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「これまでのどの作品よりも今の自分の現在地点を表現している」
春色をまとったオーガニックなサウンドで
日常に息づくきらめきをつづったミニアルバム『SUPER ME』
リリースツアーで久々の関西公演を開催
sugar meインタビュー

4年ぶりとなるシンガーソングライター、sugar meの新作ミニアルバム『SUPER ME』が届いた。前作『Wild Flowers』リリース後に出産、現在は子育て真っ最中というライフステージの大きな変化があった中で制作された今回のアルバム。子どもの純粋でまっすぐなまなざしに触発されて編まれた『Little Girl In Me』や、愛娘に捧げたバラード『あなたの神様が』など、特徴だった英語詞に代わり今作では日本語詞がメイン。5年前に東京から信州松本へ移住し、四季を感じる暮らしの中で音楽との向き合い方も少しずつ変化していったと語ってくれている。現在このアルバムを携え、元レーベルメイトであり『SUPER ME』誕生のきっかけともなったドイツのミュージシャン、ロバート・クレッツシュマールとのダブルリリースツアーの真っ最中。久々の大阪公演はゲストにYeYeを迎え、4月20日(土)IOR?I雲州堂にて開催。春の日差しのように心を暖かく包んでくれる歌声に会いに行こう。

新作『SUPER ME』はシンガーソングライター然とした作品になりました


――4年ぶりの新作の完成&リリースおめでとうございます。4年ぶりにお顔が見れて嬉しいです。

「毎年アルバムを出しているミュージシャンもいらっしゃるけど、私は熟成させた状態でないと出せないタイプなので時間がかかってしまって...言い訳ですね(笑)」

――前作『Wild Flowers』(2020年)リリースの前年に東京から松本へ移住されて、前作から今作までの間にはご出産があり、sugar meさん自身がライフステージに大きな変化があった中での制作になりました。私も育児経験があるので、新作『SUPER ME』誕生の裏には妊娠、出産を経て乳幼児の育児という多忙な日々の壮絶な時間のやりくりがあったのだろうと想像します(笑)。

「そうですね(笑)。時間に関していえば、1日のうち自分が自由に使える時間はほとんどないですよね。娘は今2歳半なんですが保育園には入れていなくて自宅で育児をしつつ、たまに一時保育に預けることもあるけど基本はずっと2人で一緒にいる生活です。そんな中、今回一緒にツアーをするベルリンのミュージシャン、ロバート(・クレッツシュマール)と話していて、彼は昨年10月に初のソロアルバム『HOMECOMING』をリリースして、"日本へライブをしに行きたいけど招聘先がなかなか見当たらなくて苦戦している"と聞いて。その時点で私も前作のリリースから4年近く経っていて、そろそろアルバムを作りたいと思いながらきっかけがなくて。そんな時だったんで、じゃあ頑張ってアルバムを作ったらロバートと私でダブルリリースツアーが組めるんじゃない?となり、それがきっかけで今回のアルバム制作が始まりました」

――すごい決断。しかも先にツアーが決まるとは。

「そう。それをきっかけに今まで作り貯めていたデモを引っ張り出したり、"ツアーをやる"という目的を持って新しい曲作りに取り組んだり、ツアーありき締め切りありきのかつてなかった形で制作が始まって(笑)。そうやって無理矢理にでも計画を突っ込んでいかないと、アルバムを作ることはできなかったなーと思います。子育て中心の生活は全然悪いことではなくて、今は誰かのために時間を捧げる期間なのだという自覚もあって。そんな中でいざ音楽制作となると、1人時間を確保するのが最大の難事でしたね(笑)。毎朝だいたい6時ぐらいに起こされて家事と育児に追われる一日が始まり、夜に夫が帰宅したらバトンタッチして、一日2時間とかちょっとずつ作業するみたいな感じでしたね」

――隙間時間を見つけて制作していかれた感じですか。

「ですね。そうはいっても単純作業と違うので気分が乗らない時もあったり、頭の切り替えがすごく難しかった。もう少しやりたいけど明日も朝が早いから今日は時間終了という日や、1日動いてどっと疲れてそのまま寝落ちする日もあって。ロバートからお誘いがあったのが去年の夏前ぐらいで、そこからアルバムを作ろうと決めたのが8月。さすがに春には間に合うだろうとたかを括っていたんですが、ドタバタのギリギリの作業でした(笑)」

