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全国を巡る“笑いの伝道師”が見た日本の姿から
『夢の三競演』の知られざる掟(!?)まで赤裸々に!

桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶による大人気落語会『夢の三競演』が今年も、シアターBRAVA!で開かれる。毎年、12月上旬に行われており、その回数も第8回。落語ファン、三競演ファンの間ではすっかり年末の風物詩となっているのだが、今年は年の瀬も目前に迫った12月28日の開催と、まさしく笑い納めにふさわしい落語会になりそうだ。そして今年は、どんな演目で楽しませてくれるのか期待も募るばかり。
そこで、雑誌『ぴあ関西版』のころより続いている“お三方インタビュー”を今年も実施。お三方の胸のうちを文字数に制限されることなくたっぷりと聞いてきましたので、ぜひお読みください! トップバッターの桂南光に続いては、桂文珍が登場です。それでは、どうぞ~!

文珍師匠からのメッセージです!

――47都道府県を巡る全国ツアーも、今年でVol.3を迎えられましたね。しかし、2011年は激動の年でした。お客さんの反応に変化のようなものは感じられましたか?

桂文珍 (以下、文珍)「それは肌で感じましたね。やっぱり今、自分にできることは何だろうと。日本は本当に試練の時期で大変なんですけど、落語の世界というのは、もう少し今より空気が良い時代の時の噺なんですね。そこへ、たまにはエスケープするという。それは逃避じゃないかという意見もありますけど、現実が厳しいと、そういうところへ行って『楽しいなぁ』と思っていただくというのも一つの方法かと思います。今年は、そういうことをよう感じましたな。こないだも福島の会津若松に独演会で行ってきたんですけど、差し入れにメッセージが添えてあって『原爆にも負けず、水爆にも負けず、“人爆”にも負けず。会津若松は世界に向けて明るく頑張っていきます』と。もの凄い力を入れてはる。そやけど、どっかで癒されたい。つまり、泣いてるわけよ。泣いてるから、そんなキツイ言葉が出てくるねんね。反動というか。メディアはどうしても全体を伝えようと思て一義的になる可能性が高い。そういうことをフォローアップして、バランスをとっていくのが、ライブやったりすると思うのでね。でもね、東北方面でやると異常に笑いはるんですよ」

――それは、我慢の反動というか…。

文珍「けど、それは良くないのよ。普通がええねん。だから、早く普通に戻れるようになったらいいなって思ってます」

――ご自身にとっての2011年はどうでしたか?

文珍「最悪の年やね。運勢が暗闇やってん(笑)。今年は、じっとしてる年。早く開けてほしいねん。家に昔からある易学の本を見ると、前の年は物凄い良かって紫綬褒章をいただいた。今年は真っ黒。ほんなら震災は起こるわ、節電せないかんわ、わやや」

――その1年の笑い納めとなるのが『夢の三競演』です。

文珍「この頃は季節感が少し変わってきまして、お正月がちょっと前のめりしてるんですよ。日本人はクリスマスの後は、もう正月気分。今までやったら、劇場でも年末なんかはお客さんが入れへんかった。でも、この頃はコンビニも開いてるし、お正月の準備をしはらへんねん。お父さんなんかは家におっても邪魔やし、早くから(劇場に)来はる。だから、年末いうても“笑い納め”というくくりはキツイと思うよ。そのかわり正月は4日の仕事初めになったらパッと終わる。短いねん。前は松の内の間はずーっと正月やったのに。けど、そういう時こそ季節感は大事にせなアカンと思てるんですよ。そやないと日本人が日本人でなくなる。そんな中でも季節感のある噺をと思って、今回は寒い時の噺『池田の猪買い』を出したんです」

――『池田の猪買い』を、師匠がやられるイメージはあまりなかったんですが?

