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「“おかえり”とか“ただいま”が言えるようなライブ作りは継続しつつ
新しい一面を見せられたらなと思っています」
心が躍り熱くなる新たな旅立ちのポップミュージック
3rdフルアルバム『Terminal』リリースツアー開催
リュックと添い寝ごはんインタビュー

この春メンバー全員が大学卒業というタイミングでリリースされたリュックと添い寝ごはん(以下、リュクソ)のニューアルバム『Terminal』。『天国街道』『反撃的讃歌』『未来予想図』といったタイトルからインパクト大、瞬時に心が掴まれる先行曲に加えて、アルバムに収録された新曲には自由で挑戦的な遊び心が存分に盛り込まれている。これまで「できることとやりたいことのギャップ」に打ちひしがれることもあったようだが、スキルもマインドもグンと成長を遂げたバンドの新たな出発点となる一枚に。今回は中心ソングライターの松本ユウ(vo&g)とギターのぬんにインタビュー。各楽曲の制作エピソードやアルバム作りへの取り組みについて、今まで以上に熱いコメントが聞けた。「流行り物に対するアンチ的なアルバム」(松本)という反骨心を原動力に、フレッシュで痛快なポップネスに磨きをかけて4月18日からスタートする最大規模のリリースツアー。逞しく前進していくリュクソの今を確かめてほしい。

思ったことを常にぶつけ合って
曲の濃度がどんどん高くなっていった


――ニューアルバム『Terminal』は、タイトルにもなっている"Terminalという"コンセプトありきで作り出したんですか。リリースがメンバーの皆さんの卒業タイミングだったので、"次の目的地へ向けて作るぞ"っていう明確なイメージがあったのかなと。

松本「"Terminalっていう単語を思いついたのは1番最後です。『long good-bye』(M-9)のメロディーを作ってる時点で、列車をテーマにこういう雰囲気でっていう枠組みみたいなものが浮かんできたんです。僕は曲作る時はその情景をイメージして、こんな場所で、こういう時に聞きたいっていうことを一番にしてて。そこはいちリスナーとして考えてます」

――今作のCDの歌詞カードに掲載されているセルフライナーノーツにも場所や時間についての記述が多かったのでとても腑に落ちます。

松本「今回はライナーノーツとか特典グッズにもこだわって、より一層アルバムと向き合って作りました。 アルバムのコンセプチュアルな部分もしかり、せっかく作るなら面白いものを作りたいので。前作の『四季』を出してから1年4か月ぐらい経つんですけど、その間はメンバーでもっと意見を出し合っていこうって常に話し合ってて。そういうことを言い辛い空気をなくすじゃないですけど、 思ったことを常にぶつけ合って創作していこうって僕からみんなに伝えました」

ぬん「そうやってお互い言い合おうっていうことがあったから、1曲1曲の練りがすごく良くなったというか、曲の濃度がどんどん高くなっていったような感じはするので、それによってすごく変わっていった1年だなと思いますね」

――メンバー同士でより意見を出し合うようになったんですね。

松本「そうですね。ただ、僕が曲を作っているので、主導権は僕が持ってるんですけど。いろんな意見が欲しかったので」

――それが一番反映されている曲というのは?

松本「『反撃的讃歌』(M-5)のAメロとかは2パターンあって、どっちを取るかっていう状態だったので、メンバーの意見を聞いて完成形になりました。今まではずっと引き算の形で曲を作ってたんですけど、今回は割と音を詰め込んだ楽曲が多くて。 その音もベースのヒデ(堂免英敬)が入れてくれたりしたので、みんなで作りながらアルバムが完成しました」

ぬん「『Pop Quest』(M-4)とかもやってくうちに、こういう感じがいいよねみたいな話し合いでどんどん形が見えてきた曲です」

松本「ゲーム音楽のような形になっていって、新たなポップス像みたいなところをお客さんに届けられるなと」

――たしかに『Pop Quest』は先行シングル曲とは明らかに違う感じで遊び心を感じました。

松本「今作は先行配信してたシングルが結構多いので、残りの曲は『反撃的賛歌』とか『未来予想図』(M-7)みたいな曲ではなく、アルバムらしい面白い曲を入れたいねっていうことで『Pop Quest』と『Dreamin' Jungle』(M-6)ができました」

――機内アナウンスのような『Attention』(M-1)のアイデアは誰から?

