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―― まず、早乙女太一がこの役に抜擢されたのは、19歳という年齢やその雰囲気など、沖田総司と早乙女太一に重なるものがあったからだとプロデューサーの來住(きし)氏は言う。では、早乙女自身は、沖田総司に対してどう思っているのだろうか。
早乙女太一(以下、早乙女)「以前から沖田総司とイメージが合うんじゃないかと言われていたんですが、今まで1度もやったことがありませんでした。新撰組の舞台は、『新撰組炎舞録「薄桜鬼」』('10年上演)に出させていただきましたが、そのときは土方歳三の役でしたので、今回で『やっと』という思いですね」
―― そうしてこの『Recita Calda』で遂に、沖田総司と“対面”することとなったのだが、出演依頼を受けた当初は意外な反応を示していたようだ。
早乙女「お話をいただいたときは、『やりたくない』という答えだったんです。この役は今じゃなくても、もうちょっと後でもいいのではないかと思いましたし、朗読劇というものもやったことがなかったので…。何とかして断ろうと考えていたんですが、このお役を引き受けないことのメリットを探し出したときに、それがなくて。ないのなら、やった方がいいかなと思ってお受けしました」
―― 朗読劇という早乙女にとって未知なる世界だが、今、挑むことによって何かプラスになるのではと期待していると言う。
早乙女「來住さんに『すべて俺に言ってくれれば、すべて答えるから。全部、ぶつけてくれ』と言われて、それがお受けする決め手になりました。今は、あのときの感情に流されず、來住さんが引っ張ってくれてよかったなと思います(笑)」
―― この舞台は早乙女が普段、演じている芝居とはまた違うものになるのだが、それについてはどう受け止めているのか。
早乙女「いつもやっていることとは違いますが、まったく違うわけではないので…。僕自身、心がけているのは、芝居っぽくならないよう、一人で熱く語ったり、一人よがりにならないよう、自然にできればということですね」
―― 前述したように、沖田総司の恋愛をベースに語ってゆく本作。では、「剣士」である以前に「人間」であるという見せ方はどう捉えているのか。
早乙女「『剣士』と『ひと』という区別はあまりつけていなくて。逆に、恋愛と人を斬るということは、間逆なようで実は、とても近いことのように思います。そういうこともあって、自分の中では、(沖田総司像は)わかりやすいように思いますね」
―― この舞台の会場となるのは、京都の金戒光明寺だ。ここは新撰組がかつて拠点としていたことでも有名だ。さきにこの地へと訪れたそうだ。
早乙女「東京公演の会場である築地本願寺は、僕の中で和のイメージがなかったんですけど、金戒光明寺では本当に和を感じました。普段の舞台では、小屋の中で作品の空間を作りますが、今回はお寺をそのまま生かした形、境内もそのまま使って上演するので、会場によって異なる雰囲気になると思います」
―― 朗読劇も、一人芝居も、もちろんステージがお寺の境内であることも、早乙女にとっては何もかもが初めての経験となる今回。さまざまな挑戦を控えた今、何を思うのか。
早乙女「今までは人が必ずいるお芝居をしてきて。ただ、踊りの場合はひとりで踊ったりするので、自分だけの空間を生かしたものになります。今回のように、お芝居の中で自分一人になるということは経験したことがないので、すごい楽しみですね」
琴や三味線など音楽も効果的に用いて、剣豪・沖田総司の若き姿を描いてゆく本作。舞いも、殺陣も、女形もない。早乙女が得意とする“武器”を封印した中で、いかに新しい早乙女太一が生まれ出るのか。そしてまた、その新しさは内側から出るのか、外側から現れるのか…。その答えはきっと、板の上の彼を観ればわかるはず。幕末の時代を熱く駆け抜けた沖田総司をどのように語るのかも楽しみな注目の舞台は、間もなく幕を開ける。
(2011年6月 7日更新)
さおとめたいち●'91年、福岡県北九州市生まれ。大衆演劇「劇団朱雀」の二代目として全国で活躍している中、'03年に北野武監督の映画『座頭市』に出演したことを機に、「100年に1人の天才女形」を脚光を浴びる。以降、テレビや舞台などに多数出演、活動の幅を広げている。
▼6月12日(日)18:00
金戒光明寺
指定席7500円
[出演]早乙女太一(語り手)
※この公演は終了しました。