文珍「“女郎買い”のイメージはあった(笑)? 長い間やってないね。自分のCD聞いて思い出すねん(笑)。『ああ、そうかそうか』と。だから、会場にCD流そうかなと思て。それも考えてんで。カラオケがあるねんから、“カラ落語”いうのもあってもええやろと(笑)。それを口パクでね」

――再びやり始めたのはなぜですか?

文珍「波があるんですよ。やりたいなあっていう。久しぶりに、“この子どないしてるやろな? 長い間会うてないな”みたいなね」

――ご自身が思われる『池田の猪買い』の魅力、面白さとは?

文珍「僕が思てる以上に、ようできてますわ。旅ネタやけどね。段取りよういけば、普通にウケるようになってるんですわ。場面転換がテンポよく進んでいって、同じ場所でウズウズ言うてへんねん。同じ人物がずーっと行ってんのに、場面が変わっていくのが旅ネタの面白いとこやね。それと、この噺は基本的には人間の持っている、疑り深い『ほんまかいな?』みたいな精神を揶揄したもんでしょうね。テーマは、人間の持ってる疑い深さを“嗤う”? そういう面白さね」

――今回の出番はお三方の中では2番目ですが、そこらあたりも考慮して…。

文珍「トリの南光さんの『佐野山』が情の絡んだ噺で、前が鶴瓶ちゃんやから、真ん中でこのあたりの噺やと、両方がやりやすいかなと。先輩としては気ぃつことるわけや(笑)。本当に気ぃつこてたら、しゃべれへんと思うけど(笑)」

――文珍さん流のアレンジにも期待がかかります。

文珍「やっぱり聴いてはるのが現代人ですから、時代の流れとか、編集せないかんとこがあるんですよ。昔あった映画を、新しい監督とか出演者でリメイクするでしょ。同じ素材なんですけど、見ると今の人に合うんやわ。映像もキレイやし。けど、昔は昔なりの良さがあって、リメイクして凄く良くなってる作品もあれば、せん方が良かったなというのもあるし。そこは制作者のセンスが問われるところ。ですから、落語も演者自身の編集や演出が実はさりげなく入ってるんですね。米朝師匠なんかも随分と手を加えられたり、カットしたりしてはるんですよ。だから、リメイクにリメイクを重ねるのが落語の良さですわ、きっと。『足らんな』と思うたら足すし、『もっとあっさりした方がいいな』と思うたら、ちょっと減らすとか。お客さんの顔を見ながら、さじ加減をするというのが楽しいね」

――観客と一緒に作り上げていくという。

文珍「でもね、人間は言葉だけでイマジネーションを膨らませる能力があるはずやのに、例えばTVのテロップなんかで限定してしもうて、今の人は去勢されてる感じがするね。スマートフォンでもそうやけど、便利やけど去勢されてるっていう意識がどこかにないと。電気のない島で1人で住む練習みたいなことはでけへんから、本来の能力を失わないようにするためには落語もええんちゃうかな。人間が本能的に持ってる能力を引っ張り出すという。そこに頼ってやる芸やからね。聞く側の皆さんもそれを楽しむわけでしょ」

――『夢の三競演』も8年目を迎えました。改めて、この会の特徴とは?

文珍「古いようで新しいお客さんも来はんねんね。初めて落語に触れるお客さんを含めて、まだまだ開拓の余地が沢山あるんだなぁと思いながらやらしてもろてます」

――では、ズバリ見どころは何でしょう。

文珍「やっぱり三人三様、3つの色をそれぞれ楽しむちゅう感じかな。個性のぶつかり合いですからね。それはそれで楽しんでいただいたらいいかなと思うんです。こんなものに人生をかけた、アホなオッサン3人というか(笑)。でも、かなわんねん。あの人ら一生懸命しはるから。バランスを考えなさい! 力いっぱいやったらアカン。軽くやってちょうだい。やっぱり、まだ2人は若いから元気やね。そやから気ぃ重いわ(笑)」

――南光さん、鶴瓶さんは、この会の直前にそれぞれ還暦を迎えられます。人生の先輩としてアドバイスはありますか?

