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2011年を振り返りつつ始まった桂南光インタビュー
『夢の三競演』への思いのたけもたっぷりと!

桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶による大人気落語会『夢の三競演』が今年も、シアターBRAVA!で開かれる。毎年、12月上旬に行われており、その回数も第8回。落語ファン、三競演ファンの間ではすっかり年末の風物詩となっているのだが、今年は年の瀬も目前に迫った12月28日の開催と、まさしく笑い納めにふさわしい落語会になりそうだ。そして今年は、どんな演目で楽しませてくれるのか期待も募るばかり。そこで、雑誌『ぴあ関西版』のころより続いている“お三方インタビュー”を今年も実施。お三方の胸のうちを文字数に制限されることなくたっぷりと聞いてきたので、ぜひ、お楽しみを! トップバッターは、今年のトリを務める桂南光。それでは、どうぞ!

動画もご用意しております!

――今年も『夢の三競演』の季節がやって来ました。開催日は、2011年を締めくくる12月28日。少々気が早いですが、まずは今年1年を振り返っていただきましょう。

桂南光(以下、南光)「別に変わったことは何もなかったですけど…。ただ、周りから還暦やと言われて。11月3日に、南座で『還暦記念公演』ができるのは嬉しいことですね。また、それをキッカケに『松竹新喜劇 錦秋公演』にも出ませんかとお話もいただいて」

――少し前までは、「55歳で噺家を辞める」と口癖のようにおっしゃってましたが…。

南光「本当に55歳で辞めようと思ってて。何で工夫したことが伝わらないのかとか。一喜一憂じゃないですけど、そんなことがしんどいなと。ところが、55歳に近づいてきた時に、別にええがなって。楽しいことが多くなってきたんです。噺というものが、しゃべりながら自在に動かせるようになってきたのかも知れません。だから、もう噺家は辞めません」

――それを聞いて一安心。師匠の枝雀さんの年齢を超えることにもなりましたね。

南光「うちの師匠は稀な人やったし、あのトシで自分でピリオドを打たれたんやけど、たぶん師匠としては、やることはみんなやりきったっていう感じがあるんだと思うんです。よく、うちの師匠の70や80歳の舞台を見たいという人がいてはるんやけど。僕らもちょっとはあるけど、うちの師匠は全てやり終えたと思ってるから。でも、私はこれでもうやり終えましたっていうのは全然ないんですよ。今まで55歳で辞めると言うてたけど、55歳で全てをやり終えるという気もなくて、また、やり終えられないし。いまだに噺家に向いてるのかなと思う。向いてるかどうか分かれへんのにやってるというのは、申し訳ないけど、今でも何か私に向いてることがありそうな気がしてるんです」

――来年は、弟子のこごろうさんの桂南天襲名も控えています。“師匠”としても、感慨深い1年になったのではないですか?

南光「これで私も師匠としてすることがなくなったというか。もう一人前として認めてるので、彼が好きにすればいいわけやから、気が楽というかね。この3~4年かな、すごい面白いなと思って。彼がウケたら嬉しい。でも、嫉妬じゃないけど、闘争心というか、『くそっー、負けてられへんな』という気持ちが起こってきたんです。何か知らんけど、嬉しいのに腹が立つという。こんな気分ってあんねんなと。今まで味わったことなかったからね。3年前のサンケイホールブリーゼの第1回親子会で、そういう気持ちになりました。とても不思議でしたね。米朝師匠がうちの師匠にそう思ったり、うちの師匠が僕らにそう思われたかどうかは分からないけど、師匠ってこういうことなんやろなと」

――とても不思議な関係性ですね。しかし、そんな闘争心に燃える南光さんが、55歳で引退なんてできませんよね?

