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現在開催中のノンバーバル・パフォーマンス『ギア』
仕掛け人・小原啓渡に聞く、『ギア』の過去、未来、現在①!

ブレイクダンスやマイム、バトントワリング、マジックの世界レベルのパフォーマーたちが、リズム、ダンス、音楽などを駆使してストーリーを展開する“大阪発”のパフォーマンス『ギア』。昨年1月と12月に行われたトライアウト(試演)公演は全ステージ完売と高い注目を集め、さらにブラッシュアップさせてのトライアウト公演が、2月10日より大阪・住之江の名村造船所跡地にて開幕する。そこで、今回の公演を前に、プロデューサーである小原啓渡氏に本公演について話を訊いた。

―― まず、『ギア』の狙いを教えてください。

「大阪府の都市魅力創造局というところに参与として関わっているんですが、都市の魅力というものをちゃんと考えた時に、魅力的な都市というものには必ず、いつ行っても観られるような文化的なコンテンツがあるんです。例えばブロードウェイの『ブルーマン』、韓国の『NANTA』というように。大阪にも吉本新喜劇や劇団四季、歌舞伎はありますが、すべて日本語です。日本の経済的にもこれからは観光が非常に重要なファクターになってくるので、言語の壁を越えて、旅行の負担にならない時間で観られるもの、そして大阪でしか観られないライブパフォーマンスを作るべきだと思ったんです。今や文化力が町を引っ張るくらいのことが世界では起こっていて、日本もそうならなければいけないと思うんです。それで今はトライアウトを続けているんですが、できれば(トライアウトは)今回で終了し、来年度(2011年4月~2012年3月)には本格的なロングランに入っていきたいと思っています」

―― 観光客をターゲットにしているわけですね。

「もっと日本のポップカルチャーを海外に発信、アピールしていく拠点が必要になってきているんですよね。ただ、最初はやはり国内需要を扇動していかなければなりません。『NANTA』も最初は8割が国内のお客さんだったんですが、それが今は逆転して8割が海外からの観光客になっているんです。なので、まずは日本での認知度を高めていきたいと思っています」

―― 『ブルーマン』や『NANTA』はビジュアルも印象に残り、日本でも浸透しつつあります。『ギア』ではどういう特徴を出していく予定ですか?

「『ブルーマン』は青い男たち、『NANTA』は料理のシェフたちみたいな、だいたいあのイメージが出てきますよね。『ギア』に関しては、まだトライアウトなので何をメインに出していくかというのは確定させていません。特徴的なエフェクトとしては“風”を使っていて、それを身体で感じていただけるようなある仕掛けをしているんですよ。あと、今回のトライアウトでは神戸大学大学院で研究開発された最新のテクノロジーを取り込んでいて、シーンをひとつ増やしています。だから逆に“『ギア』を観た人が何を話題にするか”が重要になってくると思っていて、それを探りながら作りこんでいっているのが現状ですね」

―― お客さんの反応を見て作っていくんですね。

「僕らの場合、演出部はあるんですが、演出家は“オン・キャクヨウ”。つまり“御客様”です。だからアンケートをすごく大事にしていて、出演者も演出部も全員でつぶさにチェックしていく。考え方は人それぞれなので、同じシーンでも良いという人と悪いという人はいますが、それを無視せず、良いと言われたことを立たせながら、悪い意見もここを変えたら良くなるんじゃないかというように改訂していっています。あくまでもお客さんの目線に立って作っていくことにこだわりたいと思っています」

―― では“大阪発”というところでこだわっている点はありますか?

「ひとつは“人材”ですね。僕には“文化は人が作る”という持論があって、関西でまだ未開の人材を発掘したかったんです。例えばオリンピックでメダルを手に入れると一躍有名になりますが、オリンピックの種目以外で世界チャンピオンになったとしてもさほど有名にはならないし、それだけでは食べていけない人もいます。それっておかしいなぁと思っていて、やっぱりどんなジャンルであっても世界一になることはすごいことですよね。そういう人が関西にもたくさんいるので、彼らを登用して、すごく良い人材がいるんだということを知ってもらいたいんです。あともうひとつは“場所”です。名村造船所跡地は’09年に近代化産業遺産に認定されたんですが、そんな跡地をアートスペース化しているのは日本では他にないし、海外でもとても少ない。しかもかつて大阪は重工業を先導していた時代があり、過去の大阪を象徴する場所ですよね。さらに今の“水都大阪”ということにもつなげて、お客さんが船でも来られるようにしたいと思っています」

―― 世界チャンピオンクラスの出演者と名村造船所跡地の場所が、大阪としての特徴なんですね。ほかに注目すべきところはありますか?

「何よりも、ノンバーバルに真正面から取り組んでいるっていうのは、これまでの日本ではあまりなかったんです。しかもストーリー性がちゃんとあって、舞台の設定を名村造船所跡地にも関連づけて“工場”にしています。ノンバーバルでストーリー性も大事にしている作品というのは新たな挑戦だと思っています」

―― 最後に、ロングランが実現した先をお聞かせいただけますか?

「名村でやるといっても、ずっとそこでやるということではなく、あそこは“工場”なので、出荷していかないといけないんです。工場でずっと同じものを上演していたらそれは“ストア”になりますからね。次はファッションをテーマにしたもの、その次は音楽をテーマにしたもの……という構想もあるので、工場で作ってそれを街中へ出して、また新しいものを工場で作るというような状況ができればいいなと思っています。夢ですけどね(笑)」

取材・文/黒石悦子




 

スペシャルインタビュー② スペシャルインタビュー③
兵頭祐香×佐々木敏道 いいむろなおき×NARUMI
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スペシャルインタビュー④  
新子景視  
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(2011年2月21日更新)


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『ノンバーバルパフォーマンス「ギア」』

▼2月10日(木)~3月22日(火)
Creative Center Osaka内、BLACK CHAMBER
前売3000円
当日3500円
大学生2000円高校生以下1000円(要学生証)
[出演] ブレイクダンス(*):kaku/NARUMI/HIDE
マイム:いいむろなおき/岡村渉
バトントワリング(※):佐々木敏道/出口訓子
マジック:新子景視
ヒロイン(*):兵頭祐香/平本茜子/成山あづさ

(※)ダブルキャスト
(*)トリプルキャスト

※この公演は終了しました。