文珍「還暦の時は、まだ元気やわ。そっから2年ぐらいしたらガクッとくる。しんどうて(笑)。還暦のときは『何が還暦や』と思うんやけど、そっから忍び寄るよ。で、人間って不思議やね。エエ加減な生き物やわ。高齢者の人に物凄い目がいくようになんねん。若い時は見ないのにね。『この人はいくつぐらいやろなぁ』とか、『くすんだ色のを着てはるなぁ』とか、『あの靴歩きやすそうやなぁ』とか(笑)。そんなことが気になるのが62、63歳ですな。だから、2人にはまず『つまずくなよ。こけたら治りにくいで』と。それと、どっか悪いとこ出てくるからね。体に気をつけて。3人で80歳ぐらいまで出来たら面白いですやん。頑固な、言うこときかんジシィばっかりがおったらね」

――見たいような、恐ろしいような…(笑)。大変ウマの合うお三方ですが、他の落語会に出られる時と『三競演』では、気持ち的に違う部分があったりされますか?

文珍「自分が非日常になれるっていうかね。364日間の自分と違う1日が1年の中である。3人の取り合わせの妙の面白さに出会いにいくために、それぞれがどっか違うのよ。躁状態になってたり、変になってたりしてんねんけど、終わってしばらくしたら落ち着いてくる。落ち着いたら『帰ろか』とか言い出すのがおもろうて。鶴瓶ちゃんなんか、『おかしいやろ、それは!』みたいな状態になってる。ちょっとおかしくなりたいから行くのかな。なんか薬物のような。まぁ、私は普通やと思てるけど、3人とも『自分はまともや』と思てるやろね。でも、周りの人から見たら『3人ともおかしい』(笑)」

――エンディングで踊られる、恒例のダンスも楽しみです。

文珍「12月28日やから何しようかな。難しいねん。全体的には東日本に震災のあった年やし、年忘れとはいいながら、忘れたらいかんこともあるしね。そこは上手に考えます」

――南光さんは、『出来ればダンスはやりたくない』とおっしゃってましたが…。

文珍「ほんなら出るのを断って。この会はダンスを踊れるのが条件や。ダンスを踊らないんだったら出しません(笑)。本番なったら、一番しっかり踊ってるのにね。でも、一番いい加減なんは、鶴瓶ちゃんやけど(笑)」


(取材・文/松尾美矢子  撮影/大西二士男 




【関連ページ】
『夢の三競演 2011』

桂南光インタビュー
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111008-s002.html

笑福亭鶴瓶インタビュー
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111018-e008.html

(2011年10月13日更新)


Check
桂文珍

『夢の三競演2011~三枚看板・大看板・金看板~』

11月19日(土)チケット発売

Pコード:415-858
※発売初日(11/19[土])はチケットぴあ店頭での直接販売およびインターネット販売はなし。

特別電話[TEL]0570(02)9550(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。
11/20[日]以降は空席がある場合のみ店頭販売およびインターネット販売あり。
販売期間中は1人4枚まで。


●12月28日(水) 18:00

シアターBRAVA!
S席6300円

A席5250円

[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶/他

[問]シアターBRAVA![TEL]06-6946-2260

※未就学児童は入場不可。

最速抽選
プレリザーブ実施中!
http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?lotRlsCd=71855

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プロフィール

桂文珍

かつらぶんちん/1948年12月10日生まれ、兵庫県出身。1969年10月、桂小文枝(5代目文枝)に入門。2009年、「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞し、2010年、「紫綬褒章」を受賞した。2007年から、日本全国47都道府県を巡る落語ツアー『桂文珍 にっぽん!ハハハ!! 全国独演会ツアー』を行っており、今年で3巡目。第1回目のツアーファイナルは2008年4月、なんばグランド花月での『桂文珍 10夜連続独演会』。第2回目のファイナルは2010年4月、『桂文珍 国立劇場10日連続独演会』と前人未到の記録を打ち立てた。

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