよね。腹減った野良猫たちが大きな魚を求めて旅に出るという、そういう部分はすごくシンプルですけど、そこはネコですから、一筋縄ではいかない。統制がとれないというか、ネコだけにそれぞれバラバラで。そこら辺が面白いですよね。役者さんも個性的で、バラバラですから。よくこれだけ、個性的なメンバーが集まったなって。こういったアンサンブルの場合、その中に一人でもちょっと残念な方がいると--敢えて残念な方と言いますが、そうすると、その一人だけ目立っちゃうんですよ。悪目立ちしちゃって。だから舞台は残酷なんですけど、本作はその心配がないというか、このキャスティングですから、そこら辺の不安は何もありません。しかも、(長塚)圭史が束ねてくれますし。舞台では、それぞれのネコ1匹1匹を見るのも面白いんじゃないですかね」

--長塚さん演出作に出られるのは、2005年の『LAST SHOW ラストショウ』以来と、約6年ぶりで、この時間の中でお互いに変化がおありだと思うんですが…。

北村「やっぱり違うでしょうね。30代前半だった人間が後半になりましたし、特に彼は(イギリスに)留学もしていますしね。僕も変わったと願いたいですね。いろんな経験を積んで、表現も深まり、少しでも視野が広がっていてほしいですし、僕は役者という職業で、彼は演出家という職業で、それぞれ捉え方も6年前とは変わっていると思いますしね。まあ、そんな大きくは変わってないでしょうけど。そういう部分では“今まで何やってきたの?”とか思われたくないですよね。……それはないとは思うんだけど、でもどこかで、“俺は俺なりにやってきたぜ”ということは提示しないとダメだと。僕は集団に入るとか、徒党を組むという経験がたまたまないので、1回1回の舞台が本当に大事で。また呼んでいただけるようにというガツガツ感は毎回、毎回、一応出しているつもり……なのかな?(笑)。自信がなくなってきた(笑)。でもこうやって井上さんの作品に呼んでいただけるのはうれしいし、やっぱり再会することも僕は嬉しい。けど、ただ再会して“久しぶり! またやろうね!”では単純にかっこ悪いなって、それだけだったりしますね」

--そういう部分は肌で感じられるものですか?

北村「そうですね。口で言うことじゃないですよね。本当に体感して。まあ、お腹周りも変わってるだろうけど(笑)。そういうことも含めて一緒にできればなと思いますね」

--『十一ぴきのネコ』は井上さんが36歳の頃に書かれた作品です。それを今、長塚さんが36歳で演出されて、北村さんは37歳で出演されます。同世代からこの作品を見て感じられることは何でしょうか?

北村「半ばもう諦めて、絶望しかけているところで、ラストチャンスだと思い腰を上げて。大きな魚という希望に向かって、最後の一か八かみたいな、そのエネルギーは大きいですよね。この世代は、もうあるレールに乗っかっているというか、この野良ネコほど空腹で過酷な環境じゃなくても、今、置かれている自分でもういいかなと思う反面、そのまんまでいいのかい?みたいな迷いもありますよね」

--お腹周りの話ではないですが、腰が重くなって、立ち上がるにも…。

北村「そうですね、労力が要りますしね。ましてや30歳くらいのネコだから、ちょっとやそっとじゃ納得しないでしょうね」

--北村さん演じるにゃん太郎さんはリーダーですが。

北村「それも勝手に、ですよ。誰も薦めていないのにリーダーになって。本当に面倒臭いやつです(笑)」

--キャラクターとしては重なる部分はありますか?

北村「僕はどっちかというと圭哉さんの演じる悪いネコ。猫糞のにゃん十一。圧倒的にそうですね」

--天晴れ指導者のにゃん太郎さんとは異なりますね。

北村「でも逆に、“僕にはこういう要素がないな”という距離感があるから、冷静に分析できるというか。やっぱりにゃん太郎が一番大きな魚を食べたいんだろうなと。その欲望にみんなが巻き込まれる。その巻き込むエネルギーが大事ですよね。理屈抜きに。本当、迷惑な奴かもしれない。すべてを諦めて、静かに、“いいよもう、小魚で我慢するよ”って、ほかの10匹だって葛藤もあるけど我慢してるのに、余計な刺激を与える。“あそこに行けば大きな魚がいる”って無理やり刷り込んで、洗脳していって、“よし、じゃあ、行こうか!”と言っているわけですからね」

