インタビュー&レポート

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「KYキャラって言われまくっています」と本人が言うように、俳優・池田鉄洋は一度見たら忘れられないほどの強い個性を放つ。劇団、猫のホテルに所属し、舞台を中心に、NHK『サラリーマンNEO』(出演)や、8月公開の『行け!男子高校演劇部』(脚本・出演)など映像でも活躍を見せる彼は、ひたすらくだらな~い笑いを見せる苦笑系コントユニット「表現・さわやか」を主宰。そこでは彼に負けず劣らずの濃厚な俳優が集結、毎回その名の通り“苦笑”コントが繰り広げられる。今回の新作『15-0~フィフティーン・ラブ~』では「少女マンガの世界」をテーマにオムニバスコントを展開。公演を前に、池田に見どころや笑いについて話を訊いた。

―― 表現・さわやかの特徴を教えてください。

「苦笑系コントユニットと銘打って公演を行っています。特にストーリーがあるわけでなく、脚本を逸脱した面白さを確実に生かしていこうと思っておりますので、ストーリーよりも役者の面白さが感じられるコントにしています。毎回テーマはありますが、まずはキャラクターの面白さを最初に打ち出して、後から無理やりストーリーを作っています」

―― 今回のテーマは「少女マンガの世界」ということですが…。

11061421.jpg「今までも恋愛テイストは入れていましたが、若くてピュアな、プラトニックだけど夢見がちな恋はやったことがなかったな~と。前回の『アラン!ドロン!』は、サラリーマンとか中年キャラが多かったので、今回はグッと年齢を下げて少年少女全開でいきたいなと思っていて。たまたま『高校デビュー』という映画を拝見させていただいて、少女マンガにとても興味が湧いたんです。これをアラフォーの表現・さわやかのメンバーや男性客演陣がやったらどうなるのかと(笑)。ひどい惨劇になるんだろうと想像したんですよね。とてもじゃないけど、8頭身でモテそうなんて言われるはずのない連中が、8頭身のつもりで、モテるという設定でコントを演じる。想像しただけでも面白いので、「少女マンガの世界」を軸にやっていこうと思いました。いつもどおりの奇抜なキャラがてんこ盛りで、全てのコントの質も変えて見せたいと思っています」

―― メンバーと常連の客演陣に加え、及川奈央さんを迎えた理由は?

「彼女の真面目さにひかれたんです。非常に演技力もありますし、彼女の真面目さが笑いを誘うのではないかなと。ふざけた笑いをふざけたまま演ずることなく、真剣にやって上品に演じて頂けるとおもいますので、キャラクター含め、演技力でオファーをしました」

―― どんなキャラクターが登場する予定ですか?

「高校生だけにとどまらず、先生やOB、部活の部長…、いろんなキャラクターは当然出てきます。ただ、僕らが少女マンガに出てくる高校生を真剣に演じるところが面白いと思いますので、そこに力を注ぎたい。全く関係ないコントもどんどん入ってきて、最終的にはそれが繋がっていく形になると思います。少女マンガが苦手だという人がいたとしても気にせず観て頂けますし、表現・さわやかのテイストは壊しません。お客様を良い意味で裏切らないつもりですが、成長はしたいなと思っています」

―― 本当に毎回強烈なキャラクターばかりで…。

11061422.jpg「ユートピアみたいなものを描きたいと思っているんです。おこがましいですが、ひとつのコントに出てきたキャラクターをもっと大事にすれば一本のお芝居ができるんじゃないかなっていうくらい、かなり存在感のあるキャラクターを惜しみなく出していると思うんです。そういう意味では、ストレートプレイ10本分にもなり得るものを凝縮して台無しにしてるんだぞっていう自負がありますね(笑)。テレビでよく観るコントも、みんなが嫌悪感を抱かないくらいのギリギリのラインで止めているものが多いのかなと思っていて、もうちょっと突っ込んでやれるのはもしかしたら舞台かもしれないなって思うんですよね。「もうちょっと観たい」を通り過ぎて「もういいよ!」ぐらいで生まれてくる笑いってあるんじゃないかなと。やっぱり役者がテンション上がるのって、ストーリーよりも自分がどういうキャラクターで目立っているかとか、やりがいがあるかとか、無茶ぶりをされてそれを超えていくところに快感があると思うので、そういう仕掛けは随所に散りばめていますね。でもそれがお口に合わない人もいるのは仕方がない。パクチー大盛りのタイ料理みたいなキャラクターが出てくるわけですから。ただ、次の料理はタイ料理じゃないですよ、という笑いもありますが、いずれにしてもちょっと臭みがともなったコテコテの料理なんですよね(笑)」

―― すごく笑いを追求されているように感じますが、そこまで追求するのは?