――『SUPER ME』を聴いて真っ先に思ったのは、日本語詞の曲が多いということと、その日本語詞の曲がとても心地よいこと。今までのsugar meさんの作品は英語、フランス語、日本語を曲によって使い分けられているのも特徴の一つでしたが、今作は『Slow Life(feat. Robert Kretzschmar)』(M−6)以外はほぼ日本語詞で。これまでの作品を聴いていたリスナーにとっては意外性もあるでしょうが、日本語詞と歌声との相性もぴったりで歌がより身近に感じられました。

「ありがとうございます。子育てしていると日本の歌に触れる機会がすごく多いんですね。ちょうど娘が今、言葉を獲得していく段階でちょっとずつ単語が出てきてコミュニケーションがとれるようになってきているんですね。そういう時期にママが歌う日本語の曲があったらいいんじゃないかと思って。今までは自分の音楽に対するプライドみたいなものも若干あって、洋楽ライクな曲を書きたいと思ったりもしたんですが、今はもうちょっとニュートラルな状態で音楽に向き合えているというか。"音楽で売れなきゃいけない!"みたいな欲とかが全部そぎ落とされたフラットな状態の自分がいて、今回のアルバムも"自分はこういうものを作りたい"というより、娘が聴いた時にしっくりとくる作品を作りたい。誰かのために曲を書けたらいいなという視点が一つ増えたというか。そういうフラットな状態から過去の自分が作り貯めたデモや作品を振り返った時に、素直に"これいいな""これもよかったじゃん"と思えるものがいくつもあって。そうやって15年ぐらいのキャリアを振り返ったり、過去と向き合えたりしたこともすごく良かったなあと思いますね」

――生活環境の変化や自分自身の変化とともに、音楽のとらえ方や自分の中から出てくる音楽も少しずつ変化してきている?

「そうなんでしょうね。今作は、これまでのどの作品よりも今の自分の現在地点を表現している気がして。過去を振り返り、未来を見つめた上での現在――作品が出来上がってみてそんな印象を受けるんですが、それってシンガーソングライター然としていていいんじゃないかなって。自分自身のことやすごく個人的な出来事を歌にしているけれど、そのパーソナルな部分が実は1番ユニバーサルなところというか、聴いた人の共感を生む気がするんですね。自分に起きた体験は自分個人のものなんだけれど、その時の感情とか経験っていうのは、もしかしたら誰しも持っているものだったり共感できる部分があったりして。そういうものを体現しているのがシンガーソングライターという存在なのかな。だから、みんなシンガーソングライターの曲を聴いて自分ごとのように思ったりするのかなって。英語の歌詞だと音楽的に良い点もたくさんあるけど、どうしても届きづらいところもあるんですよね。今回日本語で歌詞を書けて、言葉の存在がぐんと大きく感じるしその分届きやすい曲たちが揃っているのかなという気がします」


大人には無駄に思える時間も
子どもには宝物にようにキラキラしている
そのキラキラは自分の中にもあって
大人になってもそれは絶対忘れちゃいけない


――1曲目『SUPER ME』と2曲目の『Little Girl In Me』はまさに寺岡さん自身の体験や、お子さんとの日々の生活から生まれた思いが落とし込まれているのかなって。アルバムタイトル曲でもある『SUPER ME』には、「困ったときに助けてくれるスーパーヒーローはいなくても、自分の限界を超えて"SUPER ME"になることはできるという自身の気づきをもとにこのタイトルをつけた」と資料にありました。私は最初、自分が育児に奔走していた頃を重ねて『SUPER ME』を聴いていましたが、ピンチに陥っている時とか"もうダメだ!"という局面にいる時に力をもらえる曲でもありますね。

「そうやって自分を超えていかなきゃいけないシチュエーションっていうのは、多分誰にでもありますよね。歌詞に"あなたのために強くなる"っていうフレーズがあるんですが、自分のためだと踏んばれないけど、自分以外の誰かや何かのためだと自分の枠を超えられる瞬間というのが誰にもあると思うんですね。そうやって自分がちょっとずつ大きくなれたり強くなれたり、大人になっても自分に起きた変化に対してさらに自分が良くなっていくことができる...そういう前向きな思いを込めつつ、聴いてくれる人の背中を押せるような曲になったんじゃないかなと思いますね」