--にゃん太郎さんに巻き込まれると…。

北村「手に負えない。でも、しぶといから、周りのみんなが根負けしちゃうんじゃないですかね。周りのみんなは、“こいつ…、ほんとにちょっといっちゃってんじゃないのかな?”っていうぐらいの常軌を逸脱した勢いで騙されるというか。でもにゃん太郎としては、そんなつもりは全然なくて、“今、動かなくて、いつ動くんだよ”と。別に一人で行けばいいのにって思うけどね(笑)。どっちかというと僕はそう思う。“そんなに食べたいんだったら一人で行けよ、俺たちのことは放っといてくれよ”って。でもそういう人も放っておけない。そのエネルギーはド直球でしょうね。いわゆる“ネコまっしぐら”。……古いけど(笑)」

--(笑)。では、ちょっとお話を変えまして、北村さんは、お話に出てくるネコさんみたいに、窮地に追い込まれて、その先に行こうという心理になったことはありますか?

北村「そうですね…。ちょっと違うかもしれませんけど、俳優の勉強をしていたとき、よくころころと旅立っていましたね。カッコイイ言い方をすると。つまり辞めていたんですけど。そこには、ある決断がありましたけどね。演劇学校に入学しても、勉強できることは知れているみたいに考えて。親からもちゃんと学費とか頂いていたんだけど、この学校にいる時間がもったいないと思って意を決して辞めたり。で、次に見つけた養成所でも、しばらくわーっとやるんだけど、ある瞬間、もうここには(得るものは)ない!となったり。仲間に止められても、心を鬼にして去っていくという。本当に申し訳なかったけど、僕自身、希望の光というか、未来への兆しを探し回っている時期だったので…。そういう意味では、模索していた頃はフットワークが軽かったんじゃないですかね。この『十一ぴきのネコ』は、希望のために別の場所へ行こうとするんだけど、僕は希望のためにその場から離れた。正確には違うけど、でもA地点からB地点に行く勇気と、今いる場所から離れるという勇気は、もしかしたら何か共通する部分があるかもしれないですね。どちらも相当なエネルギーですし」

--もうない!と思われたときなど、決断は早い方ですか?

北村「早いですね。恋愛も一時、そういう時期がありましたね(笑)」

--……。敢えてそこは、今回は追求しませんが(笑)、その希望の光を探していたのは大体おいくつぐらいの時ですか?

北村「22~24歳ぐらいかな」

--それは先の方に希望の光が見えていたから、決断できたんですか? 

北村「いや~、全然わかりませんでしたね。どうしたらいいかなって考えていました。マニュアルがないですからね。とにかく自分は役者になるんだって日々、言い聞かせるようにして。映画をタダでたくさん見るという目的でレンタルビデオ屋でバイトしつつ、意識をちゃんと維持していくという時期が一番、大変でしたね。アルバイトもたくさんやってて。安いアパートであれば、アルバイトを週に5回やれば生活が出来ちゃうんですよ。それが一番の落とし穴で。周りに反面教師的な人もいたから、“そうじゃない。あれじゃダメなんだ。俺は役者になるんだ。俺は絶対に売れるんだ。売れるためにはどうすればいいんだ”っていつも考えていて、そういう情熱だけはあって。その意識と情熱を維持することが一番、難しかったんじゃないかと思います。とにかく実践経験を積みたかったので、(人との)パイプをどうやって作っていけばいいんだとか、考えていましたね」

--その光は、いつのまにか見えていたんですか?

北村「今思うと、そうでしたね…いつのまにか。あるプロダクションに預かってもらっているとき、映画のオーディションに受かったんですよ。でも、もうそのプロダクションを辞めるって決めてたから、そのまま辞めちゃって。その後、今のマネージャーに出会って、それからは今、この瞬間まで全てがつながっていますね」

--役者になるというモチベーションを保つために、ほかに何かしていましたか?

