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シェイクスピアの「十二夜」「夏の夜の夢」を目にも楽しい
音楽劇に仕立てたスタジオライフ。宇野亜喜良による
美術・衣装にも注目の東京公演をレポート!

男性キャストのみで耽美かつ幻想的な世界を繰り広げる劇団スタジオライフ。彼らの最新公演が間もなく、大阪はサンケイホールブリーゼで開かれる。今回の演目は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』と『十二夜』の2作同時上演。いずれも音楽劇仕立てとなっており、ストレートプレイとはまた異なる魅力を放っている。
10月22日(土)から11月8日(火)までは東京公演が行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。そして早速、そんな東京公演のレポートが到着! 関西公演も目前、ぜひご参考にして劇場に足を運んでいただきたい!

東京・紀伊國屋ホールで行われた劇団スタジオライフによる『夏の夜の夢』(2006 年初演)、『十二夜』(2009 年初演)の2作同時上演。本作はともに“音楽劇”として構成され、シェイクスピア作品独特の長台詞を、歌やダンスに乗せることで耳になじむよう消化することに成功。いずれも初演時から高く評価され大勢のリピーターを生んだ人気演目だ。

今回、再演にあたっての目玉は、美術・衣装を宇野亜喜良氏が担当していること。妖しくもファンタスティックな彼の持ち味がスタジオライフの世界観といかに融合するのか、公演前から内外の話題を呼んでいたという。

まず、『夏の夜の夢』は、劇団として初めてシェイクスピア戯曲に挑んだ記念すべき作品であり、今や代表作の一つに。森に住む妖精の些細ないたずらが原因で、男と女、身分の高い者低い者、人なる者とそうでない者らが入り乱れての、一夜の大騒動が巻き起こる。

高貴なヒロイン・ハーミアと、彼女の愛を求める二人の男、ライサンダーとディミートリアス。またディミートリアスに想いを寄せるハーミナの親友ヘレナ。男女4人―― もちろん演じるのは全員男性、がパワフルに、そして舞台をところ狭しと駆け回り、汗をかきかき愛する人を追いかけ回す。そんな姿を見ているうち、180センチを越える大男たちがいつしか可憐な乙女に見えてくるのも、まさに演劇の醍醐味だ。一方で、町の職人たちのシーンでは、芸達者でお茶目な若手俳優たちが足並み揃えてバカをやる様が理屈抜きで笑える内容に。さらに、宇野氏デザインによるビビッドで有機的な衣装の力もあって、これら職人たちと貴族たち、そして森の妖精たちといったそれぞれの世界を隔てる垣根が低くなり、現実と幻想とが入り組み、もつれ合った『夏の夜の夢』ならではの融合感が心地いい。

 この演目は、スタジオライフが得意とするWキャストで展開。Savarinチームが看板とも言うべき経験豊かなメンバーを揃え折り紙つきの安定感であるのに対し、Bonbonチームは新鮮な顔ぶれで見せる新しい『夏の夜の夢』。同じ台本でも大きく異なる印象を与えるに違いない。

一方、Chocolatチームによる『十二夜』は、これまたややこしい恋の行き違い・すれ違いを描いた大騒動。思い人のそばに仕えるため男性になりすます少女ヴァイオラをさらに男性の役者が演じるという構造からして、観客を演劇の世界へ軽やかに誘う作品だ。

登場するのは、自信家のオーシーノ公爵、誇り高く強かなオリヴィア、鼻つまみ者のマルヴォーリオ、彼を陥れようと一計を案じる才女マライアに享楽主義者のサー・トービー、道化役にして語り部のフェステと、いずれもクセが強く煮ても焼いても食えない面々だ。ヒロインが男装して想い人に近付くという発想は、まさに近年流行中のラブコメドラマの元祖といったところだが、それらのドラマと違って荒唐無稽な恋愛譚だけに終わっていないのは、サブキャラクターたちがいっぱしの洗練と深みをもって描き込まれているからに他ならない。また、恋物語の要素のほか、人生の普遍的な哀愁までを祝祭(=十二夜)の狂騒に絡め、一種の人生讃歌としてまとめている点にも注目だ。

そしてこの『十二夜』でも宇野氏のビジュアル・センスがきらめく。着る者のバックボーンを饒舌に語る、目にも楽しい色使いの衣装たち。加えて観客の目を引くのは、舞台中央に立つ大天使の彫像。可動式の両翼がロマンティシズムを乗せて大きく広げられた瞬間、場は何とも言えぬ甘い多幸感に満たされた。

耽美系と呼ばれ、シリアスな文学作品を中心に評価を得てきたスタジオライフだが、彼らが持つもう一つの意外な側面、“陽”や“動”の魅力をあますところなく発揮しているこれら2作品。老若男女、誰もが楽しめるようにとのエンタテインメント精神を随所に散りばめながら、それでいてかつ、原典の言葉の美しさを可能な限り再現しているところに、劇団の真摯さと美意識を感じられる快作だ。




(2011年11月 9日更新)


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公演情報

Studio Life

発売中

Pコード:414-286(11/10(木)まで販売)

サンケイホールブリーゼ

S席-5700円 見切れ席-5700円

[劇作・脚本]シェイクスピア

[翻訳]松岡和子

[演出]倉田淳(上演台本)

[作詞]倉田淳(上演台本)

〈Chocolatチーム〉
「音楽劇「十二夜」」
▼11月12日(土) 13:00
[出演]松本慎也/関戸博一/曽世海司/及川健/林勇輔/笠原浩夫/青木隆敏/牧島進一/坂本岳大/石飛幸治/岩崎大/奥田努/篠田仁志/冨士亮太/神野明人/原田洋二郎/堀川剛史/鈴木智久/藤原啓児/他

〈Bonbonチーム〉
「音楽劇「夏の夜の夢」」
▼11月12日(土) 18:00
[出演]関戸博一/及川健/緒方和也/青木隆敏/倉本徹/石飛幸治/林勇輔/牧島進一/松本慎也/奥田努/篠田仁志/冨士亮太/神野明人/原田洋二郎/堀川剛史/織田和晃/鈴木智久/平居正行/曽世海司/藤原啓児/他

〈Savarinチーム〉
「音楽劇「夏の夜の夢」」
▼11月13日(日) 13:00
[出演]笠原浩夫/岩崎大/仲原裕之/坂本岳大/倉本徹/石飛幸治/林勇輔/牧島進一/松本慎也/奥田努/篠田仁志/冨士亮太/神野明人/原田洋二郎/堀川剛史/鈴木智久/曽世海司/藤原啓児/他

※全公演、終演後、舞台挨拶あり。見切れ席は、一階通路での演出が一部見切れる場合があります。あらかじめご了承ください。
[問]Studio Life[TEL]03-3319-5645

劇団スタジオライフ
http://www.studio-life.com/

チケット僅少!! 前売り券販売は11/10(木)まで!
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