――シングルカットされた『Little Girl In Me』の"wasting time""意味をやめなよ"という歌詞にハッとしました。大人の目線だとつい効率を重視しがちで子どものしていることを周り道しているように感じたり、何かにつけて意味を見出さなきゃと焦ったりして。"うまく生きられない日も星は綺麗だ"という一節も柔らかな歌声に救われつつめちゃめちゃ沁みました(笑)。

「"あー、今日はダメだな"みたいな日が本当にたくさんあるんですよね(笑)。それでもまた明日も頑張っていかなきゃいけなかったり、しんどいなあって思う日でも夜空の星とか綺麗なものを探していったりする日々ですよね。大人から見るとすごく無駄に思える時間も、子どもにとっては宝物みたいにキラキラしているので、そういうのを常に間近で見ていると、クリエイティブな部分を刺激されて自分にとってすごくいいインプットになっているんだなって。まさにセンスオブワンダーというか、なんでも不思議に思ったり、いろんなものの美しさに気づいたり、娘は今たぶんそういう時期なんですね。そういうキラキラしたものに触れると、ああ自分の中にもそういう部分があるなあって。大人になってもそういう部分は絶対忘れちゃいけないと思うし、そういう気持ちでクリエイションに向き合わねばという気持ちも込めて書きましたね」

――2曲とも曲調も春らしく軽やかです。

「春にリリースツアーをすることが頭にあったので、春に聴きたくなるようなテイストの曲が多くなっているんじゃないかな。前作はリモートで宅録メインの制作でしたが、今回はコロナも落ち着いてきたので久しぶりにスタジオで"せーの"で録りたくて、バンドメンバーも素晴らしいミュージシャンたちに声をかけました。私は自分を鼓舞するためにガットギターを新しく買い(笑)、今回はドラムじゃなくパーカッションをメインにした編成で、パーカッションとガットギター、あとウッドベースにアコースティックベース、生ピアノというオーガニックな編成になっています。あ、『Little Girl In Me』はブラシのシャーシャカシャーシャカって音が入っていますね。パーカッションがメインの編成も自分的にはチャレンジだったんですが、鼓動のビートみたいな感じですごく豊かで面白いサウンドになったんじゃないかな」

――時間的な制約や日本語詞、パーカッション中心の編成など、いろんな面でこれまでとは違う作り方をされているんですね。

「1番時間がかかったのは歌詞ですね。久しぶりに日本語を書いたので、言葉がはまらん!どうしよう!みたいな(笑)」

――1番苦労された歌詞はどの曲になりますか。

「『あなたの神様が』(M-5)ですね。これは娘に捧げるバラードを書こうというのがスタートだったんですが、日本語のバラードを書くなんて何億年ぶり?みたいな感じで(笑)。たとえば『Little Girl In Me』みたいなノリの曲だと、音に導かれて出てくる単語があったりしてそれを辿っていくと言葉がはまるという現象が起こるんですけどね。バラードのようにメッセージ性やストーリー性を大事にするような曲に関しては、言葉が先行しないと立ち行かない気がして。sugar meとして活動してきたキャリアの中では、日本語でバラードを書くということを封印してきたというか、全然やってきていなかったんですね。なので『あなたの神様が』を書いたことも一つSUPER MEなことで、自分のキャパシティーをちょっと超えたところにある手法で挑みました」

――出来上がった『あなたの神様が』は、耳を通ってすうっと自分の中に入り込んで心を撫でてくれるような曲です。

「よかったです。コロナの真っ只中の出産だったので、あの頃世界的にもすごく大変な時期だったし、娘が生まれてすぐにウクライナでロシアの軍事侵攻があったり今もガザで戦闘があったり、そういう大変な時代の中で新しく命を生み育むことは本当にいいことなのか...みたいな迷いの中にもいて。そういった葛藤もあるし、自分の力が及ばないところもあるけれど、子どもにはずっと幸せであってほしい。そういう祈りに似た感情みたいなものが心の底から湧いてきて。それは生まれて初めて自分の中に芽生えた感情で、母になるってこういうことかと思って。それをストレートに歌詞にしようと思って書き始めたんですが、伝えたいことがありすぎて全然まとまらなくて(笑)」