北村「いろんな舞台を観に行って、面白かったなと思ったら、その舞台にちょっとでも知り合いが出てたら“今日は飲みに行かないの?”って無理やり誘ったりしていましたね(笑)。宴席に必ず出席して、とりあえず顔と名前を覚えてもらう。演劇の話をするのも大好きだったので、先輩たちにいろんなことを教えてもらいました」

--なるほど。お話を伺っていると、北村さんは団体だと端っこから見ているようなタイプですが、個人的なことでは割とにゃん太郎さんですね。勢いがありますね。

北村「そうだね(笑)。辞めると決めたらバシッと辞めますしね(笑)」

--では最後に、単純な質問ですが、ネコは好きですか?

北村「それがネコ好きじゃないんですよ、犬好きなんですよ~」

--では、もしこれが『十一ぴきのイヌ』だったら、どうなっていたと思いますか?

北村「犬だったら、みんなですぐ行くと思う。“よし!行こう!”って。犬ぞりじゃないけど、みんなでパパパーっと行って、上手に平等に分けて。けんかもしないでしょう。そうすると、話がすぐ終わっちゃいますよね。犬ってそういうイメージがあるので、やっぱりこの作品はネコであるべきだと思います。ネコは自由気ままで。話の中で圭哉さんがこっそり抜け出すシーンがあるんですが、そことか大好きですよ(笑)」

--そこも注目ですね。今日はありがとうございました。ミュージカル『十一ぴきのネコ』は2月11日(土)、12日(日)、梅田芸術劇場 シアタードラマシティにて上演。この機会にぜひ、個性豊かな十一ぴきのネコたちに会いに来て!




(2012年1月24日更新)


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●公演情報

『十一ぴきのネコ』

発売中

Pコード:416-115

▼2月11日(土・祝)・12日(日)12:00/17:00

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

全席指定 一般-7800円

全席指定 学生席(高校生以下)-4800円

[劇作・脚本]井上ひさし

[演出]長塚圭史

[音楽]宇野誠一郎/荻野清子

[出演]北村有起哉/中村まこと/市川しんぺー/粟根まこと/蟹江一平/福田転球/大堀こういち/木村靖司/辰巳智秋/田鍋謙一郎/山内圭哉/勝部演之

※未就学児童は入場不可。学生席は入場時学生証提示。

★2月11(土)17:00公演終了後、アフタートークショーあり

[出演者(予定)]長塚圭史/北村有起哉/山内圭哉/粟根まこと/福田転球

[問]シアターBRAVA![TEL]06-6946-2260

●配役とあらすじ

天晴れ指導者のにゃん太郎:北村有起哉

穏健温和仏のにゃん次:中村まこと

旅廻りのにゃん蔵:市川しんぺー

徴兵のがれのにゃん四郎:粟根まこと

軍隊嫌いのにゃん吾 :蟹江一平

木天蓼のにゃん六:福田転球

逆恨みのにゃん七:大堀こういち

猫撫で声のにゃん八 :木村靖司

猫舌のにゃん九:辰巳智秋

紙袋のにゃん十:田鍋謙一郎

猫糞のにゃん十一:山内圭哉

鼠殺しのにゃん作老人:勝部演之

「ご飯にありついたのは一体いつのことだったかな?」野良ネコにゃん太郎は、いつもお腹をすかせていた。空腹だけど僕にあるものは何?と考えてみた……。
家、仕事、お金、財布、親、子ども、それとも運。どれもこれも、ないないづくしで何も無い。だから野良ネコなのだ!
ところがにゃん太郎は、ある日思いもよらぬものを手に入れた。それは、とても個性的な十匹の野良ネコ仲間であった。
友情を手に入れたけれど、ないないづくしの野良ネコが十一ぴき集まったところで、ペコペコのお腹が満ちることは決してなかった。そんなとき鼠殺しのにゃん作老人に出会い、目の覚めるような話を聞いてしまった。
「あの星の下に大きな湖があって、そこには途方もない大きな魚がいるそうな」
また「その魚は十匹や二十匹じゃとても食べ切れぬ大きさじゃそうな。」
みんなで肩寄せあって、ここに居たって、餓死するだけの野垂れ死。
一大決心、にゃん太郎を中心に十一ぴきのネコが大きな魚を求めて大冒険の旅に出た!
空腹すぎて眠れないけど、夢にまでみた満腹感を味わうことが出来るのか?

(公式サイトより)

『十一ぴきのネコ』公式サイト
http://hpot.jp/11neko/

前売り券は公演日2日前まで販売!
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