南光「そんな気がなかったから辞めようと思ててんけど。こごろうの姿を見てて、反対にやる気になった。普通の人は、こんな感情は味わえないでしょうね」

――さて、そんな1年の笑い納めとなる『夢の三競演』ですが、今年はトリをとられます。

南光「『佐野山』という、相撲の噺をやります。去年の名古屋場所から八百長問題が起こったでしょ。私は八百長を肯定はしないけど、否定もしない。でも、あんなふうに相撲の世界に切り込んでいってはいけないと思うんですよ。相撲はガチンコのスポーツでなくて、エンターテインメント。だから、見ていて勝ち負けで楽しかったらいいのでね」

――『佐野山』は、孝行者の佐野山という力士にまつわる人情相撲のお噺です。手掛けるようになったキッカケは?

南光「東京では落語で演じられていますけど、だいたいは浪曲や講談で『谷風の情け相撲』という演題で語られていたんです。それを20年近く前に、浪曲の広沢瓢右衛門先生がやってはったんですよ。『これ、落語になるで』言うて、おうちでテープに入れてくれはって。それを元にやってたんですけどね。だから、最初にやったのはえらい前です。その時は、登場する横綱を谷風にしていて。落語作家の小佐田定雄さんと相談して、大阪でやるんやったら小野川喜三郎が関西出身やからと、谷風から小野川に変えたんですよ。小佐田さんがまとめ直してくれて何回かやってたんですけど、師匠の奥さんが『浪曲みたいやね。でも、ちょっと話が違うな』と。自分でもそんな感じがあったので、ずっとやってなかったんです。けど、時期的にこれはちょうどええんちゃうかと、今年からまたやり始めました。八百長は肯定しないけど、こんな噺もあるんですよみたいなね。ある種、臭い噺で、最初は照れながらしゃべってたんですが、小佐田さんが『こういう臭い噺は、とことん臭くやらんといかん』と。まぁ、臭いですよ(笑)」

――心がほのぼのとする、1年の笑い納めにはピッタリの噺ですよね。

南光「ありえない相撲でしょ。八百長で笑えるというか、素敵な八百長(笑)? これなら許されるんじゃないかと思うんです。分かりやすい噺でどこででも通じるから、今年の『三競演』の締めくくりにしようと。少なくとも嫌な気にはならんでしょう。『ハッピーエンドで良かったな』と思っていただければ」

――南光さんといえば、数々の江戸落語を上方流に仕立て直して演じておられます。その時に気を遣われる点はありますか?

南光「言葉だけ変えたってダメなんですよ。江戸の空気と上方の空気は違うでしょ。そこに出てくる気持ちのあり方とかもね。それは、やっているうちに段々できてくるんですね」

――今後、やってみたい江戸落語のネタは?

南光「今、一番やりたいのは『火焔太鼓』。もっと大阪の空気でやりたいですね。大阪でも『火焔太鼓』をやっている人がおられますけど、なんぼ聞いても上方という気がしないんですよ。そこに出てくるおかみさんであるとか、登場人物の雰囲気なんでしょうね。それを小佐田さんに話したら『これは、難しい』。今、ベースを作ってもらってるんですけどね。『居残り佐平次』も、何となく千早赤阪村出身の調子のいい男で2、3回やったんですけど、あの調子の良さが上方とは違うなと。でも、来年はどこかでやると思います」

――今回の出番はトリということで、その前に出られるお2人に何かご注文があれば…。

南光「今年1年の集大成をそこにかけてやりますから、前で暴れようが、白けさせようが、全然大丈夫です。好きにしてください(笑)」

――(笑)。ご自身も『夢の三競演』を楽しみにされているのが伝わってきます。

南光「正直言うて、いろいろある落語会の中で一番楽しいですね。同じネタでも、3人共あそこでやる時は何か違うというか。それはそれで楽しいなと思いますね。文珍兄さんには悪いけど、気ぃ遣わないし、終わってからの打ち上げもとっても楽しいし」