――聴いていて、全6曲が3つのパートに分かれているような気がしました。1曲目の『SUPER ME』と2曲目の『Little Girl In Me』で1つのパート。3曲目の『CANDY』と4曲目の『東京タワー』が2つ目のパート。5曲目の『あなたの神様が』と最後の『Slow Life』が3つ目のパートといった具合に。

「全然意識してなかったけど、言われてみるとそうですね。それだと、最初の2曲は現在の自分の立ち位置で、次の2曲は過去を振り返るパート、最後の2曲は未来を見据えるパート」

――素晴らしい(笑)。最初からそうやって構成したような。

「『CANDY』(M-3)と『東京タワー』(M-4)はすごく古い曲で15年ぐらい前に書いたものです。音楽をやり始めて最初にコピーバンドをやり、それからオリジナルを作ろうとなった頃に書いた曲たちで、まだsugar meを名乗る以前のものですね。『東京タワー』はたぶん生まれて初めて1曲の形に仕上げたものじゃないかな。今回日本語詞の曲が多いので、日本語で歌詞を書いていた時代の曲も聴き直して、"この曲をリアレンジしてみたい"と思う曲や、"この曲はハマりそうだな"と思えるものを厳選しました」

――『東京タワー』はドリーミーで浮遊感のあるアレンジが効いていますね。

「この曲はコード進行のないメロディーと歌詞だけの曲で、気に入ってはいたんですがアレンジを考えるのが難しくて放置していて。今回パーカッションが入るとなった時に、この曲をやりたいと思い引っ張り出しました。曲を作った頃は音のディレクションとか全体の方向性を詰めて行くことが当時20歳そこそこの自分には難しかったんじゃないかなと思うんですね。今回福岡たかしさん(per)の素晴らしい演奏で、彼のグループに乗ってみんな自由に泳いでいるような心地よさの中で演奏できて、これも自分の想像を超えていくという点でまさにSUPER MEな体験でした。自分もあの頃よりちょっと成長したんだなっていうのを再確認できましたね」

――『CANDY』『東京タワー』のように、これまで作った曲や曲の素材は全部お手元にあるんですか?

「ライブラリに入れてます。私、実はAメロ職人なんですよ(笑)。どれもいいAメロばっかりなんだけど、そこから広げられないまま放置しているものも含めて、断片はたくさんありますね。そういうストックを聴き直したりすると、"これはこういう展開にしたら面白い曲になるかな"と思える素材に出会えたりして」

――『Slow Life(feat. Robert Kretzschmar)』はロバートとのデュエット曲ですね。

「ロバートとツアーを一緒に回るので2人で歌える曲を入れたくて。デュエット曲にしたいという構想から始まって、ロバートの歌声は素朴ですごく自然な魅力のある声なので、それが活きる曲がいいなと思って作りました。彼のアルバム『HOMECOMING』の1曲目『I Wish』がスリーフィンガーのフォーキーな曲なんですね。なので私のアルバムの一番最後の曲がスリーフィンガーのフォークソングだったら、続けて聴いた時にうまく循環していい感じに聴けるかもしれないなと思いお揃いにしてみました。たぶん誰にもわからないし、ロバート本人も知らないから来日した時にお伝えしようと思います(笑)」

――ロバートはsugar meの2ndアルバム『AROUND THE CORNER』(2015年)に参加されていますね。当時のインタビューで寺岡さんは、「会社とか組織間の繋がりじゃなく、個人で交流したり一緒にものを作ることを出来るのがいい」と言われていました。

「2ndではロバートのプライベートスタジオでドラムとビブラフォンを録ってもらいましたね。もともとはレーベルメイトという形で知り合って、世代が近いこともあって音楽を通して国境を超えて、お互いにリスペクトしながら繋がっていますね。今回のツアータイトルは『Long time no see』=お久しぶりという意味なんですが、long timeずっとno seeでも心が通っている、すごくいい友人関係でいられているなと思います」