「笑いはみんな絶対必要としているものですし、まず私にとって必要なんです。だから自分自身が笑える作品にしなきゃいけないなと思っています。子どものころから『ポリスアカデミー』とか、『裸の銃を持つ男』、ドリフターズ、ひょうきん族とかがすごく好きだったこともありますが、母が病気をしてすごく落ち込んでいるときに綾小路きみまろさんのDVDを観て笑って癒されていたこともありましたし、今回の震災でみんな不安になっている中でやっぱり笑いが必要だと感じました。笑うっていうことは力になるし、笑顔を観ているだけでも力になるっていうことは、不謹慎と言われながらも事実としてあるものだなと思っています。辛い人も死に向かっていく人も、笑いに救われるということは信じているので、笑いの素晴らしさを追求していきたいというか…、勉強中ですね。芸人さんへの憧れもありますが、舞台役者ならではの笑いもある。カッコイイ言い方をすると求道者のように、いつもまだまだできるはずだと思っていて。やってもやっても届かないですね」

―― お客さんには晴れやかに帰って頂きたいですね。

「バカだったねっていう優越感でも別に構わないですし、楽になって帰って頂けたらすごく幸せだなって思います。いつもカーテンコールのときに客席を見ると1~2割の方はムスッとしていますね。その方々には申し訳ないですが、それは健全だと思うんです。だからいろんな要素を取り入れてみんながどこかでは笑えるようにしたいと思っています。10割の人が笑ったら革命ですよね。M-1の決勝でさえ意見が分かれる中、全員が笑顔だったらそれこそ日本にとっての有事だと思います(笑)。何が起こったんだろう!って思っちゃう。だから9:1の割合を目指して頑張ります。約2時間ほどですが、頭ぽかーんとして観て頂ければと思います!」

(取材・文 黒石悦子)

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(2011年6月14日更新)


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撮影:ミナミトタダユキ(メイン写真も)

プロフィール

表現・さわやか
学生時代に作・演出をつとめていた池田が、絶大な信頼を寄せるメンバーと共に、再び自分の笑いの世界を作る場として、2004年に結成。公演ペースは年に1回。テンポの良い構成と、役者の魅力を極限まで引き出す作風が、笑いの少なくなった小劇場界に受け入れられ、公演を重ねる毎に着実に動員を延ばしている。

池田鉄洋(いけだてつひろ)
1993年より猫のホテルに参加。CM、テレビドラマなどで幅広く活躍中。舞台公演への出演も数多く、阿佐ヶ谷スパイダースには「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」「少女とガソリン」のほか5作品に出演。最近の主な出演作は、劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎號「IZO」、シアターコクーンオンレパートリー「労働者M」など。映像では、CX「医龍」「太陽と海の教室」、NHK「サラリーマンNEO」「わたしのきもち」、映画「シーサイドモーテル」「トリック劇場版2」など。この春にはBSプレミアム「額縁をくぐって物語の中へ」にも出演。その他、雑誌連載「恥も外聞もなく」(徳間書店「本とも」)、「池田鉄洋のないものねだり」(角川書店「週刊ザテレビジョン」)など執筆活動も行っている。この夏には、脚本を手掛け、自ら出演もする「行け!男子高校演劇部」のロードショー公開が控えている。

公演情報

表現・さわやか『15-0~フィフティーン・ラブ~』

6月16日(木)~19日(日)
木金19:00 土14:00/19:00 日14:00
HEP HALL
全席指定3900円
[作][演][出]池田鉄洋
[出]佐藤真弓/いけだしん/村上航/岩本靖輝/菅原永二/伊藤明賢/佐藤貴史/及川奈央

※この公演は終了しました。