――本当に3人は気が合うというか、周波数が合うというか。

南光「文珍兄さんは、いつ会うたってスタンスが変われへん。鶴瓶さんは私と同い年で、彼も還暦になるのに元気やなぁ。『A-Studio』を見るたびに思うわ、この人は詐欺師になってたら凄いなって。相手の心のヒダというか、ツボをキュッと突く。親に会うてきたり、とっても卑怯なやり方やな、あれは。でも、ゲストもそこまでしてくれたからと、短時間に心開いてしゃべりはるのは凄いなと思う。彼は詐欺師にならなくてよかった(笑)。3人はもちろんライバルではあんねんけど、別にライバル心とかないし。自分が一番ウケたいとか、たぶん3人ともあんまり思てないですよ。普通は2人やったら“VS”とか、3人やったら三つ巴とかになりますが、そんな感じやないですからね。闘うような芸能じゃないねんやろうね。3人それぞれが前に出て、お客さんと共に作るという感じやから。何かネタ持ち寄って、みんなでわぁわぁ楽しもかという。それをたまたま(笑)…いやっ、たまたまじゃないけど、お客さんが高いお金を払ろうて見に来はるという」

――では、あえて『夢の三競演』の見どころとは?

南光「3人は気が合う仲間やねんけど、それぞれ色が違うので、そこを楽しんでもらったらいいんじゃないでしょうか。でも、見どころなんかないんちゃうかな。見てもろうて、後で『あそこが見どころやったのか』と。人によって全然違うと思うんですよ。それは最初の挨拶かも知れないし、最後のダンスかも知れないし」

――ダンスですか? 確かにそれも楽しみですが…(笑)。『夢の三競演』で笑い納めの方が多いと思いますが、南光さんもこれが仕事納めとか。最後に意気込みをお聞かせください。

南光「毎年この会を迎えるに当たって、ああ年末だなと思いますね。これが終わって、今年も終わったなという気ですからね。でも、いつもやったら前の日バタバタしてたり、次の日が早かったりするんですけど、今年は12月28日でそれがないから、気分的にゆったり。だから、この会に1年間の稽古の成果を全てかけてやりましょう! 臭いでしょ?(笑)」

(取材・文/松尾美矢子  撮影/大西二士男 




【関連ページ】
『夢の三競演 2011』

桂文珍インタビュー
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111013-e003.html

笑福亭鶴瓶インタビュー
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2011-10/111018-e008.html

(2011年10月 8日更新)


Check
桂南光

『夢の三競演2011~三枚看板・大看板・金看板~』

11月19日(土)チケット発売

Pコード:415-858
※発売初日(11/19[土])はチケットぴあ店頭での直接販売およびインターネット販売はなし。

特別電話[TEL]0570(02)9550(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。
11/20[日]以降は空席がある場合のみ店頭販売およびインターネット販売あり。
販売期間中は1人4枚まで。


●12月28日(水) 18:00

シアターBRAVA!
S席6300円

A席5250円

[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶/他

[問]シアターBRAVA![TEL]06-6946-2260

※未就学児童は入場不可。

10/12(水)より最速抽選
プレリザーブも実施!
http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?lotRlsCd=71855

チケット即完必至です!お早めに!!
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プロフィール

桂南光

かつらなんこう/1951年12月8日生まれ、大阪府出身。1970年3月、桂小米(枝雀)に入門。1993年11月、大阪サンケイホールにて桂べかこより、三代目桂南光を襲名した。そして翌年12月に「上方お笑い大賞」を受賞。還暦を迎える今年は、京都・南座での「桂南光還暦落語会」を11月3日(木)に行う。また、11月18日(金)~26日(土)には大阪松竹座での舞台「松竹新喜劇 錦秋公演」に出演。現在、「ちちんぷいぷい」(MBS)、「大阪ほんわかテレビ」(YTV)にレギュラー出演中。またMBSラジオ「ノムラでノムラだ♪」にも出演と、“関西の顔”の一人でもある。

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