――『Slow Life(feat. Robert Kretzschmar)』はそんなお2人の生活の中に音楽が息づいていること、日本とドイツでそれぞれの日々の暮らしの中から音楽が紡がれているのを感じる曲です。

「私がもともと北海道の田舎で育ったこともあって、今住んでいる松本での生活のリズムは自分の原点に帰ったような感覚があるんですね。東京に住んでいた頃は電車の間隔が5分、10分に1本だったり、誰もが歩くスピードが早かったりするのを当たり前に思っていたけど、こっちに住んで5年経ってみて、そろそろ桜の時期だなとか梅雨が近づく頃には梅干しを作る準備をしなきゃとか、寒くなってくるともうすぐ干し柿の時期だなとか、四季を感じる暮らしをしているなって。時計の針の動きとは関係のないところで感じられる時間の流れみたいなものがあるというか、そんな豊かさを感じていて。松本は夫の故郷でもなく、移住するまでプライベートでもツアーでも訪れたことのない、知り合いも1人もいない土地だったんですが、移住して5年経ってみて、たまに仕事で東京へ行ってこっちに帰ってくると山並みを見るだけで"ああ自分の街に帰ってきたな"と思うようになりましたね。もちろん過去を振り返ることもあるんですが、この先は自分も子どももこの場所で生きていくんだな...というのを素直に綴った曲です。そういう感覚はきっとロバートにも合うんじゃないかなと想像しながら書いていましたね」



夢は、おばあちゃんになってもステージで歌うこと


――宝石をかたどったようなジャケットのアートワークも目を引きます。

「これまでの作品は全部ジャケットに私の顔が出ているんですけど、前作を作った頃から抽象画のようなアルバムジャケットを作りたいなと思っていて。好きな作家さんにお願いしようか考えていた時に、ふと娘の描いた落書きのような絵を見て"これ、いいじゃない!"って、こんな身近に画伯がいた(笑)。以前ラジオ番組のゲストで出ていただいたことのあるホーローシャツさんに一緒に作っていただいたんですが、ホーローシャツさんは、お客さんの好きな生地で体型に合わせたシャツやワンピースを作っていらして今回は娘と私がペイントした布からシャツを作っていただきました。一枚の平面の布が立体の服になって、自分の身にまとうものになっていくさまが、2Dから3Dになっていくようで、変化していくという意味ではそれもSUPERだなって。そういうテーマを持ったアート作品のようなものにできたんじゃないかな。ジャケットになっているのは、娘と私がペイントした布地をデザイナーさんのアイディアで原石のような形に切り取ったものですね。今回作っていただいたシャツはアーティスト写真で着ているんですが、ツアーにも着ていくのでぜひ会場で見ていただきたいです(笑)」

――楽曲もアートワークも一つ一つに意味が込められていて、全部にテーマが貫かれている。愛情を注いで制作されている背景を知ると、手に取る方もより愛着がわきますね。

「自己満足になっていないか不安ですが(笑)。アルバムは基本的に配信がメインで、CDはライブ会場限定販売なんですね。なので、盤が欲しいという方はぜひ会場で手に取っていただきたいですね」

――ロバート・クレッツシュマールとのダブルリリースツアー『Long time no see!-Reunion Tour』は4月13日(土)東京を皮切りにスタートし、大阪は4月20日(土)IOR?I 雲州堂にて。この日は13:00開演でお昼のライブですね。

「そうなんです!東京公演はレコーディングに参加していただいた皆さんとバンドセットでお届けして、それ以外の会場はロバートも私も弾き語りで、ゆったりと楽しんでいただけるアコースティックライブになるんじゃないかな。大阪は、ロバートとも親交があるYeYeちゃんが出演してくれて私としては3マンライブのような気持ちで。『SUPER ME』は全6曲ですが、新旧混ぜたセットリストを考えているのでsugar meのベスト&ニューなラインナップになると思います。春が似合う、お昼の時間帯が似合う曲が3人ともたくさんあるので、週末の昼下がりにぜひ足を運んでもらいたいですね」

――前作『Wild Flowers』の曲も聴けますか?