松本「僕がとにかくそういうのを入れたくて。でもメンバーにギリギリに伝えたので、アルバム締め切りの3日前とかに作り始めたんですけどね(苦笑)」

――ラストの『Information』(M-11)も面白い趣向が凝らされています。

松本「あれを作ったのはぬんさんで、ラジオとかの交通情報の裏に流れてるBGMとか、ヴェイパーウェイヴみたいな...80年代のシティポップとか、ああいうシンセの雰囲気がそのまま 2000年で使われてる時の音なんですけど。Wii PartyとかのゲームソフトのBGMも16ビートでシンセがずっと鳴ってて。そういうのをリファレンスして、ぬんさんにこんな感じでって作ってもらいました」

ぬん「締め切りも迫ってるし、もうやばいやばいって思いながら打ち込みで夜鍋をして作りました(苦笑)。1回目に出した時にダメって言われるかなと思ったら、意外にも"いいね!"って言ってくれて」

松本「僕はもう超感動しました。ぬんさんからそういう楽曲を送られてくることが今までなかったので、バンドとしてののびしろを感じて、すごく嬉しくなったのを覚えてますね」



サウンドは普遍的だけど、
言葉は今の時代にしか書けないものを


――『Dreamin' Jungle』はどのように作っていったんですか。

松本「これは4年前にデモの段階で完成はしていて。それこそ1stフルアルバムの『neo neo』に収録しようとしていたんですけど...。アウトプットしきれてない状態だったので。(自分たちの)できることとやりたいことのギャップみたいなところを強く感じた楽曲だったんですけど。それから4年の時を経て、この曲にはこういう音を入れたいっていうのが自分の中で明確になって、今回リリースすることができました。自分たちの他のアルバム曲にはない一面があるし」

――特にチャレンジしたことやこだわった点というのは?

松本「チャレンジしたとこでいうと、80年代のシティポップのニュアンスと、どこかちょっとフィクションのような感覚になる楽曲なので。そういうベイパーウェイヴのような音を入れたりとかしてて。このジャンルを聞いてる時にローファイ・ヒップホップの派生版みたいな、ちょっと冷たい不気味さを感じていて。 そういう楽曲で使われてるシンセサイザーの音を意識して入れました」

――なるほど、それで他の曲とは違う雰囲気が生まれているんですね。この曲はぬんさんのギターソロにも引き込まれます。

ぬん「これは好きなギタリストのオマージュですね(笑)。ジミヘンしかり、先輩アーティストのちょっと真似事してみたりして。自分の中でギターで遊んでみようって思ったソロなので。今までのリュック像とは変わってるんですけど。それもまた一興というか(笑)」

松本「これは僕もアルバムの中ではホント3本の指に入るぐらい好きな曲ですね」

――あとの2本は?

松本「『Pop Quest』と『long good-bye』です」

――最初に『long good-bye』を作っていてアルバムの枠組みが浮かんだと話してましたよね。この曲を聴いてるとゴダイゴの『銀河鉄道999』を思い出すのですが...。

松本「Aメロは意識して作りましたね。やっぱ電車が最初のキーワードだったんで、銀河鉄道がここを走ってるようなイメージをみんなで共有して作ってました。それプラスアルファでJR東海とかの冬の広告のような情景も思い浮かべながら作ってました」

――メンバーのみなさんにとってはゴダイゴの『銀河鉄道999』って、生まれる前の曲ですが、すぐに思いついたんですか。

ぬん「電車って言えばどんな曲だろう?みたいなところから、みんなで出し合ってやっぱこれだよねって意見が合致したんです」

松本「あれは名曲だよなあ...」

――リュクソは同世代のファンが多いと思いますが、ゴダイゴをリアルタイムで聴いているもっと上の世代のリスナーの耳にも引っかかるんじゃないかなって。

松本「それはありますね。流行り物だけを作っていたくないっていう意識がすごく強いので、 普遍的な音楽をというのは昔から意識して作っています。このアルバムの歌詞の中には流行りものっていう単語がすごく多く出てるんですけど...。流行り物に対するアンチ的なアルバムにはなってるのかなぁ...。今までのアルバムに比べて、このアルバム『Terminal』は自分の人間性とすごく近い感覚なんですよね。内側ではなんか煮えてるものがあるというか...怒りだったり葛藤みたいなものがあって。でもそれを表に出さないっていう。このアルバムでも歌詞ではすごく怒ってて、アンチ的なことを言葉にして発しているけれど、サウンドではそれをポップに包んでるところが僕の人間性と似てるんです。名刺代わりのようなアルバムになりましたって言えるのもそこかなって思います」

――たしかに一見、"怒り"を露わにしているタイプのバンドではないかもしれないけど、内側に熱いものがあるっていうのはわかります。『反撃的讃歌』なんかはそこをストレートに出している楽曲だと思いますが、そういう精神で何かに立ち向かっていくことは大事ですよね。

松本「大事です大事です。僕が今までそういうものを出してこなかったので、怒ってるものだったりとかアンチ的なものを。これからもっと出していきたいなっていう気持ちもありますし...。反骨(精神)じゃないけど、何か流行り物と逆行するものをっていうのはやっぱり強くありますね」

――その上で普遍性も大切にして。

松本「そうですね。うん。普遍性は歌い続けたい。それは曲として。自分はサウンドで時代を表現したくなくて、歌詞でその時代を表現したいなっていうのが強くあって。サウンドは普遍的だけど、言葉は今の時代にしか書けないな、みたいなところは自分で目指してはいます」

――『車窓』(M-10)は唯一のシンプルな弾き語りですね。

松本「『車窓』っていう曲はこのアルバムを総括する1曲になってるなって。僕がアルバムの締め切りの前日くらいにアルバムを俯瞰的に見て作った1曲なんです。~車窓から見えた景色はそれぞれのふるさとの街~って書いてるように、このアルバムを聴いた人がそれぞれのふるさとを思い出すような、そういうアルバムになったらいいなとは思いますね。このアルバムを聴いて多様な景色を広げてほしいなと思います」

――今作はすごく発信力のあるアルバムだと思います。

松本「うん、そうですね。今までちょっとふわっとしていたというか、どこか抽象的な普遍性があったなっていうのは感じてて。よりはっきりとした主張を僕たちが持ててるアルバムかなと。今まで以上にレベルアップした姿を見せれてるかなっていうのは完成して感じてます。リュックもう一段上がったねって思われるようなアルバムになってるかなと思います」

ぬん「1段と言わず、2段、3段上がったねって言われるようなアルバムになってると思うんで。僕は1曲目から11曲目まで順番に流れで聴いてほしいし、すごく自信のある作品なんで、たくさん聴いてほしいですね」

――プレイヤーとして特にここを聴いてほしいというところは?

ぬん「『Dreamin' Jungle』のギターソロの前にあるベースソロ。あそこもすごい耳に残ってかっこいいし、『未来予想図』のドラムはスピード感がありつつ迫力があるし、各々の演奏が粒立っているので、そういうところも注目して聴いてほしいです」



これから何をしていきたいのか
自分たちが描いてるビジョンをお客さんと共有したい


――このアルバムを携えて4月18日からリリースツアーが開催されます。

松本「今回は全12カ所で、バンドとしても最大規模でもあるので、やっぱり全部をソールド公演にしたいっていう気持ちは強くあります。内容としては今までのように温かいライブハウスの空間とか、"おかえり"とか"ただいま"が言えるような関係性のライブ作りみたいなものは意識していて、親戚の家に行く感覚だったり、そこはこれからも継続しつつ、その中で 自分たちがこれから何をしていきたいのかっていうところとか、自分たちが描いてるビジョンみたいなものをお客さんと共有したいので。そのためにもまず、僕らはライブをする前にどういうところに行きたくて、どういう場所でライブしたいのかしっかりバンド内で擦り合わせてツアーに臨みたいかなって思ってます」

――ちなみにどんなところを目指してますか。

松本「もっと大きいステージ、アリーナだったりとか、ZEPPだったり武道館だったり...、あとはフェスで言うと野外ステージのようなすごく広い空間でライブをするっていうことのイメージ共有をバンド内で、ツアー始まるまでにしてから、それをしっかりとお客さんに届くようにライブ作りをしていきたいなと思っています」