「もちろん!前作はコロナの真っ只中でリリースツアーができず悔しい思いをしたので、『Wild Flowers』の曲もたっぷりやりますよ」

――近年sugar meとして音楽と朗読のコラボライブや、布博などのイベントに出演されたりもしています。今後も日々生活をしながら音楽を紡ぎ、さまざまな場所で歌を歌っていくという活動になりますか?

「それが1番理想ですね。今はレーベルに所属せず個人で活動しているので、全国ツアーや大きな会場でライブをやるとかではなく細かく各地を回っていくような形になると思います。やっぱりね、ライブがすごく好きなんですよ。みんなで音楽を楽しむあの空間がすごく好きで、そういう場所にずっと立っていたい。なかなか行けない地方もあるんですが、それでも変わらず待っていてくれる人がいて、"長くお待たせしちゃってすみません"って言うと、"いつまででも待ちますよ"って声をかけていただけたりして。"音楽をやっていてよかったな"と思える瞬間だし、それがモチベーションになって新しい曲を作りたいなという気持ちにも繋がるんですよね。ライブに足を運んでもらって、顔と顔を見ながら歌を届ける。それが自分には必要なんだなって。なので、いくつになってもステージで歌っている可愛いおばあちゃんになるのが夢です(笑)」

――4月20日の大阪公演もそういう場になりますね。

「そうですね。大阪の後は広島、札幌を回るんですが広島でのライブは初めてなので、どんな人たちに会えるのかもすごく楽しみです。今回のようにロバートと日本ツアーに行ける未来があるなんて、音楽を始めた頃の自分は思い描けていなかったし、音楽ってそういう思いもよらない出会いをたくさんくれるんですよね。これからもライフワークとして長く続けていきたいですね」

Text by 梶原有紀子




(2024年4月17日更新)


Check

Release

Mini Album『SUPER ME』
発売中

《収録曲》
01. Super Me
02. Little Girl In Me
03. CANDY
04. 東京タワー
05. あなたの神様が
06. Slow Life

Profile

シュガーミー…シンガーソングライター、寺岡歩美のソロプロジェクト。英語、日本語、フランス語を使い分けポップでアコースティックなサウンドと、自在に変化する澄んだボーカルが各方面から好評を得ている。音楽好きな両親の影響で幼い頃からビートルズやマイルス・ディヴィスなど多彩な音楽に親しみ、中学の頃から母親のフォークギターを独学で弾き始める。大学入学とともに地元の北海道より上京し音楽活動を開始。’10年頃よりシンガーソングライターとしての活動を始めRallyeレーベルより‘13年リリースのデビューアルバム『Why White Y?』以降、イッツ・ア・ミュージカルのロバート・クレッツシュマールが参加した『AROUND THE CORNER』(‘15年)、関口シンゴ(Ovall)プロデュースによるカバーアルバム『6 femmes』(’16年)の3作をリリース。‘19年春に長野へ移住、’20年に自主レーベルWILD FLOWER RECORDSを設立しセルフプロデュースとなる5年ぶりのアルバム『Wild Flowers』が発売。tofubeatsら他アーティストとのコラボも数多く、堀江博久との2マンツアーやRISING SUN ROCK FESTIVAL、FUJI ROCK FESTIVALSへの出演、フランスツアーなどライブ活動も精力的に行い、ラジオDJやアニメ作品への楽曲提供、映画出演、モデルなど幅広く活動。‘24年3月29日に4年ぶりのニューアルバム『SUPER ME』をリリース。同作を携え、旧知の仲のロバート・クレッツシュマールとのダブルリリースツアー『Long time no see!-Reunion tour』を開催。スケジュールは4月20日(土)大阪 IOR?I 雲州堂、4月21日(日)広島 瀬戸田Overview Coffee Setoda Roastery、4月27日(土)札幌 Brew it by NODE

sugar me オフィシャルサイト
http://www.sugar-me.com/


Live

sugar me × Robert Kretzschmar

チケット発売中 Pコード:265-174
▼4月20日(土) 13:00
雲州堂
前売 一般-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
前売 小中学生-1750円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]YeYe
※未就学児無料。
【問合せ】Long time no see! - Reunion tour 実行委員会 E-mail:longtimenosee2024@gmail.com

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