――それがバンドとしての現時点の目的地なんですね。

松本「そうですね。ここからが出発点だっていうところをしっかりとお客さんに伝えていきたいなと思ってます」

――今よりもさらに大きいところ目指してると。

松本「はい、目指してます!」

――ぬんさんはいかがですか。

ぬん「やっぱアルバムでも初めての試みをしてて、新しい一面を見せてると思うんで、今回のツアーも新しい一面を見せれたらなと思っています。自分でも気づいてない新しさもライブをやってると出てくると思うし、そういうのも引き出せるように頑張りたいツアーだなと思います」

――ちなみに、今作の中で特にライブでやるのが楽しみな曲は?

松本「僕は『Pop Quest』が楽しみですね。ちょっとボーカルにオートチューンがかかってるので、それをライブでも再現したいなと思っていて。マイクを2本立てたり、またなんか新しいやり方で表現する可能性があるのでそこはお楽しみに」

――『反撃的讃歌』や『天国街道』(M-2)もライブで盛り上がりそうです。

松本「そうですね。今までのアルバムよりもスローテンポとかミドルテンポもそんなに無いし。すごくライブが楽しみです。とにかく老若男女、いろんな人に来てほしいですね」

ぬん「ツアーで初めて行く場所もあるんで、ライブでしか味わえない、ライブでしかわからない僕らの良さっていうのもぜひライブに来て感じてほしいです」

Text by エイミー野中




(2024年4月 9日更新)


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Profile

(アーティスト写真 L→R) 堂免英敬(b)、ぬん(g)、松本ユウ(vo&g)、宮澤あかり(ds)
2017年11月10日結成。東京都内を拠点に活動中の4人組バンド。通称‧リュクソ。高校在学中に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」への出場と初の全国流通盤リリースを経験した後、2020年12月に1stフルアルバム『neo neo』でスピードスター‧レコーズから3ピースバンドとしてメジャーデビュー。2021年に「くだらないまま」の「明治 エッセル スーパーカップ2021 WEB CMソング」への起用を皮切りに、何気ない日常を肯定する温かみのある楽曲性が評価され、現在までに9曲のタイアップが続々決定。2022年にはぬん(g)の加入を経て、4人体制としての活動をスタートさせ、2023年初頭と夏季に2回の全国ツアーを成功させるなどライブ活動も精力的に実施中。2023年7月にリリースしたシングル「Be My Baby」はドラマ『みなと商事コインランドリー 2』のエンディング‧テーマに起用され、11月にはシングル「恋をして」にて同ドラマ主演の⻄垣匠 氏を起用した MVが話題に。2024年1月には、シングル「天国街道」をリリースし、特徴的なチャイナ風サウンドと某スターを彷彿とさせるMVがTikTokでも大好評。3月20日には待望のアルバム『Terminal』をリリース。親しみやすいキャラクターと対照的に、力強く芯の通ったライブパフォーマンスで注目を集める新世代アーティスト。

リュックと添い寝ごはん オフィシャルサイト
https://sleeping-rices.com/


Live

リュックと添い寝ごはん 3rd album release tour “Terminal”

【東京公演】
▼4月18日(木) LIQUIDROOM
【新潟公演】
▼4月27日(土) GOLDEN PIGS BLACK STAGE
【宮城公演】
▼4月29日(月・祝) ROCKATERIA
【北海道公演】
▼5月25日(土) cube garden
▼5月26日(日) 帯広・studio REST
【福岡公演】
▼6月7日(金) LIVE HOUSE CB
【熊本公演】
▼6月9日(日) 熊本B.9 V2
【長野公演】
▼6月15日(土) 松本ALECX
【広島公演】
▼6月21日(金) ALMIGHTY
【香川公演】
▼6月23日(日) TOONICE
【愛知公演】
▼6月28日(金) NAGOYA JAMMIN’

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:262-988
▼6月30日(日) 17:00
Yogibo META VALLEY
オールスタンディング-4400円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※3歳以上チケット必要。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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